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2025年3月12日水曜日

日本数学物理学会100周年

杉浦義勝(2)からの続き

今年がその年にあたるわけではない。1977年日本数学物理学会創立100周年の記念行事が開催された。したがって,今から2年後の2027年に150周年がやってくる。ところで2026年は,日本数学物理学会から日本物理学会が分離独立した1946年から80周年であり,2025年は,御存知量子力学100年(国際量子科学技術年)だ。そこでこれらの 3年 をまとめて,日本物理学会2025-2027記念事業 が行われるようだ。

その1977年の記念行事で,当時の日本物理学会の宮原将平会長の挨拶が残っている。このテキスト画像をDeepSeekにフィードして日本語テキストを抽出してもらった。そこから,日本の物理学者に関する部分を引用する。
最近の 100 年の間に,日本物理学会を中心としまして,日本の物理学者のすぐれた研究が沢山あらわれました。かの有名な,長岡半太郎先生の原子模型は,数学物理学会記事に 1903 年にあらわれたものであります。その後いろいろな研究が次々とあらわれておりますが,代表的なものを少し申し上げますと,まず寺田寅彦先生による音響学の研究,あるいは X 線の結晶による廻折の研究というものがあり,西川正治先生の結晶,とくにスピネルについての結晶構造の決定というすぐれた研究があらわれ,あるいは長岡半太郎,本多光太郎両先生の磁気歪に関する研究があり,また石原純先生の相対論の研究,高嶺先生の分光学の研究,あるいは本多,増本先生の強磁性結晶の研究,それからさらに,原子物理学,核物理学,あるいは素粒子論という方面では,菊池正士先生,杉浦義勝先生,仁科芳雄先生,小谷正雄先生,山内恭彦先生,湯川秀樹先生,朝永振一郎先生,坂田昌一先生,武谷三男先生等々の,沢山のすぐれた研究があらわれておりまして,物理学のこの分野は,日本で大いに発展した一つの分野だと思います。さらに,私は固体物理学あるいは物性論の分野で日本がすぐれた研究をしてきたということも,いわなければならないと思います。これは西川先生,本多先生の伝統をついで,日本で発展したものと思われます。そのなかで,理論の方面をあげれば,永宮健夫先生,久保亮五先生,松原武生先生,高橋秀俊先生,その他の方々,また実験の方でいえば,三宅静雄先生,上田良二先生,鳩山道夫先生,伊藤順吉先生,江崎玲於奈先生というような方々の研究を忘れることはできません。


写真:宮原会長の祝辞(日本数学会から引用)

宮原先生のあげたリストは26名であり,そこに,杉浦義勝も位置づけられていた。

2025年3月11日火曜日

深夜放送

巨泉と前武(ヤングの時代)からの続き

1969年から1971年までが自分の高校生の時期にあたる。音楽シーンではグループサウンズが終焉をむかえ演歌系が立ち上がってくる頃。ニューミュージック前夜だ。その背景では中津川のフォークジャンボリーで,五つの赤い風船赤い鳥岡林信康らが盛り上がった。が,自分の興味はそこに向かわず,ビートルズビージーズフィフス・ディメンションを聴いていた。岡林の再発見は,1970年代半ば大学生活の終盤まで待たなければならない。

ヤング・ヤング・ヤング」は午後10時台の番組なので,深夜放送ではない。ラジオの深夜放送を聞くようになったのは,金沢泉丘高校理数科の同級生で放送部の西川健一君の影響があったかもしれない。「パックインミュージック」のなっちゃんチャコちゃんがどうのこうのと楽しそうに話題にしていた。普通のシリアスな俳優だと思っていた愛川欽也がキンキンのキャラクターで登場していた。ただ,深夜放送を話題にしている生徒はあまりいないし,自分もそこまで熱心なリスナーではなかった。

当時の「オールナイトニッポン」は,糸居五郎から斉藤安弘亀渕昭信の時代だった。ESSの部長の倉橋克人君が話題にしていたが,そちらの方は聴いていなかったので適当にスルーしていた。オールナイトニッポンは,大学生になってから,タモリ,所ジョージや松山千春,中島みゆきの頃に聞くことになる。近田春夫もおもしろかったが,それはパックインミュージックだったのか。いつごろどこで耳にしていたのかよくわからない。

その後もっともハマったのは関西ローカルの「鶴瓶・新野のぬかるみの世界」で,1979年から1980年ごろによく聞いていた。信貴山や新世界のイベントがあったころだ。ヤンタンを聞いた時代と重なっている。そういえば新野新(1935-)はもう90歳か。



図:DALL-E3が考えた日本の深夜放送のイメージ


2025年3月10日月曜日

巨泉と前武(ヤングの時代)

リクエストコーナーからの続き

当時の日曜日のラジオの洋楽ポップス番組といえば,午前中の「巨泉のヤング作戦」があった。1968年5月,大橋巨泉(1934-2016)と浅野順子(1948-)の司会にスイッチしたころから聞き始めている。「牛も知ってるカウシルズ,うっしっし」などのダジャレギャグで曲名が紹介されていた。

浅野順子(寿々子)はりぼんの表紙を飾り,子役として映画にも出演している。最後に出演した映画は鈴木清順(1923-2017)のけんかえれじい(1966)だ。1969年8月に大橋巨泉と浅野順子が結婚したのにはあっと驚いた。その後も二人の司会で番組は続いていたのだろうか。

巨泉といえば,土曜午後のテレビのビートポップスも何度かみた記憶がある。ゾンビーズのふたりのシーズンが流行っていた頃だ。毎週釘付けになってもよさそうな番組だったけれど,そこまで熱心に見続けた記憶がない。テレビを見る時間帯ではなかったか。


必ずしも洋楽ポップスの番組ではないが,深夜放送への扉を開いたのが毎夜10時から20分の「ヤング・ヤング・ヤング」だ。東芝の提供で,パーソナリティは前田武彦(1929-2011)。自分が聞き始めたときはおとなしい榊原るみ(1951-)がアシスタントだった。穏健なマエタケの説教がちょっと気になることもあるマンスプレイニング的な番組だった。万里村れい&ザ・タイムセラーズの「今日も夢みる」は準テーマソングなのかな?

一時は毎日のように聞いていたはずだ。

1969年10月,井原高忠(1929-2014)のプロデュースで大橋巨泉と前田武彦の二人が進行を務めた「巨泉・前武ゲバゲバ90分」が始まった。構成作家として井上ひさし(1934-2010)が入り,100本以上のナンセンスなショートギャグの連続からなるアッと驚く為五郎な番組だった。翌年3月までの半年に1970年から第2期の半年が続いた。

このクオリティの番組はいまではもう制作できないだろう。


写真:ゲバゲバ90分のイメージ(みんカラから引用)


それはそうと,このころの番組にはやたらヤングというキーワードが含まれている。例えば,ヤング720(1966-),ABCヤングリクエスト(1966-),MBSヤングタウン(1967-),セイ!ヤング(1969-),ヤングおー!おー!(1969-),アタックヤング(1970-),ステージ101*(1971-),レッツゴーヤング(1974-),OBCヤングラジオ(1981-),ヤングスタジオ101(1986-)なんということでしょう・・・(* レギュラー出演グループ名が ヤング101 )。

P. S. 上のリストでは,ヤンタンくらいしか聴いていない。調べてみるとそれは
   1978/04 - 1979/03 笑福亭鶴瓶、浅川美智子、中村行延
   1978/04 - 1980/09 原田伸郎、大津びわ子笑福亭笑光、伊東正治
   1978/04 - 1979/09 笑福亭鶴光、角淳一、佐々木美絵
の時代(D1の頃)だった。

[2]昨日のつづき(1959-1971)・春夏秋冬(1956-1982)
[3]前田武彦 小沢昭一 大橋巨泉  2010/05/23(ボクらの時代,ChamekoETC)(2011, 2012, 2016)
[4]永六輔 大橋巨泉 藤田潔 2011/10/23-30(ボクらの時代,ChamekoETC)(2016, 2016, 2021)
[5]ビートポップス 1970.1.31(tonehender)

2025年3月9日日曜日

リクエスト・コーナー

オールジャパン・ポップ20 からの続き

オールジャパンポップ20は,短い時間で沢山の曲を紹介する必要があるので,エアチェックには向いていない。最も助けになったのがNHKのリクエストコーナーだ。1968年,FMに移行する前のAM日曜午後3:00バージョンの頃も聴いていたかもしれない。
 同じ1965年4月に『リクエストコーナー』が、第2放送の午後3時からの1時間番組で始まる。ポピュラー音楽のリクエストにこたえる若者向けディスクジョッキー番組である。季節やその時々の話題にちなんだ特集も随時企画した。1969年(3月1日)のFM 本放送スタートにともなってFMに移行し、日曜午後6時からの1時間番組となる。1981年度より生放送となり、最新音楽情報とともに、全米ヒットパレードに加えて全英ヒットパレードも特集で紹介した。司会は番組スタート時より最終回の1985年3月30日までの20年間、石田豊アナウンサーがつとめた。(NHKラジオ放送史 第5章 から引用)

 


写真:ビリー・ヴォーン楽団の真珠貝の歌(Funky Moose Records から引用)


ネットで検索すると,ビリー・ヴォーン楽団の真珠貝の歌ではじまるNHK-FM リクエスト・コーナーの思い出が沢山見つかる。石田豊アナウンサーの落ち着いた声と,音楽を最後までフルコーラスでかけてくれるところが有り難かった。午後6:00からだと,夕飯とぶつかりそうなものなのだが,どうしていたのだろうか。

