大学入学共通テストの記述式問題について,与党公明党から延期・見直しの提言が萩生田文部科学大臣に届けられ,延期の可能性が高まってきた。柴山前文部科学大臣も「(国・数の記述式試験延期の可能性について)これは現場の状況をきちんと確認して、受験生に不利益が起きないようにすることが最優先だ」と言い出す始末である。なんなのだろう。
安倍・菅への向かい風が強くて,下村博文とその仲間たちをかばう余裕がなくなっているということか。
英語民間試験のほうも含め,まだまだ予断を許さない。延期で時間をかけることにより周到でよけいに面倒なシステムが導入されかねない。高大接続改革の御旗のもと,民営化まっしぐらをめざそうという取り巻きはごまんといるのだから。鈴木寛とか。
[1]2019.11.3 民間試験導入としての記述式問題
[2]2019.7.7 記述式問題の問題
[3]2019.7.6 大学入学共通テストの採点
芥川龍之介が「蜘蛛の糸」を発表して百年。高二の秋の文化祭,クラスの仮装行列のテーマが 蜘蛛の糸だった。お釈迦様の極楽タワーの竹を近所から切り出し,地獄の焔と煙の絵を描いた。犍陀多に続いて蜘蛛の糸(登山部の赤いザイル)に群がる地獄の亡者だったころ。
2019年12月6日金曜日
2019年12月5日木曜日
不正・忖度・虚偽・隠蔽
ちっとも回転しないPDCAサイクルの欺瞞性は最近では良く知られるようになった。
一方,不正・忖度・虚偽・隠蔽のCCCCサイクル(Corruption-Conjecture-Chicanery-Concealment)は季節外れの桜吹雪をまき散らしながら高速回転している。
一方,不正・忖度・虚偽・隠蔽のCCCCサイクル(Corruption-Conjecture-Chicanery-Concealment)は季節外れの桜吹雪をまき散らしながら高速回転している。
2019年12月4日水曜日
PISA2018
OECD生徒の学習到達度調査(PISA)は3年ごとに本調査が実施されている。このほど,PISA2018の結果が公表された。利害関係者の皆様は,戦々恐々としてこの餌に飛びつこうとしている。長期トレンドは平坦でありあまり変わっていないというのが結論のはずだが,変化分を強調して見たい向きからすれば,読解力が落ちたというのがセールスポイントになるのだろう。
読解力に関しては,6段階のレベルの上位層は前回とあまり変わらないが,中位層が減って,下位層が増えているようだ。「評価し,熟考する」能力については、2009年調査結果と比較すると,平均得点が低下しており,特に,2018 年調査から追加された「質と信ぴょう性を評価する」「矛盾を見つけて対処する」の正答率が低かった。とのことであり,そりゃあ桜を見る会を巡るこの間のグダグダな日本のマスコミと政府を見ていれば宜なるかなだろう。
一部コンピュータ型調査であることと学校におけるコンピュータ使用率の低さと絡めた議論にしたがる勢力もありそうだが,それはそれ,これはこれ。むしろスマートフォンによる断片的コミュニケーションや離散的情報取得に完全に適応しているネイティブICT人類についての分析の方が必要なのではないだろうか。
読解力に関しては,6段階のレベルの上位層は前回とあまり変わらないが,中位層が減って,下位層が増えているようだ。「評価し,熟考する」能力については、2009年調査結果と比較すると,平均得点が低下しており,特に,2018 年調査から追加された「質と信ぴょう性を評価する」「矛盾を見つけて対処する」の正答率が低かった。とのことであり,そりゃあ桜を見る会を巡るこの間のグダグダな日本のマスコミと政府を見ていれば宜なるかなだろう。
一部コンピュータ型調査であることと学校におけるコンピュータ使用率の低さと絡めた議論にしたがる勢力もありそうだが,それはそれ,これはこれ。むしろスマートフォンによる断片的コミュニケーションや離散的情報取得に完全に適応しているネイティブICT人類についての分析の方が必要なのではないだろうか。
2019年12月3日火曜日
蛙飛び法
ファインマン物理学の第I巻の第9章に蛙跳び法による運動のシミュレーションが取り上げられている。バネの運動の場合,運動方程式は,$m \ddot{x} = -k x$であるが,これを$\dot{x}=v$と$\dot{v}= -k/m x = -\lambda x$としてオイラー法を適用する。$\epsilon=t_{n+1}-t_n, \ f_n=f(t_n)$などとして,
前進差分は,
\begin{equation}
\begin{aligned}
x_{n+1}=x_{n}+\epsilon v_{n}\\
v_{n+1}=v_{n}- \lambda \epsilon x_{n}
\end{aligned}
\end{equation}
後退差分は,
\begin{equation}
\begin{aligned}
x_{n+1}=x_{n}+\epsilon v_{n+1}\\
v_{n+1}=v_{n}- \lambda \epsilon x_{n+1}
\end{aligned}
\end{equation}
中心差分は,
\begin{equation}
\begin{aligned}
x_{n+1}=x_{n-1}+2\epsilon v_{n}\\
v_{n+1}=v_{n-1}- 2\lambda \epsilon x_{n}
\end{aligned}
\end{equation}
中心差分の片方をずらすと蛙跳び法の表式が得られる。
\begin{equation}
\begin{aligned}
x_{n+2}=x_{n}+2\epsilon v_{n+1}\\
v_{n+1}=v_{n-1}- 2\lambda \epsilon x_{n}
\end{aligned}
\end{equation}
一方,前進差分と後退差分は,次のように表せる。
\begin{equation}
\begin{aligned}
\begin{pmatrix}x_{n+1} \\ v_{n+1}\end{pmatrix} &=
\begin{pmatrix} 1 & \epsilon \\ - \lambda \epsilon & 1 \end{pmatrix}
\begin{pmatrix}x_{n} \\ v_{n}\end{pmatrix} \\
\begin{pmatrix} 1 & -\epsilon \\ \lambda \epsilon & 1 \end{pmatrix}
\begin{pmatrix}x_{n+1} \\ v_{n+1}\end{pmatrix}
&= \begin{pmatrix}x_{n} \\ v_{n}\end{pmatrix}
\end{aligned}
\end{equation}
陰解法となっている後退差分を解いて$ o(\epsilon^2)$まで考えると,
\begin{equation}
\begin{pmatrix}x_{n+1} \\ v_{n+1}\end{pmatrix}
=\begin{pmatrix}\dfrac{1}{1+\lambda \epsilon^2} & \epsilon \\
-\lambda \epsilon & \dfrac{1}{1+\lambda \epsilon^2}\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}x_{n} \\ v_{n}\end{pmatrix}
\end{equation}
前進差分と後退差分の平均をとると,中心差分に相当するものが得られる。
\begin{equation}
\begin{pmatrix}x_{n+1} \\ v_{n+1}\end{pmatrix}
=\begin{pmatrix}1 - \lambda \epsilon^2 /2 & \epsilon \\
-\lambda \epsilon & 1 -\lambda \epsilon^2 /2 \end{pmatrix}
\begin{pmatrix}x_{n} \\ v_{n}\end{pmatrix}
\end{equation}
前進差分は,
\begin{equation}
\begin{aligned}
x_{n+1}=x_{n}+\epsilon v_{n}\\
v_{n+1}=v_{n}- \lambda \epsilon x_{n}
\end{aligned}
\end{equation}
後退差分は,
\begin{equation}
\begin{aligned}
x_{n+1}=x_{n}+\epsilon v_{n+1}\\
v_{n+1}=v_{n}- \lambda \epsilon x_{n+1}
\end{aligned}
\end{equation}
中心差分は,
\begin{equation}
\begin{aligned}
x_{n+1}=x_{n-1}+2\epsilon v_{n}\\
v_{n+1}=v_{n-1}- 2\lambda \epsilon x_{n}
\end{aligned}
\end{equation}
中心差分の片方をずらすと蛙跳び法の表式が得られる。
\begin{equation}
\begin{aligned}
x_{n+2}=x_{n}+2\epsilon v_{n+1}\\
v_{n+1}=v_{n-1}- 2\lambda \epsilon x_{n}
\end{aligned}
\end{equation}
一方,前進差分と後退差分は,次のように表せる。
\begin{equation}
\begin{aligned}
\begin{pmatrix}x_{n+1} \\ v_{n+1}\end{pmatrix} &=
\begin{pmatrix} 1 & \epsilon \\ - \lambda \epsilon & 1 \end{pmatrix}
\begin{pmatrix}x_{n} \\ v_{n}\end{pmatrix} \\
\begin{pmatrix} 1 & -\epsilon \\ \lambda \epsilon & 1 \end{pmatrix}
\begin{pmatrix}x_{n+1} \\ v_{n+1}\end{pmatrix}
&= \begin{pmatrix}x_{n} \\ v_{n}\end{pmatrix}
\end{aligned}
\end{equation}
陰解法となっている後退差分を解いて$ o(\epsilon^2)$まで考えると,
\begin{equation}
\begin{pmatrix}x_{n+1} \\ v_{n+1}\end{pmatrix}
=\begin{pmatrix}\dfrac{1}{1+\lambda \epsilon^2} & \epsilon \\
-\lambda \epsilon & \dfrac{1}{1+\lambda \epsilon^2}\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}x_{n} \\ v_{n}\end{pmatrix}
\end{equation}
