2024年10月13日日曜日

ピュア:小野美由紀

小野美由紀(1985-)のピュア。SFマガジン掲載時にnoteで公開され歴代一位20万PVをゲットした。という評判だったので早速トライして見た。ピュア,バースデー,To The Moon,幻胎,エイジ,身体を売ることの性科学SF 6編からなる短編集だ。

表題作のピュアは,恐竜のような身体を獲得して軌道上に生活するメスの人間が,蟷螂のように性交後のオスを食べてしまい,そのことによってのみ受胎が可能になった未来を描いている。オスは汚染された地球上で細々と生活している。捕食される側からみた物語がエイジであり,これらが対になっている。

どの作品も,ある種のディスとピアを表現しているのだけれど,そのディスとピアというのはいまだに夫婦別姓制度や同性婚制度に踏み切れない日本そのものに重なる。

巻末の水上文の解説から引用すると,その背景にあるのはこんなものである。
たとえば政治的意思決定の場,社会的に地位の高い職業の多くを占めるのは男性である。性暴力の被害者の大多数を占めるのは女性である。直接的な暴力がなくとも,社会に蔓延る性的対象化はその中で育つ人々の安全を損ない,尊厳を損ない,人生を狭め,また加害を正当化する。賃金格差と貧困,もちろん生殖を巡る問題もある。生殖は国家による管理の対象であり,2023年現在の日本では,明治時代につくられた刑法堕胎罪がいまだに存在し,人工中絶の配偶者同意要件は今も撤廃されないままである。



図:小野美由紀ピュアの書影(早川書房から引用)


2024年10月12日土曜日

解散詔書

10月9日の午後に衆議院が解散した。中継をみていたけど,なんだかグダグダしていた。

衆議院解散によって,その時点で直ちに衆議院議員は議員としての地位を失う。再び新たに選出された衆議院議員が地位を得るのは,衆議院議員選挙の投票が確定した時点らしい。たぶん。衆議院議員としての地位がなくなっても,現在の内閣はそのまま存在していて職を継続している。石破総理大臣も林官房長官も活動しているのがテレビや新聞の報道でわかる。

今回の衆議院解散がグダグダだったのは,額賀議長が詔書の朗読途中で少し言いよどんで間ができてしまい,万歳のタイミングもずれてしまって(理由はそれだけではないだろうが)閑散としたものだったからだ。

衆議院解散が可能であるのは,憲法第69条「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」により内閣不信任案に連動するものと,今回のようにそれ以外で総理大臣が解散権を行使する場合になる。後者をいわゆる第7条解散とよんでいる。

ただし,憲法第7条は,天皇の国事行為を定めたものである。その中に「三,衆議院を解散すること」とあるのが根拠とされるとよくいわれるが,学説はもう少し複雑な論理構成でこれを正当化している。いずれの場合も手続き的には憲法7条の国事行為の形式に則るため,天皇の御名御璽のある解散詔書には,いずれの場合にしても「日本国憲法憲法七条により,衆議院を解散する」となっている。これを理解していない国会議員が多いので,えーっということになって,議長が困ったりするわけだ。

解散詔書朗読時の具体的な手順や表現などについては,資料[1]が詳しい。


写真:1983年の衆議院解散詔書の例(Colorless Green Historiesから引用)

[1]衆議院解散時の詔書朗読と万歳のタイミング(Colorless Green Histories)

2024年10月11日金曜日

ザップ・エナジー

核融合スタートアップからの続き

10月7日の日経朝刊1面の片隅に「みずほFGが核融合発電米新興に出資」というタイトルの記事があった。2017年にシアトルで創業したザップ・エナジーという会社だ。ワシントン大学とローレンス・リバモア研究所からのスピンアウトであり,マイクロソフトなど合計62億ドルを集めているので,資金調達額では世界トップ10に入る(みずほは数億円程度か)。

核融合スタートアップでトカマクやレーザー以外だと,FRC(Field Reversed Configuration)が目についていたけれども,ザップ・エナジーは,Sheared Flow Stabilized Z-Pinch を用いるものだ。Zピンチは,「プラズマを流れる電流が周囲に磁場を形成して自己収縮して自発的に高温高密度状態を作り出す物理現象だ(Wikipediaから引用)。」サンディア国立研究所のZマシンはこの原理を使っているけれど,ザップ・エナジーのマシンコンセプトはより簡素だ。聞いたことがなかったのでPerplexityに尋ねてみた。
Q(koshix):
ZAP Energy が実現を目指している核融合システムの原理とその特徴や他の方式との違いなどを技術的な詳細に渡って日本語で解説してください。

A(Perplexity Pro):
ZAP Energyが開発している核融合システムは、「せん断流安定化(SFS)Zピンチ」と呼ばれる独自の方式を採用しており、以下のような特徴と技術的詳細を持っています。

基本原理
ZAP Energyのシステムは「Zピンチ」と呼ばれる方式を基礎としています。この方法では、プラズマに大電流を流すことで自己生成される磁場を利用してプラズマを圧縮し、核融合反応に必要な高温高密度状態を作り出します。

主な特徴
1.コンパクト設計
ZAP Energyの核融合炉は非常にコンパクトで、「ガレージに置ける」ほどの小ささを実現しています。商用規模の反応炉と溶融金属ジャケットの直径はわずか10フィートほどです。
2.シンプルな構造
超伝導磁石や高出力レーザーを必要としないため、他の核融合方式と比べて構造がシンプルです。
3.低コスト
構造のシンプル化により、開発・運用コストの低減が期待されています。
4.スケーラビリティ
小型でモジュラーな設計により、需要に応じて複数の反応炉を配置することが可能です。

技術的詳細
1.せん断流安定化(SFS)
従来のZピンチ方式では、プラズマの不安定性が大きな課題でした。ZAP Energyは「せん断流安定化」という技術を用いてこの問題を解決しています。
2.電流とプラズマの関係
Zピンチに使用される電流が大きいほど、プラズマはより高温高密度になります。ZAP Energyは、より大電流に到達することを目指しています。
3.FuZE-Q実験装置
現在、ZAP Energyは「FuZE-Q」と呼ばれる次世代プラットフォームを運用しています。この装置は約650kAで臨界条件(Q=1)に達する見込みです。
4.反応プロセス
プラズマ内の重水素と三重水素同位体が融合すると、中性子と熱が放出されます。このエネルギーは反応室を囲む溶融金属に吸収され、その後電力生成に利用されます。
5.パルス運転
ZAP Energyのシステムは、内燃機関のシリンダーのように繰り返し発火する方式を採用しています。

他の方式との違い
1.磁場閉じ込め方式との違い
トカマクなどの磁場閉じ込め方式が大型の超伝導磁石を必要とするのに対し、ZAP Energyのシステムはプラズマ自体が生成する磁場を利用します。
2.慣性閉じ込め方式との違い
レーザー核融合などの慣性閉じ込め方式が高出力レーザーを必要とするのに対し、ZAP Energyのシステムはそれらを必要としません。
3.サイズと複雑さ
他の方式が大規模で複雑な装置を必要とするのに対し、ZAP Energyのシステムは比較的小型でシンプルです。

ZAP Energyの核融合システムは、その独自の技術によってコンパクトで低コストな核融合炉の実現を目指しており、将来的には持続可能なエネルギー源として期待されています。



図:ザップ・エナジーの核融合炉のイメージ(日本経済新聞社から引用)

2024年10月10日木曜日

タンパク質設計・構造予測


かれこれ4年前にGoogleの英国子会社 DeepMindAlphaFold2が話題になっていた。そのテーマで今年のノーベル化学賞を受賞者が決まった。深層学習(AI)を用いたタンパク質設計や構造予測である。昨日のノーベル物理学賞(人工ニューラルネットワークの基礎理論)といい,なにやら景色ががらっと変わってみえた。物理学者や化学者が受賞しないのだから。今年だけかもしれないけれど。そのうち意識を持ったAGIASIがノーベル賞の受賞者になるのか。あるいは,将棋のようにAGIやASIにはかなわない人間だけの競技になってしまうのか。