他にもエアチェック向けの番組はいくつかあった。日曜には前回登場した出雲崎君がよびに来て,トランジスタラジオをのせた自転車で音楽を聴きながら一緒に近所をうろついていたこともある。これではエアチェックにならない。

あるとき,出雲崎君がウォーカー・ブラザーズの金沢のファン倶楽部の集まりを見つけてきた。土曜の午後,長土塀にあるビクターの営業所に向かった。そこは,怪しいビルの2階で,怖そうな女子高生以上のお姉様方が集まっている。県立工業の制服の方も見受けられる。男性は中学生男子の我々2名だけでビビった。ファン倶楽部代表の女性の進行で,スコット・ウォーカーのレコード(行かないで)などを淡々と聴くのだ。途中でウォーカーブラザースに関するクイズが出題されたりする。出雲崎君がそれに答え(ファンだと実証でき)て無事に帰宅した。


[1]15 お休み前の人気番組『夢のハーモニー』(NHKラジオ放送史5章)
[2]NHK-FM「リクエスト・コーナー」の思い出(やせっぽちのヒロシのブログ)
[3]FMリクエストコーナー(300 rzu)

2025年3月8日土曜日

オールジャパン・ポップ20

中原中也と金沢からの続き

みのもんた(1944-2025)の訃報がニュースになっていた。

しばらく前は最も人気のあるMCの一人だったが,自分の記憶にあるみのもんたはラジオの洋楽番組オールジャパンポップ20の司会だ。「♪みのみの〜,もんた,みのもんた」という軽いジングルを出雲崎君と笑いながら話題にしていた。

洋楽ポップスを聴き始めたのは中2のころだ。2年5組で同級の小林博人君がビートルズが面白いと教えてくれたのは以前書いたとおりだ。3年6組になって,ウォーカー・ブラザーズのファンだった出雲崎栄一君やビージーズが好きだという山田雄治君が,ポータブルのレコードプレーヤを持ち寄って,なけなしの小遣いで買ったレコードに耳を傾けていた。

ところで,みのもんたがオールジャパンポップ20の司会を始めたのが1969年の春頃らしい。とするとこれは高校1年になってからだ。出雲崎君も山田君も家はすぐ近所だったから,高校になってからもときどき会っていたのだろう。

みのもんた登場前の1968年,中3のころからオールジャパンポップ20をかかさずに聞くようになり,毎週のベスト20と投票数をこまめにノートに記録していた。1969年,高校1年になってトランジスタラジオとテープレコーダによるエアチェック体制が整ったころがピークだったかもしれない。このころのベスト20はほとんど曲名とメロディが対応する。1970年から71年になると,自分の中のブームはやがて下火になっていった。

野田中3年の修学旅行は東京見物だった。春の夜,新宿コマ劇場でおてもやんを観劇して,花の香りが排気ガスの匂いで上書きされる繁華街の歩道に出たところで,当時の洋楽ベスト10が掲示された立て看板を見つけた。なんだかなつかしくてワクワクした。
1968年4月2週頃のオールジャパンポップ20 
 1.ジャッキー,スコットウォーカー
 2.マサチューセッツ,ザ・ビージーズ
 3.マジカル・ミステリー・ツアー,ビートルズ
 4.初恋の並木道,ナンシー・シナトラとディーン・マーチン
 5.ウーマン・ウーマン,ザ・ユニオン・ギャップ
 6.ワールド,ザ・ビージーズ
 7.雨に消えた初恋,ザ・カウシルズ
 8.ノー・ノー・ノー,ザ・ヒューマン・ベインズ
 9.すてきなバレリ,モンキーズ
 10.星のベイビー,ザ・ファウンデーション(この曲は覚えていない)
1968年5月2週頃のオールジャパンポップ20(看板の内容は↓?) 
 1.すてきなバレリ,モンキーズ
 2.ワールド,ザ・ビージーズ
 3.レディマドンナ,ビートルズ
 4.マジカル・ミステリー・ツアー,ビートルズ
 5.ジャッキー,スコットウォーカー
 6.あの娘は今夜…,ボイス・アンド・ハート(この曲は覚えていない)
 7.ささやく瞳,ウィルマ・ゴイク
 8.ホールド・オン,ウォーカー・ブラザーズ
 9.初恋の並木道,ナンシー・シナトラとディーン・マーチン
 10.ノー・ノー・ノー,ザ・ヒューマン・ベインズ

 


図:Imagen3 はこんなものを出してきたが・・・orz

P. S. おてもやんは宝塚歌劇団の作品である。1968年の新宿コマ劇場は雪組が1968年5月3日から28日まで公演しているので,修学旅行はその期間だったことがわかる。

[1]オールジャパンポップ20(MURAKAMI Chifumi)


2025年3月7日金曜日

杉浦義勝(2)

杉浦義勝(1)からの続き

写真1をみると,あの仁科がなんだか遠慮がちにみえる。そして,真面目そうなたたずまいの杉浦が隣に。写真2では,ディラックやハイゼンベルクと面識がある仁科と杉浦が両端に,その間には,理研の所長の大河内正敏長岡半太郎本多光太郎が並んでいる。



写真1:仁科の隣が杉浦なのでは?(ぶどう狩り[1]から引用)



写真2:1929年 理研に招聘されたハイゼンベルクディラック
左端が仁科で,右端の杉浦と対称的に並んでいる(理研から引用)


1960年9月にオッペンハイマーが来日したとき,亡き日下周一の家族を訪ねたことは以前のべた。このときオッペンハイマーは病で伏しがちだった杉浦義勝の自宅も訪問している。オッペンハイマーの研究業績では,ボルン=オッペンハイマー近似で最も知られているが,杉浦の業績は,その近似の元での水素分子の共有結合を正確に計算したことが最も重要である(ハイトラー=ロンドンは近似計算をしていた)。

[1]仁科芳雄と日本の量子物理学(伊藤憲二)


さて,仁科と杉浦の違いについても,さきほどの Deep Researchの続きで尋ねている。
Q(koshix):
杉浦義勝の業績や影響が,仁科芳雄に比べてあまり広く伝えられてこなかった主な理由をいくつか教えてください

A(ChatGPT Deep Research):
杉浦義勝の業績や影響が仁科芳雄に比べてあまり広く伝えられてこなかった主な理由として、以下のような要因が挙げられます。

1.研究拠点とポジションの違い

仁科芳雄は理化学研究所(理研)における中心的存在だったのに対し、杉浦義勝は教育・理論研究に重点を置いた。

・仁科は理研の主任研究員として強力な研究グループを率い、日本の量子物理学の発展に直接貢献した。特に、仁科研究室は戦前から戦後にかけての原子核物理・宇宙線研究の中心となり、多くの弟子を輩出した。
・一方、杉浦は理研に所属していたが、独立した研究室を持たず、戦後は立教大学に移り教育活動にシフトした。
・仁科が組織的な研究環境を整えたのに対し、杉浦は講義や解説を通じて間接的に影響を与える立場であったため、直接の研究成果として可視化されにくかった。

2.戦後の研究成果の違い

仁科は戦後も日本の物理学を牽引し続けたが、杉浦は戦後は研究よりも教育・啓蒙に重点を置いた。

・仁科は戦後、日本の科学政策に関わり、理研の復興に努め、原子核物理や宇宙線研究の分野で影響力を維持した。
・杉浦は戦後、立教大学で理論物理学の教育を重視し、研究よりも教育カリキュラムの整備に力を注いだ。
・そのため、仁科は「研究者のリーダー」として記憶されやすかったが、杉浦は「教育者」としての側面が強調され、学術界での影響力が低く見られがちだった。

3.「実験物理」と「理論物理」の違い

実験物理学は研究成果が可視化されやすいが、理論物理学は影響が間接的である。

・仁科の研究は宇宙線や原子核の実験など、実験的成果が明確であり、写真やデータとして残るため、研究史の中で扱いやすかった。
・一方、杉浦は水素分子の量子論計算など理論研究が中心であり、その影響が間接的だったため、物理学史の中で注目されにくかった。
・また、杉浦は理論物理の教育において大きな貢献をしたが、物理学の歴史を書く際、教育活動は研究成果に比べて扱われにくいため、相対的に評価が低くなった。

4.国内外でのネットワークの差

仁科は国際的なネットワークが強く、戦後も海外との交流が盛んだったが、杉浦のネットワークはやや限定的だった。

・仁科はボーア研究所に所属し、ボーアやハイゼンベルクといった量子力学の中心人物と直接交流し、戦後も国際学術界とのつながりを維持した。
・一方、杉浦も留学経験はあったが、研究拠点が国内にとどまり、戦後は国際的な活動が控えめだった。
・物理学の歴史は、国際的なネットワークの中で語られることが多いため、海外の研究者との共同研究や国際的な学会での発表が少なかった杉浦は、歴史的に目立ちにくくなった。

5.伝記や研究史における記録の少なさ

杉浦に関する伝記や研究史の記録が少なく、研究者の間で語り継がれる機会が少なかった。

・仁科は戦後、多くの弟子を育て、その弟子たちが彼の業績を振り返る機会を多く持った。そのため、日本の物理学史において重要な人物として語り継がれた。
・一方、杉浦に関するまとまった伝記や回顧録がほとんど存在しないため、彼の業績が十分に研究される機会が少なかった。
・近年になって物理学史の観点から杉浦の再評価が進んでいるものの、依然として一般には認知されにくい状況が続いている。

