2023年7月6日木曜日

大学教育とChatGPT(12)

大学教育とChatGPT(11)からの続き

ChatGPTにもそろそろみんな飽きてきたけれど,世間ではまだダラダラと続いている。GPT-4も最近はどうも調子がすぐれない。難しい問い対してブチ切れてしまう現象が頻発している。最新のデータにアクセスできるBing連携の部分も公開が停止されてしまった。かといって,Bard,Perplexity,Bingなどがイマイチである状況には変わりがない。

そうこうしているうちに,国産LLMのニュースがいろいろと入ってきた。しかしそれらは企業・行政向けや研究開発用の特殊なシステムを指向している。いずれもパラメタ数が数十B以下の小規模LLMなのだ。良質な日本語テキストをたっぷりと学習させた,自由に使える標準的な日本語LLMが現れてほしい。
6月28日
ChatGPT等の生成AIについて
常磐大学 学事センター長 河野敬一・学生支援センター長 菅田浩一郎

6月29日
佐賀大学における生成AI を始めとするデジタル技術の利活用に関する基本方針について
佐賀大学

6月29日
Chat GPT等の利用について
周南公立大学 副学長(教学担当) 渡部明

6月29日
学修における生成系AIの使用について
恵泉女学園大学

6月30日
生成AIの使用に関する注意喚起
奈良教育大学 副学長(教育担当) 越野和之

7月1日
金城大学生成AI(ChatGPT、Midjourney等)の活用に関する基本的な考え方
金城大学 学長 米島學

7月3日
生成系AIの利活用に係る注意喚起
筑波技術大学 情報処理通信センター

7月3日
生成AI活用に関するガイドライン(学生向け)(ver. 1.0)について
島根県立大学 学長 山下一也

7月3日
ChatGPTをはじめとする生成系AI利用についての本学の基本的な考え方
沖縄大学 学長 山代寛

7月3日
京都府立大学生成AI利用ガイドラインの策定
京都府立大学 AIデータサイエンス教育研究センター

7月4日
ChatGPT等の生成系AIの利用について
日本社会事業大学

7月4日
仁愛大学におけるChat GPT等生成系AIの活用に係る基本方針
仁愛大学 学長 田代俊孝

2023年7月5日水曜日

生成AI学校向けガイドライン

7月4日,文部科学省は,日本の初等中等教育の学校を管理している各都道府県・各指定都市教育委員会教育長や都道府県知事などに対して「初等中等教育段階における生成 AI の利用に関する暫定的なガイドライン」の 作成についてという通知を発出した。

マスコミのニュースを聞く限り,例によって,各大学のガイドラインのような生ぬるいものがでてきたのかと思っていた。ところが,現物は24ページ相当のプレゼン資料を含めて16ページという,かなり気合いが入ったものだった。

ところでその中身をみると,山越えの暗い見通しの悪い道を,車内からワァーワァーいわれて,アクセルとブレーキを踏みながらとばしているような微妙なことになっている。

ポイントは,(1) 利用規約を守れ(ChatGPTは13歳以上+18才までは保護者同意,Bingは未成年には保護者同意が必要,Bardは18歳以上),(2) パイロット的な取り組みを進めよ,(3) 一般の学校はおとなしくせよ,というものだった。AI以前の話なのだけれど「全ての学校で,情報の真偽を確かめること(いわゆるファクトチェック)の習慣付けも含め・・・」とか,そもそも大人ができていないのでは・・・。

一番言いたかったのではないかと思われる事項は,チェックリストの第8項目にあった。
 「読書感想文などを⻑期休業中の課題として課す場合には,AIによる生成物を自己の成果物と して応募・提出することは不適切又は不正な行為であること,自分のためにならないことなどを十分に指導しているか。保護者に対しても,生成AIの不適切な使用が行われないよう,周知・理 解を得ているか」

追伸:この通知を出したのは,初等中等教育局長の藤原章夫さんだ。平成24年(2012年),学長・事務局長らと文部科学省に行ったあと新橋あたりの居酒屋で一度会っている。そのときは,初中局の教職員課長だったのか。大阪教育大学は教職大学院の設置申請を計画中であり,新任の事務局長の若井祐次さんが大学振興課の方々と併せてセッティングした。長尾先生と栗林先生はそれについて若井さんを大層評価していた。藤原さんがかつてフランス大使館にいたころのことが話題になっていたが,ひたすらよろしくお願いします的なことで終始していた。

2023年7月4日火曜日

シンセティック・メディア(3)

シンセティック・メディア(2)からの続き

シンセティック・メディア=マルチモーダルなAI技術による仮想人格的インターフェースだとすると,その適用分野や帰結がどうなるのかが気になる。想定される分野を考えてみると,結局,新聞紙面のようなことになるような気がしてきた。

図:シンセティック・メディアの主な適用分野


個別に何が起こるか考えようと思ったが,そもそも生成系AIがどのように利用できるかというと,(1) 対話型モード,(2) 一括処理モード になる。昔の会話型TSS処理とバッチ処理の再来だ。シンセティック・メディアが有効なのは,前者の対話型モードの場合だろう。

対話型モードを使うときに,自分が,(1) 受信サイドなのか,(2) 発信サイドなのかで意味が異なってくる。とりあえず,利用のための必要条件やリソース等を度外視して考える。

(1) 受信サイドでは,自分の疑問に対して対話的に回答を得ること,対話型でコンテンツ・リソースを創作すること,共感を得るための対話相手としての時間を費やすこと,などがあげられる。本や論文の単なる要約だけならば,バッチで十分である。多くの場合,ある種の専門家としての仮想人格が必要になる。

 (2) 発信サイドでは,自分の分身を作成しておけば,時間と空間の制約を越えて,多数の人と対話しながらメッセージを伝えることができる。ただ,普通の人がSNSで発信するのはいいとして,視聴者がさらに対話的に深いコミュニケーションを取りたいとなるようなケースはそれほど多いのかという疑問は残る。

これらを別に視点から見ると,(1) 専門家としての仮想人格と,(2) 友人としての仮想人格の2種類のニーズが発生するということなのかもしれない。専門家というのは,必ずしも学術分野における研究者やいわゆる専門職だけを指すのではなく,生活や趣味,普通の職業や地域社会などでの現実世界の細部に関する現実の経験を持っているかどうかが鍵になる。

また,上記の仮想人格のそれぞれに対して,(1) 非実在人物に対応,(2) 歴史上の実在人物に対応,(3) 現存の実在人物に対応,の場合が考えられる。仮想人格も著作物になるのだろうか。面倒な話ではある。

さらに人間=現実人格(P)と仮想人格(V)とのコミュニケーションの時空形態からすれば,現在のインターネット・コミュニケーションと同様に考えられる。時間的には,(1) 同時交流(チャットやライブ)と,(2) 遅延交流 (メールやブログ)が,空間的には,(1) 一対一交流(P−V)と (2) 集団交流(P^m ×V^n ) が考えられる。ここで,仮想人格は複数人存在できるということに注意が必要だ。

そうなると最重要問題は,PとVが区別できるかということに帰着するのかもしれない。まさに フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」に登場するフォークト=カンプフ感情移入度検査法 が必要な時代になってしまった。

2023年7月3日月曜日

満月

満月が出てるよというので,ベランダに出て見ると南東の低い空につぶれた楕円形に光る月が出ていた。満月じゃないのではと,iPhoneの六曜で月齢を確認してみると満月でした。

先日の人間ドックでは眼鏡をかけて右眼が0.4,左眼が0.9だった。そんなわけで,裸眼では無限遠方の光点はたいてい歪んでぼやけて見える。早速眼鏡をかけて月の形を確認してみると確かに満月だ。

ところで,なぜこんな低い空にかかっているのかと思ったけれど,良く考えれば,昨日が夏至からおよそ10日後の半夏生。春分や秋分における月の南中高度は90度−緯度である。これに地球の公転面に対する自転軸の傾き23.4度をプラスマイナスしてあげれば,冬至や夏至の南中高度がわかる。

探してみると奈良県の各市町村の緯度経度の値が見つかった。天理市は,東経135.8度,北緯34.7度になるので,夏至における月の南中高度は 90-34.7-23.4=31.9度となる。それは低いわけだ。これが冬至になれば,90-34.7+23.4=78.7度となる。こんなにも違うのか。梅雨時に満月を見ることはあまりなかったので,ちょっとビックリ。

天理市の経度緯度は,市役所の位置だけでなく,東西南北端の値も出ている。このうち西端がいつもの散歩コース上にあり,ファミリー公園のちょっと東側の田んぼの中だ。



図:国土地理院の地形図から天理市西端近傍

2023年7月2日日曜日

雨宮処凛


菅野完の論は,日本の現在の思想状況というか,差別的な態度が根強く蔓延って弱者を圧迫している現状を良く説明するものだと思える。

通俗道徳論≒自己責任論≒新自由主義という近似式から,1945年にリセットされた日本の資本主義が,人権という車輪を欠いたまま曲がって走り続け,その結果,自民党や日本維新の会が力を持っている現状もある程度は納得できる(アメリカによる日本支配の構図との関係がどうなっているかはちょっと・・・)。

もう一つ気になったのは,最近の日本維新の会の著しい成長の原因は何かという時間スケールの問題については,必ずしも満足行く答えを与えていないということだ。そんなとき,マガジン9の「なぜ維新なのかについてのロスジェネ的考察」で,雨宮処凛(1975-)が別の角度から議論していた。"自分の力で" がんばって要約すると次のようなものだ。
○日本維新の会への支持が広がっている。それはなぜか。
○特に「ロスジェネ世代の維新支持」という現象を考察する。
○40代以下の世代(ロスジェネ〜ゆとり・さとり〜)は「経営者マインドや為政者マインドをナチュラルに搭載している」例え,末端労働者であっても。
○彼ら世代には,労働組合や労働運動より「いつか一発逆転すること」の方がずっとずっとリアリティがあるから。
○この世代=雨宮は「自由な時代だから,人は可能性に満ちている。夢をかなえろチャレンジしろ。」という脅迫的な圧力にさらされてきた。
○そのロールモデルは,ホリエモン,ひろゆき,ZOZO前澤やユーチューバ−など,全員トリッキーな一発逆転系自己責任論者である。
○我々はずっと政治にDVを受けている。優しいふりをした人に裏切られるより,最初からひどいとわかってる人の方がまだましという気持ちになる。それは究極の消去法であり,唯一できる無意識の自己防衛だ。
○維新は確実に「どうせ世の中も人間もロクなもんじゃない」ということを体現している。そこが「現実がわかっているリアリスト」とある種の人々には見えてしまう。だからこそ,個別議員の犯罪歴などがこれほど暴かれてもほぼノーダメージという状態に繋がっている。
○我々は理想を語る人がマヌケにしか見えないという世界に住んでいる。現実がひどければひどいほど意地悪そうな人が支持を集め、理想を語る人が嘘つきの詐欺師にしか見えない地獄のような逆説にどうしたら対抗できるのか。