Q(koshix):
2024年のノーベル化学賞を受賞した,David Bakerと,{Demis Hassabis,John M. Jumper}の2組3名の業績とその受賞理由について,周辺知識や2組の関係性も含めて,できるだけ分かりやすく解説してください。
 なお,付録として,2024年のノーベル物理学賞とノーベル化学賞の両方のテーマに共通する意義を議論してください。

A(Perplexity Pro):

2024年のノーベル化学賞は、タンパク質科学の革新的な進歩に貢献した3名の研究者に授与されました。

David Baker の業績
David Baker(ワシントン大学シアトル校教授)は、計算機によるタンパク質設計の先駆的研究で賞の半分を受賞しました。
・2003年に新しいタンパク質の設計に成功
・その後、様々な革新的なタンパク質を創造
・応用分野:医薬品、ワクチン、ナノ材料、微小センサーなど
Baker の業績は、特定の機能を持つ全く新しいタンパク質を設計・構築する能力を科学者に与えました3。これは、薬剤開発、ワクチン設計、合成生物学などの分野に大きな影響を与える可能性があります。

Demis Hassabis と John M. Jumper の業績
Demis Hassabis と John M. Jumper(共にGoogle DeepMind所属)は、タンパク質構造予測の革新的な進歩により、賞の残り半分を共同受賞しました12。
・AlphaFold2という人工知能モデルを開発
・アミノ酸配列からタンパク質構造を高精度に予測可能
・既知の約2億種類のタンパク質構造をほぼ全て予測
彼らの開発したAIモデルは、50年来の科学的課題を解決し、190カ国以上の200万人以上の研究者に利用されています34。これにより、タンパク質の生物学的役割や応用可能性の理解が大きく進展しました。

両者の関係性と意義
Baker のタンパク質設計技術と、Hassabis・Jumper のタンパク質構造予測技術は、相補的な関係にあります。前者は新しいタンパク質を創造し、後者はその構造を予測することで、タンパク質科学の可能性を大きく広げました1。
これらの発見は、理論科学を超えて、がんや遺伝性疾患を含む様々な病気の新しい治療法の開発につながる可能性があります1。

付録:2024年のノーベル物理学賞と化学賞の共通点
2024年のノーベル物理学賞は機械学習と人工ニューラルネットワークの基礎的発見に対して授与されました6。化学賞と物理学賞には、人工知能(AI)技術の科学研究への応用という共通点があります。

1.AIの科学への応用:物理学賞はAIの基礎技術に関するものですが、化学賞ではその応用例(タンパク質構造予測)が評価されています。
2.複雑な問題の解決:両分野とも、従来の方法では解決が困難だった複雑な問題にAIを活用しています。
3.学際的アプローチ:物理学、化学、情報科学の境界を越えた研究が評価されており、科学の学際的な発展を示しています。
4.実用的な影響:両分野の研究は、理論的な価値だけでなく、実際の応用(新薬開発、材料科学など)に大きな影響を与える可能性があります。

これらの共通点は、AIが現代科学の様々な分野で重要な役割を果たしていることを示しており、今後の科学研究の方向性を示唆しています。



図:ノーベル化学賞2024の解説から生成した絵画風イメージ(DALL-E3による)

2024年10月9日水曜日

ニューラルネットワーク

今年のノーベル物理学賞は,今日のAIブームの基盤となる人工ニューラルネットワークの基礎理論に与えられた。中継を見ていると,最初に委員長からスウェーデン語と英語の両方で発表があって,簡単な業績紹介。その後,ヒントン(バックプロパゲーション!)とのライブでのやりとりや質疑応答などがあった。

ホップフィールドは物理学者だし,ホップフィールドネットワークはイジングモデルとも関係づけられているので,物理らしい。一方,ヒントンは心理学者として出発したコンピュータ科学者なので,これは物理か?というところだ。今のところ物理屋さんたちもほとんど両手で賛成しているようだ。情報が宇宙や物性や素粒子と並ぶ物理学の一分野であるという共通認識が確立する第一歩ということか。

Q(koshix):
ホップフィールドネットワークとボルツマンマシンについて,ニューラルネットワーク全体の中でそれぞれがどのように位置づけられて,その後の発展にどういう影響を与えたかを,なるべく分かりやすく具体的に説明してください

A(Perplexity Pro):
ホップフィールドネットワークとボルツマンマシンは、ニューラルネットワークの発展において重要な役割を果たした2つのモデルです。それぞれの位置づけと影響について説明します。

ホップフィールドネットワーク
ホップフィールドネットワークは、1982年にジョン・ホップフィールド(1933-)によって提案された再帰型ニューラルネットワークの一種です。
特徴と位置づけ
・単一層のニューロンで構成され、各ニューロンが他のすべてのニューロンと双方向に結合しています。
・連想記憶として機能し、不完全または雑音のある入力からパターンを復元できます。
・エネルギー関数の最小化によってパターンを想起します。

影響と発展
1.記憶容量の向上:研究者たちは、ホップフィールドネットワークの記憶容量を向上させる方法を探求しました。例えば、ニューロン間の複雑な接続を導入することで、従来のモデルの2倍以上の記憶容量を実現しました。
2.最適化問題への応用:ホップフィールドネットワークは、組み合わせ最適化問題の解決にも応用されました。
3.深層学習への影響:現代の言語モデル(ChatGPTなど)の基盤となるTransformerネットワークは、ホップフィールドネットワークと類似した構造を持っています。
4.脳機能のモデル化:記憶や認知プロセスの研究に応用され、神経科学の発展に寄与しました。

ボルツマンマシン
ボルツマンマシンは、1985年にジェフリー・ヒントン(1947-)らによって提案された確率的ニューラルネットワークモデルです。

特徴と位置づけ
・対称的に結合されたニューロン様ユニットで構成され、確率的に on/off を決定します。
・二値データセットから興味深い特徴を発見する能力を持ちます。
・学習アルゴリズムは単純ですが、多層構造では非常に遅くなる傾向があります。

影響と発展
1.制限ボルツマンマシン (RBM):ボルツマンマシンを簡略化した RBM は、深層信念ネットワーク (DBN) の基本構成要素となりました。
2.深層学習の前駆:RBM は、深層ニューラルネットワークの事前学習に使用され、深層学習ブームの先駆けとなりました。
3.生成モデルへの貢献:ボルツマンマシンの考え方は、変分オートエンコーダ (VAE) や生成敵対的ネットワーク (GAN) などの現代の生成モデルの発展に影響を与えました。
4.確率的モデリング:機械学習における確率的アプローチの重要性を示し、後の研究に影響を与えました。
5.教師あり学習への応用:教師あり RBM は、分類タスクのための興味深い分布設定を提供しました。

これらのモデルは、ニューラルネットワークの理論的基礎を築き、現代の深層学習技術の発展に大きく貢献しました。ホップフィールドネットワークは主に連想記憶と最適化問題に、ボルツマンマシンは特徴学習と生成モデリングに影響を与え、両者ともに現代のAI技術の礎となっています。



図:これがAIの持つニューラルネットのイメージなのか(DALL-E3より)

[1]Hopfield Network(Scholarpedia)
[2]Boltzmann Machine (Scholarpedia)

2024年10月8日火曜日

AIとSF(2)


AIとSF(1)からの続き

1年4ヶ月ほどかかって,ようやくハヤカワ文庫JA 1551の「AIとSF」を読了した。頭も眼も霞む中,トリッキーなストーリのSF短編を読解するのは,なかなかに骨の折れる技である。この間,生成AIもかなり進歩しているが,この本の内容が時代遅れになっているほどではない。

最近は,テレビドラマをみても短編小説をよんでも,片っ端から記憶領域の外側に溢れ出てしまうので,印象に残ることが無くて困る。いや,困らないかもしれない。何度でも読み返せるのだから。前回の感想は,一編目の大阪・関西万博を扱った「準備がいつまで経っても終らない件」を読んだところまでだった。万博の方はそれらしく形が整ってきたので,始まってしまえば,マスコミの格好のオモチャになるだろう。行かないけど。

目次を見直しても,何が書いてあったかはあまりはっきりしない。津久井五月のナノマシンが東京の一部を汚染する様子とか,野崎まどの智慧錬糸がAI画像つきで笑えたとか,野尻抱介のサイドストーリーの核融合実現のインパクトは納得できるとか,麦原遼の感情を認識するAIの描写がよさげだとか,面白かった部分も。

