教科書にあるのは,相似の例題だ。校舎の高さを影の長さと相似の関係で求めたり,校舎を挟んで立っている2本の木の距離を,運動場の一点から見た角度を測って求めるといった問題だ。目的がその値を求めることなら,屋根から降ろしたロープの長さをはかるとか,学校の設計図面で確認するほうが早いだろうという主張である。みんなで便乗して,算数教育の在り方を批判していた。
そこまで,いじめなくてもよいのにと思ってしまう。自分がこどものときに読んだ「数のふしぎ・形のなぞ」では,ピラミッドの高さの図り方としてこの方法が説明されていた。ピラミッドの横に棒を立ててその影の長さと棒の長さの比を求めておく。ピラミッド頂上の影の長さに相当する距離を測って,先ほどの比を当てはめればピラミッドの高さが推定できるというものだ。
小学校の算数の時間に運動場で測量を行ったときは,確かに角度を正確に求めるのが難しかった。なので,気持ちがわからないこともない。しかし,この方法を理解しておけば,簡単にいろいろな量の概算ができるので,それはそれでよいのではないでしょうか。最も効率のよい方法だけに固執する必要はない。環境次第では,何かの役に立つこともあるかもしれない。
そんなことを考えながら,キャンパスを歩く学生さんを見ていたら,みんな自分の身長の1.3倍くらいの影をずるずる引きずりながら,スイスイ進んでいた。今ごろの太陽高度は南中時刻でも40度はないのだろう。ところが自分の視線の方向を変えると,短くなった影はお団子のように人の後に張り付いていた。そうだ,影を観察する方向によってその見かけの長さを制御できるのだ。
ということで,身長と影の長さが等しくなる方向を選択すれば,ややこしい計算なしに,目標とする高いものの高さがほぼ水平距離に置き換えることができる。それはそれで学びの成果になるだろうか?
図:高さ2の影が4のとき,方向によって長さ2にできる
[1]太陽高度(一日の変化)(CASIO高度計算サイト)
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