2024年1月12日金曜日

伽蘿先代萩

 国立文楽劇場初春文楽公演(第173回)は,第1部が七福神宝の入舩と近頃河原の達引,第2部が伽羅先代萩,第3部が平家女護島と伊達娘恋緋鹿子で,第2部を観劇した。

今年から新年の鏡割りが再開されていたようだ。行ったのは晴の平日でそこまで冷え込んではいなかったが,第2部の観客の入りは4割弱というところか。外国人の姿が目に付いたが,お客さんの多くは日本人の女性高齢者である。

前回良かった芳穂太夫と錦糸の竹の間の段から始まる。悪役八汐が登場してからの場面で寝てしまったので,話の重要なポイントがわからなくなった。御殿の段は千歳太夫と富助だ。千歳大夫は昔のパターンに戻ったようで,どうも政岡の表現には合わないなあとつらつら考えているうちに再び眠りに落ちてしまった。

そうです,この茶道具による飯炊き(ままたき)の場面が第2部のクライマックスなのだけれど,それを見逃してしまった。昔,住太夫のままたきを見たときもかなり気合いを入れていたが,やはり途中から眠くなってしまったのだった。

調べてみると,住太夫の御殿の段は2010年の初春公演だった。奥の政岡忠義の段は津駒太夫。文楽を見始めてまだ間もない頃である。そんなこともあってかなり集中してみていたが,最後のなぎなたを持って見得を切る場面がすごく印象的だった。今回は視角がちがうので,ちょっと記憶とは合わない。

政岡忠義の段は呂勢太夫と清治で,いつもはここで寝ている。今回は千松が八汐に殺され,政岡が嘆き,八汐へ復讐を果たすという緊迫の場面の連続であり,呂勢太夫も気合いが入っていてたいへんよかった。

今回,最後の床下の段が追加されている。三味線の団吾休演の代役だった燕二郎がよかった。簑紫郎と玉勢が交替で,松ヶ枝節之助と貝田勘解由を演じている。そもそも大鼠は着ぐるみで演じられているとか,途中で鳴り物も太夫も三味線もない無音の時間が長く続くとか,せり上がる貝田勘解由には足がなく人形遣いも下駄を履いていないようだとか,なんだかよくわからないことが多い段なのであった。



図:国立文楽劇場2024初春公演(2024.1.11撮影)


2024年1月11日木曜日

見せ算

M-1グランプリ2023からの続き

漫才コンビさや香の新山が考案した「見せ算」である。これは,一般人と最先端のテクノロジーやシステムが乖離している世の中で,その問題を解消するためには一般人の数学力の強化が必要だとの主張から始まる。加減乗除の四則演算では少ないので新山が作った五則目の演算が見せ算である。

見せ算」は,数字と数字を見合わせてどう思うかという演算だ(訳註:演算記号は指定されていないので,ここでは目に似ている@=みせを採用する)。この演算の答えは,和差積商に並んで「眼(がん)」という。

基本ルールその1:(例)1@1=0
 同じ数字どうしが見合うと恥ずいのでお互い立ち去るからゼロになる。
基本ルールその2:(例)1@2=2
 違う数字が見合うとき,小さい方が大きい方を見ると怖いから立ち去るので大きい方が残る。
応用編その1:(例)6@9=11
 お互いに見合うと俺かとなって近づいていって11になる。
応用編その2:(例)2@5= 1.1
 お互いに俺かとなって近づいたけれど反転していて違うので携帯を落として1.1になる。
応用編その3:(例)1@100=83⇒84
 これは難しいので(訳註:説明略)大学院のルールだ。

図:見せ算に使う数字の形

数字の形によって結果が変わらないように,(端点の数,曲がり角の数,三差路の数)のセットで分類してみれば,確かに6と9は同じグループ(1-4-1)であり,2と5も同じグループ(2-4-0)だ。前者は回転操作で重なるが,後者を重ねるためには反転操作が必要だ。それ以外には同等の数字はなかった。


2024年1月10日水曜日

紅白歌合戦

昔は,紅白歌合戦が午後9:00に始まっていた。それまではレコード大賞の時間なのだ。

こどもはもう寝る時間だったので,小学生の間はほとんど紅白歌合戦をみることがなかったような気がする。大晦日の晩ご飯の後は早々にお風呂で身を清め,新しい下着に身を包んで寝る準備をする。初夢の定義には諸説あるにしても,良い夢が見れますようにと祈りながら,さっさと布団に入るのがよい子のルーティーンだ。

妹はおませだったので,おばあちゃんの家のテレビで紅白歌合戦を観るのだといって,夜出かけて行った。なぜ自宅でなくて,歩いて5-6分のおばあちゃんの家でテレビを見る必要があったのかがよくわからない。東京オリンピックの年には,自分の家にもカラーテレビがあったような気がするが,どうなのだろうか。そのころオコチャマだった自分はスヤスヤと寝ていた。次の日,今年の紅白歌合戦は紅(あか)が勝ったか白(しろ)が勝ったかというお馴染の話題で盛り上がるのだけれど,歌謡曲にはあまり興味がなかった。なお,当時おばあちゃんの家のお手伝いさんだったかよちゃんは舟木一夫のファンだった。

最近の紅白歌合戦を見ても,半分以上が名前も知らない歌手やグループで,大半が聴いたこともない曲だ。いやかなり前からそうだったかもしれない。これを定量的に評価できるかと,WikipediaのNHK紅白歌合戦の各回の概要。放送データを眺めてみた。

「知っている」ことの定義が難しい,(1) 歌手やグループの名前だけきいたことがある,(2) 写真のイメージと名前が一致する,(3) その来歴や構成メンバーまでわかっている,(4) 曲の名前だけ聞いたことがある,(5) 曲の歌詞やメロディーの一部を脳内で再生できる,(6) 全曲を歌唱若しくは器楽演奏できる。

とりあえず,歌手名と曲名とメロディーの3セットがリンクして記憶されいるものを5年置きにカウントして全曲数に対する比率を数えてみた。1965-70年に30%程度だったものが,次の10年で20%台になり,1990年以降は10%台で推移している。平成(1989年)に入って,開始時間が前倒しされて二部制になった。視聴率確保のためのテコ入れで懐メロや企画モノが増えることになったので,そこまで知らない曲ばかりというわけでもなかった。

しかし,けん玉はもう勘弁してほしい。

2024年1月9日火曜日

令和6年能登半島地震(2)

令和6年能登半島地震(1)からの続き

テレビでのニュースや,SNSでの記事などを見ていてもなかなか全体像がつかめない。出来るだけ憶測にまみれていない情報を入手したい。

政府が提供している最低限のものが,内閣府の防災情報のページにあった。「令和6年能登半島地震による被害状況等について」である。地震発生翌日の1月2日から毎日出されていて,1月8日の20時段階の最新版は,「令和6年能登半島地震による被害状況等について(令和6年1月7日11:30現在)」であり,1月8日はお休みらしい。せっかく作るのだから目次もあるといいのに。これはわがままな希望なので,自分で作業してみた。完全性は保証していないので,あくまでも参考程度に。
1p 1 地震の概要(気象庁情報:1 月 7 日 11:30 現在)

2p 2 人的・住家被害等の状況(消防庁情報:1 月 7 日 11:30 現在)

3p 3 避難所の状況(内閣府情報:1月 7 日 6:00 現在)

3p 4 その他の状況
3p (1)ライフライン関係
3p ①水道(厚生労働省情報:1 月 7 日 11:30 現在)
6p ②電力(経済産業省情報:1月7日 10:30 現在)
7p ③ガス関係(経済産業省情報:1月7日 10:30 現在)
7p ④高圧ガス・火薬類(経済産業省情報:1月7日 10:30 現在)
7p ⑤製油所・油槽所(経済産業省情報:1月7日 10:30 現在)
8p ⑥SS(経済産業省情報:1月 7 日 10:30 現在)
8p ⑦通信関係(総務省情報:1 月 7 日 11:00 現在)
9p ⑧防災行政無線(総務省情報:1 月 7 日 11:00 現在)
9p ⑨MCA 無線関係(総務省情報:1 月 7 日 11:00 現在)
9p ⑩放送関係(総務省情報:1 月 6 日 7:00 現在)
10p (2)原子力施設関係(原子力規制庁情報: 1月6日 6:30 現在)
10p ①北陸電力(株)志賀発電所
11p ②東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所
12p (3)道路(国土交通省情報:1 月7日 9:30 現在)
12p ①○高速道路 1 路線 3 区間で通行止め
13p ②○直轄国道 1 路線 1 区間で通行止め
13p ③補助国道 3 路線 29 区間で通行止め
13p ④都道府県道等 3 県 70 区間で通行止め
13p (*)交通(カテゴリ名が欠落)
13p ①鉄道(国土交通省情報:1 月 7 日 10:00 現在)
14p ②航空(国土交通省情報:1 月 7 日 9:30 現在)
15p ③物流・自動車(国土交通省情報:1 月7日 9:00 現在)
15p (4)海事(国土交通省情報:1 月7日 10:00 現在)
16p (5)河川(国土交通省情報:1 月7日 9:30 現在)
16p (6)ダム(国土交通省情報:1 月7日 10:00 現在)
16p (7)海岸(国土交通省情報: 1 月7日 10:00 現在)
16p (8)砂防(国土交通省情報: 1 月7日 10:30 現在)
17p (9)港湾(国土交通省情報:1 月7日 9:00 現在)
18p (10)公園・都市(国土交通省情報: 1 月7日 10:00 現在)
18p (11)住宅・建築物(国土交通省情報: 1 月7日 10:00 現在)
18p (12)下水道関係(国土交通省情報: 1 月 7 日 10:30 現在)
19p (13)観光(国土交通省情報: 1 月7日 9:00 現在)
19p (14)医療関係(厚生労働省情報:1 月 7 日 8:30 現在)
21p (15)社会福祉施設等関係(厚生労働省情報:1 月 7 日 11:30 現在)
23p (16)保健・衛生関係(厚生労働省情報:1 月 7 日 11:30 現在)
24p (17)薬局、薬剤師、輸血用血液製剤、毒物劇物関係(厚生労働省情報:1 月 7 日 11:30 現 在)
25p (18)工業用水関係(経済産業省情報:1 月7日 10:30 現在)
25p (19)製造業等(経済産業省情報:1 月7日 10:30 現在)
25p (20)中小企業(経済産業省情報:1 月7日 10:30 現在)
25p (21)児童福祉施設等関係(こども家庭庁情報:1月7日 11:10 現在)
26p (22)障害児施設関係(こども家庭庁情報:1月7日 11:10 現在)
27p (23)農林水産関係(農林水産省情報:1月7日 11:30 現在)
27p ①農作物等の被害
27p ②ため池・ダム等の被害情報
29p ③農村生活環境施設の被害情報
29p ④林野関係の被害情報
30p ⑤卸売市場の被害情報
30p ⑥水産関係の被害情報
31p (24)文部科学省関係(文部科学省情報:1 月 6 日 12:00 現在)
32p (25)郵政関係(総務省情報:1 月 7 日 11:00 現在)
33p (26)法務関係(法務省情報:1 月 7 日 11:00 現在)
34p (27)駐日外国公館への対応(外務省情報:1 月 7 日 10:00 現在)
34p (28)海外からの具体的支援の申し出(外務省情報:1 月 7 日 10:00 現在)
34p (29)金融機関等(金融庁情報:1月5日 15:00 現在)
34p (30)廃棄物処理施設関係(環境省情報:1月 7 日 11:30 現在)
35p (31)災害廃棄物等関係(環境省情報:1月7日 11:30 現在)
36p (32)国立公園関係(環境省情報:1 月7日 11:30 現在)
36p (33)動物愛護管理関係(環境省情報:1月7日 11:30 現在)
37p (34)野生施設関係(環境省情報:1月7日 11:30 時点)
37p (35)官庁施設(国土交通省情報:1月7日 11:30 時点)
37p (36)緊急物資輸送(国土交通省情報:1 月7日 10:00 時点)
38p (37)火葬場の被害状況(厚生労働省情報:1 月 7 日 11:30 時点)
38p (38)人材開発関係(厚生労働省情報:1 月 7 日 11:30 時点)
39p (39)災害ボランティア関係(厚生労働省情報:1 月 7 日 11:30 時点)