それにしても,AIが自律的にネットワークにアクセスしてSNSに投稿するようになると,大変ややこしいことが起きるのは間違いない。ただでさえフェイクニュースが蔓延して困っている。そこに持ってきて,フェイクか否か,人間か否か,様々な意図に操られているか否か,がはっきり区別できない大量のテキストとイメージが満ちている情報空間というのはいったい・・・。

P. S. やっぱり円城塔は何度読んでもよくわからない。自分の読解力不足かなぁ。でもブッダ・コード 機械仏教史縁起 はちょっとトライして見たい。



図:AIとSF(ハヤカワ文庫JAから引用)

2024年10月7日月曜日

今昔マップ

尾久土正巳さんが,今昔マップに大仏鉄道が載っているとフェイスブックに。早速試してみると,大仏鉄道天理軽便鉄道もすぐに見つかった。金沢市の古い地図(1909-1910)には金沢市立工業がまだないころその先に金沢牛乳會社というのがあった。



図1:今昔マップon the web (谷謙二さんから引用)


今昔マップon the web というのは,埼玉大学教育学部の谷謙二さん(2000-2022)が開発したもので,過去の地図と現在の地図を並べて表示しながら,移動拡大などができる優れものだ。収録されている旧い地図には地域によって様々な年代のものがあり,全部で4847枚になる。

残念ながら,谷さんは若くして白血病で逝去されてしまったが,今昔マップは現在も使えている。2013年の9月15日に公開が開始され,頻繁にメンテナンスや改訂がされていたが,2022年4月21日の更新が最後になってしまった。奈良県は京阪神圏の中に含まれている。


図2:天理軽便鉄道と大仏鉄道(今昔マップから引用)

2024年10月6日日曜日

生成AIの未来

ChatGPT-with canvas という機能が発表され,Plusユーザにも開放されている。生成する文書あるいはプログラムをそのまま編集してさらに加工することができるモードである。例えば,Add emojis,Add final polish,Reading level,Adjust the length,Suggest edit などが使える。以下は,「Q(koshix):2030年までに,生成AIがどのように進化するかを 現時点での技術的な到達点や今後の進展の可能性を 分析検討した結果をもとに,年代記の形式で予測した 結果をブログの形でまとめてください。」という問いへの回答を,いくつかの機能により加工したものである。

 

生成AIの未来(2024-2030)

生成AIはここ数年で急速に進化を遂げており、今後も技術的進展によって人間社会に大きな影響を与えると予見される。本稿では、2024年から2030年までの生成AIの進化を年代記形式で分析し、その技術的可能性と社会的影響を検討する。

1.2024年:多機能化とユーザーインターフェースの進化

2024年において、生成AIは既に高度な対話能力を有し、多様な用途に適応可能なレベルに到達している。この年には、生成AIが音声認識およびコンピュータビジョンの分野でさらに精度を向上させ、AppleやGoogleなどの主要テクノロジー企業が新たなAIインターフェースを発表した。これにより、生成AIがスマートフォンやスマートデバイスとシームレスに連携し、ユーザーの指示に応じて高度なタスクを実行できるようになっている。

生成AIの多機能化も進み、コンテンツ生成にとどまらず、ビジネス文書の自動作成やマーケティング資料、クリエイティブコンテンツの生成まで対応している。自然言語によるインターフェースでAIを利用することが容易になり、一般家庭から企業まで広く利用されている。さらに、生成AIの活用が広がることでユーザーエクスペリエンスの質が向上し、複雑なタスクの効率的な自動化が実現し、ビジネスの成長と効率化にも寄与している。

2.2025年:パーソナライゼーションの深化

2025年には、生成AIのパーソナライゼーション技術が大幅に向上し、ユーザーの好みやニーズに応じた応答の精度が飛躍的に向上する。AIは利用履歴や個人の嗜好を解析し、個別化された情報提供を実現している。特に教育やエンターテインメント分野で重要な役割を果たし、教育分野では個々の学習者に最適化された教材を提供し、学習体験を充実させている

また、AIモデルの軽量化が進み、エッジデバイス上で動作可能になったため、プライバシー保護とパフォーマンス効率の両立が実現している。これにより、個人データをデバイス内で処理しながら、精度の高い応答が可能となっている。エンターテインメント分野でも、ユーザーの好みに基づいたコンテンツ提案やリアルタイムのインタラクティブ体験が強化され、個別化されたエンターテインメントが普及している。

3.2026年:コラボレーションAIの登場

2026年には、人間とAIが協働して創造的な作業を行う「コラボレーションAI」の概念が広く普及する。AIはユーザーのアイデアを補完し、プロジェクトや作品の創造プロセスで重要な役割を果たす存在となっている。例えば、音楽制作や映画脚本の作成において、AIが人間のアイデアを拡張し、新たな作品を共に生み出している。

さらに、自然言語処理技術の進化により、AIは人間の意図をより深く理解し、複雑なタスクの遂行を効果的に支援するようになっている。これにより、人間とAIの関係はより緊密になり、創造のパートナーとしてのAIの位置づけが強化されている。ビジネスでもAIとの協働が進み、プロジェクト管理や意思決定の迅速化が実現している。AIが提供するデータ分析と人間の直感的判断の組み合わせにより、より高精度な結果を生み出している。

4.2027年:多言語モデルと文化の橋渡し

2027年には、生成AIの多言語対応能力がさらに強化され、言語の壁を越えたコミュニケーションが容易になる。特に少数言語のサポートが進み、文化や歴史に基づく適切な翻訳や対話が可能となり、世界中の人々が文化を超えてつながる手段として生成AIが活用されるようになる。また、AIは言語間のニュアンスや文化的コンテキストを理解し、正確で共感的なコミュニケーションを実現し、国際ビジネスや外交の分野でも重要な役割を果たしている。

さらに、生成AIは文学、歴史、哲学などの領域における深い知識を持ち、ユーザーが特定の文化や時代について学ぶ際の指導役を果たす。多言語モデルの進化により、異文化間の相互理解が促進され、新たな国際交流の基盤としてのAIの役割が強調される。異文化交流イベントでも、AIがリアルタイムで翻訳や文化の解説を行い、人々が深く相互理解を深める手助けをしている。

5.2028年:感情認識と共感的AI

2028年には、AIが人間の感情を正確に認識し、それに応じて共感的な応答を行う能力が大幅に向上する。感情認識技術の進化により、AIはユーザーの心理状態を解析し、それに基づいた適切なサポートを提供することで、メンタルヘルスやカウンセリングの分野で広く活用されている。感情認識AIは、ユーザーが困難な状況に直面した際に適切なアドバイスや支援を提供し、個別対応の質を向上させている。

特に、孤独を感じる高齢者や精神的支援が必要な人々に対して、AIが寄り添う存在として機能し、ユーザーの生活に深く関わるパートナーとしての役割を果たしている。さらに、感情に基づく応答が可能になることで、教育や職場でもより人間らしい関係を築く手助けをしている。教師や管理者がAIのサポートを通じて学生や従業員の心理状態を把握し、適切な対応を取ることで、全体的な学習環境や職場環境の改善が期待される。

6.2029年:創造性のさらなる解放

2029年には、生成AIが人間の創造性をさらに引き出す高度なツールとして進化する。AIは単なるコンテンツ生成者にとどまらず、人間が想像し得ない新たなアイデアを提案する「インスピレーションの源」として機能する。AIは様々なデータソースからインスピレーションを抽出し、アートや音楽、建築などの分野で斬新なコンセプトやスタイルを提供する能力を持つ。

例えば、アート、デザイン、建築の分野でAIが新しいスタイルやコンセプトを提案し、それを人間が取り入れることで新たな創造が可能になる。この年には、生成AIを用いた協働が一般化し、人間の創造力がAIとの相互作用により飛躍的に高まっている。さらに、生成AIは異なる分野の知識を融合させることで、既存の枠を超えた創造的発展を促進する。例えば、建築デザインにおいてAIが生物学や物理学の知見を取り入れることで、自然と調和し、機能的で持続可能な建築物の設計が可能になるなど、創造の幅が広がっている。

