さて,ローラ式すべり台において,雨粒のように速度の2乗に比例する抵抗が働く理由である。これを牧野さんにならってローラーの回転エネルギーへの損失からくるとしてみよう。
村田さんらの論文では,実験データとして次の情報が与えられている。ローラ式すべり台の直線部分7.5m,角度13度,直径18mm の軸受け付きアルミ棒・25mm 間隔 とある。アルミ棒はたぶんアルミパイプだと思うが,厚みや長さや質量などの情報はなかった。
これから,回転アルミパイプの外径Rは9mm で間隔dは25mm となる。仮に厚みを5mm とするとアルミパイプの内径R′は4mmである。アルミパイプの軸回りの慣性能率Iは,その質量をMとして,I=(R2+R′2)/2⋅M となる。よくある力学の演習問題だ。
終端速度vに達すると,すべり台を滑る位置エネルギーがすべてローラーの回転エネルギーに転化される。あるいはこの際に損失を伴うかもしれない。短時間Δtの間に物体が角度 θのすべり台をvΔtだけ滑り落ちるとする。その際の位置エネルギー変化はΔU=mgvΔtsinθ となる。
一つのローラユニットの幅はdなので,この間に通過するユニット数 nは,n=vΔtdとなる。また,1ユニットのローラが受け取るエネルギーΔLは,ΔL=12Iω2となる。ただし,ω=vRは,ローラーの回転角速度である。これから,ΔL=Iv22R2となる。
ΔU=nΔLから vΔtを消去すると,mgsinθ=1d⋅Iv22R2となる。
∴v=√4gsinθ R2d(R2+R′2)M⋅√m
ここで,Mはアルミパイプの質量。アルミパイプの長さを60cm ,R′=4mmとすると,M=0.33kgとなる。これらを代入すると, v=0.74√m となる。
牧野さんの前半の値とほぼ整合するというか,真似しただけなのであたりまえなのだった。
図:アルミパイプ内径の関数としての係数と質量(直線は係数の実験値)
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