39p 5 政府の主な対応
39p (1)官邸の対応
39p (2)総理指示
40p (3)災害対策本部の設置等
40p (4)災害救助法の適用
40p (5)被災者生活再建支援法の適用

40p 6 各省庁の主な対応
40p (1)内閣府
40p (2)気象庁
41p (3)警察庁(2p)
43p (4)消防庁(5p)
48p (5)海上保安庁(2p)
50p (6)防衛省(6p)
56p (7)総務省(5p)
61p (8)法務省
61p (9)外務省
61p (10)財務省
61p (11)文部科学省(3p)
64p (12)厚生労働省(8p)
76p (13)農林水産省(5p)
81p (14)経済産業省
82p (15)国土交通省(2p)
84p (16)環境省(3p)
87p (17)金融庁
87p (18)国土地理院
87p (19)国土技術政策総合研究所・土木研究所・建築研究所・港湾空港技術研究所
88p (20)原子力規制庁(2p)
90p (21)こども家庭庁(2p)

92p 7 都道府県における災害対策本部の設置状況
気がついたことを何点か。
・道路の次の交通関係のカテゴリ名が欠落していた。
・北陸電力志賀原子力発電所の変圧器オイル漏れで火災があったというのはデマだとネトウヨグループが主張していたが,実際には火災があって消火していた。
令和6年1月1日
 16:10 定期検査中(停止中)
 16:45 2号機主変圧器で火災発生、噴霧消火実施
 16:51 2号機主変圧器の火災について、現場確認により火災と判断。公設消防へ通報済
17:18 500KV 焦げ(公設消防に連絡済)、275KV に切替え済。
17:29 2号機主変圧器の火災について、自衛消防隊と運転員により火災なしを確認。 17:30 開閉所について、自衛消防隊が、こげ臭がないこと、火の手が上がっていないことを確認

 ・テレビニュースでは報道されていた米軍が自衛隊とともに活動するという件は全く触れられていない。あるのは「米国国際開発庁(USAID) から被災地で活動する NGO に対して 10 万ドル(約 1,400 万円)の資金提供を行う提案があり、受ける方向で調整中。米側は提供先の NGO とし て、ピースウインズ・ジャパンを対象とすることを想定。」の件だけだ。

・自衛隊の災害派遣要請は,石川県知事から愛知県守山駐屯地の第10師団長に対して1月1日に発出されている。陸上自衛隊第10師団は,中部方面隊直轄で東海北陸を担当地域にしている。金沢市の平和町(野田)の金沢駐屯地には陸上自衛隊の第14普通科連隊がある。

・中部方面隊の陸上自衛隊第4施設団は出動しているが,世に倦む日々が指摘していたようにほとんど目立った活動がみられない。福井(鯖江)の第372施設中隊ががれき除去している程度か。富山(砺波)の第382施設中隊は動いていないの?

・河北潟干拓地に11戸の酪農家が営農していて2000頭の牛がいる。石川県の生乳生産量の半分を占めている。乳牛一頭一日100Lが必要なので断水が命取りになって困っている,というような情報はTwitter(X)でしか得られず,内閣府の報告には上がっていない(明示されていない)。多分その手の話がたくさんある。


図:能登半島地震の震央分布図(気象庁から引用)

追伸(1/10/2024):
 原子力規制庁の資料では「火災がなかった」とされている。しかし「噴霧消火設備を手動起動したことを確認した。」との記述も。なんで?

2024年1月8日月曜日

GO

大阪・関西万博2025の際に,大阪でライドシェアを実現しようと吉村が動いている。背後に菅義偉や河野太郎がいるので,どう考えても怪しいということになってしまう。地域ごとのタクシー事業者との合理的な棲み分けや調整さえうまく図られればよいのだろうが,複雑に絡み合った利権の縺れた糸を解きほぐすのはそう簡単ではなさそうだ。

世界的には,ライドシェアといえばUberであり,サンフランシスコでドリキンが普通に使っているのを見ていると,いつかはそれがあたりまえの風景になっていくのかもしれない。

日本では,まだライドシェアが法的に認められていないので,Uberは大都市に特化したタクシー配車サービスのUber Taxiの展開にとどまっている。一方タクシー配車アプリは昔からちらほらiPhoneで見かけたけれど,使ったことはなかった。

この度,なら歴史芸術文化村MINAMI(吉田南)のコンサートがあるというので,孫の風葉ちゃんたちと一緒に,タクシー配車サービスに挑戦することになった。日本で最も普及しているスマートフォンのタクシー配車アプリが,GOである。10万台が登録されているということで,単純計算すると1万人当たり8台になるので,天理市だと50台以上は利用可能になるはずだった。

ところで,GOアプリに登録してタクシーを呼び出してみると,タクシーの姿はあって,4-12分で来るというメッセージは出るのだけれどいっこうに来る気配がない。仕方がないので地元の天理タクシーに直接電話してきてもらう。

天理タクシーにはタブレットがついていて,GOサービスが使えそうな雰囲気がある。運転手さんに聞いて見ると,支払いはGOで可能なのだけれど,このあたりではGOでの配車予約はできないとのことだった(どの程度確かなことかはよくわからない)。とりあえず,GOアプリとNFC接続することで,QRコードスキャン無しで支払うことができた。


写真:GOアプリのアイコン(AppStoreから引用)

2024年1月7日日曜日

令和6年能登半島地震(1)

元旦の午後4時過ぎ,能登で大きな地震が起こっているらしいと聞き込んでTVをつけた。

それからまもなく震度5強の前震(16:06)の直後の16:10に,最大震度7の令和6年能登半島地震(M7.6)が発生した。テレビや携帯からはけたたましい緊急地震速報が流れた。10Fの自宅でも,長く感じられる時間大きな揺れが幾度か押し寄せた。阪神・淡路大震災以来かもしれない。後に,奈良県でも震度3から震度4だったとわかる。

今回の地震のエネルギーは平成7年兵庫県南部地震(M7.3)より2倍以上大きい。地震はマグニチュードが0.1増えるとエネルギーが√2倍になる(マグニチュード1で2^5=32倍)からだ。

昨年度の石川県の人口は,111.5万人である。加賀(かほく市・河北郡以南)が94.5万人,能登(羽咋郡以北)が17万人という内訳になっている。震源の珠洲市が1.2万人,輪島市は2.3万人である。もしこの地震によって亡くなられた方が250人に達すると仮定するならば,能登地方の人口を母数とする比は0.15%となる。阪神淡路大震災における兵庫県の対象地域の人口400万人を母数とした死者数6400人は,0.16%なので,ほぼ同じオーダーの死亡率になる。

一方,東日本大震災(M9.0)の場合はどうだろうか。東日本大震災記録集(第3章災害の概要)によれば,岩手県・宮城県・福島県の死者・行方不明者数(100名以上の自治体で仙台市といわき市を除く)は1万9000人であり,地域人口88万人に対する比率は2.1%である。しかし,死亡原因の90%が津波に起因した溺死であり,これを除けば0.21%である。すなわち,阪神淡路大震災や,今回の能登半島地震の仮定値とおよそ同じオーダーになる。

なお,熊本地震(M7.3)では,被害の大きかった市町村の死者数240人に対応する地域人口が104万人なので,0.023%となっており,能登半島地震の数分の1のオーダーになっていた。これらの数字は,状況を単純化しすぎた評価であるかもしれない。同様の結果をTwitter(X)に投稿していた早川由紀夫さんはボロクソにディスられていた。


図:発生後の地震の積算回数(気象庁の第12報からの引用)

追伸:
[2]「令和6年能登半島地震」について(第 12 報)(気象庁地震火山部)

2024年1月6日土曜日

(冬休み 12)

人・子供・大人・老人
사람(saram)・어린이(eorin-i)・성인(seong-in)・노인(no-in)

2024年1月5日金曜日

(冬休み 11)

親・子・夫・妻
부모(bumo)・자식(jasa)・남편(nampyeon)・아내(anae)

2024年1月4日木曜日

(冬休み 10)

甘い・苦い・酸い・塩辛い
달다(dalda)・쓰다(sseuda)・시다(sida)・짠다(jjanda)

2024年1月3日水曜日

(冬休み 9)

勉強する・遊ぶ・食べる・眠る
공부할(gongbuhal)・놀(nol)・먹을(meokul)・잘(jal)

2024年1月2日火曜日

(冬休み 8)

靴・シャツ・ズボン・スカート
신발(sinbal)・셔츠(syeocheu)・바지(baji)・스커트(seukeoteu)

2024年1月1日月曜日

(冬休み 7)

車・バス・電車・自転車
자동차(jadongcha)・버스(beoseu)・기차(gicha)・자전거(jajeongeo)

2023年12月31日日曜日

(冬休み 6)

本・ノート・鉛筆・消しゴム
책(chaek)・노트(noteu)・연필(yeonpil)・지우개(jiugae)

2023年12月30日土曜日

(冬休み 5)

学校・教室・先生・生徒
학교(hakgyo)・교실(kyosil)・선생님(seonsaengnim)・학생(haksen)

2023年12月29日金曜日

(冬休み 4)

机・いす・ベッド・食卓
책상(chaeksang)・의자(uija)・침대(chimdae)・식탁(sigtag)

2023年12月28日木曜日

(冬休み 3)

リンゴ・いちご・バナナ・ぶどう
사과(sagwa)・딸기(talgi)・바나나(banana)・포도(podo)

2023年12月27日水曜日

(冬休み 2)

ピアノ・ギター・太鼓・笛
피아노(piano)・기타(gita)・북(bug)・피리(pili)

2023年12月26日火曜日

2023年12月25日月曜日

M-1グランプリ2023

M-1グランプリやってるよという連絡を受けて,久しぶりにTVのチャンネルを回した。

笑い飯がタイトルを取る頃まではよく見ていたが,最近はちょっと足が遠のいていた。審査員のコメントや評価もなんだかしっくりこなくて,最近の笑いのスタイルにうまく波長が合わなくなっていた。

今回,久々に見ようという気になったのは,NHKのあさイチで博多大吉が「審査するのがちょっと憂鬱だ」というような話をしていたからだ。NHKが大阪維新とグルになっている吉本興業とベタベタの関係になっているのはちょっとどうかと思うが,朝のひとときを博多華丸・大吉の無難な笑いで過ごすのは精神衛生上よいかもしれない。