7.2030年:全方位的な社会統合

2030年には、生成AIは社会のあらゆる側面に統合され、日常生活において当たり前の存在となる。教育、医療、ビジネス、エンターテインメントなど多様な分野で、AIが不可欠な存在として人間の生活の質を向上させるために活用されている。教育では、AIが個別学習プランを提供し、学習者一人ひとりに最適な指導が可能となり、医療分野では、診断支援や患者のケアにおいて重要な役割を果たしている。

この年にはAI倫理に関する議論も深化し、社会全体でAIとの共存に向けたガイドラインとルールの策定が進んでいる。AIは単なる便利なツールではなく、人間社会の一員として責任を持ち、倫理的に正しい判断を支援する存在として受け入れられている。また、AIが社会に統合される中で、デジタルデバイドの問題やAIの利用における公平性と透明性の確保が重要視され、これに対する政策や技術的対応が進められている。さらに、AIは災害時の支援や環境保護活動にも応用され、社会全体の持続可能性を高めるための不可欠な要素として機能している。

おわりに

2030年までの生成AIの進化は、人間社会に大きな影響を与え、私たちの可能性を広げるものである。この技術は単にタスクを自動化するだけでなく、私たちの創造性を引き出し、社会をより良い方向に導く力を持っている。未来において、生成AIと人間がどのように共存し、共に成長していくか、その可能性は無限であり、技術と社会が一体となって築かれる新たな地平が広がっている。そして、このプロセスを通じて、人類はAIと共に未知の挑戦に立ち向かい、新たな可能性を追求するだろう。社会の課題に対してもAIは不可欠なパートナーとして機能し、持続可能で包括的な成長を実現するためにその力を発揮することが期待される。


図:生成AIの未来(DALL-E3による上記テキストのイメージ)

2024年10月5日土曜日

デジタルとかDXとか

10月4日14:00 から始まった首相所信表明演説のNHK中継でも,石破さんはあたりまえのように「デジタル」という言葉を単独で,情報通信技術の社会的な応用の文脈で使っていた。

高等学校の「情報」の教科書を初めて作成したころは,「デジタル」ではなくて,違和感がありつつもJISに準拠して「ディジタル」とすることになっていたのだけれど,今はどうなのだろう。

平成10年(1998),平成20年(2008)の高等学校学習指導要領「情報」には,ディジタルが使われていたが,平成29年(2017)の指導要領には,そもそもその言葉が存在しない。しかしながら,これに対応する高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説情報編では,デジタルが9箇所登場していた。JISのほうは変わっていないと思うぞ。

生成AI各氏になぜ,ITからディジタルに変わったのかをきいてみた。それらしい説明はあったけれども,いまいち適確なものではなかった。Google Trandで調べてみると,日本ではデジタルとインターネットがほぼ相関しているが,最近は微増程度で,AIのような増加傾向にはない。米国では,computer と internet がほぼ相関していて,digital はこれらよりマイナーだ。ここでもAIは最近顕著に立ち上がっている。


たぶん,ヒントになるのは,総務省の令和3年版情報通信白書の序章(我が国におけるデジタル化の歩み)だ。2000年のIT基本戦略からはじまり,e-Japan戦略,e-Japan基本計画,e-Japan戦略Ⅱ(2003)と続いた。ここでもIT利活用という言葉が使われている。そこからさらに,IT新改革戦略,IT政策ロードマップと続く。官僚は微妙に看板を書き換えることが自分たちの業績に繋がる仕事だと本気で思っているようだ。まあそんなものだ。

こうして,2009年のリーマンショックの頃に策定されたのが,i-Japan 戦略2015であり,ここで,大々的にデジタルの言葉が踊ることになる。デジタル新時代に向けた新たな戦略 ~三か年緊急プラン~ であり,~国民主役の「デジタル安心・活力社会」の実現を目指して~ というわけだ。

2016年に,官民データ活用推進基本法が制定され,2017年の世界最先端 IT 国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画では,データ利活用社会という言葉により「データ」が全面に出て,「デジタル」が一度ひっこめられる。これはこれでなかなか実質をともなった話ではあった。しかし,再びただちに,デジタル・ガバメント推進方針やデジタル・ガバメント実行計画と改名されていく。

そして,世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画からデジタル庁へと繋がっていく。国がデジタルというキーワードで旗を振るので,産業界も学界もマスコミすべて右へ倣えでないとお金が回らないわけだ。いつの間にか,すべての看板はちょっと気持ちの悪いDXに付け替えられてしまったのであった。あほらし。


P. S. 2004年に,デジタル・トランスフォーメーションという言葉を発案したのは,スウェーデンのウメオ大学にいた,エリック・ストルターマンだ。2022年により詳細な再定義をしたようだ。

[1]デジタルとディジタル(Umegaki Masahiro)


2024年10月4日金曜日

健康余命

平均寿命というのは0歳における平均余命であり,例えば70歳における平均余命に70を足せば,その時点での平均寿命より長くなる。日本人男性71歳の場合は,71+平均余命15年で,平均86歳くらいで死にそうだ(現在の男性の平均寿命は81歳)。まあ,平均をいくら議論しても余り意味はないのだけれど。

同じように,健康寿命(日常的・継続的な医療・介護に依存しないで、自分の心身で生命維持し、自立した生活ができる生存期間)についても,健康余命というのを考えることができるはずだ。検索してみると,ニッセイ基礎研究所が2019年のデータを元にとりまとめていた。

これによれば,日本人男性71歳の場合は,71+健康余命10年で,平均81歳程度まで健康ということになる。その場合不健康期間は5年間というわけだ。そうなればまだよいが,世の中そんなに甘くはないと思われる。なお,日本人女性67歳の場合は,平均余命が23年(90歳),健康余命が15年(82歳),不健康期間が8年間だ。なお,現在の男性の平均寿命は86歳。

さらに考えると,医療技術の発展で身体は大丈夫だけれど,認知症になってしまうケースも増えてくるかもしれない。その場合,精神寿命や精神余命の概念が必要になってくるかもしれない。まあ,認知症で自律した生活ができなければ,上の健康寿命の方に包括されてしまうのかもしれない。

そういえば,大石君が,去年の同窓会で幸福寿命という話をしていたような気もするけど,あれはどんな定義だったのだろうか。

2024年10月3日木曜日

首相指名投票

10月1日の13:30頃から,衆議院引き続き参議院の本会議場で,内閣総理大臣指名選挙が行われ,NHKが中継していた。こんなにまじまじと中継画面を見ていたのは初めてかもしれない。

NHKのカメラは開票作業の様子をクローズアップで映し出していた。投票用紙というのは普通の国会議員選挙のようなものかと思っていたらそうではなかった。厚さ5mmくらいのしっかりした投票札(厚紙?板?)だ。記名投票なので,候補者名と自署名欄があるものだ。開票中の札が名前を並べて映っていたけどいいのか。

投票の作法なども,衆議院と参議院で異なっている。衆議院では,議長席に向かって左から右へ時計回りに呼び出された議員が進み,自分で投票箱に投票札を入れる。投票結果は,衆議院議長に促された事務総長が報告する。一方参議院では,議長席に向かって右から左へ反時計回りに議員が進み,投票箱の前の参事に投票札を渡して,これを別の参事が投票箱に入れる。結果は,参議院議長が自分で読み上げていた。なお,参議院の投票札は自署名欄が押印済だとのこと。

このあたりのことを,生成AIにきいて見たところ,ChatGPT-4oは無記名投票であるとか微妙に間違った答えを返してきた。Gemini 1.5Proは回答それ自体を拒否した。「現時点では選挙または政治家に関する回答には対応できません」。Claude 3.4 Sonnet は,ほぼ正しいものの参議院の投票プロセスは間違っていた。Perplexity Pro は,一番求めていた具体的手順に近い情報を与えてくれた。PlaMoは,国産のはずだけれど,ChatGPT-4oよりも間違った答えだった。どうなのよ。

衆議院での開票結果発表で石破茂に決まった後も,従来の通例のように盛大な拍手やヨシという声があがらず,拍手もまばらでどこかしら醒めた変な雰囲気だったようだ。また,この臨時国会の日程が10月9日までとなって,解散後の衆議院選挙の予定日が10月27日に強制されてしまったことなど,どうやら石破茂政権の前途は多難らしい。