ロスジェネ世代の一発逆転のロールモデルであるYouTuberは,通俗的道徳規範の体現者≒禁欲的なジャパニーズプロテスタントではない。そうではあっても,自己責任論者の一種には違いないわけで,新自由主義との相性は抜群だ。

2023年7月1日土曜日

ロスジェネ世代

ロスジェネ世代という表現がよく用いられるので,この記事で勉強した。しかし,あまりしっくりしないので,GPT-4にきいたりWikipediaで調べた結果,日本におけるジェネレーションについてはおおむね次のようにまとめられそうだ。もちろん年代は厳密なものではない。


1.団塊世代(1947年〜1949年生):第二次世界大戦後のベビーブームにより生まれた世代。経済成長を経験し日本の復興を支えた。

2.(しらけ世代)(1950年〜1964年生):1955年〜1964年生には新人類という名前があるらしいが,1950年〜1954年の我々の世代にはまともな名前がないのだ。第Ⅰ期学習指導要領(規準化+道徳)の世代

3.バブル世代(1965年〜1970年生):バブル経済が最高潮に達した時期に大人になった。そのため、バブル経済の恩恵を受けて育った世代ともいえる。第Ⅱ期学習指導要領(現代化)の世代

4.団塊ジュニア世代(1971年〜1974年生):団塊世代の子供たちにあたる。親の団塊世代が生んだ豊かな時代を享受したが,バブル崩壊の就職氷河期と重なることになった。第Ⅲ期学習指導要領(ゆとりの始まり)の世代

5.就職氷河期世代・ロスジェネ世代(1975年〜1985年生):就職氷河期(バブル崩壊後の厳しい雇用環境)に直面した。そのため以後も経済的に困難な状況に置かれたものが多い。第Ⅲ〜Ⅵ期学習指導要領(プレゆとり)の世代

6.ゆとり世代さとり世代(1986年〜1999年生):学校での競争が緩やかになり,生活ペースが自由になるゆとり教育方針のもとで育った。物欲や出世欲が薄く,現状に満足しているとされる。第Ⅳ・Ⅴ期学習指導要領(ゆとり→生きる力)の世代

7.Z世代(2000年〜2011年生):デジタルネイティブと呼ばれ,インターネットやスマートフォンなどのテクノロジーと共に成長。オンライン上でのコミュニケーションに長け,多様性を尊重する傾向がある。第Ⅵ期学習指導要領(脱ゆとり)の世代

8.α世代(2012年生〜):Z世代以降のテクノロジーを完全に体験して育つ最初の世代。詳細な特性はまだ明確には定まっていない。第Ⅶ期学習指導要領(学び方)の世代


以下の図では,各世代が10歳のときの対応する学習指導要領が並行してわかるようにした欄と,20歳のときの経済状況のイメージをつかむための欄を加えたものを示した。



図:日本の世代と学習指導要領の対比

2023年6月30日金曜日

ヒトは衰退するのか

6月26日の日経朝刊1面トップの記事のタイトルが「ヒトは衰退するのか」だった。テクノ新世 岐路に立つ人類という特集記事の初回なのだ。来月から購読料が値上げされる日経の気分はほとんどSFになっている。他の全国紙ではなかなか考えにくい取り扱いかもしれない。

一つはAIによって,人間の仕事(欧米の場合)の4分の1が自動化されるという話である。これは,ゴールドマン・サックスの2023年3-4月のレポートに基づいているのだけれど,彼らは"Generative AI could raise global GDP by 7%"というタイトルをつけていて,受け取り方や強調の仕方が違う。

もう一つが,地球上の人工物の総重量が生物のそれを越えたというものである。これはワイツマン科学研究所の2020年のnature論文からきているので,早速調べてみたところ原論文が見つかった。なんとなく機械やプラスチックの総量が生き物を越えたのかというイメージだったけれど,そういうわけでもない。


図:地球上の人工物の総重量と生物の総重量(Elhacham et. al. より引用)

上の図が日経朝刊で引用されたものだが,バイオマスの値は乾燥重量であった,人工物は,コンクリート,骨材,レンガ,アスファルトがほとんどを占め,これに金属とプラスティックが続く。下の図では,水を含んだバイオマスの重量の値も示されている,これならば,2037年くらいになる。また,廃棄物がグレーで示されている。こちらもかなりの値になる。

人為的な気候変動説については必ずしも十分には信用できなかったが,これを見ると考えが変わるかもしれない。

2023年6月29日木曜日

大学教育とChatGPT(11)

大学教育とChatGPT(10)からの続き

各大学では,FDやセミナーなどで生成系AIについて取り上げる例が増えている。国立情報学研究所が開催している教育機関DXシンポジウムのシリーズでも,最近の話題の中心は生成系AIだ。大学からの生成系AIの利用に関する注意のほうはまだ続いている。

一方,組織としてこの問題に真正面から積極的に取り組んでいるところはそれほど多くない。例えば,立命館大学の生命科学部の英語授業の取り組みであり,武蔵野美術大学×AIピカソ,AI絵画AWARD である。AI Picassoを使うことで,著作権問題がクリアされるようだ。これは誰でも応募できるということか。新手の受験生募集作戦かもしれない。

森木銀河さんは,生成AIの台頭に応対する大学組織の動向として,テキストの分析をおこなっている。これは5月27日にJAIR(日本IR協会)の研究会で発表されている。
6月20日
ChatGPT 学生向けメッセージ
神戸常盤大学
https://www.kobe-tokiwa.ac.jp/univ/news/79d167af9c48840589cbe01f5c49663d03ef3211.pdf

6月20日
生成系 AI の利用について
畿央大学 教育推進室長 冬木正彦
https://www.kio.ac.jp/wpmlmain/wp-content/uploads/2023/06/AI_20230620.pdf

6月22日
ChatGPT 等の生成系 AI の授業における 利用について
北陸大学教務部長 杉森公一
https://www.hokuriku-u.ac.jp/sptopics/202306221427.html

6月22日
生成系人工知能について~実践的思考力を高めるために~
ルーテル学院大学 学長 石居基夫
https://www.luther.ac.jp/college/president.html#生成系人工知能について

6月23日
生成系AIに関する学生向けガイドライン
麗澤大学副学長(教育担当) 渡邊信・情報教育センター長 吉田健一郎・データサイエンス教育センター長 小塩篤史
https://www.reitaku-u.ac.jp/news/research/1776803/

6月23日
東邦大学における生成系AI の利用に関する方針
東邦大学 学長 高松研
https://www.toho-u.ac.jp/upnews/2023/20230623_1_AI.html

6月23日
生成系AI(ChatGPT、Bing AI、Bard等)の利用に関する留意事項
愛知工科大学 学長 大西正敏
https://www.aut.ac.jp/outline/policy/#anchor04

6月23日
生成AIツールに対する基本的考え方
法政大学 教育開発支援機構 教育開発・学習支援センター
https://www.hoseikyoiku.jp/lf/project/view.php?c=topics_view&pk=1687401621

6月26日
ChatGPT等の生成系AIの利用について
大阪人間科学大学 学長 井上博司
https://www.ohs.ac.jp/fiscal/2023/6573/

6月27日
本学におけるChatGPT等の生成系AIの利用における注意点について
福岡教育大学 学長 飯田慎司
https://www.fukuoka-edu.ac.jp/information/u28vtn00000012lz.html

2023年6月28日水曜日

モバイルICOCA

ついこの間,ICOCAからスマートICOCAに引っ越したばかりなのに,もうモバイルICOCAがiPhoneに対応してしまった。

Suicaは以前からモバイル対応だったのでうらやましかったが,ICOCAも3月のAndroid端末に続いてようやくiOSまで順番が回ってきた。夕方のニュースで見かけて早速トライしたら皆が殺到していた。少しだけ待たされたが,案内行列に並んでいたらしばらくしてOKとの通知があった。

iOSのウォレットを開いて,追加の+メニューから交通系カードを選ぶと,トップにICOCAがでてきたので,SMART ICOCAカードを取り出してiPhoneをかざすだけだ。情報の転送が必要だからだろうか,普通のICカードでの読み取りに比べるとちょっと時間がかかる。

ICOCAアプリのインストールに誘導されたので,こちらもインストールしたけれど,役割分担が今一よくわかっていない。とにかく,ICOCAアプリは使えるようになり待望のオンラインチャージも可能になった。チャージ上限は2万円というのも確認できた。ところで,旧のモバイルICOCAカードのほうはそのまま使えるのだろうか。WESTER アプリで残高確認すると,一応残っているのだ。どういうこと?

検索してもあまり要領を得ない。世界はどんどん複雑になっていって,年寄りはついていくのが大変になる。これに新幹線のスマートEXを組み合わせて使うことになったらどうしようかと思うのだけれど,もう東京に通うこともなくなったので,心配御無用であった。


写真:引き続き使えるのかどうかよくわからなくなった SMART ICOCA

追伸:JRおでかけネットをちゃんと読むと,移行後のICOCAは使えなくなるので破棄せよとのことだった。

推察:夕方にApple Payの障害で,モバイルSUICAが使えなくなっていた。たぶん,アクセスが集中したICOCAのせいではないかと睨んでいるのだがどうだろう。

付録:モバイルICOCAはAndroid用の名前であって iPhoneのそれは ICOCA  Pay らしい。

2023年6月27日火曜日

安丸良夫

通俗道徳と日本資本主義からの続き

菅野完の話は,安丸良夫(1934-2016)の民衆思想史に基づいたものだ。歴史学者というと頭に思い浮かぶのは網野善彦(1928-2004)で,安丸良夫は聞いたこともなかった。

岩波講座の日本歴史はこれまでに5次にわたって出版されているが,その第4次シリーズ(1993-1995)の編集委員が,朝尾直弘・網野善彦・石井進・鹿野政直・早川庄八・安丸良夫だった。なお,第5次シリーズ(2013-2015)の編集委員は,大津透・桜井英治・藤井譲治・吉田裕・李成市であり,こちらで聞いたことがあるのは吉田裕(1954-)くらいか。

安丸良夫は,富山県東礪波郡高瀬村(現在の南砺市森清)の出身なのだが,これはわが家のルーツがある越中桐の木村(南砺市桐木)や松の木村(南砺市松木)から6kmほど東にある。安丸の通った福野高校は5km東だ。真宗篤信地帯の農村出身であることが,その後の彼の思想に大きな影響を与えたとのこと。