M-1グランプリを令和ロマンの次あたりからみた。さや香の評価が高かったけれどちょっとうるさすぎて,ピンと来なかった。ヤーレンズの笑いが一番自分の壺にはまって終始ニヤニヤしていた。今回はそれぞれ,審査員のコメントもみな納得できるものでよかった。最後の3組を残したあたりで,古典芸能への招待の録画が始まり,チャンネルは自動的にあまり好きでない市川團十郎に切り替わってしまった。

その後,クリスマスイブにネットで確認すると,令和ロマンが2023のチャンピオンになっていた。さっそくYouTubeで探してみたが,まあまあという感じかな。ヤーレンズの方が自分には合っていた。

P. S. さらに次の日クリスマスの夜にネットで確認するため,最終決戦三組のネタをあらためてみた。令和ロマン(クッキー工場)<ヤーレンズ(ラーメン屋)<さや香(見せ算)だった。「見せ算」圧倒的に面白かったやんか。ただ審査員から票は入っていなかった。

P. P. S. さや香の新山は大阪教育大学卒業だった。どおりで自分と波長が合うネタだったわけだ。

[1]大吉ポッドキャスト,いったんここにいます! M−1グランプリの採点振り返りです。

2023年12月24日日曜日

6文字のDNA

DNAというと,55年前に高等学校の生物の時間に学んだところで知識が留まっている。4つの塩基が対になって並ぶことで,DNAの複製で情報が保たれるということ。3つの塩基情報が1つのアミノ酸に対応すること。くらいだ。

米島君はこの遺伝情報の伝達のところが一番重要なポイントだといっていたが,自分は,むしろ進化のところに興味があった。結局それもDNAによる遺伝情報の伝達に帰着したのかもしれないが,当時の高校の生物教科書ではそこまで深入りできるわけでもない。

1970年万博の太陽の塔の中を小松左京がデザインした生命の進化の樹ができるというので,すごく期待していたのだけれど,残念ながら,乃村工藝社が作ったような(そうかどうかは知らない)期待外れのモックアップが並んでいた。

DNAの塩基の種類が4でないとどうなるか,これまで考えたこともなかった。「4文字のDNAを6文字に拡張してセントラルドグマを騙す研究」という怪しい記事に出会った(が真面目な論文[1]だった)。そうか,その手があったのか。

論文のアブストラクトをDeepLで訳して,Bardで要約すると前半は次のようなことだった。
人工的に拡張された遺伝情報システム(AEGIS)は、DNAに新たな塩基対を追加したものです。この新たな塩基対は、天然の塩基対と異なる水素結合パターンを持っています。そのため、RNAポリメラーゼによって認識され、処理されるかどうかは不明でした。

 この論文では、大腸菌のRNAポリメラーゼが、6文字に拡張された遺伝システムにおいて、非天然型核酸塩基を選択的に認識することを示しました。高分解能低温電子顕微鏡構造から、AEGISと天然塩基対の認識の背後にある共通の原理が明らかになりました。
このとき,ATGCにBSが追加されることになる。この主の研究は古くからあって,いくつかの可能な塩基ペアが見つかっているらしい。DNAとして機能するためには,複製,転写,翻訳の3つの機能が実現されル必要がある。新しい塩基を含む3塩基組に対応する転写RNAとアミノ酸があって,これまでになかった高機能なタンパク質が生成されるという段階には達していない。

もし,DNAに6塩基対を持って自己増殖できるあらたな生命体系が創造されたらどうなるだろうか。AGIがそのような新しい生命の創造神となるのだろうか。


図:DNAからタンパク質合成へ(KEK物質構造科学研究所から引用)


[1]A unified Watson-Crick geometry drives transcription of six-letter expanded DNA alphabets by E. coli RNA polymerase(Nature)

2023年12月23日土曜日

わが街,道頓堀

諸般の事情から,一人で松竹座の芝居にいく。

久しぶりの大阪市内だが,晴れていてなんとか寒さもしのげた。いつのまにか,角のはり重のビフカツサンドが2980円になっていた。10年ほど前に,最初に手にしたときは1500円くらいだった。いつのまにか倍になってしまった。ちょっともう食べられないか。

観劇したのはわかぎゑふの「わが街,道頓堀」という現代劇で,1970年の万博直前の大阪の雰囲気を描いたものだ。お客さんは若い女性が中心で,松竹座の2階のトイレがすべて女性用に設定されていた。松竹座開場100周年記念ということで,道頓堀あたりの商店や名物が実名でたくさん登場している。おだやかな芝居だったがなかなかおもしろかった。小松左京の名前が出たのは,わかぎゑふが関西のSF界と関係が深かったということ?

劇中で落語家の役をしていたのが笑福亭銀瓶だったというのは,終演後にパンフレットを見てからやっとわかった。売店で自著が販売されていますと宣伝していたところで,誰かなと思った。現実の2025万博前の状況は,当時1970万博前に比べるとよくもわるくも生ぬるいことになっている。大阪の行政を皮肉りつつも,当時の反対論を未熟な学生さんの反抗だけで描写しているのは,ちょっといただけないが,まあ,こんなものか。

描かれていた大阪は,自分が阪大への進学を機に暮らすようになった時代や場所そのものである。天牛書店などの古書店を巡って,頻繁に道頓堀に通っていた頃なので,当時の空気が懐かしい。


さて,すーちゃん,むぎちゃんと,かざちゃんのプレゼントを探して,デパートや新しくなったHANDSや書店などを何箇所も回ったけれど,どうにもこうにもピンと来ないので挫折してしまった。前回の万博から55年経った大阪の街には,モノと情報はあふれているのだけれど,なんだかまったく楽しくないのだった。いや,それとこれは話が違うのだけれど・・・,どうやらお母さん達に直接希望を聞いたほうがよさそうである。

2023年12月22日金曜日

astropy

Pythonで太陽系の天体位置を描画してみる」というのを見つけた。python上の天文学統合データ処理環境であるastropyというライブラリを使うものだ。

jupyter lab を起動して,さっそく試してみると,いきなりmatplotlibが見つからないというところでつまづいた。以前に試したpythonのコードでは,matplotlibを読み込んでちゃんと作図がでてている。その古いコードでもエラーがでてきた。

macbook air の環境は,基本的にはhomebrew で更新しているので安心できるのだが,問題は,python環境である。python は3.9〜3.12までの複数のバージョンが同居することになっている。これは基幹ソフトなので,下手に古いものを消してしまうとややこしいのだ。そこで,一般には,python環境を指定するpyenvとかvenvで仮想環境を設定した上で,様々なライブラリを加えていくことになる。

が,ですね,それはそれで面倒なので,アドホックにバージョンアップを繰り返しながら,pip install ホゲホゲをつづけているために,わけわかめ状態になっている今日この頃なのだ。jupyterlabもバージョンが上がるたびに,見えなくなってしまうので,毎回 brew link jupyterlabを繰り返す始末だ。70歳になると,自分の体の中のDNA情報システムだけでなく,外の電子情報システムまで老化が進んでくるということだ。

まあ,macOSの場合は,機種更新の際に新規インストールすればそれなりに,なんとかなるかもしれないけれど,複雑な記録や認証情報を引き継ぐのは厄介だ。特に,iOSでは,指紋認証を含め,現金が動く認証アプリがウヨウヨいるので,次期機種更新のことを考えただけで気が遠くなりそうだ。


話を戻して,astropyについて。jupyter環境でpython kernelを立ち上げているところから,!エスケープで!pip listをやってみると,matplotlibは存在している。!pip install matplotlib でも致命的エラーはでない。ChatGPTに相談してみると,カーネルがどうなっているか確認せよとのこと。
 jupyter kernelspec list
  python3              /opt/homebrew/Cellar/jupyterlab/4.0.9_2/libexec/lib/python3.12/site-packages/ipykernel/resources
  julia-1.9            /Users/koshi/Library/Jupyter/kernels/julia-1.9
  maxima               /Users/koshi/Library/Jupyter/kernels/maxima
  wolframlanguage12    /Users/koshi/Library/Jupyter/kernels/wolframlanguage12
はいはい,表に見えていたのは python3.11.6だったけれど,実は,python.12.1が使われており,ここにはmatplotlibが入っていませんでした。さっそく,このポイントで,matplotlibとかscipyとかastropyとかpytest-astropyとかをpipでインストールした。別の参考資料に指示があった,astropyが正しく導入できているかどうかのテストも,試行錯誤の後にOKとなった。

   cd /opt/homebrew/Cellar/jupyterlab/4.0.9_2/libexec/bin

   ./pip install astropy

   ./pip install ephem

import astropy as ap
>>> ap.test()
platform darwin -- Python 3.12.1, pytest-7.4.3, pluggy-1.3.0

Running tests with Astropy version 6.0.0.
Running tests in lib/python3.12/site-packages/astropy.

Date: 2023-12-19T22:26:53
Platform: macOS-14.2-arm64-arm-64bit
Executable: /opt/homebrew/Cellar/jupyterlab/4.0.9_2/libexec/bin/python
Full Python Version: 
3.12.1 (main, Dec  7 2023, 20:45:44) [Clang 15.0.0 (clang-1500.0.40.1)]
encodings: sys: utf-8, locale: UTF-8, filesystem: utf-8
byteorder: little
float info: dig: 15, mant_dig: 15

Package versions: 
Numpy: 1.26.2
Scipy: 1.11.4
Matplotlib: 3.8.2
h5py: not available
Pandas: not available
PyERFA: 2.0.1.1
Cython: not available
Scikit-image: not available
asdf-astropy: not available

Using Astropy options: remote_data: none.

rootdir: /opt/homebrew/Cellar/jupyterlab/4.0.9_2/libexec
plugins: astropy-0.11.0, remotedata-0.4.1, hypothesis-6.92.1, cov-4.1.0, filter-subpackage-0.1.2, astropy-header-0.2.2, anyio-4.1.0, mock-3.12.0, doctestplus-1.1.0, arraydiff-0.6.1
collected 28085 items / 5 skipped  

-- Docs: https://docs.pytest.org/en/stable/how-to/capture-warnings.html
========== 27425 passed, 425 skipped, 240 xfailed, 80 warnings in 184.56s (0:03:04) ===========
<ExitCode.OK: 0>
ところが,やっぱりもとの太陽系の天体位置描画が動かない。最後に,Animation関数中のblit=False をblit=Trueにしてようやく何か表示されてほっとしたが,そこまでで内部にエラーがあるとのメッセージが出て異常終了してしまった。チーン。


図:ここまでは出たけれどアニメーションにはなっていなかった残念な図

astropyはイメージ処理やデータ処理を本業とした,プロ用の本格的なシステムだった。

2023年12月21日木曜日

リザーバー・コンピューティング

脳オルガノイド計算からの続き

これは,リザーバー・コンピューティングについて,Bardに聞いてChatGPTに和訳してもらった解説だ。質問者(自分)のスペルが reserverと間違っていたけれど,修正して答えてくれた。このレベルになると,どの程度フェイク成分があるのかが判別できない。

Q:Please explain about reservoir computing.