れいわ新撰組の大石晃子が,投票箱の前で,プラカードを広げて中継画面に映り,額賀議長から再三警告された後に女性衛視2名に抱えられて強制降壇されていた。プラカードの内容は,「裏金隠しの解散やめろ」と「能登の補正予算を」というものだった。



図:首相指名選挙結果(西日本新聞から引用)

2024年10月2日水曜日

シュレーディンガーの少女:松崎有理

山手線が転生して加速器になりました。:松崎有理からの続き

先月発表された,文化庁による令和5年度「国語に関する世論調査」の結果は,読書離れの加速というニュースになってメディアを駆け回った。月に1冊も本を読まない人が6割を越えた,読書量が以前より減っているも7割だ,わぉう,というものだ。

この場合,電子書籍は読書した方にカウントされている。自分も正にその6割と7割に該当しているのであった。読書量が減っている理由は,1位:情報機器で時間がとられる(そのとおり),2位:仕事や勉強が忙しくて読む暇がない(これはあてはまらない),3位:視力などの健康上の理由(まあまあ,筋力かもしれない),4位:テレビの方が魅力的である(これも少しあてはまる)。

ただ,1位を選んでいるのはほとんど若者であって,70歳以上では,健康上の理由が1位でテレビの方が魅力的であるが2位なのだ。このあたりは自分と少し違うかもしれないが,確かにYouTubeやBlogと録画した韓国ドラマや映画で閑居老人の暇な時間が完全に溶けてしまう。

しかしながら,まだまだ読みたい本は沢山あって,かといって内容的にあるいは物理的に重い本を読み通すのは難しいので,軽い電子書籍からリハビリを始めることにした。

松崎有理の創元SF文庫の短編集,シュレーディンガーの少女は,6編のうちの2編(六十五歳デス,ペンローズの乙女)が無料でネット上に公開されていたので,ついでにKindle版を購入してしまった。

相変わらず,食へのこだわり(太っていたらだめですか?,秋刀魚,苦いかしょっぱいか)がみられたり,著者の出身の水戸第一高校のモデルが登場していたり(異世界数学),理系蘊蓄が適当に含まれている軽い読み物としては適当かもしれない。

シュレーディンガーの少女はいまひとつぴんとこなかったが,ペンローズの乙女の冒頭部分に,エミル・コノピンスキーの名前が出てきて,あれれと思って調べて見たら,昔,研究室の書棚にあったかもしれない The Theory of Beta Radioactivity の著者のEmil Konopinski だった。テラーと一緒に初期の水爆開発における検討をしていたのか。


図:読書離れの理由(上から16-19,20代,30代,40代,50代,60代,70- 文化庁から引用)

2024年10月1日火曜日

無知の知

Facebookで北海道の奥村先生が,ソクラテスの「無知の知」は「不知の自覚」とするべきだという東京大学の納富信留さんの説が腑に落ちたと語っていた。納富さんの参加により,東京書籍の高校倫理の教科書では「無知の知」が「不知の自覚」に改められた

どういうこと?そもそも,高等学校の倫理でソクラテスを学び,宿題としてプラトンの「ソクラテスの弁明」を読んだ感想文を出すというときに,どうにも自分の中では納得できない状態だった。「無知の知」はなんとなくいやらしいけれど認めるとして,「悪法も又法なり」といって毒杯を仰いで死刑になったのは理解できなかった。50年以上経ってもわからないままだったりする。

そんなわけで,こういう問題はAIに尋ねるに限る(そんなわけないやろ)。ChatGPT-4o, Gemini 1.5 Pro,Claude 3.5 Sonnetの3人に同じ質問で聞いてみた。まあ,いずれも一長一短かなあ。わかったようなわからないような。いずれにせよ,納富先生の考えとは違うわけで・・・。
Q(koshix):
無知の知と不知の自覚はどう違いますか。

A(ChatGPT-4o):
「無知の知」と「不知の自覚」は、どちらも自分の知識の限界を認識する概念ですが、哲学的な文脈やニュアンスに違いがあります。

1.無知の知(Socratic Ignorance)
これは、ソクラテスが提唱した概念で、自分が「何も知らない」ことを知っているという意味です。具体的には、人が自分の無知を認識し、謙虚に学び続ける態度を持つことが重要であるという哲学的な姿勢です。ソクラテスは、知っていると思い込んでいる人々が実際には何も知らないことを示し、自分自身も知識の限界を認識しているがゆえに、むしろ賢明であると考えました。無知の知は、自己反省と批判的思考を通じて、さらに深い理解を追求するための出発点とされます。

2.不知の自覚
一方、「不知の自覚」は、もっと一般的に自分が知らないことを意識することです。これは哲学的な議論の場に限らず、日常的な文脈でも使われることがあり、自分がある分野や問題について十分な知識を持っていないことを自覚する行為です。この場合、特にソクラテス的な知的探求の姿勢が伴う必要はなく、単に自分がその問題について知らないことを理解している状態を指します。

3.主な違い
無知の知は、自分の無知を認識しながらも、それがさらなる知識の追求に向けた積極的な姿勢を生む点で特徴的です。つまり、無知であることを知ることで、より賢明であるとされます。
不知の自覚は、単に自分が知らないことを理解する行為であり、必ずしも知識探求への動機づけや哲学的な反省を含むものではありません。
まとめると、「無知の知」は、自己の無知を認識することで知的探求を続ける哲学的な態度を示し、「不知の自覚」は、ある事柄について知らないことを単に認識するという点で、より日常的な概念です。


A(Gemini 1.5Pro):
「無知の知」と「不知の自覚」は、どちらもソクラテスの哲学に関連する言葉であり、一見似ているように思えますが、微妙なニュアンスの違いがあります。

無知の知
意味:自分が知らないことを知っている、つまり、自分の無知を自覚している状態。
解釈
・何かを知らないことを自覚することで、より深く学び、成長しようとする姿勢を表します。
・古代ギリシャでは、神託によってソクラテスが「最も賢いのは、自分の無知を自覚している者である」と告げられたことから、この言葉が有名になりました。
・ただし、現代では「無知の知」という言葉が、自分の無知を過度に意識し、自己肯定感を下げてしまうようなネガティブな意味で使われることもあります。

不知の自覚
意味:自分が知らないことを自覚している、つまり、無知であることを認識している状態。
解釈
・「無知の知」とほぼ同じ意味ですが、「不知の自覚」の方がより客観的で、自分の無知を率直に認めるニュアンスが強いです。
・ソクラテスの哲学においては、この「不知の自覚」が、真の知への第一歩であるとされています。
・他者の意見に耳を傾け、対話を通して新たな知識を吸収していく姿勢を表します。

違い
ニュアンス:「無知の知」は、自分の無知を自覚することで生まれる知的探求心や謙虚さを強調するのに対し、「不知の自覚」は、より客観的に自分の無知を認識し、そこから学びを深めていく姿勢を強調します。
現代における解釈:「無知の知」は、現代ではポジティブな意味だけでなく、ネガティブな意味でも使われることがある一方で、「不知の自覚」は、より客観的で中立的な意味で使われることが多いです。

まとめ
どちらも「自分が知らないことを知っている」という共通点がありますが、「無知の知」は、より主観的で、自分の無知を自覚することによる知的探求心や謙虚さを強調するのに対し、「不知の自覚」は、より客観的で、自分の無知を率直に認め、そこから学びを深めていく姿勢を強調します。

どちらを使うべきか
どちらの言葉を使うかは、状況や伝えたいニュアンスによって異なります。
・自分の無知を自覚することの重要性を強調したい場合:「無知の知」
・客観的に自分の無知を認め、そこから学びを深めていく姿勢を強調したい場合:「不知の自覚」

補足
・「無知の知」という言葉は、翻訳の問題もあり、正確には「不知の自覚」と訳されるべきだという意見もあります。
・どちらの言葉を使うにしても、重要なのは、自分の無知を恐れず、積極的に学び続けていく姿勢を持つことです。
ご自身の考えと照らし合わせ、より深く理解してみてください。


A(Claude 3.5 Sonnet):
「無知の知」と「不知の自覚」は、似ているようで微妙に異なる概念です。

1.無知の知
・古代ギリシャの哲学者ソクラテスに由来する概念です。
・自分が無知であることを知っている状態を指します。
・より深い知恵や真理の追求につながる哲学的な姿勢です。
・「自分が何も知らないことを知っている」という paradoxical な認識を含みます。

2.不知の自覚
・より一般的で日常的な概念です。
・自分が何かを知らないことに気づいている状態を指します。
・特定の知識や情報の欠如を認識することです。
・学習や成長の出発点となる自己認識です。

3.主な違い
範囲:「無知の知」はより包括的で、人間の知識の限界に関する認識を含みます。「不知の自覚」は特定の分野や事柄についての認識です。
哲学的深さ:「無知の知」はより哲学的で、人間の知識の本質に関わります。「不知の自覚」はより実践的で、日常的な学習や成長に関連します。
起源:「無知の知」は哲学的伝統に根ざしていますが、「不知の自覚」はより一般的な概念です。

両者とも、自己認識と学習への姿勢において重要な役割を果たします。
この説明についてさらに詳しく知りたい点がありますか?