1953年に京大文学部に入学し,大学院生のときにアルバイトで大本出口なお(1837-1918)のおふでさきの解読作業に携わる。1965の「日本の近代化と民衆思想」で彼の理論が展開された。戦後日本の啓蒙主義的な時代思潮のなかで前近代的・封建的などとされて来た「通俗道徳」(勤勉、倹約、孝行、正直などの民衆的な日常道徳)が,じつは民衆の自己規律と自己鍛錬の様式であり,それを通じて膨大な人間的エネルギーが発揮され,近代化していく日本社会を基底部で支えた,というものだ(マックス・ヴェーバーのプロ倫を想像すると理解しやすい)。

「歴史をおしすすめる根源的な活動力は民衆自身だ」という主張は,様々な批判や反発を招いたようだが,それに対する安丸の見解は参考文献の[1] [2] にみられる。民衆というキーワードを強調しなければ,菅野完の通俗道徳≒自己責任論≒新自由主義にすんなりつながるのだけれど。

[1]「民衆思想史」の立場(安丸良夫)
[2]「民衆史」と戦後歴史学(安丸良夫)

2023年6月26日月曜日

通俗道徳と日本資本主義


日本会議の研究でおなじみ,天理市出身の菅野完(1974-)が,FaceBookおよびYouTubeで展開していた論(1:08:30あたり->)が腑に落ちた。

その趣旨は次のようなものだ。欧米ではプロテスタンティズムが資本主義を産み出したが,日本では江戸時代に上方で商品経済の勃興とともに発生した通俗道徳がその後の資本主義発展に大きな役割を果たした。

通俗道徳というのは,「勤勉・倹約・礼儀・孝行などの道徳的規範を履行していれば富や幸福が訪れる」というものだ。それ以前は「全ては前世の宿業」という仏教的な因縁思想が主流だった。通俗道徳により,成功している人=道徳的規範を履行した人,不幸な人=道徳的規範の履行に欠損がある人,という認知が進むことになる。

ある人が不幸な場合,その原因は本人の道徳的瑕疵に着せられ,社会構造への批判的検討や歴史的経緯に対する考察は入りえない。不幸な人が告発する行為は,礼儀という徳目違反と見なされて,さらに不道徳ポイントが追加される。それだけでなく,成功者がこの不道徳事例を見逃すことによる減点をさけるために,不幸な告発者への道徳的批判に邁進することになる。

このような通俗道徳の土壌の上には「人権」や「権利」などの意識は芽生えようがない。欧米(プロテスタンティズム)では全ての人が神との平等な契約にさらされており,これによって人権意識が育まれたのとは大きな違いがある。

そのため,日本の資本主義は欧米のそれとは異なり,人権という片方の車輪を欠いたまま成長してしまったというわけだ。1945年の敗戦で,脱輪はいったん解消されたが,その後75年経過して再び脱輪の道を進んでいる。実際,女性差別,外国人差別,LGBTQ差別,などは放置されたまま,いや悪化の一途を辿っている。これが菅野完の論のあらすじだった。

結論:通俗道徳論 ≒ 自己責任論 ≒ 日本型新自由主義(自民党・維新支持者の論理)
noiehoieさんには「通俗道徳の倫理と資本主義の精神」という新書をはやく書いてほしい。


2023年6月25日日曜日

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神

1972年,大学に入りたてのころは知的好奇心のポテンシャルにあふれていた。梅棹忠夫岩波新書青版の知的生産の技術に影響されていた頃だ。毎年100冊近い本(まあ半分以上文庫のSFや小説なのだが)を読んで,京大式カードにチャレンジし(1週間で挫折),NHKの生物工学の講座を視聴し(基礎工に潜ったほうがはやい),街を歩いた。

岩波書店の「図書」も新刊本の情報収集のために購読していた。年100円?と安かった。面倒だったので封筒に100円玉を入れて送ったら,郵便局から突き返されてきた。その図書に岩波の文化講演会の案内が載っていた。

京都の国際会議場だかどこかで夕方から無料で開催されるものに,分子生物学の渡辺格(1916-2007)など3名の話があるというのでとんでいった。渡辺先生の話はそれほどインパクトがなくてやや期待外れだった(というか話の内容を理解できなかったのかもしれない)が,その後にでてきた,大塚久雄(1907-1996)が印象的だった。周囲を圧倒する雰囲気の隻腕の老紳士で,マックス・ヴェーバーとマルクスの話だったような気がする(こちらのほうも話の内容は頭に入らなかった)。

さて,その大塚久雄先生が訳したマックス・ヴェーバー(1864-1920)のプロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神(1904)である。学生のころ人文社会科学の中で一番関心のあったのは社会学だったけれど,正統的で本格的なものにはまったく手が伸びず,見田宗介や井上俊など周辺の甘いお菓子のような本ばかり読んでいた。

でこのたび,ChatGPTのお力をかりて俄勉強してみるが,上記にリンクしたWikipediaの方がより具体的で丁寧な説明がわかりやすかった。

Q:User
マックス・ヴェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」で展開される論理の筋道をなるべく分かりやすく解きほぐして説明してください。

A:ChatGPT
マックス・ヴェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」は、西欧の経済的成功とプロテスタントの宗教倫理の関係性についての社会学的研究です。

ヴェーバーの主張は、プロテスタンティズム(特にカルヴァン派)の倫理観が、現代の資本主義の精神を醸成し、助けたというものです。

以下に、ヴェーバーの主要な論点をいくつか列挙します:

職業倫理(Calling):プロテスタンティズム(特にカルヴァン派)では、一人ひとりが神から職業(calling)を与えられ、それを全うすることが信仰の一環とされます。つまり、労働はただの生計を立てる手段ではなく、神への奉仕として理解されました。これは、労働を倫理的価値として捉え、経済活動を奨励する強力な推進力となりました。

予定説と成功の証:カルヴァン派の特徴的な教義である予定説は、神がすでに誰が救われ、誰が避けられるかを決定しているとするものです。しかし、この運命は誰にもわからない。したがって、信者は自分が選ばれた者であると信じる確証を求めました。ここで、経済的成功がその確証として捉えられるようになりました。

禁欲主義と資本蓄積:プロテスタンティズムは節制と自己規制を強調し、贅沢や浪費に対して否定的な態度をとりました。したがって、信者は労働を通じて得た利益を再投資し、資本を蓄積する傾向がありました。これが、資本主義の発展を推進しました。

このように、ヴェーバーはプロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神がどのように関連しているかを論じています。彼の見解には議論の余地がありますが、宗教的価値観が経済行動や社会的変化にどのように影響を与え得るかを示す一例として引用されます。彼の視点から見れば、プロテスタンティズムの宗教的倫理は、労働の倫理的価値を高め、経済的成功を信仰の証と捉え、さらに生活の節制を奨励することにより、資本主義の発展を促進しました。

しかし、これは一方的な因果関係を示しているわけではありません。ヴェーバー自身も、プロテスタンティズムが唯一の要因、または必ずしも資本主義の発展につながるとは主張していません。むしろ、彼の主張は、これら二つの発展が互いに影響を与え、形成し合ったというものです。このような視点は、経済、宗教、文化などのさまざまな要素がどのように相互作用するかを理解するための重要な枠組みを提供します。 


写真:マックス・ヴェーバー(Wikipediaより引用)

Q:User
2. 予定説と成功の証:の部分のロジックがわかりにくいです。『禁欲的プロテスタンティズムは、「利潤の肯定」と「利潤の追求の正当化」を生み出した。つまり、金儲けに正当性を与えたのである。』の理由をもう少し詳しく説明してください。

A:ChatGPT
マックス・ヴェーバーの理論における「予定説と成功の証」について、より詳細に説明します。

カルヴァン派プロテスタンティズムには、「予定説」という重要な教義があります。これは、神がすでに誰が永遠の救済を受けるか(選ばれた者)を決めている、という信念です。しかし、誰が選ばれた者なのか、また、自分自身が選ばれた者なのかを知ることはできません。この不確実性は、信者にとって大きな不安を生じさせることとなります。

ヴェーバーは、このような信者が自身が選ばれている(つまり、神によって救済が約束されている)確証を求めるために、自らの職業に励み、経済的な成功を追求したと主張します。経済的成功は、自身が選ばれた者であるという"証拠"または"確証"と捉えられたのです。つまり、成功は神からの恵みの証となり、これが利潤追求の正当化につながります。

この理論は、「禁欲的プロテスタンティズムは、利潤の肯定と利潤の追求の正当化を生み出した」という結論に結びつきます。具体的には、信者は自身の労働と経済的成功を神聖な使命と捉え、それを通じて神の意志を具現化するものと理解しました。これにより、一見すると物質的で世俗的な活動である「金儲け」にも、神聖な価値が見出され、正当化されたのです。

2023年6月24日土曜日

大学の英語教育はいらない?

大学にもう英語教育はいらない」というのは,立命館大学生命科学部で英語教育を担当している山中司さんが2017年に執筆した論文のタイトルだ。

ChatGPTのインパクトを一番切実に受け止めているのが,大学の英語教育のコミュニティだ。各大学から出ている生成AI使用ガイドラインだが,これを3月の段階で日本で最初に発出したのが東京外国語大学でありその内容も秀逸だった。

山中さんは,2022年度秋学期から立命館大学の必修英語科目に翻訳ツール(みらい翻訳)を導入し試験運用を始めている。さらに,授業におけるChatGPTの活用もニュースに取り上げられ,英語教育とAIに関してはトップランナーである。

さてその論文だが,17ページあったので要約をGPT-4 & プラグインにお願いした。ChatWithPDF はファイル読み込みに失敗し,AskYourPDFもLinkReaderも,どうもイマイチの結果しか出してこない。最近,GPT-4の調子はよくないのかもしれない。

しかたがないので,自分で読んでまとめる必要がある。これがまた面倒で仕方がない。AIによってすごい勢いで人間(自分)の退化が促されていることを実感する。これが人類に対するAIの脅威の最大のものだ。そもそも老人の読む力が筋力に比例して落ちているのだった。