A:Bard + ChatGPT
Reservoir computing(リザーバーコンピューティング)は、再帰ニューラルネットワークに着想を得た比較的新しい計算フレームワークです。この手法は、入力信号をリザーバーと呼ばれる固定された非線形システムのダイナミクスを使用して、高次元の計算空間にマッピングすることによって機能します。このリザーバーは、水のバケツや回路などの物理的なシステムであるか、微分方程式の系などの数学的なモデルであることができます。

その後、リザーバーの出力は線形の読み出し関数を使用して読み取られます。この読み出し関数は、リザーバーの状態と所望の出力との関係を学習するためにトレーニングできます。

図:リザーバーコンピューティングアーキテクチャ
(編者注: Rossello (2018)の図 [1] へ勝手にリンク引用しているBard)

リザーバーコンピューティングの利点の一つは、非常に効率的であることです。リザーバーは非常に単純であり、読み出し関数は比較的単純で速いアルゴリズムである線形回帰を使用して学習できます。これにより、低消費電力とリアルタイムのパフォーマンスが重要なアプリケーションに適しています。

リザーバーコンピューティングのもう一つの利点は、非常に柔軟であることです。同じリザーバーは、読み出し関数を変更するだけでさまざまなタスクを学習するのに使用できます。これにより、タスクが事前にはわからない場合や、タスクが時間とともに変化する場合に適しています。

リザーバーコンピューティングはまだ比較的新しい分野ですが、計算の仕方を革新する可能性があります。既に音声認識、画像認識、およびロボット制御など、さまざまなアプリケーションで使用されています。

以下はリザーバーコンピューティングに関するいくつかの追加の詳細です:

 ・リザーバーは通常、多くの内部状態を持つ高次元システムです。これらの状態は複雑な方法で相互作用し、リザーバーが非線形関数を計算できるようにします。

 ・読み出し関数は通常、リザーバーの状態の線形関数です。この関数は、所望の入出力関係の例などのトレーニングデータを使用して学習できます。

 ・リザーバーコンピューティングは、サポートベクターマシンやディープラーニングなどの他の機械学習技術と組み合わせて使用されることがよくあります。これにより、システムの精度とパフォーマンスを向上させるのに役立ちます。

Bard, Perplexity, Bing などは正確性を若干担保するために実在して関係あるURLへのリンクを提供しているが,それを埋め込み図の形で提供するのを見たのは初めてかもしれない。

以下は真正の参考文献:

2023年12月20日水曜日

脳オルガノイド計算

数日前,インディアナ大学のチームが,ヒト脳幹細胞から作成した脳オルガノイドをコンピュータ・チップに取り付けてAIツールに接続したシステム(Brainoware)で,初歩的な音声認識を含む,情報処理・学習・記憶ができることを実証したとのニュースが流れた。

ちょうど,しばらく前のNHKのフロンティア第2回「AI 究極の知能への挑戦」でも,脳を利用した計算チップの話が取り上げられていた。東大の池内与志穂准教授のグループが16点のプローブ上においた脳オルガノイドを2つ接続して,反応を観察する様子や,オーストラリアのBrett Kaganのグループの実験室の詳細な映像を見ることができた。

Kaganは,1970年代の最初期のコンピュータゲーム(アーケードゲーム)であるPON(ピンポンゲーム)をこの脳オルガノイドシステムにやらせていて,学習効率の高さを強調していた。すごくないか。


写真:脳オルガノイドチップ(左 F. Guo et. al. から,右 B. Kagan et. al. から引用)

2023年12月19日火曜日

モキュメンタリー

WOWOWで放映していた「ザ・モキュメンタリーズ 〜カメラが捉えた架空世界」を録画していたので,一気見した。

フェイクニュースが蔓延する昨今,「この番組では、現実の私たちと同じように、架空の世界で社会の変化に翻弄される人々を追い、現代社会で実際に起こっている出来事や社会の矛盾を、モキュメンタリーという手法をもって描くことで、真実に迫る。」とあるが,これぞ純正で良質なSFビデオ作品である。
ザ・モキュメンタリーズ ~カメラがとらえた架空世界~(各編30分)
 (編者注:丸括弧内はこちらで付加したキーワード)
#1 「インビジブル・ブルース」(透明人間皮膚移植・マイノリティー)
#2 「(株)わたし」(個人の公開株化「株式人間」・人間の価値)
#3 「WORD HUNTER」(言語省・言語取締官・不正日本語取締法)
#4 「マイナースポーツ・未来の星」(スルーイング・東西日本国)
#5 「ドローン・クライシス」(脱法人工知能搭載野良ドローンとマタギ)
#6 「ハラハラ♥ハラスメント」(ハラスメントバッチ・自由恋愛タブー)
#7 「冷凍睡眠ビジネスの闇」(家庭用冷凍睡眠カプセル)
#8 「仮想俳優A」(フルCGの俳優・最明寺アキラブーム)

本物のドキュメンタリーのような形式で製作されているうえ,非常にていねいなシュミレーションがされているため,うっかりしていると現実と混線してしまいそうになる。放送時間の関係で星新一のショートショートレベルの掘り下げとなり,問題をそこまで深刻に描いているわけではないけれど,ドキュメンタリーの力がこれらにリアリティをもたらす効果は大きい。

各編に出てくる日付が2020年のオーダーだったので調べてみると,最初に放送されたのは2021年の3月・4月だったようだ。なお,モキュメンタリーという言葉は普通名詞だった。


写真:ザ・モキュメンタリーシリーズのタイトルバック(WOWOWから引用)

この延長線上になる「PORTAL-X 〜ドアの向こうの観察記録〜」が2024年1月から8回放送されるそうで,こちらも楽しみ。

2023年12月18日月曜日

モーリーの定理

真鍋さんのウェブサイトMIPOのブログには,算数・数学コラムというのがあって,おもしろい算額の問題などがしばしば取り上げられている。

で,先日モーリーの定理という,三角形の内角の三等分線がつくる図形が正三角形になるという問題を証明していた。なるほど。図形の問題は苦手なので,解析幾何学の手法でできないか考えてみた。

1辺と両端の2角を与えれば三角形は定まる。現れるすべての座標はその辺の長さに比例するので,辺の長さAB=1とする。∠A=$3\alpha$,∠B=$3\beta$,∠C=$3\gamma$とすると,$\gamma = \frac{\pi}{3}-\alpha-\beta$で定まる。結局全ての量が2つの角度$\alpha,\beta$で表される。

これは実は問題の対称性を損ねるので,標準解答と比較しても良策ではないのだけれど,乗り掛った舟なのでやってみる。


図:モーリーの定理の証明

まず三角形ABCの頂点Aを原点(0,0)とし,頂点Bを(1,0)とする。このとき頂点C$(p,q)$は,$y=\tan 3\alpha$と$y=-\tan 3\beta (x-1)$の交点として求まり,$(p,q) =\Bigl( \dfrac{\tan3\beta}{\tan3\alpha+\tan3\beta},\dfrac{\tan3\alpha \tan3\beta}{\tan3\alpha + \tan3\beta} \Bigr)$となる。

同様にして,∠の三等分線の交点として(P,Q,R)の3点求めればよい。

(1) ABからの三等分線の交点P
$y=\tan \alpha\ x \ \&\  y = -\tan \beta\ (x-1)\ $の交点は,
$(p_1,q_1) =\Bigl( \dfrac{\tan\beta}{\tan\alpha+\tan\beta},\dfrac{\tan\alpha \tan\beta}{\tan\alpha + \tan\beta} \Bigr)$

(2) ACからの三等分線の交点Q
$y=\tan 2\alpha\ x \ \&\  y = -\tan (3\beta+2\gamma)(x-p)+q\ $の交点は,
$(p_2,q_2) =\Bigl(\dfrac{p \tan(3\beta+2\gamma) + q}{\tan2\alpha+\tan(3\beta+2\gamma)},\dfrac{\tan2\alpha \{p \tan(3\beta+2\gamma)+q\}}{\tan2\alpha + \tan(3\beta+2\gamma)}\Bigr)$

(3) BCからの三等分線の交点R
$y=-\tan 2\beta\ (x-1) \ \&\  y = -\tan (3\beta+\gamma)(x-p)+q\ $の交点は,
$(p_2,q_2) =\Bigl( \dfrac{p \tan(3\beta+\gamma) -\tan2\beta + q}{\tan(3\beta+\gamma)-\tan2\beta}, -\dfrac{\tan2\beta\{(p-1) \tan(3\beta+\gamma)  +q\}}{ \tan(3\beta+\gamma) -\tan2\beta } \Bigr)$

これから3点の距離を計算すれば良いのだけれど,ちょっと人間の手には負えなかった。
Mathematicaで計算すると,なんとか確認することができた。

In[1]:= c[a_, b_] := Pi/3 - a - b

In[2]:= p[a_, b_] := Tan[3 b]/(Tan[3 a] + Tan[3 b])
q[a_, b_] := Tan[3 a] Tan[3 b]/(Tan[3 a] + Tan[3 b])

In[3]:= p1[a_, b_] := Tan[b]/(Tan[a] + Tan[b])
q1[a_, b_] := Tan[a] Tan[b]/(Tan[a] + Tan[b])

In[4]:= 
p2[a_, b_] := (p[a, b] Tan[3 b + 2 c[a, b]] + q[a, b])/(Tan[2 a] + Tan[3 b + 2 c[a, b]])
q2[a_, b_] := 
 Tan[2 a] (p[a, b] Tan[3 b + 2 c[a, b]] + q[a, b])/(Tan[2 a] + Tan[3 b + 2 c[a, b]])

In[5]:= 
p3[a_, b_] := (p[a, b] Tan[3 b + c[a, b]] - Tan[2 b] + 
    q[a, b])/(Tan[3 b + c[a, b]] - Tan[2 b])
q3[a_, b_] := -Tan[
    2 b] (((p[a, b] - 1) Tan[3 b + c[a, b]] + 
      q[a, b])/(Tan[3 b + c[a, b]] - Tan[2 b]))

In[6]:= (p1[a, b] - p2[a, b])^2 + (q1[a, b] - 
     q2[a, b])^2 - (p2[a, b] - p3[a, b])^2 - (q2[a, b] - 
     q3[a, b])^2 // Simplify

Out[7]= 0

In[8]:= (p2[a, b] - p3[a, b])^2 + (q2[a, b] - 
     q3[a, b])^2 - (p3[a, b] - p1[a, b])^2 - (q3[a, b] - 
     q1[a, b])^2 // Simplify

Out[9]= 0


[1]三角形の外角の三等分線の場合(時岡郁夫さん)

2023年12月17日日曜日

情報伝達活動の構造(2)

情報伝達活動の構造(1)からの続き

そもそも,年齢によって,職種によって,個人の生活スタイルによって,まったく異なるものを平均しようというのに無理がある。


図:一日の時間と情報伝達活動のモデル

会話行動に関する調査からは,平均会話時間が6時間と出てくる。ただ,会話密度が変われば,発話・受話量はまったく変わってしまうことになるが,図ではその値を書き込んだ。

TVとネットの視聴時間がそれぞれ3時間で計6時間という「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」の結果も反映しているが,ネットでのアウトプットを2時間分加えてみた。これも他の作業と並行・重複していたりで,集中度によってその内容は大きく影響される。