図:無知の知と不知の自覚のイメージ(左 DALL-E3 右 Imagen3)

納富先生曰く
今日それは、私たちの頭脳の中に宿り、あるいは、注入されたり蓄積されたり消去されたりする事物のように扱われている「情報」という曖昧な概念が「知識」に等価と見なされ、人のあり方から切断されて扱われる傾向も生じている。知識は量の多寡で判断され、とりわけ個別の断片的命題の蓄積が知識と等値される。情報はデータとして蓄積される以上、知識の主体はもはや人ではなくコンピュータやICチップでも構わない。総じて、そういった情報を使いこなす術が「知」と思いなされている。[1]
そうか・・・これが正に自分の「知識」理解だった。さらにその後に続くのは,
ソクラテスが基本的に「知らない」とするのは、「善、美、正義」といった「大切な事柄」についてであり、「死、ハデス」についての不知の表明もそれに含まれる。他方で、日常の経験的事実認識はもとより、技術もそのまま認められ、知として尊重されている。「知」を問うことで問題となっているのは、生を成り立たせる根本概念であった。[1]
うーん,なかなか奥が深いので,自分の考えが足りないまま50年経過したということだけは確かなようだ。

[2]知の一様式としての知らない(池田光義)

2024年9月30日月曜日

ビゲロイ

NHK朝のニュースの特集で,高知大学海洋コア国際研究所客員講師で自宅研究者の萩野恭子さんが取上げられていた。

萩野さんは,ビゲロイという円石藻(えんせきそう)の一種を安定的に培養することに成功し,それによって今回のサイエンスの表紙を飾るような国際共同研究チームの成果を導くこができた。番組では世界で初めて窒素を固定する生物(ビゲロイ)を見つけたというストーリーだったので,ちょっと?となった。根粒バクテリアというのが窒素固定細菌の定番ではなかったのか。

そもそも生物の構成要素として不可欠である窒素だ。その地球上おける窒素循環には,様々な窒素固定細菌の存在が不可欠である。その一部が豆科の植物と共生している根粒菌だ。ところで生物界の分類でいうと,細菌古細菌(アーキア)と並んで真核生物(植物界,動物界,菌界原生生物界)と対比されるドメインを構成している。今回の主役のビゲロイは藻類であり,原生生物界=真核生物ドメインだ。これまでの窒素固定細菌は細菌ドメインなので,初めての真核生物における窒素固定機能の発見ということらしい。

ビゲロイの細胞中にある窒素固定細菌構造(UCYN-A)が,単なる共生なのか細胞小器官(オルガネラ)なのかが問題だったが,ビゲロイの細胞分裂において,核や葉緑体と同様に倍加して分裂することが確認された。



写真:ビゲロイの電子顕微鏡写真(萩野さんの円石藻ページから引用)


2024年9月29日日曜日

燃料デブリ取り出し

福島第一原子力発電所の2号機における燃料デブリ取り出しの件である。

8月22日に,取り出し装置による燃料デブリの取り出しに着手した。ところが,格納容器に押し込む円筒形容器の接続順を間違えて中断した。
9月10日に,再開して11日には取り出し装置が格納容器内に到達した。ところが,17日に装置先端のカメラの異常が発生したため再び中断に至る。

直感的には,数Gyの放射線を浴びるところに,CCDカメラを持ち込んだら機能しないのは当たり前じゃないのかと思ったのだが,話はそう簡単ではなかった。4台のカメラが装置の先端の前後にあって,そのうちの前の2台が故障している。用いられているのは耐放射線カメラであり,3万Gyまでは耐えられるようだ。ならば,放射線でやられたのではない。どうやら,故障前に装置を休止していたときに溜まった電荷が,再電源投入時にサージしたものらしい。

いずれにせよ,そんなところに複雑な電子機器を持ち込むのがまずいわけだから,内視鏡ファイバースコープを使って,先端部は光学部品だけ,撮像部は手元に置けば良いものをと考えて,生成AIに尋ねて見たところ,そんなものはないといわれてしまった。なお取り出し装置の長さは22mなので,この程度のオーダーのものが必要だ。
△現時点で、20-30mの長さの内視鏡ファイバースコープ技術が実用化されているという具体的な情報は見つかりませんでした。しかし、原子力分野や産業用途向けに、放射線耐性の高い特殊なファイバースコープ技術の開発が進められています。(PerplexityPro)
産業用内視鏡(ボアスコープやファイバースコープ)では、配管の検査や狭い空間の監視のために10メートル以上の長さを持つものもあります。例えば、建物や飛行機、船の構造内での点検を行うために使われるファイバースコープは、特殊な環境に適した長いケーブルを持つものもあります。しかし、20〜30メートルの長さを持つファイバースコープは非常に特殊で、一般的な市場には出回っていない可能性が高いです。(ChatGPT-4o)

普通にgoogleで調べたところ30mの産業用内視鏡は存在していた。これだから生成AIはあてにならない。ただ, 先端がどうなっているのかは,ちょっとよくわからない。耐放射線もどうなのか。まあこのくらいのものならばすぐに開発できそうなものではある。

高々数グラムの燃料デブリ取り出しをそのまま外挿して880トンの燃料デブリが片づくとはとても思えない。しかし,石棺化するにしても燃料デブリの詳細を分析して理解することは必須なので,このプロセスは避けては通れないはずだ。東電が本気で取り組んでおらず,適当に外注しているのでこんなグダグダしたことになってしまうのだろうか。

図:テレスコ式取り出し装置のイメージ(燃料デブリポータルサイトから引用)


P. S. (10/9) 2号機燃料デブリ試験的取り出し中断(まさのあつこ)

2024年9月28日土曜日

宮越家花鳥図

宮腰からの続き

以前,宮腰(金沢市金石)と勘違いしてしまった,青森県中泊町の旧家宮越家の話題がまた登場していた。宮越家の離れ詩夢庵にあった狩野派の襖絵(伝狩野山楽筆)が,実は,大英博物館に所蔵されている秋冬花鳥図(17世紀狩野派)と対になる春夏花鳥図である可能性が非常に高いことが判明したというものだ。

大英博物館によれば,秋冬花鳥図の裏書に,大和の談山神社の近くの地名が記されていて,これらの対となる襖絵は元来談山神社に所蔵されていたと推定されている。大英博物館の秋冬花鳥図は,2018年に,キヤノンの綴りプロジェクトによって高精細複製品が制作された。そして,談山神社に里帰り奉納されて常設展示されることになる。ところがですね,肝腎の談山神社のホームページをみると,一瞬その写真がみえるだけで,まったく説明も案内も宣伝もされていないのであった。しっかりしてよね。

奈良県桜井市多武峰(とうのみね)にある談山神社(たんざんじんじゃ)は,中臣鎌足と中大兄皇子が乙巳の変の謀議を図ったところということで有名だ。2回ほど訪れたことがある。何かの行事で蹴鞠やってたかな。


写真:宮越家詩夢庵の春夏花鳥図(日本経済新聞から引用)


2024年9月27日金曜日

第2の月

準衛星からの続き

準衛星に似ているが,少し違う概念が一時衛星(Temporary Satellite)である。地球の回りを周回して離脱するものと,フライバイするものがある。これまでに4例知られていた。1991VG(フィライバイ),2006RH120(周回),2020CD3(周回),2022NX1(フライバイ)