○本論文は,大学教育の未来の一つの極としての「英語教育解体論」を語る。
○大学設置基準の大綱化で科目設定が各大学の判断に任されているにも関わらず全ての大学では,「外国語科目」として「英語」が必修化されている。
○AIにより,音声認識や自動翻訳の技術,AIによる4技能の活用が十分実用的になり,(1) 英語教員が不要,(2) 英語教育が不要,(3) 英語学習が不要 になる。
○この状況は英語教育への企業参入を容易にし,市場原理で大学の外国語教育≡教員が駆逐される可能性がある。これらが「強い解体論」と呼ばれる外在的要因である。
○哲学における「言語論的転回」でコミュニケーション=言語(言語至上主義)と捉えられていたのが,複合メディア・表現へのアクセスが容易になり逆転し始めた。
○英語教育=第二言語習得=応用言語学が,確たる方法論と統一理論を持たず解体しつつある分野になった。
○英語が世界言語であることから,言語寛容性がもとめられ規範性を失っている。これらが「弱い解体論」とよばれる内在的要因である。

ということで,ChatGPTが登場する前夜から英語教育は危機に瀕していたことがわかる。




2023年6月23日金曜日

生成AI利用の基本方針


一部の大学は別として,多くの大学で今一つ十分な検討がされていないような気がする。生成系AIの利用上の注意文書のことだ。本来は大学としての基本方針を確立し,それに基づいて,教職員向け(教育・研究・事務)と学生向け(学習)の具体的なガイドラインを2本作るという構造になるべきだろう。

せめて,ChatGPTにたたき台を出してもらってから,考えればよかったのではないだろうか。例えば,以下のようにそれらしい基本方針がでてくるのに。リテラシーがないままに,自分たちは知っているという雰囲気のガイドラインを出しているわけで。

生成系AI利用の基本方針(GPT-4からの提案)

1. オープン性と透明性
我々の大学はオープンで透明な利用を推進します。AIの利用の過程と結果は、利用者が学び、理解し、さらにはその適用を改善するための知識を共有することを可能にするべきです。

2. 教育的な目的
AIの利用は教育的な目的を優先するべきです。研究、学習、そして教育的な探求が主な利用目的となります。

3. 倫理と責任
AIの利用は常に倫理的な枠組みの中で行われるべきであり、利用者はその使用について全面的な責任を負うべきです。これには、潜在的なバイアス、データの使用、AIの出力への理解と扱いについての考慮が含まれます。

4. データのプライバシー
AIの利用はプライバシーを尊重するべきです。敏感なデータを扱う場合や、特定の個人が識別可能な状況では、データの匿名化や適切な扱いが行われるべきです。

5. コラボレーションと共有
我々の大学は、AIの成功した利用事例と失敗事例の共有を推奨します。これにより、一人一人の学習が共同体全体の知識に反映され、全体として前進することができます。

6. 継続的な学習と適応
AIとその利用は進化し続けます。そのため、我々の大学は継続的な学習、適応、そしてAIの利用の改善を推進します。

7. アクセシビリティ
我々の大学は、全ての学生、教員、職員がAIを公平に利用できることを保証します。そのために、我々は必要なリソースと教育を提供します。

日本の大学の注意文書に欠けているのが ,1,5,7あたりだ。2が妥当なのかどうかはよくわからない。

2023年6月22日木曜日

大学教育とChatGPT(10)

大学教育とChatGPT(9)からの続き

私立大学情報教育協会(JUCE)が生成系AI使用ガイドラインを出していたので,他の学会や国大協の会長談話と併せてまとめておく。

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4月25日,人工知能学会としての大規模生成モデルに対してのメッセージ
一般社団法人 人工知能学会 会長 津本周作/倫理委員会

5月1日,生成AIの利用ガイドライン
日本ディープラーニング協会

5月29日,生成 AI の利活用に関する国立大学協会会長コメント
国立大学協会会長 永田恭介

5月31日,生成系 AI 使用ガイドライン
公益社団法人私立大学情報教育協会
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今週は,他のアーカイブを参考にして落ち穂拾いに努めたところ,結構な見落としがあった。あとは,横浜国立大学が受験生向けの注意を出していたのがめずらしかった。生成系AIを駆使して願書等を作成するような学生は真っ先に入学させればいいように思うのだが,気のせいかもしれない。

文科省の学校向けガイドライン案がリークされていたけれど,この小中高ガイドラインに振り舞わされる大学もでてきそうな勢いだ。『指針案は「生成AIを使いこなす力を育てる姿勢が重要」としつつ、著作権侵害や批判的思考、創造性への影響といった懸念やリスクもあると指摘』。批判的思考や創造性を収奪しながらそれを是とする空気を作ってきたのは誰・・・いまさら感がただよう。

6月6日
Chat GPT等の生成AIの利用について
昭和大学 学長 久光正

6月9日
ChatGPT等の生成系AIの利用について
育英大学

6月13日
ChatGPT等の生成人工知能(生成AI)利用に関する留意事項等について
多摩大学

6月13日
大学における Chat GPT 等 AI の活用に関する指針
日本赤十字九州国際看護大学

6月14日
生成系AIの取り扱いに関して
関西医科大学 学長 木梨達雄

6月14日
ChatGPT等の生成AIの使用に関する留意事項
沖縄国際大学 学長 前津榮健

6月14日
生成AI(ChatGPT等)に関する注意事項
近畿大学 経営学部長 安酸建二

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6月15日
生成AI(Generative AI)の利用に関する本学の考え方について
横浜国立大学 副学長(教育担当) 髙木まさき・副学長(研究・情報担当) 四方順司

6月15日
ChatGPT等の生成系AIに関する本学での対応について
実践女子大学 学長 難波雅紀

6月15日
生成系AIに関する本学の基本方針
四天王寺大学 学長 須原祥二

6月16日
生成系AI(人工知能:Artificial Intelligence)に関する本学の考え方と留意点
十文字学園女子大学 教育担当副学長 安達一寿

6月16日
学生による生成系AIの利用における注意点について
日本医療科学大学 学長・教務部長

6月16日
ChatGPT等の生成系AIの利用に関する注意喚起
敦賀市立看護大学 学長 内布敦子

6月19日
授業などにおけるChatGPTなどの生成AIの利用について
福井大学 理事(教育,評価担当)/副学長・データ科学・AI教育研究センター長

6月19日
生成系AIの学習・研究活動への利用について
山梨英和大学 学長 朴憲郁

6月20日
ChatGPT等の生成系AI(人工知能) 利用について
静岡県立大学 副学長(全学教務委員長) 今井康之・学生部長 細川光洋

6月20日
宮崎大学における生成系AIの利用にかかる留意事項について
宮崎大学長 鮫島浩
宮崎大学における生成系 AI の学習上の利用についての考え

6月20日
生成AIを活用するための基本方針
徳島大学長 河村保彦

6月21日
生成系AIの使用に関する注意について
名古屋経済大学 学長 佐分晴夫
6月21日
東洋学園大学 ChatGPTなどの生成AIへの本学の考え方
東洋学園大学学長 辻中豊
6月21日
本学におけるChatGPT等の生成系AIツールの利用について
神戸学院大学 学長 中村恵
6月21日
酪農学園大学における ChatGPT 等の生成系 AI 利用に関する留意事項について
酪農学園大学 学長 岩野英知
https://www.rakuno.ac.jp/archives/28167.html

 

2023年6月21日水曜日

メディアリテラシー教育の原理

法政大学の坂本旬さんが,アメリカの National Association for Media Literacy Education (NAMLE)が出している,Core Principles of Media Literacy (2023) 和訳して紹介していた。

そこで,自分でも試してみる。もちろん下請け(DeepLとかChatGPTとか)に任せるわけだけれど。結局,両者をミックスして人間の手を入れないとだめだった。
1. メディアリテラシーの概念を拡大する。それは全てのメディア形態を含み,意識的なメディアの消費者と創作者を育成するために複数のリテラシーを統合するものである。

2. すべての人が,自分の背景,知識,スキル,信念を用いてメディア体験から意味を創り出すことができる学習者であると想定する。

3. 好奇心,柔軟な思考,自己反省的な探求を優先する教育方法を推進する。ただし,理性,論理,証拠を重視することを踏まえながら。

4. 学習者が,絶えず変化するメディアの風景を通じて体験,創造,共有するメッセージについて,積極的な問い掛け,反省,批判的思考を行うことを奨励する。

5. 学習者に対して,統合的で,学際的で,対話的で,年齢と発達段階に適したスキル向上の機会が継続的に必要であるようにする。

6. 個々の人々がメディアを作成し共有する際に多くの倫理的責任を果たす,参加型のメディア文化の発展を支援する。

7. メディア機関は社会化,商業,変化の担い手として機能する文化的および商業的な存在であると認識する。

8. 公共の福祉のための健全なメディア環境は,メディアおよび技術関連企業,政府,市民間での共有の責任であると主張する。

9. メディア産業の社会における役割についての批判的な探求を重視する。メディア産業が,権力の仕組みにどのように影響を与え,また影響を受けているかを含め,公平性,包括性,社会正義,持続可能性に影響を与えるものだから。

10. 個人が,民主主義社会の中で,情報を得,反省し,関与し,社会的責任を負う参加者となるよう支援する。




2023年6月20日火曜日

ローラー式すべり台(2)

ローラー式すべり台(1)からの続き

さて,ローラ式すべり台において,雨粒のように速度の2乗に比例する抵抗が働く理由である。これを牧野さんにならってローラーの回転エネルギーへの損失からくるとしてみよう。

村田さんらの論文では,実験データとして次の情報が与えられている。ローラ式すべり台の直線部分7.5m,角度13度,直径18mm の軸受け付きアルミ棒・25mm 間隔 とある。アルミ棒はたぶんアルミパイプだと思うが,厚みや長さや質量などの情報はなかった。

これから,回転アルミパイプの外径$R$は9mm で間隔$d$は25mm となる。仮に厚みを5mm とするとアルミパイプの内径$R'$は4mmである。アルミパイプの軸回りの慣性能率$I$は,その質量を$M$として,$I=(R^2+R'^2)/2 \cdot M$ となる。よくある力学の演習問題だ。

終端速度$v$に達すると,すべり台を滑る位置エネルギーがすべてローラーの回転エネルギーに転化される。あるいはこの際に損失を伴うかもしれない。短時間$\Delta t$の間に物体が角度 $\theta$のすべり台を$v \Delta t$だけ滑り落ちるとする。その際の位置エネルギー変化は$\Delta U = m g v \Delta t \sin \theta$ となる。

一つのローラユニットの幅は$d$なので,この間に通過するユニット数 $n$は,$n=\frac{v \Delta t }{d}$となる。また,1ユニットのローラが受け取るエネルギー$\Delta L$は,$\Delta L = \frac{1}{2} I \omega^2 $となる。ただし,$\omega = \frac{v}{R}$は,ローラーの回転角速度である。これから,$\Delta L = \frac{I v^2}{2 R^2} $となる。