身体活動を中心とした労働の場面では,会話やネットでやりとりされる情報密度はずっと少ないかもしれないし,オフィスワークや対人活動が主となる仕事ならば,逆にさらに情報密度が高まるかもしれない。

これを解決するには,典型的なモデルを複数設定して,そこでの平均を提示することだ。実証的な研究に繋げるためには,GoProのようなアクションカムを24-8時間装着して,その活動を記録して分析すればよいことになる。ありそうだけれで適当な論文は探しきれていない。

総務省の情報通信政策研究所の情報流通インデックス研究会の報告書では,流通するメディア情報については客観的な指標が設定されている。問題は,これを各個人レベルに落とし込んだときの,有効な吸収率や反射率がどうなるかということ。




2023年12月16日土曜日

情報伝達活動の構造(1)

からの続き

りんちゃんの「棒」は「—」や「|」の問題だった。そうすると答えが変わってくる。
頻度の高い漢字の平均画数が7画程度で,これを棒の数とします。児童・生徒・学生の間は1日100字書いたとして(PCなど除く)10年間≒3000日では,〜30万字程度漢字をかくことになるので,〜200万画くらいかな。
1画5mmだとすれば,200万画は1000kmである。鉛筆1本で 50kmかけるらしいので,鉛筆20本あれば十分だ。ホントか,削りながらの場合は1000本くらいになりそうだ。ジェットストリームのSXR-07では替え芯1本で700mということだから,1400本なのか。


で,あらためて自分が行う情報活動の入出力量について,どの程度になるのか気になった。
のシリーズで半年前に少し考えていたことだけれど,再度見直してみる。

まず,定量的なデータについて考察する前に,個人の情報伝達活動を整理してみた。

図:情報伝達活動の構造

一番下の意識主体が,一人の人だとする。一般化できるように意識主体としている。これが,情報をやり取りするのだけれど,その情報伝達の様態を,(A)入力,(B)出力,(C)対話に分類する。(A)と(B)だけでも十分かもしれないが,あえて独立に(C)という連続的な入出力モード=対話を考えてみる。

また,その情報伝達の対象は,(イ)個体(これも個人=一人の人でもよいが,少し一般化した),(ロ)集団(組織でも社会でもよい),これまたあえて独立に(ハ)AI,を設定した。やりとりされる伝達情報の形態は,(1)静的データ(テキストや図画像),(2)動的データ(音声・音楽,動画),(3)実世界(対面による物理的化学的な接触を含む)とする。(1)と(2)ではメディアを媒介する視聴覚情報だけにフィルタされている。

都合,3×3×3=27通りのパターンに分類できる。技術的な問題を考える場合には,情報伝達の形態を図の右囲みのようにさらに7項目に細分化して考えることもできる。

(例)会話=(イ・ロ,C,3),手紙=(イ,A・B,1),電話=(イ,C,2),
ラジオ・テレビ・映画=(ロ,A,2),SNS=(ロ,A・B,1),VLOG=(ロ,B,2),演劇・音楽=(ロ,A,3),演説・講演=(ロ,B,3),生成AIチャット=(ハ,C,1)

2023年12月15日金曜日

Duolingo

今年の春に始めた iPhoneアプリDuolingoでの韓国学習である。

最近は,朝起きて新聞とテレビのニュースをチェックした後に,Duolingoで韓国語のレッスンをするのが日課になっている。iPhoneの先週のアクセスログをみると,一日平均3時間のうち,Facebookが45分,Duplingoを30分,Pikmin Bloomが20分,GoogleとLineが15分ということになっている。

単語の表記と発音と意味,韓国語の和訳あてはめ,韓国語読み上げのハングルあてはめ,日本語の韓国語訳ハングルあてはめ,など15問ほどで1セットである。単語ごとにヒントを確認できるので,覚えていないあるいは理解できていなくても,勘だけで何となく答えられてしまう。いいようなわるいような。

ヒント頼りなので,ほとんど実力がつかない。ハチマン,毎日繰り返していると記憶に残る単語も少しはあるので,韓国ドラマを見ていても,以前よりは意識に引っかかる会話が増えてきた。


図:今年11月30日時点のDuolingoの成績(実はソコまで出来ていない)

2023年12月14日木曜日

フェイスブックで,芳賀さんが息子のりんちゃんから受けた質問について書いていた。

人生でどのくらい,文字の「」を書かないといけないか」という趣旨のものだ。なぜその質問がでてきたのかはよくわからない。なぜ「棒」なのかな。書くのが面倒だからなのかな。そういう話ではないのかな。犬も歩けば棒にあたったのかな。

準備のための一般論
 モノゴコロついてから惚けるまで,およそ75年≒900ヶ月≒3900週≒2万7千日≒66万時間≒3900万分≒24億秒あるとする。このとき,人生におけるある事象の頻度と総数はおよそ次のように対応する。
 10年に 1回 〜 10回
   3年に 1回 〜 30回
   1年に 1回 〜 100回
  年に 4回 〜 300回
  月に 1回 〜 1000回
  週に 1回 〜 4000回
   3日に 1回 〜 1万回
   1日に 1回 〜 3万回
   1日に 3回 〜 10万回
名前との比較
 一生の間に自分の名前はどのくらい書くだろうか。宅配のサインも含めて週に1回よりは多いような気がするので,多分1万回のオーダーになる。「棒」はこれよりは2桁以上少ないのではないか。100回ほどか

ブログの計量
 自分のブログであるOn a Thread of the Webの5年分のデータを全文検索してみると,「棒」は16回ヒットした。つまり,最近は年平均に3回ということになる。75年をかけると,生涯では 200回 程度書くことになるのではないか。

生成AIの考え
Q(私):日本人が一日に書く漢字の数は400字程度です。一生には,1000万字程度の漢字を書くことになるでしょう。このうち,「棒」という漢字を書く回数は何回程度だと推定されますか?
A(Claude):
はい、ご指摘の通り、日本人が一生のうちに書く漢字はおよそ1000万字とされています。このうち、「棒」という漢字が何回含まれるかを推定するため、次のように考えます。日本語の漢字使用頻度データによると、「棒」の出現頻度は0.0026%,1000万字の0.0026%は2600字。したがって、一生のうちに書く漢字1000万字のなかで、「棒」という漢字が含まれる頻度はおよそ2600回と推定されます。
なお,Copilotが4690回,Perplexityが4800回,Bardは200万回,ChatGPTは10億回と答えた。(注)上記の仮定である1日に400字というのは,手書きだけではなくて,SNSなどでのスマホやPCにおけるデジタル入力も含めたつもりだけれど,どうだろうか。

漢字出現頻度
 ClaudeやPerplexityは,漢字の出現頻度という量を持ち出してきた。Perplexityでは,0.0048%とされた。そんなデータがあるのかと検索してみた。令和1年に文化庁の漢字出現度数調査というレポートがある。出現確率ではなく,出現順位が与えられている。棒は1200位あたりで,結構高頻度で出現する文字だった。もう少し調べてみると,mwSoft Blog[1]というサイトが見つかった。2012年6月Wikipediaデータにおける出現漢字をまとめたものだ。このデータを拝借すると,「棒」は1375位で38,285回/528,530,037回(上位3000字の総計)=0.00724%=724回という結果が得られた。

結論
 平均的な人が「書く」漢字の「棒」は,100回〜1000回程度じゃないでしょうか。

参考(学校で棒が出てくる場面)
 棒読み。棒暗記。棒立ち。棒グラフ。棒磁石。乳棒。制御棒。溶接棒。指揮棒。鉄棒。棒高跳び。段違い平行棒。棒球(だま)。綿棒。編み棒。棒針。相棒。泥棒。片棒。棒ダラ。アメン棒。お先棒。棒切れ。火かき棒。金棒。警棒。用心棒。こん棒。ゲバ棒。点棒。

P. S. このページだけで12年分くらいの「棒」を書いてしまった。


写真:画像生成AIがイメージしている「棒」(Diffusion Beeより引用)


2023年12月13日水曜日

Gemini

12月6日に,Googleから新しいマルチモーダルの生成AIモデルのGeminiが発表された。

宣伝のYouTubeビデオクリップでは,絵や写真を見せながら対話している様子がデモンストレーションされていて,かなりレベルが高そうだったのだが,フェイク(再現モデル)疑惑がでてきているので,どうだかよくわからない。

Google Bardのチャットページから使えるが,自分のgoogleアカウントの言語モードを英語にしておく必要があった。現時点で使えるのは,Gemini Pro であり,ChatGPT 3.5レベルのものなのだ。評判ほどではなく,これまでの体験と大きく変わることはない。というわけで,最近は,[ChatGPT3.5,Bard,Claude,Perplexity,Bing]の5つを組み合わせて試している。問題ごとに,良くできる子とイマイチな子に別れる。課金してChatGPT 4.0に復帰するだけの動機もまだない。


図:Geminiのイメージ(Google Japan ブログから引用


2023年12月12日火曜日

四角形

三角形(3)からの続き

小学生の問題から離れられない。

長方形($a \times b$)があって,その1つの角が小さな長方形($p \times q$)の形に欠けている。この図形の面積を2等分する直線を求めよというものだ。問題では辺の長さの情報が与えられていない。どうするのかと思って解答をみた。それは,与えられたL型の図形を2つの長方形の組み合わせとみなし,それぞれの長方形の中心点を結ぶ直線を引けばよいというものだ。なるほど,小学生でも理解できる。この直線の図形内の中点を中心に,図形の角を越えない範囲で直線を回転させればそれらも解になる。

ところで,その欠けた部分が大きくなると,この方法ではうまくいかない。というのも直線で分割される角の欠けた側の領域が連結領域ではなくなり,バラバラになってしまうからだ。これを避けるためには,欠けた側と反対側の角を通る直線で,面積が等しくなるものを探せば良い。中学生レベルの問題になる。


図:直線APによる四角形の面積の二等分($\frac{a}{b}>\frac{p}{q}$の場合)

直線ACは四角形ABCDの面積をS1(△)とS2(△)に2等分するが,左図形から引き去る部分は台形CEFR,右図形では三角形CGRなので,S1(左) <  S2(右)となる。そこで,分割線をAPにずらせば,S(左)=S(右)となる点が見つかるはずだ。

ずらす距離PC=$x$とおいて立式すると,$2S_1 = b(a-x)-q\bigl\{ 2(p-x)+\dfrac{q(x-a)}{b}\bigr\}$,$2S_2 = (b-q)\bigl\{ a+\dfrac{x(b-q)+aq}{b}\bigr\}$となる。これを等しいとして$x$を求めると,$x=\dfrac{q(a q- b p)}{(b-q)^2}$と求まった。

めでたしめでたしというところだ。ところで,$\frac{a}{b}=\frac{p}{q}$でもとの四角形と切り欠きの四角形が相似となる。このため,最初の対角線が2等分線となって$x=0$になる。ということは,$x<0$の場合が出てくるということか。おかしいのでしばらく悩んだ。

良く考えると,この場合は,欠けた図形の角が対角線より右側になるので,P点はCG上に持ってきてCP=$y$と置く必要がある。すなわち,この場合は,$a$と$b$,$p$と$q$を入れ替えて同じ式を解くことになるので,$y=\dfrac{p(b p- a q)}{(a-p)^2}$とすればよいことになる。