前進差分と後退差分の平均をとると,中心差分に相当するものが得られる。
\begin{equation}
\begin{pmatrix}x_{n+1} \\ v_{n+1}\end{pmatrix}
=\begin{pmatrix}1 - \lambda \epsilon^2 /2 & \epsilon \\
-\lambda \epsilon & 1 -\lambda \epsilon^2 /2 \end{pmatrix}
\begin{pmatrix}x_{n} \\ v_{n}\end{pmatrix}
\end{equation}
2019年12月2日月曜日
大仏迴国
京都みなみ会館に典座を見に行く途中の近鉄電車内で検索作業中の妻に,大仏迴国という映画もやっているようだよ,と教えてもらった。典座の方は昨夜みた評判にちょっと不安があったので,私だけあわててそちらに切り替えた。近所のル・ブランで昼食をすませ,新装されたみなみ会館の1Fで開始までの時間待ち。
あとで調べたところ,京都みなみ会館は怪獣映画の聖地とよばれていたそうだ。それならば,日本の怪獣映画の原点としての大仏迴国リメイクが上映されている意味も大きい。ところで,そのリメイクは残念ながらリメイクではなかった。なんといえばいいか。よくわかりませんでした。宝田明,久保明,小林夕岐子,螢雪次朗は日本の怪獣映画のオマージュということらしい。大槻義彦とたま出版の韮澤潤一郎の対談もその派生物か。製作費が300万円なので,立ち上がった聚楽園大仏(じゃないのか,茨城県の大仏だった)のCGもかなり制限されていた。脚本はまあ支離滅裂といったところだろうか。よくわからないがオカルト風味と東京の地震の終末感風味で終わってしまった。
P. S. 典座のほうもちょっと残念だったようだ。
あとで調べたところ,京都みなみ会館は怪獣映画の聖地とよばれていたそうだ。それならば,日本の怪獣映画の原点としての大仏迴国リメイクが上映されている意味も大きい。ところで,そのリメイクは残念ながらリメイクではなかった。なんといえばいいか。よくわかりませんでした。宝田明,久保明,小林夕岐子,螢雪次朗は日本の怪獣映画のオマージュということらしい。大槻義彦とたま出版の韮澤潤一郎の対談もその派生物か。製作費が300万円なので,立ち上がった聚楽園大仏(じゃないのか,茨城県の大仏だった)のCGもかなり制限されていた。脚本はまあ支離滅裂といったところだろうか。よくわからないがオカルト風味と東京の地震の終末感風味で終わってしまった。
P. S. 典座のほうもちょっと残念だったようだ。
2019年12月1日日曜日
アドベントカレンダー
さあ12月,師走がやってきた。アドベントカレンダーの季節だ。12月1日からはじまり,クリスマスまでの毎日(24日または25日)をカウントダウンする目的のカレンダーのことだが,インターネット上ではプログラミングや様々なテーマについてのブログを毎日書いていくというものだ。Qiita Advent Calendar 209には702テーマがあり,参加者も1万人を越えている。アドベントカレンダーを作れるサイトとしては,Adventar などもある。これはちょっと一覧性に欠けているが,仲間内だけにサーキュレートするためならこれで十分なのか。数理物理 Adventar Calendar 2019 とか。日曜数学 Advent Calendar 2019 とか。数値計算 Advent Calendar 2019とか。
2019年11月30日土曜日
楕円軌道と内心の軌跡
楕円の軌跡は焦点からの線分の長さの和が一定という条件で描くことができる。楕円の長半径を$a$,短半径を$b$,焦点の座標を${\rm O}_1=(-c,0)$,${\rm O}_2=(c,0)$,楕円上の点Pの座標を$(x,y)$とする。例えば,$\ell_1={\rm O}_1{\rm P}$,$\ell_2={\rm O}_2{\rm P}$として,$\ell_1+\ell_2=2 a$と一定となる。
このとき,三角形${\rm O}_1{\rm O}_2 P$の内心(内接円の中心)Qの軌跡はどんな図形を描くだろうか。twitterでアニメーションをみかけたが,楕円に見えたので確かめてみよう。点Pは次の楕円の方程式の上を動く。
\begin{equation}
\dfrac{x^2}{a^2} + \dfrac{y^2}{b^2} = 1 \quad a^2=b^2+c^2
\end{equation}
このとき,$\ell_1, \ell_2$を求めてみる。
\begin{equation}
\begin{aligned}
\ell_1 &= \sqrt{ (x+c)^2 + y^2 } = \sqrt{(x+c)^2 + b^2 (1 - (x/a)^2 ) }\\
&= \sqrt{(x+c)^2 + (1-c^2/a^2) (a^2 - x^2) } = a + \dfrac{c x}{a}\\
\ell_2 &= \sqrt{ (x-c)^2 + y^2 } = \sqrt{(x-c)^2 + b^2 (1 - (x/a)^2 ) } \\
&= \sqrt{(x-c)^2 + (1-c^2/a^2) (a^2 - x^2) } = a - \dfrac{c x}{a}
\end{aligned}
\end{equation}
次に,内心Qの座標を,$(p,q)$とする。$q$は内接円の半径と等しい。三角形の内接円の半径$r$は,三角形の面積$S$と$2S=(\ell_1+\ell_2+2c) r$の関係がある。ヘロンの公式より,
\begin{equation}
\begin{aligned}
s &= (\ell_1+\ell_2+2c)/2 = a+c \\
S &=\sqrt{s(s-2c)(s-\ell_1)(s-\ell_2)}=\sqrt{(a+c)(a-c)(c - c x/a)(c + c x/a)}\\
\therefore q &= r= \dfrac{S}{a+c}=c\sqrt{\frac{a-c}{a+c}(1-x^2/a^2)}= \dfrac{c y}{b}\sqrt{\frac{a-c}{a+c}}\equiv \dfrac{c\ y\ \varepsilon}{b}
\end{aligned}
\end{equation}
また,角${\rm PO_1 O_2}=\phi$,角${\rm PO_2 O_1}=\theta$とすると,余弦定理から,
\begin{equation}
\begin{aligned}
\cos\phi = \dfrac{\ell_1^2+(2c)^2-\ell_2^2}{4\ell_1 c}=\dfrac{x+c}{\ell_1}\\
\cos\theta = \dfrac{\ell_2^2+(2c)^2-\ell_1^2}{4\ell_1 c}=\dfrac{c-x}{\ell_2}
\end{aligned}
\end{equation}
内心の性質から,角${\rm QO_1 O_2}=\phi/2$,角${\rm QO_2 O_1}=\theta/2$であり,半角の公式から,
\begin{equation}
\begin{aligned}
\tan{\frac{\phi}{2}} &=\sqrt{\dfrac{1-\cos\phi}{1+\cos\phi}} =\sqrt{\dfrac{\ell_1-(x+c)}{\ell_1+(x+c)} }\\
&=\sqrt{\dfrac{a+cx/a-(x+c)}{a+cx/a+(x+c)}} = \varepsilon \sqrt{\dfrac{a-x}{a+x}}\\
\tan{\frac{\theta}{2}} &=\sqrt{\dfrac{1-\cos\theta}{1+\cos\theta}}=\sqrt{\dfrac{\ell_2-(c-x)}{\ell_2+(c-x)} }\\
&=\sqrt{\dfrac{a-cx/a-(c-x)}{a-cx/a+(c-x)}} = \varepsilon \sqrt{\dfrac{a+x}{a-x}}\\
\end{aligned}
\end{equation}
${\rm O_1}$から角度$\phi/2$で望む内心Qのy座標が,${\rm O_2}$から角度$\theta/2$で望むものと等しいことから,
\begin{equation}
\begin{aligned}
(p+c) \tan \dfrac{\phi}{2} &= (c-p) \tan \dfrac{\theta}{2} \\
p \bigl( \tan \dfrac{\phi}{2} + \tan \dfrac{\theta}{2} \bigr) &= c \bigl( \tan \dfrac{\theta}{2} - \tan \dfrac{\phi}{2} \bigr) \\
p \varepsilon \Bigl( \sqrt{\dfrac{a-x}{a+x}} + \sqrt{\dfrac{a+x}{a-x}} \Bigr)
& = c \varepsilon \Bigl( \sqrt{\dfrac{a+x}{a-x}} - \sqrt{\frac{a-x}{a+x}} \Bigr) \\
2 a p \varepsilon &= 2 x c \varepsilon\\
\therefore p &= \dfrac{c}{a} x
\end{aligned}
\end{equation}
これから,内心Qの満足する軌跡の方程式は,Pが描く楕円の軌跡の式を用いて以下のように求まった。
\begin{equation}
\dfrac{p^2}{c^2} + \dfrac{q^2}{(c \varepsilon)^2} = 1
\end{equation}
このとき,三角形${\rm O}_1{\rm O}_2 P$の内心(内接円の中心)Qの軌跡はどんな図形を描くだろうか。twitterでアニメーションをみかけたが,楕円に見えたので確かめてみよう。点Pは次の楕円の方程式の上を動く。
\begin{equation}
\dfrac{x^2}{a^2} + \dfrac{y^2}{b^2} = 1 \quad a^2=b^2+c^2
\end{equation}
このとき,$\ell_1, \ell_2$を求めてみる。
\begin{equation}
\begin{aligned}
\ell_1 &= \sqrt{ (x+c)^2 + y^2 } = \sqrt{(x+c)^2 + b^2 (1 - (x/a)^2 ) }\\
&= \sqrt{(x+c)^2 + (1-c^2/a^2) (a^2 - x^2) } = a + \dfrac{c x}{a}\\
\ell_2 &= \sqrt{ (x-c)^2 + y^2 } = \sqrt{(x-c)^2 + b^2 (1 - (x/a)^2 ) } \\
&= \sqrt{(x-c)^2 + (1-c^2/a^2) (a^2 - x^2) } = a - \dfrac{c x}{a}
\end{aligned}
\end{equation}