もうすぐ,次の候補がやってくる。2024 PT5(フライバイ)で,7-13mの直径を持ち,2024年の9月29日から11月25日まで地球の周回軌道にあるらしい。

図をみると,地球から月の軌道の1.5-3倍程度の距離を通過するので,ヒル球の内側にある。ただ,地球からの距離だけが地球の周回軌道の条件ではないようだ。図でも周回軌道に入るの位置は,地球への最近接点よりも遠くなっている。

地心エネルギー(Geocentric Energy)= 地球中心においた座標系から見た,衛星の運動エネルギーと地球による重力の位置エネルギーの和が負になるという条件を満たすとき,周回軌道にあるというらしい。



図:2024PT5の軌道(sorae [1] から引用)


2024年9月26日木曜日

ChatGPT Advanced Voice Mode

OpenAIがChatGPTのスピーチモードを改良して,アドバンスト・ボイス・モードとした。平均反応速度が0.3秒とこれまでに比べてかなり速いため,普通の人間の会話と同様のスピードで応答することができる。日経夕刊によれば,日本語や韓国語など50以上の言語に対応して,有料サービス利用者を対象に,9月24日から使えるようになった。

早速iPhoneのChatGPTで試して見たのが次のものだ。会話記録はテキストとして保存され,パソコン側のChatGPTからも参照することができた。会話スピードは本当に改善されている。ただし,画像アップロードは,日本のiPhone環境ではまだ未実装なのかもしれない。

koshix:“あなたはアドバンストですか?” 00:02

ChatGPT:
いいえ、私はAdvanced ChatGPTではなく、ChatGPTです。でも、様々な情報や質問にお答えすることができますよ。何かお手伝いしましょうか?

koshix:“アドバンススピーチではないのですか?” 00:02

ChatGPT:
はい、私は「Advanced SPeeCH」ではなく、「ChatGPT」です。しかし、さまざまな話題に対応できるようにトレーニングされているので、何でも聞いてください。

koshix:“9月24日から使えるようになったバージョンではないのですか?” 00:05

ChatGPT:
私はChatGPTですが、2024年9月24日から利用可能となった新しいバージョンの一部である可能性があります。何か特定の質問や相談があれば、お気軽にお聞きください。

koshix:“今日は何日ですか?” 00:01

ChatGPT:
今日は2024年9月25日です。

koshix:“ここはどこですか?” 00:01

ChatGPT:
ここは、あなたがChatGPTとお話ししている仮想空間です。スマートフォンやコンピュータを通じて、私と会話しているんですよ。

koshix:“私は物理世界ではどこにいるかわかりますか?” 00:04

ChatGPT:
申し訳ありませんが、私にはあなたの物理的な場所を特定する能力はありません。あなたのプライバシーを保護するために、そのような情報は収集していません。 
koshix:“よくわかります。” 00:01

ChatGPT:
ありがとうございます。他に何か気になることや質問があれば、何でも聞いてくださいね。

koshix:“あなたは画像イメージを見ていろいろ考えることができますか?” 00:05

ChatGPT:
はい、画像を見て、その内容に基づいて情報を提供することができます。何か特定の画像について知りたいことがあれば、どうぞお知らせください。

koshix:“あなたに画像を提供する方法を教えてください。” 00:03

ChatGPT:
iOSアプリをご利用の場合、画面下部にある写真アイコンをタップすると、画像をアップロードできます。ぜひ、試してみてください!

koshix:
“今、会話しているこの画面には画像アイコンが見えないのですけれども” 00:05

ChatGPT:
それは失礼いたしました。お使いの環境によっては、画像アップロードのオプションが表示されない場合もあります。この場合、私が画像を確認することはできませんが、何かほかにお手伝いできることがあれば、お気軽にお知らせください。
対話画面は,これまでのような白黒の画面ではなくて,ブルースカイのような画面だった。


写真:ChatGPT Advanced Voice Mode (iPhone画面から引用)

OpenAIはもう危ないとか,サム・アルトマンは大丈夫かとかいろいろいわれているが,今のところまだトップランナーを走っている。そうこう言っているうちに,CTO のミラ・ムラティも退社している。大丈夫か。


2024年9月25日水曜日

知性のエコシステム

知性の物理学からの続き

自由エネルギー原理はやっぱりちゃんと勉強しておいたほうがいいような気がしてきた。
Q(koshix):
この内容をできるだけかみ砕いて具体的な事例をあげながら説明してください。

A(ChatGPT-4o):
この文書は、自由エネルギー原理(FEP)と能動推論(AIF)に関する解説です。これらは、脳が環境を認識し、行動を決定するプロセスを説明する理論であり、人工知能(AI)の設計にも影響を与える概念として紹介されています。以下、重要なポイントを具体的な例を交えて簡潔に説明します。

1.自由エネルギー原理(FEP)とは何か?
FEPは、脳が自分の内部状態と外部の環境の間に整合性を保つための理論です。脳は環境に基づく予測を行い、その予測と実際の観測との「誤差(サプライズ)」を最小化しようとします。この「誤差」を少なくするために、脳は環境を学習し、行動を調整します。

具体例:例えば、あなたが手を伸ばしてコップを掴もうとする時、脳は「手がコップに触れる」という予測を立てています。しかし、もし手がコップに届かなければ、それは脳にとって「サプライズ」です。この誤差を最小にするため、脳は手の動きを修正し、コップを正確に掴もうとします。

2.能動推論(AIF)とは何か?
AIFは、FEPを基にした行動生成のモデルです。FEPは単なる脳の認識プロセスを説明するだけでなく、行動をどのように決定するかも説明します。脳は、予測と実際の感覚とのギャップを埋めるために行動を生成します。

具体例:例えば、寒いと感じる時、脳は「体温を上げるべきだ」と判断し、震え始めます。この震えは筋肉を動かして体温を上げるための行動で、これによって「寒さ」という予測誤差を最小化しようとしているのです。

3.FEPとAIへの応用
FEPの考え方は、AIにも応用されています。AIは、環境を観測し、その観測結果に基づいて行動を決定します。FEPをAIに適用することで、環境に対して適応的な行動を取るAIの設計が可能になります。AIが環境の変化に素早く適応し、予測誤差を最小化しようとするシステムです。

具体例:自動運転車が道を走る際、カメラやセンサーで道路状況を観測し、障害物を回避しながら進む行動をします。FEPを取り入れたAIは、車が「進むべき経路」を予測し、もしその予測が間違っていれば、障害物を避けるために経路を修正します。

4.能動推論と最適制御の違い
FEPに基づく能動推論は、最適制御理論と似ていますが、いくつかの違いがあります。最適制御では、事前に決められた目標に向かって行動を最適化しますが、AIFはもっと柔軟で、予測誤差を最小化するために行動そのものを調整します。

具体例:最適制御では、ロボットが正確に決められた動きで物体を持ち上げるように設計されると考えます。しかし、AIFを使った場合、ロボットは物体を持ち上げる最適な動きを「自ら学習」し、必要に応じて動きを変えます。

まとめ
FEPとAIFは、脳やAIが環境をどのように認識し、どのように行動を決定するかを説明する理論です。これらの理論は、AIの設計においても重要な示唆を与えており、特に複雑な環境で柔軟に対応できるAIの設計に役立ちます。

この文書は、AIの設計に興味がある方にとって非常に興味深い内容となっており、脳の仕組みを模倣した次世代のAI設計に向けた重要なステップを示しています​。


Q(koshix):
先ほどの説明を前提にした上で,新しく追加した論文の内容を同じように
分かりやすくかみ砕いて事例を挙げながら説明してください。

A(ChatGPT-4o):
新しい論文の内容も、前提となる「自由エネルギー原理(FEP)」と「能動推論(AIF)」を基盤にしています。この論文では、特にエコシステムとしての知性について議論されています。簡潔に、具体的な事例を挙げながら、分かりやすく説明します。

1.エコシステムとしての知性とは?
この論文は、人間の知性と人工知能(AI)が共同して機能する「知性のエコシステム」を提案しています。ここでの「知性」とは、環境の変化に適応し、自分自身の存在を裏付ける情報を集めるプロセスを指します。この考え方は、単一のAIや人間の知性を超えて、複数の知性がネットワークとして協力することで新しい形の知性を生み出すことを意味しています。