6.戦前・戦後の政治的影響

戦後、日本の物理学界が米国主導の原子核・素粒子研究にシフトしたことで、杉浦の研究分野(量子化学・理論物理学)はやや影響力を失った。

・仁科の研究分野(原子核物理・宇宙線研究)は、戦後の核兵器開発や素粒子研究の文脈と重なり、国際的にも注目された。
・一方、杉浦の研究していた量子化学や光学理論は、戦後の研究資金が回りにくく、日本の物理学界での関心も低下した。
・その結果、物理学の主流からやや外れた分野となり、歴史的評価の対象になりにくかった。

まとめ

杉浦義勝の業績が仁科芳雄に比べてあまり広く伝えられてこなかった理由は、以下のように整理できます:

(1) 研究拠点とポジションの違い:仁科は理研のリーダーだったが、杉浦は大学教育中心だった。
(2) 戦後の研究成果の違い:仁科は戦後も日本の物理学を主導したが、杉浦は教育に注力した。
(3) 「実験物理」と「理論物理」の違い:仁科の実験物理は目に見える成果があったが、杉浦の理論研究は間接的な影響が多かった。
(4) 国内外でのネットワークの差:仁科は国際的なネットワークが強かったが、杉浦は国内活動が中心だった。
(5) 伝記や研究史における記録の少なさ:杉浦に関するまとまった伝記が少なく、研究史での扱いが小さかった。
(6) 戦前・戦後の政治的影響:戦後の物理学の方向性と杉浦の研究分野が合わなかった。

近年、物理学史研究の中で杉浦の再評価が進んでおり、彼が量子力学の日本への導入において重要な役割を果たしたことが見直されつつある。今後、さらなる歴史研究が進めば、彼の業績がより正当に評価される可能性が高いでしょう。

2025年3月6日木曜日

杉浦義勝(1)

量子力学100年はハイゼンベルクの論文から始まった。何月に出版されたのかもう一度確認しようと探していたら,杉浦義勝(1895-1960)に行き着いた。Wikipediaには「物理学者の仁科芳雄(1890-1951)と並び「日本の現代物理学の父」といわれる。」と日本経済新聞の中根美知代さんの記事を引用して記されていたが,自分にはもうひとつその認識が足りなかった。

こんなときには,ChatGPTのDeep Researchに頼むに限る。これまでは,Proユーザだけだったのがいつの間にかPlusユーザ向けに月10回まで開放されていた。ようやく試してみることができる。


写真:ゲッチンゲンで下宿を共にしたディラック,杉浦,オッペンハイマー


[1]量子力学の日本への移入と杉浦義勝(中根美知代,2018,日本物理学会誌)
[2]もう一人の「日本の物理学の父」(中根美知代,2021,日本経済新聞)

さて,そのDeep Researchの結果である。
Q(koshix):
日本の物理学者で量子力学の黎明期から日本への移入に尽力した杉浦義勝(1895-1960)について,できるだけ詳しくその来歴や業績などを年代を追ってまとめてください。同世代の仁科芳雄に比べてインターネット上に公開されていて手に入る情報量が少なくて探し切れずに困っています。

A(ChatGPT Deep Research):
杉浦義勝(1895-1960)について、彼の来歴や業績を年代順に詳しくまとめるために、信頼できる情報源を徹底的に調査します。

以下の点を確認させてください:
・彼に関する特に重点を置きたい分野(例:量子力学の導入過程、日本の物理学教育への貢献、研究業績など)
・既にお探しになったが見つからなかった情報(例:特定の論文、大学での具体的な役職、弟子や共同研究者など)
・参考にしたい具体的な書籍や文献(もしあれば)

これらの点を補足いただければ、より詳細で正確な情報を提供できるよう努めます。

Q(koshix):
量子力学の導入過程や研究業績を中心に彼全体像がわかるようにお願いします。弟子や共同研究者などその波及効果についても知りたいです。

A(ChatGPT 4o research):
7分かけて22件の情報源を調査

**杉浦義勝(1895–1960)は、日本における量子力学導入の草分け的存在です。**
東京帝国大学理学部を卒業後、長岡半太郎の下で理化学研究所に入り、1926年から欧州に留学しました​。ゲッティンゲン大学ではマックス・ボルンに学び、コペンハーゲンではニールス・ボーアの薫陶を受けています​。1927年に帰国した杉浦は、日本人として黎明期の量子力学を応用した優れた成果を挙げ、日本への量子力学の移入に大きな役割を果たしました​。その功績により、従来「仁科芳雄が日本に量子力学を伝えた」とされてきた通説に再考を促し、仁科と並んで日本の量子物理学発展に寄与した人物として再評価されています​。以下では、量子力学の受容過程、研究業績、弟子・共同研究者、そして学術界・教育界への影響の観点から、杉浦の来歴と業績を詳述します。

1.量子力学の導入過程における杉浦の役割

欧州留学と最新理論の紹介:杉浦は1926年から約1年間の欧州留学で、当時構築されつつあった量子力学を直接習得しました​。ゲッティンゲンではボルン、コペンハーゲンではボーアの元で研鑽を積み、P.A.M.ディラックやJ.R.オッペンハイマーとも親交を結んでいます(1927年夏、ゲッティンゲンでディラックとオッペンハイマーと撮影された写真が残っています​)。仁科芳雄ともコペンハーゲンで行動を共にし、欧州で最新理論を学ぶ仲間でした​。こうした留学経験を通じて、杉浦は量子力学の知見を日本に持ち帰る準備を整えました。

帰国後の講義と普及活動:帰国した1927年以降、杉浦は精力的に新理論の紹介と教育に取り組みます。例えば1928年2月には「新量子力学と其の応用」と題する集中講義を行い、シュレーディンガーやド・ブロイの波動力学と古典光学(ハミルトン‐ヤコビ理論)を関連づけて解説しました​。これは日本で初めて体系的に量子力学を紹介した講義の一つであり、ボルンによる光学再解釈など当時最先端の業績も含めて紹介されています​。杉浦の講義は学生や若手研究者に強い刺激を与え、朝永振一郎(のちのノーベル物理学賞受賞者)も東京帝大在学中に杉浦の量子力学講義を熱心に聴講した一人でした​。杉浦は才能ある学生に課題を与えて指導し、朝永には自身が携わっていた水素分子の量子論計算に関する問題を与えています​。このように杉浦は講義や演習を通じて、当時の日本の若手物理学者に量子論の考え方を浸透させていきました。

翻訳・著作活動:杉浦は新知見を日本語で提供することにも尽力しました。留学中から執筆した論文だけでなく、帰国後は講義録や専門書の形で知識を普及させています。たとえば1930年頃には私家版の講義録『量子力学の応用』をまとめており​、1936年から1940年にかけて『電磁光学』『量子光学』​などの著書を刊行して量子論の各分野を解説しています。1939年には共立社の「量子物理学」叢書の一巻として『原子核物理学(実験)』を著し、当時発展しつつあった核物理学の知見も紹介しました。これらの著作や翻訳相当の解説書によって、杉浦は日本語で読める最新の物理学情報を提供し、日本の物理教育カリキュラムに量子力学を定着させることに貢献しました。

仁科芳雄との比較:日本への量子力学導入において、仁科芳雄と杉浦義勝はいわば車の両輪でした。仁科は主に欧州での研究活動(ボーアの下での原子物理研究)や帰国後の理研での実験的基盤整備によって量子物理学を押し進めました。一方、杉浦は理研の研究員として理論的成果を上げつつ、大学や専門書を通じた教育・啓蒙活動で量子力学を広めています​。歴史的には仁科の名が前面に出がちでしたが、近年の研究では「日本に量子力学を伝えたのは仁科と杉浦の両名である」と再評価されています​。実際、仁科が欧州から論文を取り寄せ読んでいるだけでは十分でなかったところを、杉浦が自ら欧州で学び直接講じたことが、日本の物理学界全体の理解を大きく深めたとされています​。両者の協力と相補的な活動により、日本の量子論研究の地盤が1920年代末から築かれていきました。

2.杉浦義勝の研究業績

水素分子の量子論的研究:杉浦の代表的業績は、水素分子における化学結合の量子論的解明です。1927年、欧州留学中にウォルター・ハイトラーとフリッツ・ロンドンが提唱した水素分子の結合理論(ハイトラー=ロンドン法)を発展させ、結合エネルギー計算のための複雑な積分を初めて解きました​。ハイトラー=ロンドン法では定性的に水素分子の結合が説明できましたが、杉浦の計算により結合エネルギーや平衡核間距離が定量的に求められ、実験値との比較が可能となったのです​。この成果は当時の日本人研究者による量子力学応用として画期的であり、後にヘンリー・アイリングは「水素分子結合解明に最初に成功したのは杉浦義勝である」と述べ、**ハイトラー=ロンドン=杉浦法(HLS法)**と呼び得ると評しています​。杉浦の論文「水素分子基底状態の性質について」(独語)は1927年の『Zeitschrift fur Physik』に掲載され、国際的にも引用されました​。この業績により、量子化学(特に原子価結合論)の分野で杉浦は名を残すことになりました​。

原子スペクトル・解析力学の研究:杉浦は量子力学以前から原子分光学の研究に従事しており、長岡半太郎の下で原子スペクトルの理論に取り組んでいました​。量子力学の形成期にも一貫してスペクトル研究を続け、新理論をいきなり受け入れるのではなく古典論との連続性を意識していたことが指摘されています​。例えば古典解析力学のハミルトン–ヤコビ理論を用いて量子論の問題にアプローチし、分光学への応用を模索しました​。こうした視点から、マックス・ボルンが提唱した「量子力学から見直した光学理論」の体系的紹介も行っています​。杉浦の業績は今日では物理学と量子化学の両分野にまたがり、従来の物理学史研究では見落とされがちでしたが、実は物理学(量子論)と化学(量子化学)の架け橋となる重要な研究を成し遂げていたと評価されています​。