次に,内心Qの座標を,$(p,q)$とする。$q$は内接円の半径と等しい。三角形の内接円の半径$r$は,三角形の面積$S$と$2S=(\ell_1+\ell_2+2c) r$の関係がある。ヘロンの公式より,
\begin{equation}
\begin{aligned}
s &= (\ell_1+\ell_2+2c)/2 = a+c \\
S &=\sqrt{s(s-2c)(s-\ell_1)(s-\ell_2)}=\sqrt{(a+c)(a-c)(c - c x/a)(c + c x/a)}\\
\therefore q &= r= \dfrac{S}{a+c}=c\sqrt{\frac{a-c}{a+c}(1-x^2/a^2)}= \dfrac{c y}{b}\sqrt{\frac{a-c}{a+c}}\equiv \dfrac{c\ y\ \varepsilon}{b}
\end{aligned}
\end{equation}
また,角${\rm PO_1 O_2}=\phi$,角${\rm PO_2 O_1}=\theta$とすると,余弦定理から,
\begin{equation}
\begin{aligned}
\cos\phi = \dfrac{\ell_1^2+(2c)^2-\ell_2^2}{4\ell_1 c}=\dfrac{x+c}{\ell_1}\\
\cos\theta = \dfrac{\ell_2^2+(2c)^2-\ell_1^2}{4\ell_1 c}=\dfrac{c-x}{\ell_2}
\end{aligned}
\end{equation}
内心の性質から,角${\rm QO_1 O_2}=\phi/2$,角${\rm QO_2 O_1}=\theta/2$であり,半角の公式から,
\begin{equation}
\begin{aligned}
\tan{\frac{\phi}{2}} &=\sqrt{\dfrac{1-\cos\phi}{1+\cos\phi}} =\sqrt{\dfrac{\ell_1-(x+c)}{\ell_1+(x+c)} }\\
&=\sqrt{\dfrac{a+cx/a-(x+c)}{a+cx/a+(x+c)}} = \varepsilon \sqrt{\dfrac{a-x}{a+x}}\\
\tan{\frac{\theta}{2}} &=\sqrt{\dfrac{1-\cos\theta}{1+\cos\theta}}=\sqrt{\dfrac{\ell_2-(c-x)}{\ell_2+(c-x)} }\\
&=\sqrt{\dfrac{a-cx/a-(c-x)}{a-cx/a+(c-x)}} = \varepsilon \sqrt{\dfrac{a+x}{a-x}}\\
\end{aligned}
\end{equation}
${\rm O_1}$から角度$\phi/2$で望む内心Qのy座標が,${\rm O_2}$から角度$\theta/2$で望むものと等しいことから,
\begin{equation}
\begin{aligned}
(p+c) \tan \dfrac{\phi}{2} &= (c-p) \tan \dfrac{\theta}{2} \\
p \bigl( \tan \dfrac{\phi}{2} + \tan \dfrac{\theta}{2} \bigr) &= c \bigl( \tan \dfrac{\theta}{2} - \tan \dfrac{\phi}{2} \bigr) \\
p \varepsilon \Bigl( \sqrt{\dfrac{a-x}{a+x}} + \sqrt{\dfrac{a+x}{a-x}} \Bigr)
& = c \varepsilon \Bigl( \sqrt{\dfrac{a+x}{a-x}} - \sqrt{\frac{a-x}{a+x}} \Bigr) \\
2 a p \varepsilon &= 2 x c \varepsilon\\
\therefore p &= \dfrac{c}{a} x
\end{aligned}
\end{equation}
これから,内心Qの満足する軌跡の方程式は,Pが描く楕円の軌跡の式を用いて以下のように求まった。
\begin{equation}
\dfrac{p^2}{c^2} + \dfrac{q^2}{(c \varepsilon)^2} = 1
\end{equation}
図 楕円の軌跡(青)と内心の軌跡(赤)
2019年11月29日金曜日
公転速度と公転周期
万有引力定数は,G=6.7 × 10^-11 m ^3 kg^-1 s^-2 である。高等学校の物理の教科書にのっているように,質量 M kg の天体の周りを質量 m kg の天体が速さ v m/s の速度で半径 R m の等速円運動するとき,$ \dfrac{G M m }{R^2} = \dfrac{m v^2}{R}$ から,$ v= \sqrt{\dfrac{GM}{R}} $,周期は$ T = \dfrac{2 \pi R }{v}$であった。これで,ブラックホール(BH)のまわりの"惑星"の公転速度と公転周期が求まる。だからどうしたといわれても。
地球−月(M = 6.0 × 10^24 kg, R = 3.8 × 10^8 m)→(v= 1 km/s, T= 0.76 y)
太陽−地球(M = 2.0 × 10^30 kg, R = 1.5 × 10^11 m)→(v= 30 km/s, T= 1.0 y)
銀河中心-太陽(M = 2.2 × 10^41 kg,R= 2.6 × 10^20 m)→(v= 240 km/s, T= 2.0 × 10^8 y)
BH−"惑星"(M = 8.2 × 10^36 kg,R = 1.0 ×10^17 m)→(v=74 km/s, T=2.7 × 10^5 y)
[1]国立天文台,最新の観測による銀河中心〜太陽系の距離や回転速度を発表
[2]超大質量ブラックホール(Wikipedia)
地球−月(M = 6.0 × 10^24 kg, R = 3.8 × 10^8 m)→(v= 1 km/s, T= 0.76 y)
太陽−地球(M = 2.0 × 10^30 kg, R = 1.5 × 10^11 m)→(v= 30 km/s, T= 1.0 y)
銀河中心-太陽(M = 2.2 × 10^41 kg,R= 2.6 × 10^20 m)→(v= 240 km/s, T= 2.0 × 10^8 y)
BH−"惑星"(M = 8.2 × 10^36 kg,R = 1.0 ×10^17 m)→(v=74 km/s, T=2.7 × 10^5 y)
[1]国立天文台,最新の観測による銀河中心〜太陽系の距離や回転速度を発表
[2]超大質量ブラックホール(Wikipedia)
2019年11月28日木曜日
ブラックホールの周りの惑星
物理ではなかなかびっくりする話がない。いや,あるのだが,驚嘆するためにはそれなりの基礎知識が必要なのでたいへんだ。数学でもそうかもしれない。その意味では望月新一さんのIUTはとても大きなトピックだった。一方,天文学では結構な頻度で,驚きのニュースが飛び込んでくるような気がする。最近のそれは,ブラックホールの周りの惑星だ。
ブラックホールの周りには降着円盤があることは,福江先生の得意分野でもあるので知っていた。そこに原始太陽系の形成モデルのシミュレーションを適用すると,銀河中心にあるような太陽の1000万倍の質量を持つ巨大ブラックホールのまわりのミクロな塵から,数億年をかけて,ブラックホール中心から10光年ほどのところに,地球質量の10倍程度の惑星が1万個以上形成されるというものだ。となりの惑星との距離は0.1光年のオーダーかな。生命が誕生するような熱源は確保できるのだろうか。SF作家の夢が広がるだろうか。
[1]K. Wada, Y. Tsukamoto and E. Kokubo, Planet Formation around Supermassive Black Holes in the Active Galactic Nuclei(2019.11.26)
ブラックホールの周りには降着円盤があることは,福江先生の得意分野でもあるので知っていた。そこに原始太陽系の形成モデルのシミュレーションを適用すると,銀河中心にあるような太陽の1000万倍の質量を持つ巨大ブラックホールのまわりのミクロな塵から,数億年をかけて,ブラックホール中心から10光年ほどのところに,地球質量の10倍程度の惑星が1万個以上形成されるというものだ。となりの惑星との距離は0.1光年のオーダーかな。生命が誕生するような熱源は確保できるのだろうか。SF作家の夢が広がるだろうか。
[1]K. Wada, Y. Tsukamoto and E. Kokubo, Planet Formation around Supermassive Black Holes in the Active Galactic Nuclei(2019.11.26)
2019年11月27日水曜日
児童生徒1人1台PC
11月13日の経済財政諮問会議で,経済対策(未来投資)として義務教育の児童生徒1人1台のPCを配備するという考えが示された。経済再生担当大臣の西村康稔は,1995年から1997年にかけて通産省からの出向で石川県の商工課長を務めていた。そのころ父が亡くなり,葬儀後の挨拶で県庁もまわった際に名刺だけを置いてきた。西村は2003年に衆議院議員になったが,その前後からしばらく後援会からの案内が届いていたことがあった。選挙区は離れているのであまり効果はないと思うのだが,とりあえず関西圏なので。
さて,児童生徒1人1台PCに話を戻す。これが,小学校5年生から中学3年生までとなると,小学校 5, 6 年が 213万人程度,中学校1, 2, 3 年が 322万人なので,合計540万人。現在あるPCの普及率は 5.4 人に1台なので,人数として現有のもので必要数の 19% 程度がカバーされているとするなら,540万 × 81%で 440万台新たに必要になる(現有機器がデスクトップならばもっと必要かもしれない)。1台10万円として,4400億円だ(いつまでに実行するのだろう?)。その後,更新を続けるとすれば,毎年数百億円が必要になる。で,これを学校で管理できるのだろうか。活用できるのだろうか。どこかでBOYDにスライドできるのだろうか。謎は深まるが,あまりまともな制度設計がされることは期待できないように思う。
P. S. 読売新聞によると,2022年までに小5〜中3,2024年までに小1〜小4という説もあるようだ。
P. P. S. 12/3 PISA2018結果発表を前に,日経新聞によると2023年が目標年度であり,5000億円を児童生徒1人1台のPCまたはタブレットにつっこむそうだ。初年度は1500億円とか。南無阿弥陀仏。