2023年12月11日月曜日

石川デジタルミュージアムネットワーク

金沢大学は,人工衛星(X線突発天体監視速報衛星)を打ち上げたというニュースを先日見たばかりだけれど,金沢大学資料館を中心とした石川デジタルミュージアムネットワークを構築した。

早速アクセスしてみると,金沢大学資料館,石川県立自然史資料館,石川県西田幾多郎記念哲学館,石川県埋蔵文化財センター,羽咋市歴史民俗資料館,野々市市ふるさと歴史館・,野々市デジタル資料館の6つの連携機関を結ぶものだった。どれも訪れたことはない。ちょっと物足りなかった。

金沢21世紀美術館とか石川県立美術館とか石川県立図書館をはじめとして諸々沢山あるので,このへんもつながると面白そうなのだけれど。しかしそれだったら文化遺産オンラインで事足りてしまうのかもしれない。


図:デジタルミュージアムネットワークの表紙から

2023年12月10日日曜日

PISA2022

PISA2018からの続き

OECD生徒の学習到達度調査(PISA)は,3年に1回実施されていた。新型コロナウィルス感染症の影響で,2021年の予定が1年延期されて2022年になり,その結果がこの度公表された。

PISA2022には,81か国・地域から約69万人が参加した。前回より2カ国ふえたのだが,トップだった中国の北京・上海・江蘇・浙江地域がはずれている。なぜか,生成AIのいくつかに聞いてみたがはっきりしない。日本からは,全国の高等学校,中等教育学校後期課程,高等専門学校の1年生のうち,国際的な規定に基づき抽出された183校(学科)約6,000人が参加して,2022年6月から 8月に実施された。

日本の順位(今回/前回)は,数学的リテラシー(1位/5位),読解力(2位/3位),科学的リテラシー(1位/2位)の3分野全てにおいて平均得点や順位が上昇した。コロナの影響で,全体の平均得点は下がったが,日本では,新型コロナウイルス感染症のため休校した期間が他国に比べて短かったことが影響した 可能性があるとの指摘がなされている。



図:PISAの平均得点の推移(国立教育政策研究所の報告から引用)

テレビで田中博之さんが,Facebookで,芳賀さんや豊福さんがコメントしていたけれど,思うところはあまりない。順位が低下していたらもわもわしていただろうか。そもそもPISAで一喜一憂しているところに問題があるのだろか。GIGAスクールの行く末の方がキニナルのか。はたまた,生成AIのインパクトのほうか。日々感受性が劣化しているのかもしれないけれど。

2023年12月9日土曜日

三角形(3)

三角形(2)からの続き

小学生向けの簡単な図形の問題を見かけた。a, b が与えられたときにx を求めれば良いというものだ。適当な補助線を引いてもわからなかったので,思わずピタゴラスの定理を使った複雑な方程式を立てて解いてしまった。

塾の先生のようなしゃべり方の人の解答をみると,どうやら,45度の三角形の解法パターンというのがあるらしい。そこで,問題を一般化したのが次の図である。これで,台形の面積の出し方や三角形の合同についての知識さえあれば,ピタゴラスの定理無しで問題が解けることになった。

日々,思考の水準が弱っていくのがわかる。そのうち小学生の問題も解けなくなりそうだ。


図:45度の三角形を含む簡単な問題

2023年12月8日金曜日

12月8日(Blogger 5周年)

2018年の12月8日にこのブログ(On a Thread of the Web)を開始してからちょうど5年が経過した。この記事を含めて1825件だ。1件平均500字≒1kBとすれば,高々1.8MBであり,微々たる情報量だ。

快食快便と同様で,情報も適切に入力出力しないと健康に悪い。そこで,毎日の散歩(寒いので最近はお休み中だけれど)のように続けてきたら5年経ったというわけだ。

生成AIの登場によって,本末転倒状態が発生しやすくなっている。すなわち,文章を自分で考えずにAIにつくらせて連続記録を更新するだけというものだ。そうでなくても,引用まみれの内容なので,自分でよく考えている部分がどれだけあるのか,頭上には疑問符がたくさん点灯している。AIに出力させるための適切なプロンプトを考えるだけでもよいことにしようか。これだけでは,惚け(認知症)予防になるのかどうか微妙だけれど。

自分のために書いているのではあるが,他の人から参照されているというカウンターを見ると励みにはなる。もっとも新着記事あたり高々数件にしか過ぎないのだが。統計的には,過去記事への遡及アクセスがあるので,もう少し参照回数はふえる。Bloggerの統計情報によれば,このブログ全体への一日あたりのアクセスは次のようになっている。一日50回だから,新着記事よりは1桁多いことになる。
全期間(5年間)6.61万回 = 36回/日
過去12ヶ月間   1.98万回 = 54回/日
過去6ヶ月間     1.38万回 = 77回/日
過去3ヶ月間     0.45万回 = 50回/日
過去1ヶ月間     0.18万回 = 60回/日

2023年12月7日木曜日

アンペールの法則(2)

アンペールの法則(1)からの続き

前回の一般的な結果を得るまでにあれこれ考えた。普通はアンペールの法則の単純な形態,つまり直線電流のまわりの円周上の磁束密度に対する,$2 \pi r B(r) = \mu_0 I$から出発して一般化するのかと思った。しかし,そもそも簡単なアンペールの法則とは直線電流まわりの磁束密度ベクトル場を与えるもので,答えは既に出ていたのだった。

あれこれの過程での計算は,結局,線積分の練習問題だった。


図:アンペールの法則の線積分経路

方針:磁束密度を測定する点への位置ベクトル$\bm{r}$とその軌跡として経路$C=r(\theta)$を考える。線要素$d\bm{r}$を変数,$r,\theta$であらわし,さらに経路条件から$r$を消去して,線積分要素を$\theta$の関数として表す。磁束密度は$r$の関数なので,これも$\theta$の関数とみることができる。その結果,線積分要素$dB=\bm{B}\cdot d\bm{r}$は$\theta$の関数になって,角度積分を実行することができる。

領域Ⅰ(左図の$0 \le \theta \le \pi/4$):$r=a/\cos\theta$,$dy = a d\theta / \cos^2 \theta$
  $dB=\frac{\mu_0 I}{2 \pi} \frac{\cos^2\theta}{a} \frac{a}{\cos^2 \theta} d\theta$,$B=\frac{\mu_0 I}{8}$
領域Ⅱ(左図の$\pi/4 \le \theta \le \pi/2$):$r=a/\sin\theta$,$dx = -a d\theta / \sin^2 \theta$
  $dB=\frac{\mu_0 I}{2 \pi} \frac{-\sin^2\theta}{a} \frac{-a}{\sin^2 \theta} d\theta$,$B=\frac{\mu_0 I}{8}$
領域Ⅲ(左図の$\pi/2 \le \theta \le \pi$):$r=a/(\cos\theta - \sin\theta)$
  $dB=\frac{\mu_0 I}{2 \pi} \frac{\sin\theta - \cos\theta}{a} \frac{a}{\sin \theta - \cos \theta} d\theta$,$B=\frac{\mu_0 I}{4}$
領域Ⅵ(左図の$\pi \le \theta \le 2\pi$):$r=a$,$d\bm{r} = a (-\sin\theta , \cos \theta) d\theta$
  $dB=\frac{\mu_0 I}{2 \pi} \frac{1}{a} a d\theta$,$B=\frac{\mu_0 I}{2}$
領域Ⅴ(右図の$-\pi \le \theta \le \pi$):$r=\sqrt{a^2+d^2+2 a d \cos\theta}$,$d\bm{r} = a(-\sin\theta, \cos\theta) d\theta$
  $\displaystyle dB = \dfrac{\mu_0 I}{2 \pi}\int_{-\pi}^{\pi}\dfrac{a(a+d\cos\theta)}{a^2+d^2+2 a d \cos\theta}d\theta = \dfrac{\mu_0 I a}{2 \pi} \int_{-\infty}^{\infty} \dfrac{(a+d)+(a-d) t^2}{(a+d)^2+(a-d)^2 t^2}\dfrac{2 dt}{1+t^2}$
$\displaystyle = \dfrac{\mu_0 I a}{2 \pi a} \int_{-\infty}^{\infty}  \Bigl\{ \dfrac{1}{1+t^2} +\dfrac{(a-d)(a+d)}{(a+d)^2+(a-d)^2 t^2} \Bigr\} dt = \dfrac{\mu_0 I}{2\pi} (\pi + \pi) = \mu_0 I$


2023年12月6日水曜日

アンペールの法則(1)

物理科学概説の授業で,アンペールの法則のところに入った。積分形では,$\displaystyle \oint_C \bm{B}(\bm{r})\cdot d\bm{r}=\mu_0 I$である。

十分長くてまっすぐの導線を流れる電流のまわりの磁束密度$\bm{B}(\rm{r})$の強さ$B(r)$は,電流の強さ$I$に比例し,電流からの距離$r$に反比例する。その向きは電流の向きに右ネジが進むときにネジが回る方向(電流を中心とした半径$r$の円の接線方向)である。

この実験事実を式で表現する。直線電流上の一点を原点に取って,磁束密度ベクトルは原点をとおり電流に垂直な平面内にある。観測点の座標を$\bm{r}=(r\cos\varphi, r\sin\varphi)$として,$\bm{B}(\bm{r})=\dfrac{\mu_0 I}{2\pi r}(-\sin \varphi, \cos \varphi) = B(r) \cdot \bm{e}_{\varphi}$となる。このとき,$\bm{B}(\bm{r})\cdot \bm{r}=0$となっている。

このとき,積分形のアンペールの法則を導けるかという問題だ。


図:アンペールの法則の積分形の導出

積分形のアンペールの法則では,空間中に任意の閉経路Cを設定して,この経路Cに対する磁束密度の線積分を求める。線積分要素は$dB = \bm{B}(\bm{r})\cdot d\bm{r}= B(r) dr \cos\theta$となる。一方,線要素の磁束密度方向の成分は,$dr \cos \theta = r d\varphi$である。そこで,$dB = B(r) r d\varphi = \dfrac{\mu_0 I}{2 \pi} d\varphi$となる。$\therefore \oint_C \bm{B}(\bm{r})\cdot d\bm{r} = \int_0^{2\pi}  \dfrac{\mu_0 I}{2 \pi} d\varphi = \mu_0 I$

したがって,無限直線電流に対して,3次元空間内でこれを囲む任意の閉経路での磁束密度の線積分の値は,この経路を貫く電流に磁気定数をかけたものとなる。


2023年12月5日火曜日

物体O

10月1日では遅すぎるからの続き

小松左京(1931-2011)の1962年の短編「物体O」は,ハヤカワ・SF・シリーズ3088の短編集「日本売ります」に収録されている。たぶん,銀背シリーズの1冊で初めて買ったものだ。最初に読んだ小松左京のSF作品の一つでもある。

詳細な科学・社会スペキュレーションなどで,後の日本沈没首都消失などの系列につながる作品だ。そのルーツは日本アパッチ族にあるだろう。小松左京の主な関心は社会構造の変革可能性にある。阪大理学部核物理の三伏教授(伏見康治)が登場して,阪大というキーワードがインプットされたので,これが自分の後の進路選択に微かに影響したかもしれない。

