2023年11月20日月曜日

チェレンコフ放射(2)

チェレンコフ放射(1)からの続き

チェレンコフ放射の理論的取り扱いは,JacksonのClassical Electrodynamicsをみればよいらしいけれど,それは宿題ということで・・・。

ここでは,原子炉から核燃料から放出される典型的なβ崩壊の高エネルギー電子の速度を求めてみる。キセノン133,ヨウ素131,セシウム137などでは,ベータ線の運動エネルギーは0.5MeVから1MeV程度である。この電子の速度が 媒質中の光速度 $c'=c/n$ を超えるかどうかが知りたい。つまり$T$求めた $v/c$が,$1/n$を超えれば,チェレンコフ光が観測される。ただし,$n$は媒質(水)の屈折率である。

電子の静止エネルギーを$mc^2$,電子の相対論的な全エネルギーを$E=\dfrac{mc^2}{\sqrt{1-(v/c)^2}}$,相対論的な運動エネルギーを$T=E-mc^2$とおく。これから$\ v/c\ $を$T$の関数として表せばよい。
$(T + mc^2)^2=\dfrac{(mc^2)^2}{1-(v/c)^2}$であるから,$1-(v/c)^2 = \dfrac{1}{(T/mc^2 + 1)^2}$
$\therefore (v/c)^2 = 1 - \dfrac{1}{(T/mc^2 + 1)^2} = \dfrac{(T/mc^2)^2 + 2(T/mc^2)}{(T/mc^2 + 1)^2}$

$\therefore v/c = \dfrac{\sqrt{T^2 + 2mc^2 T\ \ }}{T+mc^2} = \dfrac{\sqrt{\tau^2 + 2\tau\ \ }}{\tau + 1}$

ここで,$\tau=T/mc^2$である。例えば,$\tau=\{0.5, 1, 2\}$に対して,$v/c=\{0.74,\ 0.86,\ 094\}$なので,水の屈折率の逆数$1/n= 1/1.33 = 0.75$ をほぼ超えることがわかる。


写真:チェレンコフ放射の例(Wikipediaから引用)


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