さて,児童生徒1人1台PCに話を戻す。これが,小学校5年生から中学3年生までとなると,小学校 5, 6 年が 213万人程度,中学校1, 2, 3 年が 322万人なので,合計540万人。現在あるPCの普及率は 5.4 人に1台なので,人数として現有のもので必要数の 19% 程度がカバーされているとするなら,540万 × 81%で 440万台新たに必要になる(現有機器がデスクトップならばもっと必要かもしれない)。1台10万円として,4400億円だ(いつまでに実行するのだろう?)。その後,更新を続けるとすれば,毎年数百億円が必要になる。で,これを学校で管理できるのだろうか。活用できるのだろうか。どこかでBOYDにスライドできるのだろうか。謎は深まるが,あまりまともな制度設計がされることは期待できないように思う。
P. S. 読売新聞によると,2022年までに小5〜中3,2024年までに小1〜小4という説もあるようだ。
P. P. S. 12/3 PISA2018結果発表を前に,日経新聞によると2023年が目標年度であり,5000億円を児童生徒1人1台のPCまたはタブレットにつっこむそうだ。初年度は1500億円とか。南無阿弥陀仏。
2019年11月26日火曜日
山羊問題
山羊問題(Goat Problem)は次のような問題である。中心A,半径$r=1$の草の生えた円形の土地Sがある。その周の1点Oから長さ$a$のヒモにつながれた山羊を放し飼いにすると,Sのうち,半径$a$のOを中心とし半径$a$の円内の草が食べられてしまう。その面積がSの半分になるようなヒモの長さ$a$はいくらか?図形はOAを結ぶ線に対称なので,半分だけ考えてみよう。
\begin{aligned}
\dfrac{\pi r^2}{4} &= \dfrac{r^2}{2}(\pi - 2 \phi) + \dfrac{a^2}{2} \phi - \dfrac{r^2}{2} \sin 2 \phi \\
a &= 2 r \cos \phi
\end{aligned}
\end{equation}
したがって,
\begin{equation}
4 \phi \cos^2 \phi = \sin 2 \phi +2 \phi -\dfrac{\pi}{2}
\end{equation}
これをMathematicaで解くと,$a/r = 1.15873$となった。
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In[1]:= Clear[x]; sol1 = FindRoot[4 Cos[x]^2 x == Sin[2 x] + 2 x - Pi/2, {x, 1}]; x = x /. sol1
Out[1]= 0.952848
In[2]:= a = 2 Cos[x]
Out[2]= 1.15873
In[3]:= Clear[x]; sol2 = FindRoot[Sqrt[1 - (x - 1)^2] == Sqrt[a^2 - x^2], {x, 1}]; b = x /. sol2
Out[3]= 0.671326
In[4]:= c = NIntegrate[Sqrt[1 - (x - 1)^2], {x, 0, b}] + NIntegrate[Sqrt[a^2 - x^2], {x, b, a}]
Out[4]= 0.785398
In[5]:= g1 = Plot[{Sqrt[a^2 - x^2], Sqrt[1 - (x - 1)^2],
Sqrt[a^2 - b^2]/b x, -Sqrt[a^2 - b^2]/(a - b) (x - a), -Sqrt[a^2 - b^2]/(1 - b) (x - 1)}, {x, 0, 2},
AspectRatio -> Automatic, PlotStyle -> {, , Dashed, Dashed, Dotted}, PlotRange -> {0, 1.2}]
In[6]:= g2 = Graphics[{Text[O, {0.05, 0.03}], Text[A, {0.95, 0.03}],
Text[B, {1.20, 0.03}], Text[P, {0.69, 1.0}]}];
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図 山羊問題
山羊が食べた草地の面積は,扇型O-BP+扇型A-OP-三角形AOPであり,これが$\pi r^2/4$になればよい。角POA=$\phi$とすると,角PAO=$\pi-2\phi$である。これを式で表すと,
\begin{equation}\begin{aligned}
\dfrac{\pi r^2}{4} &= \dfrac{r^2}{2}(\pi - 2 \phi) + \dfrac{a^2}{2} \phi - \dfrac{r^2}{2} \sin 2 \phi \\
a &= 2 r \cos \phi
\end{aligned}
\end{equation}
したがって,
\begin{equation}
4 \phi \cos^2 \phi = \sin 2 \phi +2 \phi -\dfrac{\pi}{2}
\end{equation}
これをMathematicaで解くと,$a/r = 1.15873$となった。
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In[1]:= Clear[x]; sol1 = FindRoot[4 Cos[x]^2 x == Sin[2 x] + 2 x - Pi/2, {x, 1}]; x = x /. sol1
Out[1]= 0.952848
In[2]:= a = 2 Cos[x]
Out[2]= 1.15873
In[3]:= Clear[x]; sol2 = FindRoot[Sqrt[1 - (x - 1)^2] == Sqrt[a^2 - x^2], {x, 1}]; b = x /. sol2
Out[3]= 0.671326
In[4]:= c = NIntegrate[Sqrt[1 - (x - 1)^2], {x, 0, b}] + NIntegrate[Sqrt[a^2 - x^2], {x, b, a}]
Out[4]= 0.785398
In[5]:= g1 = Plot[{Sqrt[a^2 - x^2], Sqrt[1 - (x - 1)^2],
Sqrt[a^2 - b^2]/b x, -Sqrt[a^2 - b^2]/(a - b) (x - a), -Sqrt[a^2 - b^2]/(1 - b) (x - 1)}, {x, 0, 2},
AspectRatio -> Automatic, PlotStyle -> {, , Dashed, Dashed, Dotted}, PlotRange -> {0, 1.2}]
In[6]:= g2 = Graphics[{Text[O, {0.05, 0.03}], Text[A, {0.95, 0.03}],
Text[B, {1.20, 0.03}], Text[P, {0.69, 1.0}]}];
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2019年11月25日月曜日
パラメータ励振(5)
(パラメータ励振(4)からの続き)
\begin{equation}
\begin{aligned}
\ddot{x}+\dfrac{g-\ddot{\ell}}{\ell}x &= 0\\
\ell &= \ell_0(1-\epsilon \cos(\omega t + \delta))\\
g/\ell_0 &= \omega_0^2\\
\end{aligned}
\end{equation}
このブランコのモデルで,エネルギーが励振項から供給される様子を調べてみる。
微分方程式を変形すると次のようになる。
\begin{equation}
\ddot{x}+\omega_0^2 x = - \epsilon(\omega_0^2-\omega^2) \cos (\omega t + \delta ) x
\end{equation}
$\dot{x}$を微分方程式の両辺にかけると,
\begin{equation}
\dot{x} \ddot{x}+\omega_0^2 \dot{x} x = - \epsilon(\omega_0^2-\omega^2) \cos (\omega t + \delta ) \dot{x} x
\end{equation}
したがって,
\begin{equation}
\dfrac{d}{dt} (\dot{x}^2+\omega_0^2 x^2 ) = - \epsilon(\omega_0^2-\omega^2) \cos (\omega t + \delta ) \dot{x} x \equiv {\rm R}
\end{equation}
つまり,左辺は運動エネルギー+位置エネルギーの微分となるため,右辺がこれに対するエネルギーソースの働きをしている。そこで,右辺Rの符号を調べる。
ここで,$\omega=2\omega_0, \lambda = \dfrac{-3\epsilon \omega_0^2}{4\pi} < 0$とする。また,$\delta =(0, \pi/2, \pi, 3\pi/2)$に対して,$\varphi = (\pi/4, \pi/2, \pi/4, 0)$に注意する。
\begin{equation}
\begin{aligned}
x &= C_1 e^{\lambda t} \cos(\omega_0 t + \varphi) + C_2 e^{-\lambda t} \sin (\omega_0 t + \varphi)\\
\dot{x} &= \lambda \{ C_1 e^{\lambda t} \cos(\omega_0 t + \varphi) - C_2 e^{-\lambda t} \sin (\omega_0 t + \varphi) \} \\
&+\omega_0 \{ -C_1 e^{\lambda t} \sin(\omega_0 t + \varphi) + C_2 e^{-\lambda t} \cos (\omega_0 t + \varphi) \}
\end{aligned}
\end{equation}
初期条件として,$x(0)=c >0, \dot{x}(0)=0$とする。
\begin{equation}
\begin{aligned}
c &= C_1 \cos \varphi + C_2 \sin \varphi\\
0 &= \lambda \{ C_1 \cos \varphi - C_2 \sin \varphi \} \\
&+\omega_0 \{ -C_1 \sin \varphi + C_2 \cos \varphi \}
\end{aligned}
\end{equation}
これを解いて,
\begin{equation}
\begin{aligned}
C_1 &= c \dfrac{\lambda \sin \varphi - \omega_0 \cos \varphi}{\lambda \sin 2\varphi -\omega_0}\\