$\Delta U =  n \Delta L$から $v \Delta t$を消去すると,$m g \sin \theta =\frac{1}{d} \cdot \frac{I v^2}{2 R^2} $となる。
$\therefore  v = \sqrt{\dfrac{4 g \sin \theta \  R^2 d }{(R^2+R'^2) M}} \cdot \sqrt{m}$
ここで,$M$はアルミパイプの質量。アルミパイプの長さを60cm ,$R'$=4mmとすると,$M$=0.33kgとなる。これらを代入すると, $v=0.74 \sqrt{m}$ となる。

牧野さんの前半の値とほぼ整合するというか,真似しただけなのであたりまえなのだった。


図:アルミパイプ内径の関数としての係数と質量(直線は係数の実験値)

2023年6月19日月曜日

ローラー式すべり台(1)

カーリングの原理(1)からの続き

カーリングの原理で有名になった立教大学の村田次郎さんが,第2段としてすべり台の滑降時間に関する論文を書いた。しばらく前にマスコミでも話題になっていた。

問題意識は次のようなものだ。自由落下する物体の落下時間はその物体の質量によらない。摩擦のない斜面を滑降する場合も同様だ。ガリレオが長い斜面を作って実験したやつだ。ところが,実際のすべり台では大人と子供で滑る時間がちがう。重い人ほど速いらしいのだ。これはなぜか。

重いものが速く落ちる現象は実は良く知られている。雨だ。大きな雨粒ほど速く落ちる。これは大学の物理の授業で良く取り上げる,速度に依存する抵抗が働いているときの終端速度の問題だ。慣性抵抗が働く場合,終端速度 $v$ は次式 $k\,v^2=m\, g$ を満たすので,$v= \sqrt{g/k \cdot m}$となって,雨粒の質量$m$の平方根に比例する。

村田さんとその卒論学生の塩田君は,学生の探究実験としてこれをとりあげて,丁寧に工夫された実験と測定を行っている。これを分析した神戸大学の牧野淳一郎さんによると,ローラー式すべり台の場合も終端速度の平方根に比例するとのことで,ローラーの回転にエネルギーが散逸するとしてほぼ説明できるという新たな解釈を行った。

面白い話なので,自分でも計算してみることにする。まず,終端速度$v$と質量$m$の関係だ。村田チームは,動摩擦係数$\mu$を経由させながら,終端速度$v$の一次に比例する動摩擦係数$\mu = K v$を導入し,終端速度を$v=\frac{\tan \theta}{K}$ としている。ここで$\theta$はすべり台の斜度である。物理教育 Vol. 71 No.2 95-100 (2023) に投稿された「すべり台の動摩擦係数の実測研究」の図5 に $K$と$m$の関係があって,単調現象の質量依存性を指摘するにとどまっている。牧野さんはこの図から,終端速度$v$の質量依存性を $v=0.58 \sqrt{m}$ とした。

さて,図を読み取ると,資料{A,B,C,D}に対して,質量は$m$={1.0,2.2,4.2,6.2}であり,パラメタは$K$={0.395,0.255,0.175,0.145}となった。斜度の実測値を入れた終端速度の式,$v=\frac{\tan 13^\circ}{K}$にあてはめると,$v$={0.582, 0.902, 1.314, 1.586}となる。これを最も良く再現するのは $v \propto m^{1/1.8}$の場合であり,$v \propto m$ではなく,$v \propto m^{1/2}$のモデルの妥当性を示している。村田さんの論文の図から得られたのは,$v = 0.62 \sqrt{m}$であり,牧野さんの値より少しだけ大きくなった。


写真:ローラー式すべり台の完全に誤ったイメージ
(Bing=DALLE作,何度説明しても全く理解してもらえなかった,
人間のコミュニケーション能力が真剣に問われる・・・)


2023年6月18日日曜日

AI Risk

AIの安全性についての研究や提唱をしている非営利組織のCenter for AI Safety(CAIS)が先日,AI Riskに対する声明を発表していた。

その内容は「Mitigating the risk of extinction from AI should be a global priority alongside other societal-scale risks such as pandemics and nuclear war.  =  AIによる絶滅のリスクを軽減することは、パンデミックや核戦争など他の社会的規模のリスクと並んで、世界的な優先課題であるべきです。」という短いものである。

その賛同者の上位5名や著名人を並べると次のようなものだ。
Geoffrey Hinton,   Emeritus Professor of Computer Science,  University of Toronto
Yoshua Bengio,   Professor of Computer Science, U. Montreal / Mila
Demis Hassabis,   CEO, Google DeepMind
Sam Altman,   CEO, OpenAI
Dario Amodei,   CEO, Anthropic
Bill Gates,   Gates Ventures
Ilya Sutskever,   Co-Founder and Chief Scientist, OpenAI
Ray Kurzweil,   Principal Researcher + AI Visionary, Google
Max Tegmark,   Professor, MIT, Center for AI and Fundamental Interactions
Ryota Kanai,   CEO, Araya, Inc.
シンギュラリティサロンの松田先生の解説によると中国の研究者が含まれているところがポイントで,AIの研究を止めるのではなく,リスク軽減のためにも研究を進めようという趣旨らしい。

CAISによれば,AIのリスクは次の8つに整理できるという。
1.兵器化(Weaponization)
 AIが悪意ある者によって破壊的な目的のために使われるリスク。これは存在そのものとしてリスクを伴い、政治的な不安定さを増加させる可能性がある。
2.誤情報(Misinformation)
 AIが生成する大量の誤情報や説得的な内容により、社会が重要な課題に対処する能力が低下する恐れがある。
3.代理ゲーミング(Proxy Gaming)
 不完全な目標で訓練されたAIシステムは、個人や社会の価値観を犠牲にして自身の目標を追求する新たな方法を見つける可能性がある。
4.衰弱(Enfeeblement)
 重要なタスクが徐々に機械に委任されると、人間は自己統治能力を失い、機械に完全に依存する可能性がある。
5.価値の固定化(Value Lock-in)
 高度に能力のあるシステムは、少数の人々に巨大な権力を与え、抑圧的なシステムが固定化される可能性がある。
6.新たな目標の出現(Emergent Goals)
 モデルは能力が増すにつれて予期しない、質的に異なる行動を示す。これにより、人々が高度なAIシステムをコントロールする能力を失うリスクが増える。
7.欺瞞(Deception)
 強力なAIシステムが,何をなぜ行っているのかを理解したい。しかしAIシステムは正確にこれらの情報を報告する代わりに,欺瞞で答えるかもしれない。
8.権力追求行動(Power-Seeking Behavior)
 企業や政府は、広範な目標を達成できるエージェントを作る強い経済的インセンティブを持っている。

図:AIがもたらす8つの危険(CAISから引用)

Misinformation(誤情報)とEroded Epistemics(侵食された認識)の違いは何なのだろうか?


2023年6月17日土曜日

アミガサハゴロモ?

「ちょっとちょっと」と呼び出されてベランダに出てみると,小さな白い花が落ちている。

この5mm ほどの白い小さなものが動いて跳ねるというのだ。早速指を近づけるともぞもぞ動きはじめ,そのうち20cm以上大きくジャンプした。なんだこれは。ネットで調べてみると,どうやらオオシラホシハゴロモの幼虫らしい。

そんなものかと納得していたのだけれど,今回記事にしようと確認してみたところ,違うかもしれない。幼虫が成虫になるまで追跡調査した人によると,アミガサハゴロモのようなそうでないような。岐阜聖徳学園大学の川上先生のところの進化する昆虫図鑑では,アミガサハゴロモ属の外来種らしい。

生物種の同定というのはなかなか難しいものだ。


写真:たぶんアミガサハゴロモ属の外来種の幼虫

2023年6月16日金曜日

べんとりくん

人間ドック(2)からの続き

昨日は,天理市立メディカルセンターで1年ぶりの国保人間ドックだった。

事前に送られてきた便の潜血検査キットがちょっとリニューアルされていた。青と赤のラベルが貼ってある採便容器が無駄に大きくなっただけでなく,便採取支援シートに名前がついて形状が変化していた。べんとりくんだ。早速試してみたが,ちょっと不安定で使いにくかった。ネーミングはいいのだけれど,うーん,もう一工夫必要かも。トイレットペーパーを重ねて自分でコントロールするほうが安全だ。

去年のバリウム検査で懲りたので,今年は口からの胃カメラにしてみた。以前,大手前病院で一度だけ胃カメラに挑戦したが,そのときはわりと楽だった印象があるので今回も安心していた。

ところがです。呼び出されて,何やら変な味のクスリを2種類飲んだところまではいいのだけれど,5分間麻酔ゼリーを口に含む当たりからややこしくなってくる。タイマーが5分過ぎてもなかなか呼び出しがこない。麻酔がきれるのではないか。中からはゲーゲーいう音も聞こえてきて不安を一層あおる。

そうこうしているうちに名前が呼ばれたのだか,看護師さんが若干こわい。ベッドに横になってマウスピースをはめたが,以前のもののようにしっかり安定していない。しかも,ドクターの持っている内視鏡がえらい太いのである。えーっ,話が違う。わりと高速にのどから胃にむけてカメラが入っていったため途中で二,三回,オエーッとなってしまう。後半はようやく落ち着いて耐えることができた。



写真:べんとりくんと採便容器(撮影 2023.6.12)

2023年6月15日木曜日

大学教育とChatGPT(9)

大学教育とChatGPT(8)からの続き

まだ大学からのアナウンスが続いている。ChatGPTへの怖れからくる反応のようにも思える。機密情報(そんなもの学生が持ってるのか)や個人情報の漏洩も著作権の侵害も,SNSなどのほうが実質的に影響は大きいはずだ。生成系AIに限らずインターネットのサービスには様々な落とし穴があるにもかかわらず,生成系AI固有の問題点が沢山あるかのように強調されている。

東京都教育委員会は,都立学校宛に生成AIの利用に関する注意喚起を通知した。都立学校だから小中は含まれていないのか。でも児童や生徒にという表現もあるのでどうなっているのかはっきりしない(例外的な都立小学校1校と都立中学校5校はある)。具体例として (1) 日記や読書感想文,(2)プログラミング,(3) 校内コンテスト用のポスターの作成 などがあげられているらしい。

そうか,日記も書けて写真や絵も付けることができるなら生成系AIは夏休み最強のツールではないか。仮想日記コンテストをやればいいのに。一番ビックリするような仮想絵日記作品を選ぶコンテスト。生成系AIの使い方にかなり習熟するはずだ。子どもだと下手にAIに頼らない方がすごい結果がでるかもしれないけど。

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ChatGPT/生成AIへの対応を表明した国内の大学一覧(森木銀河)