具体例:例えば、都市のスマート交通システムでは、各車両がセンサーで道路状況を観測し、信号機や他の車両とリアルタイムで通信します。これにより、各車両が環境に応じて最適な行動を取ることができ、交通渋滞や事故のリスクを減らします。このようなシステムでは、車両、信号機、センサーなどが協力して動く「知性のエコシステム」となっています。

2.能動推論とマルチスケールAI
論文では、AIシステムを複数のスケールで設計する重要性が強調されています。能動推論は、単一のAIが複数のタスクを行うのではなく、複数のAIが異なる役割を持ちながら協力するためのフレームワークとして説明されています。異なるスケールで情報を処理し、それを統合することで、より柔軟で効率的な知性が生まれると考えられています。

具体例:自律ロボットがある工場内で働くと仮定しましょう。一部のロボットは原材料を運び、別のロボットは製品を組み立て、さらに別のロボットは品質管理を担当します。これらのロボットはそれぞれ異なるスケールのタスクを処理しますが、全体として効率よく生産を行うためには、お互いに情報を共有し、協力し合う必要があります。能動推論は、これを可能にする理論です。

3.AIの学習と不確実性の解消
この論文は、AIが自身の不確実性をどのように管理するかについても議論しています。AIは自分が持っているデータに基づいて世界を理解しますが、その理解には不確実性が伴います。この不確実性を減らすために、AIは新しいデータを集め、モデルを更新します。

具体例:自動運転車が雨の日に走行する場合、カメラで路面の状況を観察しますが、視界が悪くなるため、不確実性が増します。AIは、この不確実性を解消するために、より多くのセンサーから情報を集め、路面の状態に基づいてスピードを調整したり、車線変更を判断します。

4.共有知性とコミュニケーション
論文では、複数の知性が協力する際には、共通の「生成モデル」を共有することが重要だとしています。これは、AI同士が互いに理解し合い、共同で行動するための枠組みです。これにより、個々のAIが独立して動作するだけでなく、集団として新しい知性を生み出すことが可能になります。

具体例:あるプロジェクトチームがAIを使って研究開発を行う場合、各メンバーのAIは異なるデータを扱っているかもしれません。しかし、全員が同じ目標(例えば、最も効率的な新素材の開発)に向けて動いていると、個々のAIの成果を統合し、新しい知見を得ることができます。

5.AI倫理と社会的影響
知性のエコシステムを設計する際には、倫理的な配慮も必要です。AIが人間の価値観と一致する形で行動することが重要であり、特に複数のAIが協力するシステムでは、偏見や誤った判断が広がるリスクがあります。

具体例:AIが採用プロセスで使われる場合、過去のデータに基づいて判断を行うと、過去の偏見が引き継がれる可能性があります。このため、AIが透明で公平な判断を行うためのルールを設け、社会的に有害な影響を避けることが重要です。

まとめ
この論文は、AIが単独で機能するのではなく、複数のAIが協力し合う「知性のエコシステム」を作り出すことの重要性を説いています。能動推論を基盤にすることで、AIは不確実性を減らし、複雑な環境に適応しながら共同で問題を解決する能力を持つようになります​。



図:知性のエコシステムのイメージ(DALL-E3による)

2024年9月24日火曜日

知性の物理学

茂木健一郎のPIVOTチャンネルが,「生成AIを丸裸にする知性の物理学」というタイトルで,ハーバード大学脳科学センターで知性の物理学プログラムを主催している田中秀宣さんを招いて対談をしていた。とても刺激的で良かったのだけれど,今一つ具体性にかけて空振りが続く試合だった。そういえば,東大理学部物理にも統計力学の樺島祥介さんが主催する「知の物理学研究センター」というのがあったね。
Q(koshix):
知性の物理学 Physics of Intelligence について教えてください。
専門用語を避けずに説明して見てください。多角的な視点はOKです。

A(Gemini 1.5 PRO)
知性の物理学:専門用語を交えた多角的な解説
「知性の物理学」とは、従来、哲学や心理学の領域であった「知性」を、物理学の厳密な枠組みで理解しようとする学際的な研究分野です。近年、人工知能の発展や脳科学の進歩を背景に、急速に注目を集めています。

1.知性の物理学の目的
知性の本質の解明:知性を、単なる情報処理ではなく、物理的な現象として捉え、その本質を明らかにすることを目指します。
人工知能の限界と可能性:人工知能のさらなる発展のために、人間の知性の仕組みを解明し、それを模倣する技術開発を目指します。
脳科学との連携:脳イメージング技術などの進歩を活かし、脳内の情報処理メカニズムと知性の関係を解明します。

2.知性の物理学における主要なアプローチ
神経回路網の物理モデル:脳の神経回路網を、物理学のモデルを用いて記述し、学習や記憶といった高次脳機能をシミュレーションします。
情報熱力学:情報処理とエネルギー消費の関係を、熱力学の法則に基づいて考察し、知性の効率的な実現を目指します。
量子脳理論:量子力学的な現象が、意識や創造性といった高次の認知機能に関わっている可能性を探求します。

3.知性の物理学が扱う概念
複雑系:脳は、多数の要素が複雑に相互作用する複雑系であり、そのダイナミクスを理解することは大きな課題です。
エマージェント現象:個々の要素の性質だけでは説明できない、全体として現れる新たな性質を指します。知性は、脳の複雑系からエマージェントに現れる現象と考えられます。
計算論的神経科学:脳の情報処理を、計算論的な視点から解析し、神経回路網の機能をモデル化します。

4.知性の物理学が抱える課題
意識の問題:意識の起源や本質は、哲学、神経科学、物理学など、様々な分野で議論されている難問です。
測定の問題:脳の活動を直接観測することは困難であり、間接的な方法を用いる必要があります。
モデルの複雑性:脳の機能を完全に再現できるようなモデルを構築することは、非常に困難です。

5.知性の物理学の将来展望
汎用人工知能の実現:人間の知能に匹敵する、あるいはそれを超える人工知能の開発が期待されます。
脳疾患の治療:脳のメカニズムの解明は、アルツハイマー病や統合失調症などの脳疾患の治療法開発につながる可能性があります。
人間理解の深化:知性の物理学は、人間がどのように思考し、学習し、創造性を発揮するのかをより深く理解するための新たな視点を提供します。

6.より専門的な用語
相転移:物質の状態が、ある特定の条件下で急激に変化する現象。脳の学習過程における相転移が注目されています。
自由エネルギー原理:脳が、外界の情報と内部モデルとの間の不一致を最小化するように機能するという仮説。
結合係数:神経回路網において、ニューロン間の接続の強さを表すパラメータ。学習によって変化します。

知性の物理学は、物理学、脳科学、コンピュータサイエンスなど、多岐にわたる分野の研究者が集結し、共同で研究を進めている最先端の学問分野です。
この分野の研究は、人間の知性の謎を解き明かすだけでなく、人類の未来を大きく変える可能性を秘めています。 

図:知性の物理学のイメージ(Imagen3に拒否られ,DALL-E3に描かせたもの)


結局なんだかよくわからないのであった。神経網が生成する人間の知性と,ニューラルネットが生成するAIを同じ土俵の上に上げて,後者は単に設計された機械(もしくはソフトウェア)ではなくて,物理的な現象としての創発過程として理解しようという話だ。というのも,生成AIがこのようにうまく機能している状態がそもそもよく理解できていないからである。とにかく計算リソースをつぎこんで適当にダイヤルを回しているうちに動いてしまったようなこと。

その上で,これを知性の物理学というからには,知性とは何かを定量的に捉えて,測定可能な量を用いて定義する必要があるのだけれども,そのあたりは十分説明されていない。すなわち何らかの主導原理的なストーリーがなくて,あるいは鍵となる仮説や実験事実の背景がないままに,妖しいキーワードとしての,脳科学,量子脳理論,複雑系が多用されるのはちょっとかんべんしてほしいかなあ。

あと,ハーバードやMITが西海岸と違って,より理学部的にアプローチしているという話はわからなくもなかったが,医学・生理学とのつながりを重視する方向に傾きすぎているのではないかという気もした。いや,もちろんそちら側に正解があるのかもしれないけれど,どうなのだろうか。