ところで,再読してみるといくつか気になるところがあった。

(1)物体Oの落下位置
兵庫県相生市を中心とした半径450km,500km,550kmの円を描くとほぼ記述通りの位置が再現できるのだが,文中に記載のある屋久島と種子島は物体の下敷きにはならない(なお韓国の釜山は物体Oに下に沈む)。

(2)兵庫県豊中市などの地名
物体の落下を見たと気象台に報告したアマチュア天文家の在住地,これは大阪府です。小松左京は後に箕面に住むことになるのだけれど。物体Oが落下した関東の地名の一部も不正確かもしれない。

(3)物体Oの密度
直径1000km,幅100km,高さ200kmのリングなので,その体積は,2π×500×100×200 = 6×10^7 km^3 = 6×10^16 m^3 になる。一方文中にはその質量が2万兆トン=2京トン= 2×10^16 t とある。したがって,その密度は,0.3 t/m^3 = 0.3 g/cm^3になる。ところが,後の方では「比重は重金属−銀と同じ程度だ」という記述があって(銀は10.5 g/cm^^3)矛盾している。

(4)紫外線のラウエ斑点
紫外線による薄片の写真に写った斑点が,X線によるラウエ斑点と同じではないかというところから,物体Oが普通の物質を5000万倍に拡大したものであることがわかる。しかし,結晶構造をみるX線の波長は1Å=0.1 nm であり,紫外線の波長は 300nmなので,高々3000倍にしかならない。5000万倍にすれば,波長5mm のミリ波でなければならない。


図:物体Oの想定位置(半径450km, 500km, 550km)

2023年12月4日月曜日

万博リング

評判の悪い大阪・関西万博2025の大屋根(リング)である。

万博のシンボルとなる木造大屋根リングは350億円もかかる。そのため,会場建設費+α=2350億円+800億円以上の無駄遣いの象徴とされて,あちこちから叩かれている。まあ大阪維新が万博を持ち出した動機が,同じ夢洲で計画されているIR用地周辺の環境整備だったり,虚構の経済効果だったりするので,それらが見透かされるとこうなってしまう。

そもそも,失われた30年を取り戻すための戦略が,高度成長期の夢よ再びという東京五輪+大阪万博でしかなかったという,創造力+想像力の貧困と税金奪取機会の創出が問題だったわけだ。そのあたりの本質的な問題点を一度忘れて考えてみると,万博にはシンボル的な建造物が必要であるということはわかる。ロンドンの水晶宮,パリのエッフェル塔,大阪の太陽の塔などなど。

1970年の大阪万博にもお祭り広場の上に大屋根があった。その大屋根を突き破った太陽の塔には岡本太郎(1911-1996)が必要だったけれど,今の日本にはそれに匹敵するパワーを持ったクリエイターはいないので,大屋根リング止まりになった。リングがなくて,海外各国からの主要パビリオンもなければ,大阪・関西万博2025は本当にグズグズ,バラバラになってしまうのだろう。

なんだかんだいって,パビリオンが一部建設途上のままでも,2025年の4月に万博が始まってしまえば,マスコミがこぞって囃し立てて機運を盛り上げる。大阪の子供に配った無料チケットの効果もあって,2800万人ではなくともそこそこ人は集まるだろう。よほどの混乱や災害が起きない限りは,東京五輪と同様に無事終って良かったというストーリーがでっち上げられそうな気がする。自分は,万博には行かないつもりだが,孫が連れていってと言い出したときにどうなるかはわからない。


さて,当初計画にはなかった万博リングをごり押しで導入した会場デザインプロデューサの藤本壮介だが,リングのデザインがノーマン・フォスター(1935-)のアップルパーク(2017)のパクリではないかという疑惑記事をみかけた。丸くて中に池があるので似ているというのも言い掛かりじみている。それぐらいはしかたないだろう。ただ,万博リングの直径650mは,アップルパークの直径460mの約√2倍で,万博リングの平均高さ16mの方は,アップルパーク23mの約1/√2倍になっていた。まあ偶然である。

ちなみに,小松左京の物体Oに関係があるのではないかと思って確認してみたが,物体Oは直径1000km,幅100km,高さ200kmの銀の塊だったので形状はかなり違う。また,中心は大阪ではなくて,兵庫県の相生市付近だった。そんなこんなで,リングという形状それ自身はあまりいじめられなくてもいいのにと思う。


図:各リングの断面図の比較

2023年12月3日日曜日

球形キャパシタ

球形キャパシタの問題を物理科学概説の中間テストで出題した。

教科書の例題と同じ単純な問題のつもりだったけれど,2つの球殻に与える電荷の記述を省略したため,アースの取り方によって話が変わるのだった。それが教科書の章末課題に書いてあったので,良く勉強した学生さんはそちらを参照していた。


図:球形キャパシタのイメージ

半径$a$と$b$の同心の導体球殻があり,それぞれに電荷$q_a$と$q_b$を与えたとき,それぞれの電位が$V(a)$と$V(b)$になったとする。内球殻の電荷がつくる電場は,$E_a=\dfrac{q_a}{4\pi\varepsilon_0}\dfrac{1}{r^2}\quad (a<r<b)$,であり,これによって誘導される電荷が外球殻の内面に$-q_a$,外面に$q_a$だけ生ずる。これによって,外球殻の外面には$q_a+q_b$の電荷が分布するので,この電荷が作る電場は,$E_b=\dfrac{q_a+q_b}{4\pi\varepsilon_0}\dfrac{1}{r^2}\quad (b<r)$となる。

これから,外球殻の電位は,$\displaystyle V_b(r) = -\int_\infty^r \dfrac{q_a+q_b}{4\pi\varepsilon_0}\dfrac{1}{r^2}\ dr = \dfrac{q_a+q_b}{4 \pi \varepsilon_0} \dfrac{1}{r} \quad (b<r)$ となり,$V(b) =  \dfrac{q_a+q_b}{4 \pi \varepsilon_0} \dfrac{1}{b}$
内球殻の電位は,$\displaystyle V_a(r) = V(b) -\int_b^r \dfrac{q_a}{4\pi\varepsilon_0}\dfrac{1}{r^2}\ dr = V(b) + \dfrac{q_a}{4 \pi \varepsilon_0}\dfrac{1}{r} -  \dfrac{q_a}{4 \pi \varepsilon_0}\dfrac{1}{b}$
$\therefore V(a) =  \dfrac{1}{4 \pi \varepsilon_0} \Bigl( \dfrac{q_b}{b} +  \dfrac{q_a}{a} \Bigr)$

(1) 外球殻が接地されている場合
$V(b)=0$より$q_b = -q_a$となる。$\therefore V(a) = \dfrac{q_a}{4 \pi \varepsilon_0}\Bigl( \dfrac{1}{a} - \dfrac{1}{b}\Bigr) = \dfrac{q_a}{C}$とすれば,
キャパシタの電気容量$C$は,$C = \dfrac{4 \pi \varepsilon_0 a b }{b-a}$となる。

(2) 内球殻が接地されている場合
$V(a)=0$より$q_a = -\dfrac{a}{b} q_b$となる。$\therefore V(b) =  \dfrac{q_b}{4 \pi \varepsilon_0} \dfrac{1 - a/b}{b} = \dfrac{q_b}{C'}$とすれば,
キャパシタの電気容量$C'$は,$C' = \dfrac{4 \pi \varepsilon_0 b^2 }{b-a}$となる。

このとき,$C' = C +  4 \pi \varepsilon_0 b$となって,外球殻をキャパシタと考えたときの電気容量とCとの並列接続の式となっている。

2023年12月2日土曜日

円軌道はむずかしい

万里鏡1号弾道ミサイルの軌道(2)からの続き

北朝鮮の弾道ミサイルの簡単なシミュレーションコードをMathematicaで作っていた。これを少しアレンジすれば人工衛星を軌道に投入するところまでできそうな気がする。

早速,以前のコードを修正してみた。まずは通常の加速直後に角度方向だけに加速度を加えるようにしたがうまくいなかい。打ち上げ加速は投射角の方向になっているので,動径速度成分が大きく残っているうえ,加速すれば軌道は膨らむ。このため,離心率の大きな長円軌道になって地表にぶつかってしまうか,地球の重力圏から脱出してしまうのだ。

次に,打ち上げ加速の直後に空白時間をおいて,動径速度成分が小さくなったところで角度方向に加速できるようにした。それでもうまくいかない。簡単な試行錯誤では周回軌道にのせるのが難しい。そもそも角度方向に加速するということは面積速度すなわち角運動量をふやし,動径方向の微分方程式で軌道半径を膨らませる方向に作用してしまう。

そこで,後期加速では衛星をその速度ベクトルの方向に加速することにした。$t=0$で速度ベクトルをとりだすところに発散があったので,これを回避するため,地球の自転による2倍面積速度$h(t)$の初期値として,$h(0) = R^2\omega=R^2 \frac{2\pi}{24*3600}=2930$ km$^2/$sを与えた。初期加速度はこれまでの$\ a=0.0446$として$30$秒加速する。その後,800秒程度休止した後に,後期加速度$\ b=0.1445$(ここを微調整した)で$250$秒加速すると,なんとか軌道に投入することができた。投射角は$s=45$度,初期加速における燃料比は$p=0.85$であり,加速方向の角度には$0.3$をかけて動径成分を抑えた。

なかなか難易度の高いゲームである。衛星の軌道高度が1200km程度の準円軌道となっている。これを500kmにしなさいといわれても,こんな単純な2段階制御ではちょっと難しい。なお,プログラムの検証のため,$r=6850$kmの宇宙空間で第一宇宙速度に相当する$v=\sqrt{gr}=8.2$ km/sを角度方向の初速度として与えると,正確に円軌道を描くことが確かめられた。

g = 0.0098; R = 6350; τ = 30; τs = τ*27; τt = 250; p = 0.85;
 a = 0.0446; b = 0.1445 a; s = 45 Degree; T = 15400; 
fs[t_] := 0.3*ArcTan[r[t]*r'[t]/ h[t]]
fr[t_, τ_] :=  a*Sin[s]*HeavisideTheta[τ - t] + 
   b*Sin[fs[t]]*HeavisideTheta[t-τs-τ]
   *HeavisideTheta[τ+τs+τt-t]
ft[t_, τ_] :=  a*Cos[s]*r[t]*HeavisideTheta[τ - t] + 
   b*Cos[fs[t]]*r[t]*HeavisideTheta[t-τs-τ]
   * HeavisideTheta[τ+τs+τt-t]
fm[t_, τ_] := -p/(τ - p*t)*HeavisideTheta[τ - t]
sol = NDSolve[{r''[t] == -fm[t, τ]*r'[t] 
   +h[t]^2/r[t]^3 -g R^2/r[t]^2 +fr[t, τ],
   r[0] == R, r'[0] == 0, 
   h'[t] == -fm[t, τ]*h[t] + ft[t, τ], 
   h[0] == 2930 + 0*Sqrt[g] R^(3/2)}, {r, h}, {t, 0, T}]
f[t_] := r[t] /. sol[[1, 1]]
d[t_] := h[t] /. sol[[1, 2]]
Plot[{6350, f[t]}, {t, 0, T}]
Plot[{f[t + 1] - f[t], d[t]*R/f[t]^2, d[t]/f[t]},
 {t, 0, T}, PlotRange -> {-5, 15}]