その他の研究と国際交流:杉浦はその後も理化学研究所で理論物理の研究を続け、1930年代には電子論や光学分野でも著述を残しました​。1936年刊行の『電磁光学』および1940年刊行の『量子光学』では、自身の研究と最新の知見を踏まえ電磁気学から量子光学への展開を論じており、戦前期における量子論の体系化に寄与しています​。国際的な繋がりも深く、留学時代に親交を結んだオッペンハイマーとは帰国後も交流が続き、1935年に理研の同僚が米国バークレーのオッペンハイマーを訪ねる際には杉浦の紹介状が大いに役立った逸話が残っています​。欧米の研究者(ボルン、ボーア、ディラック、オッペンハイマーら)とのネットワークは、杉浦自身の研究活動のみならず日本への最新知識の導入にも貢献し、彼の国際感覚は日本の物理学の視野を広げました。

3.弟子・共同研究者とその継承

門下生と後進の育成:杉浦は教育者・指導者としても卓越しており、多くの若手を指導しました。直接の門下生として名が挙がる人物は多くありませんが、彼の講義を受けた学生たちが後に日本の物理学を担っています。前述の朝永振一郎はその代表例で、杉浦から与えられた課題(分子の積分計算)に取り組んだ経験が、後の量子電気力学研究の素地になったとも言えます​。また京都帝大で同期だった湯川秀樹も杉浦の講義に刺激を受けた一人であり(湯川自身、大学院時代に量子力学の勉強会を主宰しましたが、その背景には杉浦ら先達の教えがあります)、湯川の中間子論もこうした量子論普及の延長線上に位置付けられると指摘する声もあります​。戦前戦後を通じて、杉浦の薫陶を受けた学生・研究者たちが日本の理論物理学を支えていったのです。

共同研究と交流:杉浦自身の研究は理論が中心でしたが、理研では仁科芳雄や小谷正雄ら同僚とも緊密に交流し、理研内における理論物理研究グループの一翼を担いました。たとえば小谷正雄(のち東大教授)は1930年代に分子の量子論的研究を推進しましたが、その着想は杉浦の業績に負うところが大きいとされます​。実際、小谷研究室は戦前から原子・分子の積分計算に着手し、戦後もその研究を継続して世界的に著名な「分子積分表」(1955年)を刊行しています​。この小谷正雄は杉浦の直接の弟子ではありませんが、杉浦が切り拓いた量子化学の道を発展させた後進と言えます。さらに戦後、杉浦は自身が所長を務める立教大学理論物理学研究所に武谷三男を招き入れました​。武谷は湯川博士の弟子筋にあたる理論家ですが、杉浦の下で素粒子理論の研究をリードし、立教の若い学生たちを指導しています​。このように杉浦は自らの弟子のみならず、他機関の有望な研究者とも協働し、研究環境を提供することで日本の物理学の継承と発展に貢献しました。

国際的な人的ネットワーク:杉浦の人的交流は国内に留まらず海外にも広がっていました。欧州で知り合った物理学者とは書簡を交わし続け、研究情報や人材紹介を行っています。前述のオッペンハイマーへの紹介状の件​はその一例で、他にもコペンハーゲン時代の縁でニールス・ボーア研究所と理研の間で情報交換がなされるなど、杉浦は非公式な「学術外交官」としても機能しました。こうしたネットワークは、杉浦の弟子や後輩たちが海外留学する際にも役立ち、日本人研究者の国際交流を後押しする遺産となりました。

4.学術界・教育界への影響

理研から大学へ:杉浦は戦前・戦中は理化学研究所の研究員として活躍し、日本学術振興会の委員や学術研究会議の会員も務めるなど、学術界の発展にも寄与しました​。戦後になると、彼は研究の場を大学へと移し、新制大学における理学教育の充実に力を注ぎます。1949年、杉浦は私立大学として日本初となる理学部(立教大学理学部)の創設に中心メンバーとして関与し、初代理学部長および物理学科教授に就任しました​。戦後混乱期において私学で理学部を設置するのは画期的であり、杉浦はカリキュラム編成から設備拡充、人材登用まで指導的役割を果たしました。当時、理学部創設にあたり「理論物理学研究所」も立ち上げ、研究と教育の両立を図った点は特筆されます​。ここでは素粒子理論の武谷三男を迎えるなど、戦前からの先端研究者を教育界に招き入れたことで、学生は最先端の研究に触れながら学ぶ機会を得ました​。

物理教育への貢献とカリキュラム改革:杉浦は自身の研究経験を踏まえ、教育面でもカリキュラム改革を推進しました。戦前から執筆していた教科書・専門書類は、戦後も物理教育に活用されました。彼の著書群(光学、電子物理学、原子核物理学など)は、日本の大学で量子論や現代物理学を教える貴重な教材となり​、戦後世代の物理学者・技術者の育成に寄与しました。また理学部長として、講義科目に量子力学や相対論といった当時最新の内容を組み込み、旧来の教育からの脱却を図っています。これは、古典物理学中心だった日本の大学教育に革新をもたらし、湯川秀樹や朝永振一郎ら戦前世代が成し遂げた成果を、次世代に体系的に伝える重要な役割を果たしました。

戦後日本の科学への貢献:杉浦の戦後の活動は、日本の科学界再建にもつながりました。戦中・戦後に物理学研究が停滞する中、私立大学で理論研究の火を絶やさなかったこと、さらには学術団体での活動(学術会議や学振)を通じて研究費や方針の整備に関与したことは、日本の科学復興に寄与しています​。例えば、立教大学で育った学生や研究者が後に他大学や産業界で物理・化学分野を発展させたり、杉浦自身が培った量子化学的手法が化学や材料科学で活かされたりと、その影響は幅広い分野に及びました。加えて、戦前に築いた国際的人脈を活かして海外からの知見導入にも努め、戦後孤立しがちだった日本の科学界に国際的視野をもたらしました。こうした功績から、近年では杉浦を「もう一人の日本近代物理学の父」と位置づける評価もなされています​。仁科芳雄が研究体制の構築者だとすれば、杉浦義勝は知の伝道者・育成者として、日本の物理学基盤を支えたと言えるでしょう。

参考文献:杉浦義勝の業績に関する詳しい検討として、中根美知代「量子力学の日本への移入と杉浦義勝」​、​Nakane, Michiyo “Yoshikatsu Sugiura’s Contribution to the Development of Quantum Physics in Japan”​ PUBMED.NCBI.NLM.NIH.GOV、などがあります。これらは仁科・杉浦両氏の役割を再評価した研究で、本回答でも一部内容を参照しました。そのほか、杉浦自身の論文​、彼の書簡や同時代人の回想​、立教大学理学部創設に関する記録​などを総合することで、上述のような杉浦義勝の全貌が明らかになります。今後も日本の科学史の中で、杉浦の果たした役割に一層光が当たることが期待されます。

[1] 日本数学会100周年記念日本物理学会会長宮原将平

2025年3月5日水曜日

Claude 3.7 Sonnet

対数正規分布からの続き

AnthropicClaude 3.5 Sonnet は,他の生成AIチャットに比べて表現力は優れているの。ただ,ChatGPT や Gemini が推論モデルの方に進んできたので,ちょっと遠ざかりぎみだった。

Claudeに課金はしていないがユーザ登録しているので,Anthropic TeamからClaude 3.7 Sonnet のお知らせがきた。
Claude 3.7 Sonnetは初のハイブリッド推論モデルであり、これまでで最もインテリジェントなモデルです。コーディングの最先端であり、コンテンツ生成、データ分析、プランニングの大幅な改善を実現しています。
Proプランにアップグレードすると、クロード3.7ソネットを拡張思考で使用できるようになります。拡張思考は、数学、物理学、複雑なコーディングの課題のパフォーマンスを向上させます。
ネットの評判は上々で,ChatGPT Pro から乗り換えるという話もちらほら。無料ユーザーなので拡張思考は使えないが,取りあえず試してみることにする。テーマは,野村総研が出している日本の金融資産分布の分析だ。

Q(koshix):
日本の金融資産の保有額で分類した階層別分布が以下のように与えられます。
(1) マス層:0~3,000万円, 4425万世帯, 711兆円
(2) アッパーマス層:3,000万円~5,000万円, 577万世帯, 282兆円
(3) 準富裕層:5,000万円~1億円, 404万世帯, 333兆円
(4) 富裕層:1億円~5億円, 154万世帯, 334兆円
(5) 超富裕層:5億円以上, 11.8万世帯, 135兆円
これをおおむね再現する連続な確率密度分布関数を数値的に求めてください。

A(ChatGPT o3-mini-high):
(66秒推論後,いちばんもっともらしいけれどやっぱり誤っている回答,とくに指定せずに対数正規分布(μ=7.055, σ=1.147)とパレート分布(α=2.547)の混合モデルが選択された。)

A(Gemini 2.0 Flash Thinking Experimental):
(対数正規分布 μ=7.16, σ=1.05 が提案された。)

A(DeepSeek R1 from Perplexity Pro):
KDE関数を用いたpythonコードが提案された。グラフも出てきたがちょっと違う。)

A(Claude 3.7 Sonnet):
(思考時間が短くスイスイと結果のpythonプログラムを掃き出してくる。最初は,対数正規分布だけだったので,パレート分布との混合モデルを依頼するとなんとか対応できた。GPT o3-mini にはかなわない。というのも精度が甘かったのである)