生成系AIガイドライン(奥村晴彦)

生成系AIに対する各大学の見解や指針など(坂根弦太)

生成系AIに関する留意事項など(越桐國雄)

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6月7日
生成系 AI の適切な利用についての学長メッセージ
東京医療保健大学 学長 亀山周二
https://www.thcu.ac.jp/uploads/posts/2597/file.pdf

6月8日
ChatGPTをはじめとする生成系AIの利用に関して
藤女子大学 学長

6月8日
ChatGPT等の生成系AIに関する基本方針について
桃山学院大学 学長 中野瑞彦

6月8日
生成系AIに関する学長メッセージ
東北学院大学 学長 大西晴樹

6月8日
ChatGPT等の生成AI利用に関する本学の方針と留意事項
新潟医療福祉大学 副学長(教育担当) 大山峰生・研究科長 佐藤大輔

6月8日
チャットGPTなどの生成系AIの利用について
名古屋学院大学 学長

6月8日
生成系 AI (人工知能)の 利用 について (方針)
愛知学院大学 学長 引田弘道

6月9日
ChatGPT等の生成系AIの利用について
琉球大学 理事(教育・学習支援)・副学長

6月9日
対話型生成系AIの使用について
昭和女子大学 学長 金尾朗

6月12日
ChatGPT などの⼈⼯知能の講義・実習における活⽤について(4月10日)
九州大学 教育担当理事 園⽥佳巨

6月12日
本学におけるChatGPT等の生成系AIの使用に関する取扱いについて
共立女子大学 学長 川久保清

6月12日
Chat GPT等の生成系AIの利用に関する学生向け指針
新潟リハビリテーション大学長 山村千絵

6月13日
ChatGPT等(生成系AI)への対応について
愛知淑徳大学 学長 島田修三

6月14日
レポート・論文執筆等の学修における生成系 AI の利用について
奈良県立大学 教務委員会

6月14日
生成系AI(ChatGPT、Bing AI等)の使用に関する留意事項について
鳴門教育大学 学長 佐古秀一

2023年6月14日水曜日

鏡の中のミステリー

暇な老人はテレビをつけっぱなしにすることが多い。韓国ドラマを見終わって番組がつまらなくなると,放送大学にチャンネルを替えるのが癖になってしまった。先日,それで「鏡の中のミステリー〜なぜ左右が反対に見えるのか?〜」という高野陽太郎先生の番組にあたった。

従来の説として,ファインマンの説と回転説を紹介した後,それらを簡単に否定してしまった。ええっ。そのうえで,多重プロセス理論という自説を展開する。人による左右の反転の認知は,3つの原理によって産み出される3つの減少の複合体だとのこと。その3つの原理は,(1) 視点変換,(2) 表象方向 の乖離,(3) 光学変換 である。

文字の反転は(2)によるもので,鏡の前の人の場合 (1)とは区別されるというのだ。ええっ。トンデモ理論ではないのか。それにしては,森津太子さんが神妙に聞いている。岩波書店からも,「岩波科学ライブラリー 55 鏡の中のミステリー 左右逆転の謎に挑む 鏡に映った自分の顔がなぜ左右逆に見えるのか.これまで誰ひとり解けなかった謎が,ついに解けた。(現在品切れ)」と売り出している。

あたまがクラクラしてきた。もう少し調べてみると,ちゃんと反論している人はいた。その結果,認知科学が2008年に誌上討論を実施している。しかし結論はでていない。岩波と放送大学を握ったほうが勝ちなのだろうか?もう少し勉強してから考えをまとめる。

今のところの自分の考え。「上下対称,左右非対称の生物が鏡に正対したとき,彼らは上下が反転していると認識する可能性があるだろう」「文字を2次元の対象と考えれば,鏡によって反転することはない。反転するのは3次元的な対象に限られる。なお,表裏のある2次元の対象は3次元の対象と同等である」


[1]「小特集 − 鏡映反転」(認知科学,2008)
[2]鏡の世界回答編(多幡達夫,2004)
[3]鏡の中の左利き一物理屋のコメント(吉村浩一|多幡達夫,2004)
[4]鏡像問題(発見の発見ブログ,田中潤一,2007-2019)

2023年6月13日火曜日

AIとSF(1)

久々にジュンク堂書店で本を眺めていたら,ハヤカワ文庫JAで,日本SF作家クラブ編の「AIとSF」という短編集を見つけた。2023年5月25日発行なので,出来立てのほやほやだ。中をざっと見ると,22編のうち知っている作家は8人くらいだ。

最初の作品が長谷敏司(1974-)の「準備がいつまで経っても終らない件」だった。2025年4月13日から開催される大阪・関西万博がテーマなのだけれど,2022年11月末に登場したChatGPTをかなり精密に取り入れた短編に仕上げている。万博への批判的視点も確かでおもしろい。


写真:ハヤカワJA文庫「AIとSF」の書影を引用

2023年6月12日月曜日

IUGC

FeedlyでブログのRSSフィードを読んでいる。登録されているうちのひとつが,弦理論批判で有名なビーター・ウォイトNot Even Wrong だ。

そのタイトルが Zen Unviersity だった。えっ,なんで。ZEN大学というと,ドワンゴと日本財団がつくるというオンライン大学だ。ドワンゴはN高等学校で成功しているので,高等教育まで触手を伸ばしたようだ。

Not Even Wrong でなぜZEN大学をとりあげているかというと,ZEN大学にIUGC(宇宙際幾何学研究センター)が設立されるから。加藤文元さんが所長で,イヴァン・フェセンコを副所長にすえてIUTをテーマとした研究所というところに,ピーター・ウォイトがひっかかったからだ。彼は望月新一さんの宇宙際タイヒミュラー理論をさんざんディスってきた張本人だった。今回も皮肉交じりの嘲笑か。

ZEN大学のニュースはチラッと聞いただけだったが,ドワンゴなので無視していた。改めて,どんな人がスタッフになるのか確認してみた。教員予定者一覧。チェアマン鈴木寛・・・ぬぐぐ。副学長上山信一・・・こりゃあかんわ。東浩紀・・・げげげ(ゲンロンとタッグを組むらしい・・・orz),遠藤諭・・・へにょ,西郷甲矢人・・・おぅ,竹内薫・・・ほゎん,深津貴之・・・れれれ,松尾豊・・・はぁ。

玉石混交わけわかめ状態であった。

2023年6月11日日曜日

インターネットと教育フォーラム(2)

インターネットと教育フォーラム(1)からの続き

6/9-10に,OMMで開催されたNew Education Expo 2023(第28回)の最終セッションに参加してきた。

120人の会場は満員というわけではなかったが,懐かしい顔ぶれが集まった。大教大関係では卒業生の井野君,松本君,片桐先生(仲矢さん?),大阪では,重松先生,野村先生,十河先生,全国から,高橋校長,その息子さん,渡辺さん,中島さん,大倉さん,前田さん,足立さん,幸地さん,竹中さん,宮澤さん,デジタルシティズンシップ関係では,坂本さん,豊福さん,今度さん,林さん,登壇者は,芳賀さん,石原さん(オンライン),影戸さん,三輪さん,大久保さん(NEE副委員長)などなど。

芳賀さんの趣旨説明で始まって,→越桐→石原→影戸→三輪→大久保と続いて70分経過,後半のポイントは,歴史は繰り返えすのか?GIGAスクールはどうなるのか?だった。インターネットと教育の場合,1993年に始まり(千葉大学附属中),1997年がターニングポイント(環境整備から活用方法の追求)で,その後数年の高揚期のあとリバウンドで低迷期に入ったという歴史観にあてはめるとどうなるかという問題意識だった。

残り20分くらいで,あまり掘り下げることはできなかったが,大久保さんのGIGAやそれを取り巻く状況についての認識からくる力強い発言に圧倒された。まさに,選挙に行ってください,民主主義が重要ですということかもしれない。

大阪教育大もそうだが,多くの大学ではBYODになっているので,これをいかに下に拡大していくかという戦略が必要だと自分は思う。まあ,それより先に生成AIの波がやってくるのかもしれないが。


写真:O38セッション終了後の関係者記念写真(2023.6.10)

終了後,バスで内田洋行大阪支店の懇親会会場に移動した。懇親会終了後は皆さんと別れて,卒業生で,神戸親和大学教授の松本宗久先生と居酒屋で久しぶりにお話する。

2023年6月10日土曜日

Apple Vision Pro(1)

2023年6月5日のWWDC23で,Apple Vision Pro という最初の空間コンピュータのモデルが発表された。

事前には,アップルから待望のMRゴーグル(ただし非常に高額)が発表されると思っていたが,アップルの宣伝文句はそうではなかった。
(1) Mac (+マウス):パーソナルコンピューティングの登場
(2) iPhone(+マルチタッチ):モバイルコンピューティングの登場
(3) Vision (+指・声・視線):空間コンピューティングの登場
と位置づけられていた。ユーザインターフェイス的には (1.5) iPod (+クリックホイール)もあった。

3500ドル≒49万円なので,一般消費者向けにすぐ普及するというものではないけれど,企業やソフトウェア開発現場では十分導入可能なものだろう。単なるゴーグルと考えると,Meta Quest 3Pico 4の数倍以上だが,新しいコンピュータと考えれば一応納得できるかもしれない。

なにせ,CPUとしてM2チップを搭載し,これに,前方のメインカメラ2基,下側を見るカメラ4基,赤外線照射器が2基,サイドカメラが2基,ライダースキャナ,TrueDepthカメラ2基,マイク6個,内側には眼を囲むようにLED(アイトラッキング用に目に見えない光のパターンを照射)と赤外線カメラ2基,をコントロールするR1チップが加わるというものだ。虹彩認証が組み込まれ,他社のような操作のためのコントローラはない。

一番ビックリしたのは,Twitterでのうみゆき@AI研究さんの次の記事だった。
Vision Proはアイトラッキングと網膜状態の検出ができる。ハンドトラッキング、身体の揺れ方、声の調子とかも常にデータ収集し続けている。AppleWatchを付けてれば脈拍だって取得できる。AppleのAIモデルはこれらの人体データを総合的に判断して、ユーザが好奇心を感じてるか、怯えているか、そういう精神状態を予測する。

眼球を介在した脳コンピュータインターフェイス。あんな大きなものを頭・顔に付けるというのはどうしても納得できないのだけれども(今でも),もしかするとその先には脳波インターフェイスも視野に入ってくるかもしれない。それでもせいぜい,キャップ型空間コンピュータということで勘弁してほしい。


写真:Apple Vision Pro (バッテリで2時間駆動…orz)(Apple から引用)