C_2 &= c \dfrac{\lambda \cos \varphi - \omega_0 \sin \varphi}{\lambda \sin 2\varphi -\omega_0}
\end{aligned}
\end{equation}
近似解は,$x(t)=c cos(\omega_0 t)$であるから,$\dot{x} \ x = -\dfrac{c^2}{2} \sin(2\omega_0 t) $ である。したがって,$\delta=\pi/2の場合$
\begin{equation}
{\rm R}= \epsilon(\omega_0^2-\omega^2) \cos (2\omega_0 t + \delta ) \dfrac{c^2}{2} \sin(2 \omega_0 t) = \dfrac{3 \omega_0^2 c^2}{2} \sin^2 (2\omega_0 t) > 0
\end{equation}
となって,エネルギーが増加することがわかる。また,$\delta = 3\pi/2$では符号が逆転する。
\begin{equation}
\begin{aligned}
\ddot{x}+\dfrac{g-\ddot{\ell}}{\ell}x &= 0\\
\ell &= \ell_0(1-\epsilon \cos(\omega t + \delta))\\
g/\ell_0 &= \omega_0^2\\
\end{aligned}
\end{equation}
このブランコのモデルで,エネルギーが励振項から供給される様子を調べてみる。
微分方程式を変形すると次のようになる。
\begin{equation}
\ddot{x}+\omega_0^2 x = - \epsilon(\omega_0^2-\omega^2) \cos (\omega t + \delta ) x
\end{equation}
$\dot{x}$を微分方程式の両辺にかけると,
\begin{equation}
\dot{x} \ddot{x}+\omega_0^2 \dot{x} x = - \epsilon(\omega_0^2-\omega^2) \cos (\omega t + \delta ) \dot{x} x
\end{equation}
したがって,
\begin{equation}
\dfrac{d}{dt} (\dot{x}^2+\omega_0^2 x^2 ) = - \epsilon(\omega_0^2-\omega^2) \cos (\omega t + \delta ) \dot{x} x \equiv {\rm R}
\end{equation}
つまり,左辺は運動エネルギー+位置エネルギーの微分となるため,右辺がこれに対するエネルギーソースの働きをしている。そこで,右辺Rの符号を調べる。
ここで,$\omega=2\omega_0, \lambda = \dfrac{-3\epsilon \omega_0^2}{4\pi} < 0$とする。また,$\delta =(0, \pi/2, \pi, 3\pi/2)$に対して,$\varphi = (\pi/4, \pi/2, \pi/4, 0)$に注意する。
\begin{equation}
\begin{aligned}
x &= C_1 e^{\lambda t} \cos(\omega_0 t + \varphi) + C_2 e^{-\lambda t} \sin (\omega_0 t + \varphi)\\
\dot{x} &= \lambda \{ C_1 e^{\lambda t} \cos(\omega_0 t + \varphi) - C_2 e^{-\lambda t} \sin (\omega_0 t + \varphi) \} \\
&+\omega_0 \{ -C_1 e^{\lambda t} \sin(\omega_0 t + \varphi) + C_2 e^{-\lambda t} \cos (\omega_0 t + \varphi) \}
\end{aligned}
\end{equation}
初期条件として,$x(0)=c >0, \dot{x}(0)=0$とする。
\begin{equation}
\begin{aligned}
c &= C_1 \cos \varphi + C_2 \sin \varphi\\
0 &= \lambda \{ C_1 \cos \varphi - C_2 \sin \varphi \} \\
&+\omega_0 \{ -C_1 \sin \varphi + C_2 \cos \varphi \}
\end{aligned}
\end{equation}
これを解いて,
\begin{equation}
\begin{aligned}
C_1 &= c \dfrac{\lambda \sin \varphi - \omega_0 \cos \varphi}{\lambda \sin 2\varphi -\omega_0}\\
C_2 &= c \dfrac{\lambda \cos \varphi - \omega_0 \sin \varphi}{\lambda \sin 2\varphi -\omega_0}
\end{aligned}
\end{equation}
近似解は,$x(t)=c cos(\omega_0 t)$であるから,$\dot{x} \ x = -\dfrac{c^2}{2} \sin(2\omega_0 t) $ である。したがって,$\delta=\pi/2の場合$
\begin{equation}
{\rm R}= \epsilon(\omega_0^2-\omega^2) \cos (2\omega_0 t + \delta ) \dfrac{c^2}{2} \sin(2 \omega_0 t) = \dfrac{3 \omega_0^2 c^2}{2} \sin^2 (2\omega_0 t) > 0
\end{equation}
となって,エネルギーが増加することがわかる。また,$\delta = 3\pi/2$では符号が逆転する。
2019年11月24日日曜日
パラメータ励振(4)
以下のブランコのモデルに対する解析的な近似解を考える。
\begin{equation}
\begin{aligned}
\ddot{x}+\dfrac{g-\ddot{\ell}}{\ell}x &= 0\\
\ell &= \ell_0(1-\epsilon \cos(\omega t + \delta))\\
g/\ell_0 &= \omega_0^2\\
\end{aligned}
\end{equation}
もとの微分方程式を $x(t), y(t)$ の1階連立微分方程式の形に表す。
\begin{equation}
\begin{aligned}
\dot{x} &= y\\
\dot{y} &= -\{\omega_0^2+\epsilon(\omega_0^2-\omega^2)\ \cos(\omega t + \delta)\}\ x
\end{aligned}
\end{equation}
ここで,$x=a(t) \cos (\omega_0 t + \phi(t)), y= -a \omega_0 \sin (\omega_0 t + \phi(t))$とおいて,
上の連立微分方程式を$a(t), \phi(t) $の連立微分方程式に書き直す。
\begin{equation}
\begin{aligned}
\dot{a} \cos (\omega_0 t + \phi) -a \dot{\phi} \sin (\omega_0 t + \phi) &= 0\\
\dot{a} \sin (\omega_0 t + \phi) +a \dot{\phi} \cos (\omega_0 t + \phi) &= \dfrac{ \epsilon(\omega_0^2-\omega^2)}{\omega_0}\ \cos(\omega t + \delta) a \cos(\omega_0 t + \phi )\\
\end{aligned}
\end{equation}
整理すると次のような2式となる。
\begin{equation}
\begin{aligned}
\dot{a} &= \dfrac{ \epsilon(\omega_0^2-\omega^2)}{2\omega_0}\
\cos(\omega t + \delta) \sin(2 \omega_0 t + 2 \phi ) \ a \\
\dot{\phi} &= \dfrac{ \epsilon(\omega_0^2-\omega^2)}{2\omega_0}\
\cos(\omega t + \delta) \{ 1 + \cos(2 \omega_0 t + 2 \phi ) \} \\
\end{aligned}
\end{equation}
ここで,$\omega = 2 \omega_0$とし,$a(t),\phi(t)$の時間変化が緩いとして上式の右辺を$t=0$から周期$T=2 \pi/\omega$まで時間で積分した量を周期で割った量で置き換える。
\begin{equation}
\begin{aligned}
\dot{a} &= \dfrac{\omega}{2\pi} \int_0^{2\pi/\omega} \dfrac{\epsilon (\omega_0^2-\omega^2)}{2 \omega_0} \cos(\omega t + \delta) \sin(2 \omega_0 t + 2 \phi ) \ a dt\\
\dot{\phi} &= \dfrac{\omega}{2\pi} \int_0^{2\pi/\omega} \dfrac{\epsilon (\omega_0^2-\omega^2)}{2 \omega_0} \cos(\omega t + \delta) \{ 1 + \cos(2 \omega_0 t + 2 \phi ) \} dt
\end{aligned}
\end{equation}
このようにして平均化された$\dot{a},\dot{\phi}$に対して次式が成り立つ。
\begin{equation}
\begin{aligned}
\lambda &= \dfrac{\omega}{2\pi}\dfrac{\epsilon (\omega_0^2-\omega^2)}{4 \omega_0}\\
\dot{a} &= - \lambda \sin (\delta - 2 \phi) \ a \\
\dot{\phi} &= \lambda \cos (\delta - 2 \phi) \\
\end{aligned}
\end{equation}
さらに,$u=a \cos \phi, v= a \sin \phi$と置き上式を代入して加法定理を用い,さらに整理すると,
\begin{equation}
\begin{aligned}