図:Claude 3.7 Sonnet が導いた確率密度分布関数のコードから

推論モデルを使う場合,プロンプトとしてこちらであらかじめ考えた条件を詳しく入れるとかえって話がややこしくなってうまくいかないことが多かった。むしろざっくりと任せてしまったほうがいいのかもしれない。まだ発展途上。コードについては自分のレベルに比べて十分に複雑なものに対応できるし,エラー情報にも正しく対応してくれる。

P. S. 一週間後の3月5日,Claude3.7 も Claude3.5 Sonnet もすべて有料($20)のPROモードに移行してしまった。無料で使えるのは Claude 3.5 Haiku だけだ。そうか,そうくるか。

2025年3月4日火曜日

整数のべき乗の下二桁

オイラーの定理・Grok からの続き

問題がわかったようなわからないような場合は,プログラムに落とし込んでもらうほうがありがたい。

Q(koshix):
f(n,m)=mod(n^m,100) と定義します。(n=2,3,...,m=2,3,...)
この関数は最小の出発点をm_0(n)として,最小周期T(n)を持つことがわかっているとします。つまり,f(n,m_0+T(n))=f(n,m_0) です。このとき,m_0(n)とT(n)をnの式で表わすことができますか。できる範囲で構いませんけど。

A(ChatGPT o3-mini-high):
(57秒推論,たぶん正解,以下出力省略,m=2,3,...というのはこちらの入力ミスで,m=1,2,... でなければならないのだけれど,そのあたりは勝手に斟酌して話を進めてくれている。
出発点:m0(n) = ...
周期:T(n) = ...

Q(koshix):
n,mを入力したときに,m0(n)とT(n)を求めるプログラムを作ってください。

A(ChatGPT o3-mini-high):
(できた!)

Q(koshix):
(1) n=0を入れるまで繰り返して入力を促すようにしてください。
(2) 2^2=4, ... 2^22=...4 のように,周期に対応する部分の結果もあわせて出力するようにしてください。

A(ChatGPT o3-mini-high):
(できた!)

import math

def ord25(n):
    """
    n と 25 が互いに素な場合に、25 を法とする乗法群における n の位数を返す。
    すなわち、最小の正整数 k で n^k ≡ 1 (mod 25) となる k。
    可能性のある値は 1, 2, 4, 5, 10, 20(φ(25)=20より)です。
    """
    if n % 5 == 0:
        return None  # n が5の倍数の場合、この関数は使いません
    for k in [1, 2, 4, 5, 10, 20]:
        if pow(n, k, 25) == 1:
            return k
    return 20  # 理論上ここには来ないはず

def compute_m0_T(n):
    """
    与えられた n に対して、f(n, m) = n^m mod 100 の
    出発点 m0(n) と周期 T(n) を計算する関数です。
    
    ・モジュロ4について:
      - n ≡ 2 (mod 4) の場合は、m0,4 = 2(m>=2から定常)
      - それ以外は m0,4 = 1
    ・モジュロ25について:
      - 5で割れるが25で割れない場合は m0,25 = 2(m>=2から0になる)
      - それ以外(すなわち 5と互いに素または25で割れる場合)は m0,25 = 1
      
    最終的な出発点は m0(n)=max(m0,4, m0,25) として計算します。
    
    周期は、各合同式での周期の最小公倍数として
      T(n) = lcm(T4(n), T25(n))
    とし、モジュロ4では
      - 奇数かつ n ≡ 3 (mod 4) の場合は T4 = 2、それ以外は T4 = 1
    また、モジュロ25では
      - n と 25 が互いに素なら ord25(n) を、5で割れる場合は T25 = 1 とします。
    """
    # モジュロ4での出発点
    m0_4 = 2 if n % 4 == 2 else 1

    # モジュロ25での出発点
    m0_25 = 2 if (n % 5 == 0 and n % 25 != 0) else 1

    m0 = max(m0_4, m0_25)

    # モジュロ4での周期 T4:
    T4 = 2 if (n % 2 == 1 and n % 4 == 3) else 1

    # モジュロ25での周期 T25:
    if n % 5 == 0:
        T25 = 1
    else:
        T25 = ord25(n)

    T = (T4 * T25) // math.gcd(T4, T25)
    return m0, T

def main():
    while True:
        try:
            n = int(input("整数 n を入力してください (終了するには 0 を入力): "))
        except ValueError:
            print("整数を入力してください。")
            continue
        
        if n == 0:
            break
        
        m0, T = compute_m0_T(n)
        print(f"\nn = {n} のとき:")
        print(f"  出発点 m0({n}) = {m0}")
        print(f"  周期 T({n}) = {T}")
        print("周期に対応する部分の結果:")
        # m0 から m0+T まで(両端を含む)で f(n, m) = n^m mod 100 の値を出力
        for m in range(m0, m0 + T + 1):
            result = pow(n, m, 100)
            print(f"  {n}^{m} = {result}")
        print("-" * 40)
    
    print("終了しました。")

if __name__ == "__main__":
    main()

======================================================
(出力結果)

整数 n を入力してください (終了するには 0 を入力):  16

n = 16 のとき:
  出発点 m0(16) = 1
  周期 T(16) = 5
周期に対応する部分の結果:
  16^1 = 16
  16^2 = 56
  16^3 = 96
  16^4 = 36
  16^5 = 76
  16^6 = 16
----------------------------------------
整数 n を入力してください (終了するには 0 を入力): 

 

Q(koshix):
このプログラムを利用して,T(n)のn=1...100 までのリスト,m0(n)の1...100までのリストを出力してください。

A(ChatGPT 03-mini-high):
(125秒考察の後,コードとその実行結果のリストを出力してくれた。微妙に欠損していたので,もとのコードを自分で改変して修正出力した。)

図:T(n)とm0(n)のリストプロット(n=1...100)




2025年3月3日月曜日

Grok3

オイラーの定理からの続き

イーロン・マスクが支配しているX(旧Twitter)からはなるべく遠ざかりたい。日本語で自分がフォローしている空間はそこまで荒れていないし,情報量も多いので悩ましいところだ。そのマスクが2023年7月に立ち上げたAI開発企業が xAIだ。 

xAIのチャットボットであるGrokは,Xの有料ユーザ向けに提供されているものだと思って無視していたが,いつの間にか Grok3 ベータ版がXの無料ユーザにも公開されていた。テストを誘導するための一時的な措置だろう。というわけで,この推論モデルの実力を試してみる。



図:Grokのアイコン(どこかから引用)

Tsujimotter が提起していた,「2の200乗の下2桁はいくつか?」の解法7選 にちなんだ問いだ。
Q(koshix):
整数m,nに対して,mod(n^m,100) がm=0,1,…に対して,周期的に振る舞うことを証明し,その周期のはじまるmの値が n によってどのように定まるかを求めてください。

A(Grok3):
124行ほど考えて,微妙に誤りが含まれた生ぬるい回答を返してきた。論理的な推論というよりも,具体的な計算の試行錯誤のような印象を受ける)

A(DeepSeek R1):
371秒かけて中国語で考察した後,ある程度妥当だけれど不完全な回答を中国語で返してきた。日本語に直してとお願いしたら,「服务器繁忙,请稍后再试。」だと。)


A(Gemini 2.0 Flash Thinking Experimental):
253行ほど考えて,あまり整理されていない回答を返してきた。頭悪いのかと思ったが,最後の結論はもしかすると良いのかもしれない。自分自身の理解が不十分なのか?)

A(ChatGPT o3-mini-highl):
37秒かけて日本語で考察した後,もっともらしい整理された答えを返してきた。)

ということで,Grok3は巷の一部の評判ほどのものではないようだ。DeepSeek R1も相変わらずイマイチなので,とりあえず様子見ながら,o3-mini-highを中心に使うのがよろし。

2025年3月2日日曜日

オイラーの定理

フェルマーの小定理オイラーの関数からの続き

大人を過ぎてから初めて目にした概念はなかなか覚えられない。フェルマーの小定理がそれだ。鈴木貫太郎の大学入試数学チャンネルもなくなってしまったので,なおさらだ。

フェルマーの小定理は,素数を$p$とし,$p$とたがいに素な整数を $a$(gcd($a, p$)=1)として,$a^{p-1} \equiv 1 \quad ({\rm mod}\ p)$ 。あれれ,gcd($a, p$)=1 をはずせば,$a^p \equiv a \quad ({\rm mod}\ p)$)でもいいのか。

証明は次のとおり。
整数 $a, x$,素数$p$とする。二項定理で$(x+1)^p$を展開すると,
$(x+1)^p = x^p + C_1^p x^{p-1} 1^1 + C_2^p x^{p-2} 1^2 + \cdots + C_{p-1}^p x^1 1^{p-1} + 1^p$
ところで,上式の$C_k^{p-k}=\dfrac{p!}{k! (p-k)!}$であり,分母の$k<p, \ p-k < p\ $には分子の$\ p \ $を割り切る数は含まれていない。したがって,$(x+1)^p \equiv x^p+1 \quad ({\rm mod} \ p) $ である。

これから,$a^p \equiv (1+(a-1))^p \equiv 1 + (a-1)^p \quad ({\rm mod}\ p ) $
$a^p \equiv 1+ (a-1)^p \equiv 1+ 1 + (a-2)^p \equiv \cdots \equiv  a + 0^p  \quad ({\rm mod} \ p ) $
$a$と$p$は互いに素なので,両辺を$a$で割って,$a^{p-1} \equiv 1 \quad ({\rm mod} \ p) $