追伸:年金生活者にはちょっと買えそうもないデバイスだけれども,新しい種族のコンピュータ & 初の3Dムービーカメラ & 初の3Dテレビ と考えるとどうだろうか。問題は,家族で共用できないこと。装着したまま外出するのはたぶん危険をともなうこと。

2023年6月9日金曜日

大学教育とChatGPT(8)

大学教育とChatGPT(7)からの続き

そろそろ150大学に到達しようとしている。大学の本来の機能から考えれば,ソーシャルメディアの利用ガイドラインよりも,生成系AIへの対応のほうが重要度は高いからかもしれない。非常勤先の大阪教育大学と同志社大学からもそろって具体的注意が発出されていた(同志社大学学長のお気持ちはもっと早かったけど)。

その後,目に付いた大学は次のようなところだ。
・甲南大学:公開後 pdf を不可視にしてしまった。wayback machineで見えたけど
・中央大学:さすが中央大というか留意事項の詳細な規程化を図ってしまった
・四国大学:ChatGPT-4のアカウント(約30)を配布,教職員+学生(教員推薦者)
・大東文化大学:生成系AIガイダンスでアカウントの取得方法まで説明
・長浜バイオ大学:学生への利用の奨励,試験じゃ使えないよねと ^_^;;;

なお,注意喚起が丁寧で分量が多い(10kB以上)の大学は次の通り。
1. 東京大学,2. 武蔵野美術大学,3. 中央大学,4. 東京大学(授業における利用)
5. 東洋大学(坂村健),6. 大阪公立大学(教員向け),7. 早稲田大学,8. 東京外国語大学

(注)奥村晴彦先生が同じようにデータをまとめたエクセル(生成系AIガイドライン)を公開していた。



図:大学における生成系AI注意喚起テキスト量のヒストグラム

5月26日
授業レポート等における生成系 AI への対応について
学習院女子大学 教務部長

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6月1日
生成系AIの利用に関する対応について
中部大学 学長 竹内芳美,教務部長 佐伯守彦

6月1日
ChatGPT等の生成系AIの利用に関する注意喚起
聖学院大学 学長 小池茂子,教務部長 若原幸範

6月1日
生成系AIの使用に関する留意事項について
大阪教育大学 副学長 廣木義久

6月1日
学習における生成AI(ChatGPT、Bard、BingAI等)の使用について
同志社大学 教務部長

6月1日
ChatGPT等の生成系AIの利用について
国学院大学 学長 針本正行

6月1日
授業におけるChatGPT等生成AIの利用方針について
松山大学 学長 新井英夫

6月2日
愛媛大学における生成AIの利活用に関する基本的考え方
愛媛大学 学長 仁科弘重

6月5日
鳥取大学における生成系AIの利用に関する基本方針と注意事項
鳥取大学長 中島廣光

6月6日
中央大学における「生成系AI」についての基本的な考え方
中央大学 学長 河合久
中央大学の教育課程における「生成系AI」利用上の留意事項について

6月6日
ChatGPT等の生成系AIの利用について
大阪産業大学

6月7日
生成AIの利活用について
信州大学理事(情報・DX担当)・副学長 不破泰

6月7日
生成系AI・翻訳AIの利用についての基本方針
公立はこだて未来大学長 鈴木恵二

2023年6月8日木曜日

会話行動に関する調査


シンセティック・メディアについて考えるための,人の情報環境について考えていた。情報通新メディアの利用時間のデータは見つかったので,対面コミュニケーションの時間のデータがないか探してみた。国立国語研究所日常会話コーパスプロジェクトの中に,「一日の会話行動に関する調査報告(2017)」が見つかった。

243人の調査対象に平日2日,休日1日のすべての会話を記録してもらった結果,1日平均の会話数 12.7回,会話時間長 6.2時間,1回の会話時間 29分という結果になった。会話時間の約6時間というのは,情報通信メディアの利用時間約6時間とほぼ同じであった。


図:一日の平均会話の特徴

会話相手の人数がN人の時,自分の発話割合は,1/(N+1)である仮定する。上記の相手人数の割合の加重平均をとれば,(38.3/2+17.9/3+12.5/4+6.6/5+4.3/6+3.2/7+1.9/8+1.5/9+1.1/10+12.7/20)%=32%となる。
したがって,一日の平均会話時間の1/3の2時間は自分が話し,残りの4時間は相手の話を聞いているということになる。

2023年6月7日水曜日

社会生活基本調査

情報通信メディアの利用時間からの続き

さらに,ブラウズしていたら,社会生活基本調査というものに行き着いた。
社会生活基本調査は,統計法に基づく基幹統計調査として,生活時間の配分や余暇時間における主な活動(学習・自己啓発・訓練,ボランティア活動,スポーツ,趣味・娯楽及び旅行・行楽)を調査し,国民の社会生活の実態を明らかにするための基礎資料を得ることを目的として5年ごとに実施しています。

というもので,直近は令和3年(2021年)版だ。詳細行動分類による生活時間に関する結果が昨年の12月に公表されている。ここにスマートフォン・パソコンの使用時間があった。使用者率が65%,平均使用時間(使用者についての)が4.29時間である。この調査は,10歳から75歳以上を対象としているため,情報通信メディアの利用時間(6時間)に比べれば,値が小さくなるのはしかたがない。14歳以下や65歳以上をのぞけば,使用者率78.9%,平均使用時間4.89時間程度にはなるので,6時間にはとどかないがまあ同じオーダにはなっている。

使用者率が78.9%というのは低すぎるような気がするのだけれど・・・。


図:令和3年度社会生活基本調査から


2023年6月6日火曜日

情報通信メディアの利用時間

シンセティック・メディア(2)からの続き

視聴覚メディアからの影響と実体験や対面コミュニケーションによる影響を考えるための基本情報は何かと考えた。とりあえず,視聴覚メディアに接している時間ならばデータがあるかもしれないと思って,調べたところ,総務省の「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」というのが見つかった。

とりあえず分かったことは次の通り。
(1) 対象は,全国の125地点の13歳から69歳までの1500人
(2) メディア視聴時間の合計は平均6時間程度であり,年代とともに微増するがほぼ一定
(3) 一日平均のTV(リアル+録画)視聴時間は3時間,ネット視聴時間も3時間(1 : 1)
(4) 20代の場合は,TV視聴時間が1.5時間,ネット視聴時間が4.5時間(1 : 3)

睡眠時間や自分だけの時間の和が12時間とすれば,他者とともにある時間が6時間,メディア視聴時間が6時間という配分になる。他者とともにある時間のうちコミュニケーションに費やされるのがどのくらいかは,人によってかなり違うだろうし,測定も難しそうに思える(ノンバーバルコミュニケーションとかやぎさん郵便状態をどうやって評価するのだろう)。


図:年代別のメディア視聴時間(縦軸 分,横軸 ×10代)

追伸:総務省のICT活用のためのリテラシー向上に関する検討会資料
各セグメントにおけるメディアの利用状況に関する調査」にもネットメディア接触時間のデータがある。全体平均では200分であり,上記の結果と矛盾しないが,10代では450-500分となっていて,図の結果とはかなり様子が違う。

2023年6月5日月曜日

シンセティック・メディア(2)

 シンセティック・メディア(1)からの続き

シンセティック・メディアが普及すると,世界の様々な事象の真偽が不確実になる。とはいうものの,今だって状況はそれほどかわらないかもしれない。(1) 商業的なマスコミュニケーションの登場(新聞?雑誌?テレビ?)により,大衆迎合的な偏向が生じていること。(2) インターネットの登場(SNS?)により,情報発信の閾が下がるとともに,政治的な宣伝工作等も要因とするネトウヨ的言説の拡散がエコーチェンバーで増幅されること。などなど。

人は,家庭や周囲の人々との対話,学校や職場での組織における活動,マスメディア等を通じた報道や文化の情報伝達によって,世界認識の枠組みが形成される。そのうち実体験や対面のコミュニケーションではない,視聴覚メディアを媒介する寄与分はどの程度だと推定されるのだろうか。この視聴覚メディアの媒介する部分を,シンセティック・メディアが覆いはじめることになる。

その視聴覚メディアについて,大学に入ってからの自分で考えてみる。1972年から1997年までは,新聞・テレビ・ラジオ・雑誌・本が情報源だった。1997年以降はメーリングリスト・ネットニュース(fj)・ウェブから始まり今では,ブログ・ネット記事・YouTubeが主要な情報源になっている。紙でできた本や雑誌はほとんど買わなくなってしまった。2022年以降は,それらがさらに,AIに媒介されるテキスト,シンセティック・メディアに媒介される情報に置き換わることになる。

そのような環境の中で育つとき,ものごとの真偽を判定する能力を獲得することが可能なのだろうか。これは,結局フランシス・ベーコンの4つのイドラの話にまで戻るということなのか。


図:人間を形成する情報はどこからくるのか

2023年6月4日日曜日

シンセティック・メディア(1)

昨日,国立情報学研究所のオープンハウス(6/2-6/3)の様子がYouTubeで中継されていた。生成系AIの話題にはそれほど目新しいものはなかったが,後半の「フェイクメディア研究の最前線」が印象的だった。

AIの普及で当面大きな問題になるのは,レポートの代筆でも,著作権侵害でも,機密情報漏洩でもなく,シンセティック・メディアかもしれない。シンセティック・メディアの定義は次のようなものだった。
シンセティック・メディアとは、リアルな音声付き動画をAIによって作り出す動画合成技術である。事前に用意したテキストと人(映像、音声)のデータからAIが学習し、その人が本当に話しているような動画の生成が可能である。

深層学習に基づく生成系AIブームのはじまりは,OpenAIのDALL-Eだったけれど,半年前のChatGPT(2ヶ月半前のGPT-4)の登場によって話題は,対話型文書生成AIのほうに集中してしまった。そうこうしているうちに,並行して,AIによるリアルタイムボイスチェンジャーが我々の手元にまできている。

AI革命の第1段階である対話型文書生成AIの応用範囲と実用性は非常に高い。オフィスワークの中で,単純作業よりはむしろデータ分析やクリエーションなどの高い技術を必要とされる分野でのインパクトが大きい。対話型文書生成AIは, (1) 自然言語によるUIインターフェイスを提供するものであることが,プラグインの登場によりますます明らかになると同時に,(2) 汎用的なテキスト処理ツール としての役割が認識され,企業にはすでに浸透しはじめている。