\dot{u} &= \dot{a} \cos \phi - a \dot{\phi} \sin \phi = -\lambda a \sin (\delta - \phi)
= -\lambda (u \sin \delta - v \cos \delta)\\
\dot{v} &= \dot{a} \sin \phi + a \dot{\phi} \cos \phi = \lambda a \cos (\delta - \phi)
= \lambda (u \cos \delta + v \sin \delta)
\end{aligned}
\end{equation}
結局,
\begin{equation}
\dfrac{d}{dt}\begin{pmatrix} u \\ v \end{pmatrix}
= \lambda \begin{pmatrix} - \sin \delta & \cos \delta \\ \cos \delta & \sin \delta \end{pmatrix} \begin{pmatrix} u \\ v \end{pmatrix}
\end{equation}
さらに,$(u,v)=(A,B)e^{p \lambda t}$と置くと,
\begin{equation}
\begin{pmatrix} p+ \sin \delta & -\cos \delta \\ -\cos \delta & p-\sin \delta \end{pmatrix} \begin{pmatrix} A \\ B \end{pmatrix}=0
\end{equation}
自明でない解を持つ条件から,$p^2-\sin^2 \delta -\cos^2 \delta =0$より,$p=\pm 1$
$p=1$の場合
\begin{equation}
(1+\sin \delta)A -\cos\delta B=0 \quad \therefore (A,B)=(\sqrt{\dfrac{1-\sin \delta}{2}}, \sqrt{\dfrac{1+\sin \delta}{2}})\\
a=e^{\lambda t}, \quad \cos\phi = \sqrt{\dfrac{1-\sin \delta}{2}}, \quad \sin \phi = \sqrt{\dfrac{1+\sin \delta}{2}}
\end{equation}
$p=-1$の場合
\begin{equation}
(-1+\sin \delta)A -\cos\delta B=0 \quad \therefore (A,B)=(\sqrt{\dfrac{1+\sin \delta}{2}},
-\sqrt{\dfrac{1-\sin \delta}{2}})\\
a=e^{-\lambda t}, \quad \cos\phi = \sqrt{\dfrac{1+\sin \delta}{2}}, \quad \sin \phi =
-\sqrt{\dfrac{1-\sin \delta}{2}}
\end{equation}
したがって,$x=a \cos (\omega_0 t + \phi)$の一般解は,2つのモードの重ね合わせとして表現される。
\begin{equation}
x(t)=\ell(t) \theta(t) = C_1 e^{\lambda t} \cos (\omega_0 t+ \varphi)
+ C_2 e^{-\lambda t} \sin (\omega_0 t+ \varphi)\\
\varphi = \tan^{-1}\sqrt{\dfrac{1+\sin \delta}{1-\sin \delta}}
\end{equation}
$\omega = 2\omega_0$としたので,$\lambda = -\dfrac{3 \epsilon \omega_0^2}{4 \pi} < 0$である。$\delta=\pi/2$の場合,指数関数的に増大する項は,$C_2 e^{-\lambda t} \cos(\omega_0 t)$という形になる。
参考文献
[1]対話・非線形振動(楽しい物理ノート KENZOU)
[2]Parametirc Oscillator(Wikipedia en:)
\begin{equation}
\begin{aligned}
\ddot{x}+\dfrac{g-\ddot{\ell}}{\ell}x &= 0\\
\ell &= \ell_0(1-\epsilon \cos(\omega t + \delta))\\
g/\ell_0 &= \omega_0^2\\
\end{aligned}
\end{equation}
もとの微分方程式を $x(t), y(t)$ の1階連立微分方程式の形に表す。
\begin{equation}
\begin{aligned}
\dot{x} &= y\\
\dot{y} &= -\{\omega_0^2+\epsilon(\omega_0^2-\omega^2)\ \cos(\omega t + \delta)\}\ x
\end{aligned}
\end{equation}
ここで,$x=a(t) \cos (\omega_0 t + \phi(t)), y= -a \omega_0 \sin (\omega_0 t + \phi(t))$とおいて,
上の連立微分方程式を$a(t), \phi(t) $の連立微分方程式に書き直す。
\begin{equation}
\begin{aligned}
\dot{a} \cos (\omega_0 t + \phi) -a \dot{\phi} \sin (\omega_0 t + \phi) &= 0\\
\dot{a} \sin (\omega_0 t + \phi) +a \dot{\phi} \cos (\omega_0 t + \phi) &= \dfrac{ \epsilon(\omega_0^2-\omega^2)}{\omega_0}\ \cos(\omega t + \delta) a \cos(\omega_0 t + \phi )\\
\end{aligned}
\end{equation}
整理すると次のような2式となる。
\begin{equation}
\begin{aligned}
\dot{a} &= \dfrac{ \epsilon(\omega_0^2-\omega^2)}{2\omega_0}\
\cos(\omega t + \delta) \sin(2 \omega_0 t + 2 \phi ) \ a \\
\dot{\phi} &= \dfrac{ \epsilon(\omega_0^2-\omega^2)}{2\omega_0}\
\cos(\omega t + \delta) \{ 1 + \cos(2 \omega_0 t + 2 \phi ) \} \\
\end{aligned}
\end{equation}
ここで,$\omega = 2 \omega_0$とし,$a(t),\phi(t)$の時間変化が緩いとして上式の右辺を$t=0$から周期$T=2 \pi/\omega$まで時間で積分した量を周期で割った量で置き換える。
\begin{equation}
\begin{aligned}
\dot{a} &= \dfrac{\omega}{2\pi} \int_0^{2\pi/\omega} \dfrac{\epsilon (\omega_0^2-\omega^2)}{2 \omega_0} \cos(\omega t + \delta) \sin(2 \omega_0 t + 2 \phi ) \ a dt\\
\dot{\phi} &= \dfrac{\omega}{2\pi} \int_0^{2\pi/\omega} \dfrac{\epsilon (\omega_0^2-\omega^2)}{2 \omega_0} \cos(\omega t + \delta) \{ 1 + \cos(2 \omega_0 t + 2 \phi ) \} dt
\end{aligned}
\end{equation}
このようにして平均化された$\dot{a},\dot{\phi}$に対して次式が成り立つ。
\begin{equation}
\begin{aligned}
\lambda &= \dfrac{\omega}{2\pi}\dfrac{\epsilon (\omega_0^2-\omega^2)}{4 \omega_0}\\
\dot{a} &= - \lambda \sin (\delta - 2 \phi) \ a \\
\dot{\phi} &= \lambda \cos (\delta - 2 \phi) \\
\end{aligned}
\end{equation}
さらに,$u=a \cos \phi, v= a \sin \phi$と置き上式を代入して加法定理を用い,さらに整理すると,
\begin{equation}
\begin{aligned}
\dot{u} &= \dot{a} \cos \phi - a \dot{\phi} \sin \phi = -\lambda a \sin (\delta - \phi)
= -\lambda (u \sin \delta - v \cos \delta)\\
\dot{v} &= \dot{a} \sin \phi + a \dot{\phi} \cos \phi = \lambda a \cos (\delta - \phi)
= \lambda (u \cos \delta + v \sin \delta)
\end{aligned}
\end{equation}
結局,
\begin{equation}
\dfrac{d}{dt}\begin{pmatrix} u \\ v \end{pmatrix}
= \lambda \begin{pmatrix} - \sin \delta & \cos \delta \\ \cos \delta & \sin \delta \end{pmatrix} \begin{pmatrix} u \\ v \end{pmatrix}
\end{equation}
さらに,$(u,v)=(A,B)e^{p \lambda t}$と置くと,
\begin{equation}
\begin{pmatrix} p+ \sin \delta & -\cos \delta \\ -\cos \delta & p-\sin \delta \end{pmatrix} \begin{pmatrix} A \\ B \end{pmatrix}=0
\end{equation}
自明でない解を持つ条件から,$p^2-\sin^2 \delta -\cos^2 \delta =0$より,$p=\pm 1$
$p=1$の場合
\begin{equation}
(1+\sin \delta)A -\cos\delta B=0 \quad \therefore (A,B)=(\sqrt{\dfrac{1-\sin \delta}{2}}, \sqrt{\dfrac{1+\sin \delta}{2}})\\