オイラーの定理は,フェルマーの小定理のべきの素数部分を拡張したものに相当する。
正の整数$m$に対して,集合$\ r(m) = \{a\ |\ 1 \le a \le m, \ {\rm gcd} (a, m) = 1\} $ を考え,その要素数をオイラー数 $\varphi(m)= \#r(m)$  とよんでいる。そこで,$r(m) = \{r_1, r_2, \cdots, r_{\varphi(m)} \}$。なお,$p$に対して,$\varphi(p) = p -1$。

集合 $r(m)$のすべての要素に$a$をかけて,${\rm mod}\  m$ をとれば,その集合 $ar(m) = \{ a r_1, a r_2, \cdots, a r_{\varphi(m)} \}$ は $r(m) = \{r_1, r_2, \cdots, r_{\varphi(m)} \}$と等しくなる。そこで,これらの要素の積を考えると,$ a^{\varphi(m)} \Pi_{i=1}^{\varphi(m)} r_i \equiv \Pi_{i=1}^{\varphi(m)} r_i \quad ({\rm mod }\ m )$ なので,
オイラーの定理,$a^{\varphi(m)} \equiv 1 \quad  ({\rm mod }\ m )\ $ が得られる。

(注)なお,$ar(m) = \{ a r_1, a r_2, \cdots, a r_{\varphi(m)} \} \quad ({\mod \ m }) \equiv \{ r'_1, r'_2, \cdots, r'_{\varphi(m)} \} \ $の要素$\ r'_i \ $はすべて,$a, m$と互いに素であり,同じものは含まれない。

(1) $p, q$を素数として,$m=p q\ $である場合,$\varphi(m) = \varphi(p) \varphi(q)$ となる。
$\varphi(m)\ $は,$\{1,2, \cdots, m \}$から,$p$の倍数と$q$の倍数を除いたものになるので,それぞれ,$q$個,$p$個あるが,$p q$は両方で重なっている。そこで,$p, q$の倍数でないものの個数は,$ \varphi(m) = pq -p - q +1 = (p-1) (q-1) = \varphi(p) \varphi(q) $ となる。3個以上の場合も同様。

(2) $p$ を素数,$k$を正整数として,$m = p^k\ $である場合,$\varphi(m) = p^k - p^{k-1} \ $ となる。これは,$\{ 1, 2, \cdots , p^k \} $ の中で,$ \{ 1 p, 2 p, \cdots , p^{k-1} p\}$ は$m$と互いに素でないので,その個数を引けばよいからだ。

(3) これらを組み合わせると,$m = p_1^{k_1} p_2^{k_2} \cdots p_n^{k_n}\ $ として,$\varphi(m) = m (1-1/p_1) (1-1/p_2) \cdots (1-1/p_n) $ となる。


図:オイラーのファイ関数のグラフ(Wikipediaから引用)

[2]オイラーのファイ関数のイメージ(高校数学の物語)

2025年3月1日土曜日

終戦の詔勅

日本でラジオ放送が始まって100年,NHKでは放送100年として様々な資料映像を流している。そのなかに,名物アナウンサーの和田信堅(1912-1952)の映像があった。

和田は,双葉山69連勝でストップの放送でも有名だが,1945年8月15日正午からの玉音放送の担当であり,終戦の詔勅の朗読をしていた。あれは,裕仁天皇の玉音盤を流しただけかと思っていた。それだけではわかりにくかったからか,アナウンサーによる朗読や解説などで補っていたのだ。

1967年の夏,中学生の頃に家族でみた「日本のいちばん長い日」の映画ではじめて玉音放送を巡るエピソードを知ることになった。映画では日本放送協会の関係者も奮闘していたが,放送員(アナウンサー)として,加山雄三(1937-)が館野守男小泉博(1926-2015)が和田信堅を演じていた。東宝のゴジラ映画でもおなじみの小泉は元NHKアナウンサーだったのか。



写真:玉音盤の副盤(Wikipediaから引用)


P. S. 和田信賢の没後に生まれた娘が,1981年ごろに日曜美術館の司会をつとめた藤堂かほるである。NHKアーカイブの日曜美術館「私と黒田清輝 白洲正子」はこのブログですでに話題にしていたのに気づいていなかった。

[1]厳禁の広告放送(和田信賢)

2025年2月28日金曜日

幻想の未来からの続き

筒井康隆の1998年の長編小説「」が吉田大八監督によって映画化された。奈良では上映されていないので,京都か大阪かと迷ったが,大阪梅田スカイビルのテアトル梅田(旧シネ・リーブル梅田)に向かった(2/18のこと)。

昔は操車場の下を潜る長い地下道を通ってスカイビルまで行ったものだけれど,うめきた二期区域再開発のために,地下道はなくなってしまいグラングリーンと公園が整備中だ。


最初に買った筒井康隆は,ハヤカワSFシリーズ(銀背)の「東海道戦争」だったか。あるいは「ベトナム観光公社」とか「アルファルファ作戦」だ。その次が日本SFシリーズの「48億の妄想」と「馬の首風雲録」あたりか。その後,角川文庫の「幻想の未来」,「アフリカの爆弾」,「にぎやかな未来」と続いていった。「霊長類南へ」を含め,このころが最も楽しかった時代だ。

SFマガジンに連載されていた「脱走と追跡のサンバ」以降の1970年代の作品にはどうも乗り切れないと思っているうちに,1980年代の「虚人たち」や「虚構船団」へと飛躍していった。もうあまりSFを読まなくなった時代だ。

さて,小説は未読の映画の「敵」のテーマは老人だ。老人男性だ。自分にぴったりのテーマかな。意識がしだいに妄想に侵食されていく70代後半の爺さんだ。日常のリズムを保とうと努力しているが,それが次第に破綻してしまう年代だ。

全編モノクロだったので食事のシーンがもたれずに進んでいく。女性陣が瀧内公美+河合優美+黒沢あすかというすごい配役を揃えてきた。これに,松尾コンビ(松尾諭+松尾貴史)が加わって,主人公のフランスといえば長塚京三をささえていた。おもしろかったのだが,テアトル梅田のホール2の画面が狭かったので自宅のテレビでも十分だったかもしれない。



写真:映画「敵」のポスターから引用

2025年2月27日木曜日

自分史年表

NHKアーカイブスに自分史年表という企画が出現していた。たぶん,放送100年に絡めたものだ。自分の生年(1953など)と,ジャンル(ニュース,番組,大河ドラマ,連続テレビ小説,こども番組,スポーツ)を入れると,自分が何歳の年にどんなトピックがあったかの一覧が表示される。クリックすると短い映像が再生され,そのときどんなことがあったかがわかる。

ニュースを選ぶと,主に事故災害や皇室関係や国内政治などの話題が数編選択されてくる。1964年に東京オリンピックが,1972年に札幌オリンピックが出てこないのは権利関係からなのだろうか。NHKの関心がメインになっているので,必ずしも世界史的な重要事項が網羅されているわけではない。

そこで,Gemini 2.0 Flashに別の観点で尋ねてみた。
Q(koshix):
1950年から1975年までで,毎年1つだけ出来事を選んでください。
それは,日本史的あるいは世界史的に長い歴史の中で重要な意義を持つものとします。

A(Gemini 2.0 Flash):
(回答はのちほど)

Q(koshix):
文化,科学,技術の革新的な出来事の方が長期的な影響が大きい場合があるのではないでしょうか。その観点も含めて,再度,1950-1975年までの各年のトピック一つを選び直してください。それを考慮した上で先ほどと同じものになってもまったく構いません。

A(Gemini 2.0 Flash):
(上記2つ回答を上下に整理して,それらの説明を省いて項目だけ並べたもの)

1950年:朝鮮戦争勃発
    トランジスタラジオの登場
1951年:サンフランシスコ平和条約調印○
    ENIACの後継機UNIVAC Iの商用利用開始
1952年:日本の主権回復
1953年:スターリン死去
    DNAの二重らせん構造の発見
1954年:ビキニ環礁での水爆実験○
    世界初のカラーテレビ放送
1955年:バンドン会議(アジア・アフリカ会議)開催
1956年:日ソ共同宣言調印○
1957年:ソ連、スプートニク1号打ち上げ○
    同上
1958年:東京タワー完成○
    集積回路(IC)の発明
1959年:キューバ革命
    リチウムイオン電池の基礎研究開始
1960年:日本で安保闘争○
    レーザーの発明
1961年:ベルリンの壁建設
    ボストーク1号による世界初の有人宇宙飛行○
1962年:キューバ危機
    通信衛星テルスター1号打ち上げ
1963年:ケネディ大統領暗殺○
    ARPANETの始動1969年運用開始
1964年:東京オリンピック開催
1965年:日韓基本条約締結○
    FORTRANによるプログラムでのCADシステムの実用化
1966年:中国で文化大革命開始
    世界初の人工心臓の臨床応用
1967年:日本で公害対策基本法制定
1968年:プラハの春
    マウスの発明
1969年:アポロ11号月面着陸○
    同上
1970年:大阪万博開催○
1971年:ニクソン・ショック○
1972年:沖縄返還○
    CTスキャンの実用化
1973年:第四次中東戦争とオイルショック○
    遺伝子組み換え技術の確立
1974年:ウォーターゲート事件
1975年:ベトナム戦争終結○


図:自分史年表1953の例(NHKアーカイブスから引用)

どう考えても下段の方が重要ではないか。しかも現代文明の鍵となる重要な情報関連技術のほとんどが1950年から1975年の間に実現されている。ただし,生成AIのことだからハルシネーションが少し混在しているかもしれない。?のついた項目は事実確認ができなかった。上段の○つきの項目がNHKの自分史年表に採用されていたものになる。

