放射光施設からの続き
5月15日のニュースで,日本が,米国の次期原子核大型実験計画であるEIC(Electron Ion Collider)に参画すると発表されていた。ブルックヘブン国立研究所の全周3.8km,100GeV/nucleonの重イオンコライダー(RHIC)を改造するもので,2026年に建設開始2032年運転開始予定だ。2600億円〜4300億円の建設費のうち,測定装置の一部をつくるようだ。
電子イオンコライダーは,重心系のエネルギーで20〜141GeVの電子と原子核の衝突型加速器である。電子,陽子,重陽子,ヘリウム3は80%の偏極が可能だ。加速できるイオンは陽子からウラニウムまで。
物理としては,ハドロンのクォークグルーオン構造を明らかにするというものだ。核子の質量やスピンが何に由来するか,クォークグルーオンパートン分布関数を精密に決めるなど。日本側の推進機関は,山形大や理研で,神戸大,日大,KEKが協力機関となる。
核子のスピン構造といえば若松さんが40年前から取り組んでいた。一般受けするトピックにはやや遠いような気もするが,アメリカから強く要求されたので,予算がつくということなのかな。
図:EICの概念図(BNLのEICサイトから引用)
ChatGPT-4oはわかりやすい回答を与えてくれる。
Q(koshix):ブルックヘブン国立研究所で計画されているEICは,どんな粒子をどの程度のエネルギーで衝突させる加速器ですか。またその目的はなんですか。A(ChatGPT):ブルックヘブン国立研究所(Brookhaven National Laboratory, BNL)で計画されている電子イオンコライダー(Electron-Ion Collider, EIC)は、電子と重イオンを衝突させる次世代の加速器です。以下はEICの主な特徴と目的です。粒子とエネルギー1.衝突する粒子:・電子・重イオン(例:金イオン、鉛イオンなど)2.エネルギー:・電子ビームのエネルギー:約10〜18 GeV(ギガ電子ボルト)・重イオンビームのエネルギー:約40〜275 GeV目的EICの主な目的は、物質の最も基本的な構成要素であるクォークとグルーオン(これらがハドロンを構成する)の相互作用を理解することです。具体的には以下の点が挙げられます。1.核子の内部構造の解明:クォークとグルーオンがどのように核子(陽子や中性子)の内部に配置され、どのように運動しているかを明らかにする。2.核子の質量とスピンの起源の解明:核子の質量やスピンがどのようにして生成されるのか、特にクォークやグルーオンの寄与を詳しく調べる。3.強い相互作用の研究:強い相互作用(量子色力学, QCD)がクォークとグルーオンの間でどのように作用し、ハドロンを形成するのかを研究する。4.ハドロン物理学の進展:ハドロンの性質や相互作用に関する新しい知見を提供し、ハドロン物理学の理解を深める。EICは、既存の加速器では解明が難しい細部まで明らかにすることを目指しており、素粒子物理学および原子核物理学の分野において重要なブレークスルーをもたらすと期待されています。
[1]Electron Ion Collider の物理(後藤雄二,2021)
[2]The Electron Ion Collider(Brookhaven National Laboratry)