a=e^{\lambda t}, \quad \cos\phi = \sqrt{\dfrac{1-\sin \delta}{2}}, \quad \sin \phi = \sqrt{\dfrac{1+\sin \delta}{2}}
\end{equation}
$p=-1$の場合
\begin{equation}
(-1+\sin \delta)A -\cos\delta B=0 \quad \therefore (A,B)=(\sqrt{\dfrac{1+\sin \delta}{2}},
-\sqrt{\dfrac{1-\sin \delta}{2}})\\
a=e^{-\lambda t}, \quad \cos\phi = \sqrt{\dfrac{1+\sin \delta}{2}}, \quad \sin \phi =
-\sqrt{\dfrac{1-\sin \delta}{2}}
\end{equation}
したがって,$x=a \cos (\omega_0 t + \phi)$の一般解は,2つのモードの重ね合わせとして表現される。
\begin{equation}
x(t)=\ell(t) \theta(t) = C_1 e^{\lambda t} \cos (\omega_0 t+ \varphi)
+ C_2 e^{-\lambda t} \sin (\omega_0 t+ \varphi)\\
\varphi = \tan^{-1}\sqrt{\dfrac{1+\sin \delta}{1-\sin \delta}}
\end{equation}
$\omega = 2\omega_0$としたので,$\lambda = -\dfrac{3 \epsilon \omega_0^2}{4 \pi} < 0$である。$\delta=\pi/2$の場合,指数関数的に増大する項は,$C_2 e^{-\lambda t} \cos(\omega_0 t)$という形になる。
参考文献
[1]対話・非線形振動(楽しい物理ノート KENZOU)
[2]Parametirc Oscillator(Wikipedia en:)
2019年11月23日土曜日
パラメータ励振(3)
ブランコのモデルでは,重心の位置が振動の両端で最も高くなるのが良いのだと思い込んでいた。そのため,前回のモデルでは,$\epsilon=a/\ell_0 > 0$として,$\ell=\ell_0 (1-\epsilon \cos \omega t)$と考えた。つまり,$t=0$と$t=2\pi/\omega$で,$\ell=\ell_0 (1-\epsilon)$と重心が高くなり,$t=\pi/\omega$で,$\ell=\ell_0 (1+\epsilon)$と重心が低くなるわけだ。
しかし,どうやらそうではなかった。$\ell=\ell_0 (1-\epsilon \cos (\omega t + \pi/2))$のときに,最も励振が大きくなるのだ。前半の1/4周期に重心の落ちる速度が正,後半の1/4周期に重心の落ちる速度が負になるような運動の場合で,こちらの方が実際のブランコの漕ぎ方に直感的に一致しているような気がする。
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d = Pi/2; e = 0.05; w0 = Pi; w = 2 w0;
Table[sol[i] = NDSolve[{x''[t] +
2 e w Sin[w t + d*i] /(1 - e Cos[w t + d*i]) x'[t] +
w0^2/(1 - e Cos[w t + d*i]) x[t] == 0, x[0] == 0.1,
x'[0] == 0}, x, {t, 0, 150}], {i, 0, 3}];
f[i_, t_] := x[t] /. sol[i][[1]]
Plot[Evaluate@Table[f[i, t], {i, 0, 3}], {t, 0, 10},
PlotRange -> {-0.4, 0.4}, PlotStyle -> {Red, Gray, Blue, Black}]
しかし,どうやらそうではなかった。$\ell=\ell_0 (1-\epsilon \cos (\omega t + \pi/2))$のときに,最も励振が大きくなるのだ。前半の1/4周期に重心の落ちる速度が正,後半の1/4周期に重心の落ちる速度が負になるような運動の場合で,こちらの方が実際のブランコの漕ぎ方に直感的に一致しているような気がする。
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d = Pi/2; e = 0.05; w0 = Pi; w = 2 w0;
Table[sol[i] = NDSolve[{x''[t] +
2 e w Sin[w t + d*i] /(1 - e Cos[w t + d*i]) x'[t] +
w0^2/(1 - e Cos[w t + d*i]) x[t] == 0, x[0] == 0.1,
x'[0] == 0}, x, {t, 0, 150}], {i, 0, 3}];
f[i_, t_] := x[t] /. sol[i][[1]]
Plot[Evaluate@Table[f[i, t], {i, 0, 3}], {t, 0, 10},
PlotRange -> {-0.4, 0.4}, PlotStyle -> {Red, Gray, Blue, Black}]
#
# 振幅をPi/4に強調した重心の軌跡
g1=ParametricPlot[ Evaluate@Table[{(1 - e Cos[w t + d0*i]) Cos[w0 t], -(1 - e Cos[w t + d0*i]) Sin[w0 t]}, {i, 0, 3}], {t, 0, 2 Pi/w}, PlotStyle -> {Red, Gray, Blue, Black},
PlotRange -> {{-0.8, 0.8}, {-1.2, 0}}]
g2 = Plot[-Abs[x], {x, -1/Sqrt[2], 1/Sqrt[2]}, PlotRange -> {{-0.8, 0.8}, {-1.2, 0}}]
Show[g1,g2]
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -PlotRange -> {{-0.8, 0.8}, {-1.2, 0}}]
g2 = Plot[-Abs[x], {x, -1/Sqrt[2], 1/Sqrt[2]}, PlotRange -> {{-0.8, 0.8}, {-1.2, 0}}]
Show[g1,g2]
図 パラメタ励振(位相d = 0赤,Pi/2灰,Pi青,3Pi/2黒)
2019年11月22日金曜日
パラメータ励振(2)
ブランコのパラメータ励振単振子モデルをMathematicaで解いてみる。
$\epsilon = a / \ell_0$は,重心の上下振幅$a$ともとの振り子の長さ$\ell_0$の比であり,$\omega_0= \sqrt{g/\ell_0}$は重心が動かない場合の振り子の固有角振動数だ。
\begin{equation*}
\ddot{\phi} + \epsilon \sin \omega t \ \dot{\phi} + \omega_0^2 (1+\epsilon \cos\omega t) \phi = 0
\end{equation*}
重心の上下振動の振動数を振り子の振動数の2倍にしたときに励振が起こる。
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e = 0.05; w0 = 3; w = 2 w0;
sol = NDSolve[{x''[t] + 2 e w Sin[w t] x'[t]
+ w0^2 (1 + e Cos[w t]) x[t] == 0,
x[0] == 0.1, x'[0] == 0}, x, {t, 0, 30}];
f[t_] := x[t] /. sol[[1]]
Plot[f[t], {t, 0, 20}]
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図 パラメータ励振の数値計算例
$\epsilon = a / \ell_0$は,重心の上下振幅$a$ともとの振り子の長さ$\ell_0$の比であり,$\omega_0= \sqrt{g/\ell_0}$は重心が動かない場合の振り子の固有角振動数だ。
\begin{equation*}
\ddot{\phi} + \epsilon \sin \omega t \ \dot{\phi} + \omega_0^2 (1+\epsilon \cos\omega t) \phi = 0
\end{equation*}
重心の上下振動の振動数を振り子の振動数の2倍にしたときに励振が起こる。
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e = 0.05; w0 = 3; w = 2 w0;
sol = NDSolve[{x''[t] + 2 e w Sin[w t] x'[t]
+ w0^2 (1 + e Cos[w t]) x[t] == 0,
x[0] == 0.1, x'[0] == 0}, x, {t, 0, 30}];
f[t_] := x[t] /. sol[[1]]
Plot[f[t], {t, 0, 20}]
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図 パラメータ励振の数値計算例
2019年11月21日木曜日
パラメータ励振(1)
物理Ⅲの授業は来週中間テストでいよいよ後半戦に向う。テーマは振動と波動で,小形正男さんの裳華房の振動・波動をテキストにしている。第5章の減衰振動と強制振動のところだ。小学校5年生の振り子の単元でもブランコを説明に遣うが,ここでも強制振動の説明にブランコをイメージしてもらう。ところが他人に押してもらわない自分で漕ぐブランコは,パラメータ励振で説明しなければならない。
ブランコのモデルとしてひもの長さが与えられた時間の関数として変化する単振り子を考える。運動を記述する変数として,鉛直方向からの振り子のなす角度を $\phi(t)$ とする。支点のまわりの角運動量は,$L=m\ell ^2 \dot{\phi}$ であり,支点のまわりの重力のモーメントは $N=-mg\sin \phi$ から,運動方程式$\dfrac{d}{dt}L=N$ は,$m \dfrac{d}{dt}(\ell^2 \phi) = -m g \sin \phi$ となり,微小振動を仮定して整理すると,$\ddot{\phi} + 2\dfrac{\dot{\ell}}{\ell}\dot{\phi} + \dfrac{g}{m} \phi = 0$ を得る。
