2026年7月18日土曜日

国旗損壊罪


図:黒いXに赤い円を描くライブ配信(ChatGPTによる)

Q(koshix):
国旗損壊罪についてお尋ねします。自分の家から持ってきた大きな白い布の中央に黒く太いバッテンが印刷されたものがあります。これを撮影しながらYouTubeでライブ配信しています。この布の真ん中にきれいな赤い丸を描いていきます。これは違法だとして罪に問われるでしょうか?

A(Claude):
まさに時宜を得たご質問です。というのも、「国旗損壊罪」を新設する法律(国旗の損壊等の処罰に関する法律)は、まさに本日・2026年7月17日に参議院本会議で可決・成立したばかりだからです。与党などの賛成多数で可決、成立し、2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金という罰則を設け、「人に著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法」で公然と国旗を損壊・除去・汚損した場合を処罰の対象とします。衆議院の法案本文を確認したところ、施行は公布の日から20日を経過した日とされているようですので、現時点ではまだ施行前です。したがって、今日この配信を行ったとしても、少なくともこの新法で罪に問われることはありません(憲法39条の遡及処罰の禁止)。従来の刑法92条(外国国章損壊罪)は外国の国旗のみが対象で、日章旗は対象外でした。

では施行後に同じことをしたらどうか。ここがご質問の核心だと思いますが、条文の構成要件に照らすと、処罰は相当に難しいと考えられます。理由は三つあります。

第一に、処罰対象の行為は国旗の「損壊・除去・汚損」であり、いずれも既に存在する国旗に対する毀損行為を前提とします。ご提示のシナリオでは、行為の開始時点で存在するのは「黒いバッテンが印刷された白布」であり、これは社会通念上、国旗ではありません。そこに赤い丸を「きれいに描く」行為は、物理的には創作・付加であって、損壊でも汚損でもない。無傷の日の丸が存在した瞬間が一度もない以上、「国旗を汚損した」という構成要件該当性は認めがたく、罪刑法定主義(類推解釈の禁止)が処罰を強く妨げます。

第二に、完成した物自体が「国旗」に当たるかも疑わしい。この法律における国旗は「社会通念上、国旗の用に供していると認識される有体物」と定義され、絵画の一部として描かれた旗や創作物等は対象外とされています。中央に巨大なバッテンの入った布は、国旗として掲揚・使用される物というより、抗議表現ないし創作物と見るのが自然でしょう。 

第三に、法律には、表現の自由その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に侵害しないよう留意すべきとの適用上の注意規定も置かれています。政治的メッセージ性の明白なパフォーマンスへの適用には、この規定が抑制的に働くはずです。 

ただし留保も必要です。立案段階の説明では、自ら損壊等をしている状況をライブ配信することは罰則の対象になるとされており、配信という形態自体は「公然性」を満たします。また該当性の判断は「行為の外形、周囲の状況その他の客観的な事情を総合的に勘案して」行うとされているため、捜査機関が一連のパフォーマンス全体を「実質的な国旗汚損」と評価して捜査に着手するリスクはゼロではありません。野党からも定義が曖昧で表現の自由を萎縮させるとの懸念が出ている新法で、判例の蓄積もこれからです。「順序を逆にすれば脱法できるか」という論点は、まさに今後の解釈論の試金石になるでしょう。なお、布はご自身の所有物なので器物損壊罪も成立しません。

私は弁護士ではないので、実際に行動される前提であれば、憲法・刑事法に明るい弁護士への相談をお勧めします。ただ純粋な法解釈の問題としては、施行前は明白に不可罰、施行後も文理上は構成要件を外れる可能性が高い、というのが私の読みです。

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