2025年2月26日水曜日

初歩からの物理


午前9:00を過ぎたNHKでは国会中継が始まったので,BSの放送大学に切り替えたら,岸根順一郎(1967-)さんの「初歩からの物理」をやっていた。そのテロップに,この授業を共に担当している松井哲男(1953-2025)さんが1月5日にご逝去されたとあってビックリした。

松井さんは自分より1学年上だ。学会や研究会の同世代や少し上の学年というと,京大では国広悌二さんや巽敏隆さん,東大では岡真さんや星紀行さん,名大では松井哲男さんや乙藤岳志さんらをよく見かけて話をきいた。京大と名大のグループは当時流行のパイオン凝縮)の話題に集まっており,東大グループは核力とクォーク模型について研究を進めていた。いずれも原子核理論の中間エネルギーという分野の話だ。自分はベータ崩壊なので中間エネルギーにも届かないのだけれど。

京大グループの話はモデルとしてはわかりやすかったが(それでも怪しかった),名大グループのそれはあまりよく理解できなかった(物性物理の知識不足からか)。1980年の国際会議のときに記念写真をとって,その後海外に旅立つことになっていた松井さんから送られてきた。お礼の返事をすればよいものの,こしぎりならずいつものように不義理のため放置したままだった。よくないです。

松井さんは岐阜高だから水野義之(1953-)さんと同窓か。京大理学部から大学院で名大の安野愈さんの研究室に進む。1980年からアメリカに渡り,スタンフォード,LBL,MITを経て1993年に京大の基研,1999年から東大の駒場,2015年から放送大学でそれぞれ教授を勤めていた。

放送大学のチャンネルで拝見する限りはお元気そうだったのだけれど。合掌。


写真:放送大学「初歩からの物理」の松井さん(放送大学から引用)


P. S. 原子核理論では若くて亡くなる人が多かった。いやどの分野でもそんなものかもしれない。有馬研の星紀行さんも1980年代に亡くなっている。大坪先生がハイパー核での研究を期待していたのに残念だったと話していたかもしれない。京大で原子核の有効相互作用を研究していた安藤和彦さんと坂東弘治さん。RCNPの理論部にいた後輩の深山良徳君と名大から甲南大学にいった西岡英寿さんは1990年代半ば。最近だと大西明さんなどなど。


P. S. 池上彰が気持ち悪いのはマンスプレイニングだからだ。と誰かがYouTubeで話していたが,それはブラタモリにもいえる。大橋巨泉もそうだった。放送大学の物理などの時間もキッチリあてはまるのだ。自分のブログだってそうかも。いかんともしがたい・・・。みんな少しずつ気持ち悪い。


[2]Quest for the Quark-Gluon Plasma(2013, T. Matsui)

2025年2月25日火曜日

電子教科書(4)

電子教科書(3)からの続き

岡口基一さんによると,xAIのGrok 3(x.comで絶賛無料公開中)を使っていろんな物事を盛大にディスるという祭りが流行っているらしい。早速便乗してみた。人間として非情に安易な態度ではある。

Q(koshix):
日本のGIGAスクール及びデジタル教科書政策の問題点を壮大にディスってください。哲学的観点,教育学的観点,社会学的観点から,より理論的で本質的な問題点を指摘したうえで,こき下ろしてください。

A(Grok 3 beta):
日本のGIGAスクール構想とデジタル教科書政策は、表面的な「先進性」を追い求めるあまり、教育の本質を見失った愚策と言わざるを得ません。哲学的、教育学的、社会学的観点からその問題点を解剖し、その無思慮な推進ぶりを盛大にこき下ろしてみましょう。

哲学的観点:存在の意味と技術の隷属
まず哲学的に見れば、GIGAスクール構想は人間の存在意義を技術に矮小化する愚行です。ハイデガーの「技術への問い」を借りれば、現代社会は技術を単なる道具ではなく、世界を支配する枠組み(ゲシュテル)として扱い、その結果、人間が技術の奴隷と化しています。デジタル教科書を押し付けるこの政策は、子供たちに「学びとは何か」「生きるとはどういうことか」を自ら思索する機会を奪い、スクリーンの中の情報に盲従する存在へと貶めます。紙の教科書を手に持つ重み、ページをめくる行為、そこに潜む時間の感覚——これらは単なる「古さ」ではなく、人間が世界と向き合う具体的な経験です。それをデジタルという無機質な虚構に置き換えるのは、学ぶ者の実存を剥奪する暴挙に他なりません。文科省は、技術の進歩を「進化」と勘違いし、人間の本質を切り捨てる亡魂と化しているのです。恥を知れと言いたい。

教育学的観点:学びの深さと記憶の喪失
教育学的に見ても、この政策は子供たちの認知能力と学びの質を破壊する時限爆弾です。研究によれば、紙媒体での読書はデジタル画面に比べて深い理解と長期記憶の定着に優れていることが明らかになっています(例えば、Mangen & Schilhabの研究)。デジタル教科書は、動画や音声といった刺激を詰め込むことで「アクティブ・ラーニング」を装いますが、それは表層的な興奮にすぎず、思索や内省を育む時間を削ぎます。子供が自分で考え、試行錯誤し、知識を血肉化する過程——それこそが教育の核心なのに、GIGAスクールはそれを「効率化」の名の下に切り刻む。教師が熱意を持って語り、子供がノートに書き殴る泥臭い学びを、冷たいタブレット操作に置き換えるなんて、教育の魂を売り渡す行為です。ましてや、視力低下や集中力の散漫化といった健康面のリスクを無視してまで推進するその傲慢さは、子供を人間ではなくデータ処理機とみなす冷血漢そのもの。こんな政策を「未来志向」と呼ぶなら、その未来はディストピア以外の何物でもありません。

社会学的観点:格差の増幅と共同体の崩壊
社会学的視点からは、GIGAスクールがもたらす格差の拡大と社会共同体の解体が深刻です。端末の整備や通信環境は一見「平等」を装いますが、現実は富裕層と貧困層の間でデジタルリテラシーの差が広がるばかり。家庭でのサポートが乏しい子供は、タブレットの使い方すらままならず、授業についていけないという新たな「教育貧困」が生まれています。文科省は「1人1台」を錦の御旗に掲げますが、それが地方の過疎校や低所得家庭でどう機能するのか、実態を無視した絵空事でしかない。さらに、学校という共同体の場がデジタル化で希薄化し、教師と生徒、生徒同士の「顔の見える関係」が失われつつあります。紙の教科書を手に持つ子供たちが教室で議論し、互いに学び合う風景は、単なるノスタルジーではなく、社会を結ぶ絆の基盤です。それをデジタルという孤独な箱に閉じ込める政策は、子供たちを孤立した消費者へと変貌させ、協働の精神を根絶やしにする亡国への第一歩。こんなものを「教育改革」と呼ぶ神経が理解不能です。

総括:愚策の極み、文科省の自滅劇
結局、GIGAスクールとデジタル教科書政策は、哲学的には人間の存在を空洞化し、教育学的には学びの本質を殺し、社会学的には格差と孤立を助長する三重の罪を犯しています。文科省は「国際競争力」や「ICT活用」を振りかざしますが、それは子供の未来を顧みない官僚の自己満足にすぎません。スウェーデンのような先進国がデジタルからアナログへ回帰する中、日本だけが時代遅れの「デジタル信仰」に突き進む姿は、滑稽を通り越して悲劇的です。こんな壮大な茶番を「構想」と銘打つその厚顔無恥さ、子供を実験台にする無責任さは、もはや救いようがない。いい加減目を覚まして、技術に溺れたこの愚策を葬り去るべきです。文科省よ、歴史に汚点を刻む前に悔い改めなさい!

 


図:上記結論を入れて生成させたイメージ(DALL-E3)

DALL-E3の知識は,1984年止まりのようだ。現実はもっと複雑でハッピーなクモの巣の網の中に絡められている。シンギュラリティ(最近はAGIとASIで置き換えられつつある)まであと何年。


2025年2月24日月曜日

電子教科書(3)

電子教科書(2)からの続き

ちょうど15年前の今ごろに,どうして電子教科書の実現が難しいのかを考えていた。それをChatGPT 4oに評価してもらう。まあ発問者のレベルが高くないので無難でそれらしい答えが返ってきてしまった。
Q(koshix):
15年前に考えた以下のハードルについて,現在の日本の状況を分析してみてください。

電子教科書10のハードル(2010.02.18 http://twilog.org/koshix)

1.学校教育は社会的な世代間の情報文化伝達の営みであり、それ自身を含めた社会システム維持を志向するという本質的に保守的な側面を持っている。

2.導入における社会的な総費用を考えた際の効用が正にならない。あるいはそれが既得権益集団の利益にならない。

3.近年の社会変動が大きすぎて教育行政や教員層が疲弊しており、この方向(ICT)での現状変革を望むベクトルが出てこない。

4.新しいメディアを従来の教育方法(そう簡単には変わらない)に継ぎ足すことが、本当に子どもの学びのプラスになるのか疑問である。

5.授業中の情報チャンネルが拡大拡散してしまうことで教師が教室の子ども達を十分に制御できなくなる。

6.印刷メディアは最も歴史が長く蓄積も大きいため、その電子化に対するしきいは他のメディアの比ではない。

7.各種団体企業組織の利害対立からユーザインターフェースやユーザビリティーについての包括的な議論が困難である。

8.システムの安定性や堅牢性、電力・情報供給ルート及びその保守維持など実運用に関する大きな課題がある。

9.電子教科書=電子ノートに書き込まれる膨大な個人情報の管理の問題や日本における著作権の壁などから利用に大きな制約が生じてしまう。

10.あなたにとっても最も大きな障壁は何ですか?