例えば,$\ell(t) = \ell_0 - a \cos \omega t$ に対して,この方程式が簡単に解ければ,初等的な力学の教科書に例題としてどんどん載せればいいようなものだけれど,そうは問屋が卸さないのだった。ちなみにこの場合の近似運動方程式は,$\epsilon = a / \ell_0$,$\omega_0
= \sqrt{g/\ell}$として,次のようになる。
\begin{equation*}
\ddot{\phi} + \epsilon \sin \omega t \ \dot{\phi} + \omega_0^2 (1+\epsilon \cos\omega t) \phi = 0
\end{equation*}
ブランコのモデルとしてひもの長さが与えられた時間の関数として変化する単振り子を考える。運動を記述する変数として,鉛直方向からの振り子のなす角度を $\phi(t)$ とする。支点のまわりの角運動量は,$L=m\ell ^2 \dot{\phi}$ であり,支点のまわりの重力のモーメントは $N=-mg\sin \phi$ から,運動方程式$\dfrac{d}{dt}L=N$ は,$m \dfrac{d}{dt}(\ell^2 \phi) = -m g \sin \phi$ となり,微小振動を仮定して整理すると,$\ddot{\phi} + 2\dfrac{\dot{\ell}}{\ell}\dot{\phi} + \dfrac{g}{m} \phi = 0$ を得る。
例えば,$\ell(t) = \ell_0 - a \cos \omega t$ に対して,この方程式が簡単に解ければ,初等的な力学の教科書に例題としてどんどん載せればいいようなものだけれど,そうは問屋が卸さないのだった。ちなみにこの場合の近似運動方程式は,$\epsilon = a / \ell_0$,$\omega_0
= \sqrt{g/\ell}$として,次のようになる。
\begin{equation*}
\ddot{\phi} + \epsilon \sin \omega t \ \dot{\phi} + \omega_0^2 (1+\epsilon \cos\omega t) \phi = 0
\end{equation*}
2019年11月20日水曜日
眉村卓
11月3日に眉村卓が亡くなった。中学生のころからSFを意識して読み始めるようになった。その当時の日本のSF作家では,小松左京,筒井康隆,星新一に次いで読んでいたのが眉村卓かもしれない。阪大経済学部で柔道部というところにもちょっと引っ掛かったかもしれない。眉村の作品で書棚に並んでいるものを調べてみた。燃える傾斜(ハヤカワ文庫),準B級市民(ハヤカワSFシリーズ),万国博がやってくる(ハヤカワSFシリーズ),幻影の構成(世界SF文学全集),EXPO87(日ハヤカワ文庫),滅びざるもの(徳間文庫),消滅の光輪(ハヤカワ文庫),司政官全短編(創元文庫)などであり,1960年から70年代にかけての作品に集中している。
眉村卓といえばインサイダー文学論だ。コリン・ウィルソンのアウトサイダーは大学に入ってから非常に興味深く読んだ。ただ,この実存主義的なアウトサイダーとインサイダー文学論のインサイダーはベクトルの向きが正反対というわけではないかもしれない。それでもSF読者としては,アウトサイダーという立場がなぜかしっくり来ることが多い。そう,自分が普通の人類と違っていたらどうだろうというあの感覚だ。
インサイダー文学論は,SFの対象として,そのようなアウトサイダー的傾向に親和的な層だけではなく,社会組織の中で歯車として生きているインサイダー層にフォーカスするような作品が必要であるという眉村自身の創作の立場を説明するものだ。それは初期作品にも見られたし,中期から後期にかけての司政官シリーズで端的に表現されていたのだと思う。
[1]私の失敗「眉村卓さん」(産経新聞文化部)
[2]眉村卓『司政官 全短編』あとがき(2008年1月)
[3]眉村卓『消滅の光輪』あとがき(2008年7月)
[4]眉村卓「霧を行く」(橄欖追放,東郷雄二)
眉村卓といえばインサイダー文学論だ。コリン・ウィルソンのアウトサイダーは大学に入ってから非常に興味深く読んだ。ただ,この実存主義的なアウトサイダーとインサイダー文学論のインサイダーはベクトルの向きが正反対というわけではないかもしれない。それでもSF読者としては,アウトサイダーという立場がなぜかしっくり来ることが多い。そう,自分が普通の人類と違っていたらどうだろうというあの感覚だ。
インサイダー文学論は,SFの対象として,そのようなアウトサイダー的傾向に親和的な層だけではなく,社会組織の中で歯車として生きているインサイダー層にフォーカスするような作品が必要であるという眉村自身の創作の立場を説明するものだ。それは初期作品にも見られたし,中期から後期にかけての司政官シリーズで端的に表現されていたのだと思う。
[1]私の失敗「眉村卓さん」(産経新聞文化部)
[2]眉村卓『司政官 全短編』あとがき(2008年1月)
[3]眉村卓『消滅の光輪』あとがき(2008年7月)
[4]眉村卓「霧を行く」(橄欖追放,東郷雄二)
2019年11月19日火曜日
スピン
日本の主な国語辞典のスピンの項目には,まだスピン(パブリック・リレーションズ)としての語意が載っていない。英語版のWikipediaでは,Spin(Propaganda)となっていて,日本でよく用いられるスピン報道とは若干ニュアンスが違うような気もする。
マスコミは基本的に読者の目を引いてメディアへのアクセスを増やし,広告の獲得や購買につながるニュースを仕立てている。その事情を熟知していて,かつ,自由に情報発信を制御できる政府は,あたかも自然現象のようにニュースを作ることができるかもしれない。
[1]「桜を見る会」と芸能報道から考える「結果スピン」の効能(荻上チキ)
マスコミは基本的に読者の目を引いてメディアへのアクセスを増やし,広告の獲得や購買につながるニュースを仕立てている。その事情を熟知していて,かつ,自由に情報発信を制御できる政府は,あたかも自然現象のようにニュースを作ることができるかもしれない。
[1]「桜を見る会」と芸能報道から考える「結果スピン」の効能(荻上チキ)
2019年11月18日月曜日
公共財としての教育ビッグデータ(2)
例えば,JAPAN e-Portfolio は関連大学が構成員となる一般社団法人教育情報管理機構が運用主体となっている。その会員についてのページを見ると,正会員は大学である。国立大学が6法人,公立大学が3法人,私立大学が18法人となっている。賛助会員には教育産業の企業が名を連ねている。ベネッセが含まれる特別賛助会員が4社,指定賛助会員が4社,賛助会員が1社である。年会費300万円特別賛助会員の説明は以下の通り。
当該会員が運営する学習支援システム事業,ポートフォリオ事業,SNS事業,データベース事業等これらに類する事業において取得したデータ又は本機構が運営する高大接続ポータルサイト「JAPAN e-Portfolio」(以下、「JeP」という。)が所有するデータ等,JePに連携し,蓄積した情報を活用して事業を行う会員が支払う会費ベネッセの個人情報漏れが起こったときには,これでもうおしまいだなと思ったのだが,あっという間に,復活を果たしただけでなく,ありとあらゆる教育公共事業案件に首を突っ込み,この優位性を背景に各学校への攻勢を強めている。これまでは,全国学力テストだったが,これに加えて,大学入試共通テストや,高校生のポートフォリオなど膨大なデータを手中に収めようとしている。このままでいけば文部科学省は民営化されて,ベネッセに取って代わられる日も近い。
*『「JAPAN e-Portfolio」(以下、「JeP」という。)が所有するデータ等」』とは「JAPAN e-Portfolio」の入力項目などシステム本体の情報を指します。生徒が「JAPAN e-Portforio」に入力し,蓄積された個人情報は,一切共有されることはありません。
2019年11月17日日曜日
公共財としての教育ビッグデータ(1)
日経朝刊で,公正取引委員会の杉本和行委員長が,「医療や金融分野などのビッグデータは多くの事業者が利用可能な「公共財」になりうるとの考え方を示した」。ここには教育分野が含まれていないが,まさに公共財として位置づけて,広く公開と流通を図ることが必要な部分は含まれているはずだ。もちろん,個人情報の機微に関る部分も多いため,その取り扱いにも注意は必要だが,それは医療や金融でも同じことだ。
数年前から清和会・政府の進めている教育政策の特徴は,一つには右翼的イデオロギー貫徹による教育支配であり,もう一つが,公共財としての教育を売り払う利権支配である。そして,その矛盾が噴出したのが,森友・加計・大学入試問題だ。巷では,モリ・カケ・サクラとして安倍の不正をあげつらっているが,本当にこわいのは,もてあそばれている日本の教育システムの破壊ではないのか。
岡山という地域をベースにしたベネッセと加計学園グループの深い結びつきについては,いろいろとネット上に情報が流れているが,そこに様々な公益法人や文部科学省からの天下りなどが絡み合い,複雑な病巣を構成している。そこに巣食う企業人や大学人や官僚崩れが,トップダウンの準公的な諮問会議や私的なワーキンググループを隠れみのに互いの利権を貪りながら,十分に吟味されておらず,当事者や専門家を排除した政策を立案している。
[1]教育情報管理機構(JAPAN e-Portfolioの実施大学の団体+特定賛助会員など)
[2]進学基準機構(佐藤禎一が理事長のベネッセ系一般財団法人)
[3]学力評価研究機構(ベネッセグループの株式会社)
[4]福武教育文化振興財団(ベネッセグループの公益財団法人)
[5]高校生のための学びの基礎診断(文部科学省)
数年前から清和会・政府の進めている教育政策の特徴は,一つには右翼的イデオロギー貫徹による教育支配であり,もう一つが,公共財としての教育を売り払う利権支配である。そして,その矛盾が噴出したのが,森友・加計・大学入試問題だ。巷では,モリ・カケ・サクラとして安倍の不正をあげつらっているが,本当にこわいのは,もてあそばれている日本の教育システムの破壊ではないのか。
岡山という地域をベースにしたベネッセと加計学園グループの深い結びつきについては,いろいろとネット上に情報が流れているが,そこに様々な公益法人や文部科学省からの天下りなどが絡み合い,複雑な病巣を構成している。そこに巣食う企業人や大学人や官僚崩れが,トップダウンの準公的な諮問会議や私的なワーキンググループを隠れみのに互いの利権を貪りながら,十分に吟味されておらず,当事者や専門家を排除した政策を立案している。
[1]教育情報管理機構(JAPAN e-Portfolioの実施大学の団体+特定賛助会員など)
[2]進学基準機構(佐藤禎一が理事長のベネッセ系一般財団法人)
[3]学力評価研究機構(ベネッセグループの株式会社)
[4]福武教育文化振興財団(ベネッセグループの公益財団法人)
[5]高校生のための学びの基礎診断(文部科学省)
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