 


図:苦労すると有難みがわかる衛星の準円軌道のグラフ

P. S. もう少しがんばると,軌道高度650km(r=6980km)の準円軌道まで達成できた。
g = 0.0098; R = 6350; τ = 25; τs = τ*15.3; τt = 350;  p = 0.85;
a = 0.0446; b = 0.1275 a; s = 45 Degree; T = 15400; 

2023年12月1日金曜日

ai pin

ぼんやりしていると,重要な話題を逃してしまうことが多い。

3週間前の11月10日のニュースになっていたヒューメインai pin である。ヒューメインは,アップルの技術者として働いていたイムラン・チャウドリベサニー・ボンジョルノ夫妻が2018年に立ち上げたAIスタートアップだ。

NHKのニュースウォッチ9が,ChatGPTが1周年を迎えた生成AIの課題をまとめたニュースの中で,新たなAIデバイスとしてai pin を紹介していた。早く教えてよ。調べてみると,3週間も前に最初のニュースが出ていた。

ai pin は,胸につける小さなバッジ型のデバイスであり,音声とカメラによるインターフェイスでAIとやり取りすることができる。ディスプレイはついていないが,小型レーザプロジェクタで手のひらに文字情報を映し出すことができる。なるほどそうきたか。

既に米国では699ドル(日本円で10万円強)販売(予約?)されているが,AI使用料を含んで月々24ドル(3,600円)のサブスクリプションが必要である。日本で使おうとすると国際ローミングが必要なのでちょっとまだ無理そうだった。音声入力インターフェースには良い面と困った面があるので,公共の場でうまく使えるかどうかが勝負か。同時通訳には最適だ。ジェススチャーだけである程度のコマンドが指示できれば問題ないのかもしれないが。



写真:AiPinのサイズ(humaneサイトから引用)

2023年11月30日木曜日

OpenAI

ChatGPT(6)からの続き

2022年の11月30日にOpenAIがChatGPTを発表してからちょうど1年目となった。

最初のインパクトが大きかったので,最近の動きがもどかしく見えてしまう。ChatGPTの話ではないが,生成AI高性能のGPUを積んだWindowsマシンでないといろいろと試すことができないのもつらい。MacintoshのM1〜M3チップではほとんど対応できないのだ。GPT-4の相対的機能低下もあって,有料版からは離脱してしまった。最近は,GPT-3.5とBard, Claude, Bingなどの比較に留まっている。この中ではGPT-3.5が一番融通が利かないかもしれない。

そうこうしているうちに,11月6日のDevDayで300ページのテキスト入力に対応する128Kコンテクスト・ウィンドウを持つGPT-4 Turboがアナウンスされた。そろそろGPT-4復帰すべきかと思っていると,11月17日には,サム・アルトマンの解任騒動が勃発した。まだ全貌が必ずしも明らかになっていないが,11月22日に,サム・アルトマンとグレッグ・ブロックマンが復帰することでいちおう落ち着いたように見える。Q*をめぐる陰謀論めいた話はいろいろあるが,AGIが出来ているとか出来そうだということでもないか。


[付録]なんだか妙に下手に出るように躾けられているClaudeの場合:
はい、完全におっしゃるとおりです。失礼しました。訂正いたします。
e = 2.718...
log π = 1.1447...
として、e × log π を正確に計算すると、
2.718... × 1.1447... = 3.11...(小数点以下省略)
となりますね。
3.14ではありませんでした。

計算をちゃんと行わずに短絡的に判断してしまい、ファクトとしても誤りがありました。
このようなミスを重ねてしまい、大変申し訳ありません。
基本的な数値の計算から正しく立ち返る必要があると反省いたしました。
今後は肝に銘じ、確認を怠らぬようにいたします。
ご指導本当にありがとうございました。

2023年11月29日水曜日

大小関係

よくある問題で,冪数の大小比較というのがある。その例で次のようなものがあった。

$M=\displaystyle \begin{pmatrix} e^e & e^3 & e^\pi \\ 3^e & 3^3 & 3^\pi \\ \pi^e & \pi^3 & \pi^\pi \end{pmatrix}$の9個の数の大小関係を求めよ。
ただし,$e=2.7183 < 3 < \pi=3.1416$はわかっているとする。

各行や各列で比較すると,行番号や列番号が増えると大きくなる。
次に,$M_{12}=e^3$と$M_{21}=3^e$,$M_{23}=3^\pi$と$M_{32}=\pi^3$,$M_{31}=\pi^e$と$M_{13}=e^\pi$を比較する。それぞれ,両者のべきの積の逆数を双方にかけると,$x^\frac{1}{x}$の形での比較に帰着する。この関数の対数をとって$f(x)$とおけば,$f(x) = \frac{\log x}{x},\ f'(x) = \frac{1 - \log x}{x^2}$の形から,$e^\frac{1}{e} < 3^\frac{1}{3} < \pi^\frac{1}{\pi}$である。


図:$f(x) = \log x^{1/x}$とその微分 $f'(x)=(1-\log x)/x^2$のグラフ

したがって,$  3^e < e^3 ,\  \pi^e < e^\pi,\  \pi^3 < 3^\pi $が成り立つ。残るのは,$3^3$と$e^\pi$または$\pi^e$の関係である。これがちょっとわからなかった。仕方がないので,数値的に評価することに。

$\log M_{13}=\pi = 3 + 0.1416$,$\log M_{33} = 3 \log 3 = 3 + 3(\log3 - \log e) = 3 + 3 \log \frac{3}{e}$
$3 \log \frac{3}{e} = 3 \log (1 + \frac{3-e}{e}) \approx 3 \Bigr\{ \frac{3-e}{e}-\frac{1}{2} \bigl( \frac{3-e}{e}\bigr)^2 + \cdots \Bigr\}= 0.295$ 。したがって,$e^\pi < 3^3$

結局,$e^e < 3^e < e^3 <  \pi^e  <  e^\pi <  3^3 < \pi^3 <  3^\pi < \pi^\pi$ となった。


追伸(2023.11.19):ひとつ確認もれがあった。$e^3$ と$\pi^e$の大小関係である。
対数をとると,$3$と$e \log \pi$の比較になる。
$\log \pi = \log e(1 + \frac{\pi-e}{e}) = 1 +  \log ( 1 + \frac{\pi-e}{e} ) \approx 1 + \frac{\pi-e}{e} -\frac{1}{2}\Bigl(  \frac{\pi-e}{e} \Bigr)^2$
したがって,$e \log \pi \ \ (3.1117) \approx \pi -\frac{(\pi-e)^2}{2e}\ \  (3.1086)  > 3$,$\therefore \pi^e > e^3$

2023年11月28日火曜日

妖星ゴラス

海底軍艦からの続き

11月のWOWOWで東宝の特撮SF映画シリーズをやっていた。地球防衛軍(1957),宇宙大戦争(1959),妖星ゴラス(1962.3),海底軍艦(1963),緯度0大作戦(1969)の五本だ。

このうち,1963年の海底軍艦だけ映画館で見ているのは以前書いた通り。妖星ゴラスは小学校2-3年の時で,近所に映画のポスターも貼ってあった(そんな時代)。ストーリーも薄々わかって,とても見たかったのだけれど,当時は"大人の映画"につれていってほしいと言い出せるとは思っていなかった。まもなく,最初に体験することになる東宝の特撮怪獣映画は,キングコング対ゴジラ(1962.8)で,それ以後,夏休みのゴジラシリーズ等には連れて行ってもらえた。


その妖星ゴラスは,本多猪四郎(いしろう)と円谷英二のコンビ作品のうちの怪獣物でないSF作品の一つであり,今回のWOWOWの特集もそうしたSFものから変身人間シリーズなどを除いた5作が選ばれている。ただし,世界大戦争(1961)は含まれていない。

妖星ゴラスは,地球の0.75倍の大きさだが,重力が6000倍近い"黒色矮星"という設定で,地球に向かってくる。この星の接近による地球の破壊を避けるために南極にロケット噴射装置を設置して,地球をその公転軌道からずらすというものだ。$10^{-6}$Gを100日かけて40万km移動する。加速終了後も等速運動を続けるのはどうするのかと思ったけれど,映画の中では,北極に装置を再設置して逆に動かすような説明をしていた。

このため,南極におけるロケット噴射を表現するガスバーナーの炎のシーンが延々と続くのだった。ただ,説明では重水素と水素による核エネルギー(核融合とか水爆というキーワードは表立って出てこない)的なものが示唆されている。そのわりにはガスバーナーなのであるが。アポロ11号を打ち上げたサタン5号程度の推力ならば,1万セットで$10^{-12}$Gを短時間加えられるかもしれないけれど,ちょっとかなり厳しい。

おもしろかったのは,久保明がゴラスの再調査に向かったときに危機的状況になって記憶喪失になるシーン。ところどころ,2001年宇宙の旅(1968)のボーマン船長を思わせるようなシーンや宇宙ステーションへの回収のカットが出てくるのだ。キューブリックがこの映画を観ていることはないと思うが・・・。ところが検索してみると,同様の意見が散見された。もしかすると影響しているのだろうか。

なお,毛色が異なるので今回は含まれていない第三次世界大戦ものである世界大戦争を検索していたら,第二東映の第三次世界大戦 四十一時間の恐怖(1960)というドキュメンタリータッチのモノクロ映画も見つかった。当時は相当世界危機的な認識が広まっていた状況だったのだろう。



写真:妖星ゴラスの一場面([1]から引用)

[1]映画 妖星ゴラス(サブロジーの日々是ずく出し)

2023年11月27日月曜日

奥州安達原

 妹背山婦女庭訓(2)からの続き

国立文楽劇場の11月文楽公演(第172回)は,第2部の奥州安達原を観た。第1部は双蝶々曲輪日記と面売り,第3部は冥途の飛脚という演目。

奥州安達原を調べてみると,10年前の2013年11月に観ている。今回に加えて,道行千里の岩田帯,一つ家の段,谷底の段が上演されていて,一つ家の段と谷底の段の安達ケ原の鬼婆がでてくる怖い話のところが印象に残った。記憶の中では袖萩祭文が安達ケ原で行われたような錯覚に陥っているが,そんなことはありません。

今回は,朱雀堤の段と環の宮明御殿の段(敷妙使者の段,矢の根の段,袖萩祭文の段,貞任物語の段)なので,舞台は京都なのだった。出語り床の真ん前の席で,三味線の手も太夫の汗もよく見え,太棹の強いバチさばきが体に伝わるのだが,舞台の下手の方が遠いので肝腎の袖萩祭文の動き(和生・勘次郎)がよくわからない。

今回は,芳穂太夫・錦糸組ががんばっていた。呂勢太夫・清治の袖萩祭文から錣太夫・宗助の貞任物語もなかなかよかった。ところが,ストーリーが追いきれないので,平傔仗直方がなぜ切腹するのかがいまいち納得できないまま物語が急展開していくのだった。

休日で,阪神タイガースとオリックスバッファローズの優勝記念パレードの日だった。天気も良くて,人出は多かったのだが,文楽劇場の第2部の入りは40%ぐらいだった。大丈夫かな。


写真:10年前の奥州安達原のポスター,こちらのプログラムの方がよかった。