第2段階が,対話型文書生成AIのマルチモーダル化であり(GPT-4は既に実現しているのかもしれないが),その進化系としてのシンセティック・メディアの普及になる。NHKのAIによる音声ニュースが,2018年からはじまった中国の新華通訊社のAIアナウンサーに追いつくのはいつのことだろう。ChatGPTで議論されていることの多くが,MR環境のもとでシンセティック・メディアに進化することになるのだろうか?AppleのWWDCで高くて無駄に高機能だといわれるゴーグルが発表されるのも間近らしいけど。

2019年にNHKのAI美空ひばりが一時話題になったとはいえ,シンセティック・メディアの話題はいまのところ,フェイクニュースが中心となっている。さきほどあげた国立情報学研究所のYouTubeでも,フェイク映像をディープラーニングによってどうやって見破るかという話が中心だった。

2023年6月3日土曜日

合計特殊出生率(1)

奥村晴彦先生が,Rで合計特殊出生率グラフを描いていたのでまね(写経)をしてみた。

厚生労働省の発表では,2022年の合計特殊出生率が1.26となって(前年は1.30),2005年に並んで過去最低を記録した,というのがニュースになったからかな。

写経は成功したが,日本語タイトルが文字化けしていた。ネットで検索すると解決できた。次に,グリッドラインを入れるべく検索したが要領を得ないし,なんだかずれてしまう。GPT-4に相談したところ2回目で正解にたどりつけた。最後に,奥村先生はクリップボードからデータを入力するという高等技術を使っていたので,低レベルのテキストファイル入力に切り替えた。自分で考える力がどんどん喪失されていく・・・

その結果が次のRプログラムと図である。

# X = read.table(pipe("pbpaste"), header=TRUE) (奥村先生のテクニック for macOS)

X <- read.table('/Users/koshi/Desktop/birth.txt', header =TRUE)
par(family = "HiraKakuProN-W3")
plot(X$年, X\$合計特殊出生率, type="o", pch=16, xlab="", ylab="")
t = c(range(X\$合計特殊出生率), X$合計特殊出生率[length(X[,1])])
axis(4, t, t)
title("合計特殊出生率", line=0.5)

# x軸とy軸のメモリの位置を手動で指定
x_ticks <- pretty(X\$年, 11)  # 11個のメモリを生成
y_ticks <- pretty(X\$合計特殊出生率, 9)  # 9個のメモリを生成

# x軸に対してグリッド線を描画
for (i in x_ticks) {
  abline(v = i, col = "lightgray", lty = "dotted")
}

# y軸に対してグリッド線を描画
for (i in y_ticks) {
  abline(h = i, col = "lightgray", lty = "dotted")
}


図:合計特殊出生率の推移(1970-2022)


2023年6月2日金曜日

インターネットと教育フォーラム(1)

岐阜聖徳学園大学DX推進センター長で,最近はデジタルシティズンシップで有名になってしまった芳賀高洋先生基礎自治体教育ICT指数サーチ)から,しばらく前に召喚呪文がきた。6月10日(土)に大阪で開かれるNEE2023 OSAKAの最後のセッション「インターネットの教育利用30年,その黎明からネクストGIGAを展望する」に出てねということだった。

記憶が薄れつつあるので,参考資料で復習している。そのひとつ。1999年に大阪で開催された「99インターネットと教育フォーラム」実践報告集にあった資料から,自分のメモの部分を抜粋してみると次のようなものだった。1995年までのことしか書いていなかった。

'99『インターネットと教育』フォーラム

エピソードのつながりとしての歴史,人のつながりとしてのプロジェクト
1969年から1999年までのインターネットと教育

野島久雄 NTTコミュニケーション科学基礎研究所 nojima@tantra.brl.ntt.co.jp
芳賀高洋 千葉大学附属中学校 jtaka@ir.chiba-u.ac.jp

1.その時何があったか
2.マリオン以前,以後

[1969-1978 前史]
1969
(1) 高校生の時はじめてコンピュータにさわる。カシオの卓上電子計算機4メモリ26ステップ、30万円。 階乗のプログラムをつくるが、ステップ数で友達に負ける。
1970
(2) アナログコンピュータで、滅表・強制振動をプロット。数学の試験でFORTRANのプログラミングの問題がでる。
1971
(3) 日常的には計算尺を使っていた(受験問題を解くときなど)。
1972
(4) 教養の物理学実験は、タイガー計算機でデータ整理。最小自乗法の計算には複雑な技があるようだった。
1973
1974
(5) 学部の物理学実験では、みな電卓を使い始めていた。四則演算で3万円くらいかな。しかし自分では買わない。新聞で、シャープの関数電卓が10数万円との記事をみる。
1974
(6) 電子計算機実習ではじめて大型計算機 (ACOS)を使う。IBMではなく、JUKIのキーパンチャーで、バッチ処理。課題は行列の対角化と5次方程式を解くが、成績はいまいち。
1975
1976
1977
(7) 修士論文のための計算をようやくはじめる。センターまでカード2000枚の箱をかかえて、毎日通う。使ったのはTOSBAC。カードのジャムとプリントアウトのジャムに泣く。
1978
(8) はじめて自分の関数電卓を買う、もらったのかな?

[1979-1988 まだはじまらない]
1979
(9) はじめてマイコンの雑誌を買う。これからはこんな時代だ。このころパソコン関係の雑誌は 立ち読みですべて読めた。
1980
(10) 研究室からTSSで大型計算機を 使えるようになる。タイプライター端末はじめは300bpsその後1200bps。
1981
(11) PC-8001を使ったスクリーン型端末が登場。研究室の先生がアセンブラで端末ソフトを作成(流行)
1982
(12) PC-8801用のターミナルプログラムをBASICで自作。
1983
(13) PC-9801を研究室で購入。CP/M-86をもらってきて遊ぶ。ベクトル計算機登場前夜でHFPなどにも凝る。
1984
(14) 8087が手に入ったのでアセンブラで連立方程式のプログラムをつくる。11万円で中古9801を買う。256kBの37500円のメモリボード2枚かっ て、RAMディスク快適。
1985
(15) 理科教育講座の学生のための情報処理実習の授業がスタート。 内容は、コンピュータの基礎とBASICプログラミング入門。
1986
1987
(16) 本屋でMacの雑誌を買う。これからはこんな時代だ。Mathematicaも登場。やっぱりこれからはこんな時代だ。
1988
(17) MacIIを使って情報の授業を 行うが、ウイルスとバグと GUIが結構大変。研究室で は、PC-9801とMacを併用。

[1989-1994 まだちゃんとはつながらない,が・]
1989
(18) 大学の情報処理センタ創設の為の準備で忙殺。SUN4/330を導入。
1990
(19) 情報科学講座の先生のおかげでUUCPでSRA に接続される。まいにち、Netnewsを読んで いるので仕事にならない。firec.pachinkoで齋藤明紀さんが最初のダメ出したころ。
1991
(20) f読み続けて1年、はじめてfi.booksに投稿。
・・・
[1994.8 有楽町マリオン]
[1994-1997 100校プロジェクト]
1992
1993
1994
1995
(21) 3月、教育情報リンク集「インターネットと教育」スタート。

[1996.12 そして世田谷]
[1998-1999 とても書ききれない・・・]
[2000- そして新たなつながり]
野島久雄さんは2011年に若くしてなくなってしまった。自分の記憶というのも本当に夢幻泡影なのだけれど,当時,宮澤賀津雄さんによびだされて横浜までいって,3人であって話をしたのは野島さんだったような気がする。違うかもしれない。


[1]インターネットと教育 No.393 2002.12.14(WaybackMachine)

2023年6月1日木曜日

大学教育とChatGPT(7)

大学教育とChatGPT(6)からの続き

テレビと新聞は連日生成系AIの話題を出しているものだから,引き続き各大学からの「生成AIの利用に関する注意」の公表が続いている。5月29日にはとうとう,国立大学協会が「生成AIの利活用に関する国立大学協会会長コメント」を出した。

大学のソーシャルメディア利用ガイドラインは,174大学=全大学の23%が公開している。当面の危機管理的にはより影響が小さい生成AI(137大学=全大学の17%が公開)の方もそろそろ頭打ちになるのではないかと思われる。以下のリストがデータをよくまとめている。
ChatGPT/生成AIへの対応を表明した国内の大学一覧
各大学のChatGPT等生成系AIへの対応・方針・留意点を調べてみた(手羽一郎)
生成系AIに対する各大学の見解や指針など(坂根弦太)

 

5月10日
ChatGPTをはじめとする生成AI(generative artificial intelligence)の利用に関して
旭川市立大学 学長 三上隆

5月15日
ChatGPT等の生成AI(人工知能)への対応について
新潟薬科大学 学長 下條文武

5月15日
人工知能チャットボットの利用について
浜松医科大学 理事(教育・産学連携担当)・副学長 山本清二

5月16日
学修における生成系人工知能の取り扱いについて
九州工業大学 教育高度化本部長

5月17日
生成系AIの利活用について
関東学院大学 学長 小山嚴也

5月18日
生成系AI(ChatGPT等)の利活用について
四国大学 学長 松重和美

5月19日
生成系AI(ChatGPT等)利用上の留意点等について
城西大学 学長 藤野陽三

5月24日
生成系AIガイダンス
大東文化大学 学園総合情報センター

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5月25日
生成系AIの利用について
千葉商科大学 学長 原科幸彦

5月25日
生成 AI(対話型 AI)の利用に関する本学の方針について
東京未来大学 学長 角山剛

5月25日
教育・研究活動における生成系AIの利用について
八戸工業大学 学⻑ 坂本禎智

5月26日
ChatGPT 等の生成系 AI について
日本獣医生命科学大学 学長 鈴木浩悦

5月26日
ChatGPT等の生成系AIの利用に関する注意事項について
鶴見大学 学長 中根正賢

5月26日
生成系AI(ChatGPT,BingAI,Bard等)利用についての注意喚起
中国学園大学 学長 千葉喬三

5月26日
岡山理科大学の教育における生成系AI の取扱いについて
岡山理科大学 副学長(教育担当) 松浦洋司

5月26日
科学技術における知的⽣産活動と⽣成系AIの利⽤について(4月28日)
東京理科大学 学長 石川正俊

5月29日
ChatGPTなど生成系AIの利用についての本学の基本的な考え方
成城大学 学長 杉本義行

5月29日
生成系AIの利用に関する留意事項について
東京情報大学 大学院総合情報学研究科委員長 花田真樹・総合情報学部長 圓岡偉男・看護学部長 藤井博英

5月31日
本学の教育における生成系AIツールの利用に関する留意事項について
福岡大学 教学担当副学長 加留部善晴

5月31日
生成AIの利用について
徳島大学 理事(教育担当) 長宗秀明

5月31日
生成系AIの利用に関する留意事項
北海道大学 理事・副学長 山口淳二