A(ChatGPT 4o):
15年前(2010年)に指摘された「電子教科書10のハードル」について、現在(2025年)の日本の状況を踏まえて、それぞれの項目がどの程度解消・変化しているかを分析してみます。

1.学校教育は本質的に保守的な側面を持つ
現状分析: この点は依然として大きな課題です。
特に日本の教育現場は、中央集権的な教育行政の影響が強く、新しいテクノロジーの導入には慎重な姿勢が続いています。ただし、2020年以降のGIGAスクール構想によって、小中学生向けの1人1台端末の普及が進み、デジタル教材の活用は増えています。しかし、授業の基本形態(板書・教科書ベース)や指導方法の根幹は大きく変わっていません。

2.総費用の効用が正にならない/既得権益集団の影響
現状分析: 導入コストの問題は依然として大きく、全国規模での電子教科書の完全導入は進んでいません。一方で、GIGAスクール構想により、端末配布やインフラ整備の費用は国が一部負担する形で進みました。しかし、教科書出版社や印刷業界との利害関係は根強く、紙の教科書と電子教科書の「併用」という形にとどまっています。

3.教育行政や教員層の疲弊
現状分析: この課題はさらに深刻化しています。
GIGAスクール構想による端末配布は行われたものの、教員のITリテラシー向上やデジタル教材の活用指導に関する支援は不十分です。業務過多の状況が続いており、「ICT活用の負担増」を懸念する教員も多く、積極的な変革の動きにはなっていません。

4.新メディアの導入が本当に学びにプラスになるのか?
現状分析: この点に関しては、学習効果の検証が進んでいます。
研究によると、電子教科書の活用は「個別最適化学習」や「アクティブラーニング」には有効である一方で、紙の教科書よりも記憶の定着が劣る場合があることも指摘されています。そのため、完全なデジタル化ではなく、紙と電子のハイブリッド型が主流になりつつあります。

5.教室での制御困難の問題
現状分析: この問題も未解決です。
特に、小中学校では「授業中の端末利用ルールの統一」や「ICT活用に慣れていない教員の対応能力不足」により、端末を効果的に活用できないケースが多く見られます。一方で、MDM(モバイルデバイス管理)技術の発展により、使用制限や一括管理が可能になってきましたが、現場の運用が追いついていません。

6.印刷メディアの蓄積と電子化のハードル
現状分析: この問題は徐々に緩和されています。
デジタル教科書は一部の科目(英語・数学など)で普及しつつありますが、紙媒体の教科書の完全電子化は進んでいません。その背景には、著作権や教育現場の慣習の問題があるほか、「紙の方が学習しやすい」という意見も根強くあります。

7.ユーザインターフェース・ユーザビリティの議論困難
現状分析: この問題はやや改善しています。
近年の電子教科書は、学習履歴の管理やアクティブラーニング機能の充実など、ユーザビリティの向上が進んでいます。ただし、異なる企業が開発するシステム間の互換性や、端末ごとの操作性の違いなど、統一的なUI/UXの確立には至っていません。

8.システムの安定性・電力供給・保守の課題
現状分析: 技術的なインフラ整備は進んでおり、Wi-Fi環境やクラウドベースの学習管理システム(LMS)の普及も進みました。しかし、電力供給や端末の維持管理(特に故障・更新の問題)は依然として課題です。また、災害時の対応(停電時に使えない、通信が途絶えた場合の代替手段)についても、十分な解決策は確立されていません。

9.個人情報・著作権の問題
現状分析: 個人情報保護の観点から、電子教科書のログデータ管理や、生成AI活用による学習支援の可否が議論されています。
また、教科書のデジタル化においては、出版社側の著作権管理の厳格化が課題となり、自由な二次利用やカスタマイズが制限されている現状があります。特に、日本の著作権法は教育分野でのデジタル活用に関してまだ柔軟性が低く、欧米に比べて遅れています。

10.現在の最大の障壁
現在の最大の障壁を挙げるとすれば、以下の3つが考えられます。

(1) 「電子教科書=紙の代替」ではなく、教育の質をどう向上させるかの議論が不足
・電子化の目的が明確でないまま、ハードウェア導入が進んでしまい、効果的な活用ができていない。
(2) 教員のITリテラシーと運用負担
・ICT活用を前提としたカリキュラム改革や、教員の研修体制が不十分。
(3) コストと維持管理の問題
・端末の更新費用や、デジタルコンテンツの継続的なライセンス料が自治体にとって大きな負担。

結論
15年前に指摘されたハードルの多くは、2025年現在でも完全には解決されていません。ただし、一部の技術的課題(インフラ整備・管理技術の向上)は改善されました。今後の鍵は、「電子教科書をどう活用するか?」という教育の本質的な議論と、「教員の負担軽減をどう実現するか?」という制度設計の部分にあると考えられます。

2025年2月23日日曜日

電子教科書(2)

電子教科書(1)からの続き
Q(koshix):
15年前に,電子教科書(デジタル教科書)についてのQ&Aを考えました。いよいよデジタル教科書が制度として日本の教育現場に導入されはじめようとしています。15年前のAnswer部分(太字)は,現在文部科学省で導入が計画されているものと一致しているでしょうか。A1〜A21に対して,概ね一致ならば○,部分的一致なら△,概ね異なる場合は×として相違点を示してください。

15年前に考えていたことは以下のとおりである。ChatGPT 4oによる評価は,それぞれのQAの→以下の部分と,相違点として示されている。まあまあそんなものかもしれない。

電子教科書20の質問(2010.02.14 http://twilog.org/koshix)

導入の意義と目的
Q1:電子教科書とは何ですか
 「デジタル化された教科書=ノート」を学校の授業でほぼ常時使うというものです。紙の教科書やノートと鉛筆の代替物として考えています。
→ △(部分的一致)
相違点:
・2025年度からのデジタル教科書は、紙の教科書を完全に代替するものではなく、「紙の教科書を基本」としながら「一部補助的に使用」するものとして導入される。
・「ノート機能」については、標準的な機能としては導入されず、タブレット端末のアプリ等で補完される形となる。


Q2:なぜ電子教科書が必要なのですか
  社会活動の総体がデジタルベースに移行しつつあるるからです。電子本・電子メディアが多数派になる段階では,学校だけが紙の教科書を使う必然性がありません。
→ ○(概ね一致)
相違点:
・社会のデジタル化を背景にした点は一致。
・文部科学省の説明では「特別支援教育への活用」や「学習データの活用」なども強調されている。


Q3:以前も同じような儲け話がありましたが
1985パーソナルコンピュータ,1995インターネット,(2005電子黒板),と同様の話は繰り返されています。2015電子教科書も似たようなものですが,3度目の掃除機か。
→ △(部分的一致)
相違点:
・これまでの技術導入(電子黒板など)と同様の議論がある点は一致。
・ただし、2025年度導入は「GIGAスクール構想」に基づくもので、文科省はより長期的な方針としている点が異なる。


機器整備の問題
Q4:電子教科書を使うのは誰ですか
 小学校3年生からの児童および学校教員です。中等・高等教育でも利用可,システムは一般にも販売されて購入可能です。
→ △(部分的一致)
相違点:
・文科省は、小学校5年生から段階的に導入するとしている。
・教員の利用については明確に制度化されておらず、学校ごとの裁量に委ねられる部分が多い。


Q5:本当に無償配布されるのですか
いいえ。子ども手当ては1人15年間で総額500万円に達するので,それで5年に1度各自購入してもらいます。(小3と中2:機器5年保証含めて1セット5万円,壊したら自分で買い替える)
→ ×(概ね異なる)
相違点:
・文科省は、デジタル教科書を紙の教科書と併用する形で提供し、原則「無償配布」。
・端末はGIGAスクール構想に基づき整備されているが、破損時の補償などは自治体ごとに異なる。


Q6:教員はどうなるのでしょうか
 私学を含めて5年に1度配布されます。5万円/台×100万台÷5年=100億円/年,新機種配布時に教員研修を12時間(3時間×4回)行います(無料)。機器の使い方だけではなく,免許更新講習の代替のだきあわせみたいなものです。
→ △(部分的一致)
相違点:
・教員向けの端末は、GIGAスクール構想で配布済み。
・研修については、各自治体ごとの対応になり、全国統一的な研修は予定されていない。


仕様の問題
Q7:システムの仕様はどうなりますか
 iPad/Android/MS tabletなどを包括する想定で(ありえないか ^_^;;),電子教科書=ノートの基本ソフト部分を別途共通仕様として定めます。マルチタッチ,Wifi/GPS及び各種物理センサーは必須。バッテリは9時間。毎日自宅で充電してね!
→ △(部分的一致)
相違点:
・現在のデジタル教科書は、iPad/Windowsタブレットが主流だが、OSごとに仕様が統一されているわけではない。
・物理センサーの活用は標準ではない。


Q8:教科書コンテンツは誰がつくりますか
 教科書会社が作成しepubフォーマットで電子教科書=ノートの基本ソフトの上にのせます。この部分は従来の教科書無償配布と同様の仕組みで実現します。すなわち教科書コンテンツ費用は税金でまかなわれます(高校もね)。
→ ○(概ね一致)
相違点:
・教科書会社が作成する点は一致。
・EPUBフォーマットとは限らず、各社独自フォーマットも利用される。


Q9:教科書以外のソフトやコンテンツは載りますか
 電子教科書=ノートの基本ソフト仕様は公開されているので教員の自作教材や他の市販教材もそのまま載せられます。アプリケーションはHTML5+javascriptの範囲で実現してね。
→ △(部分的一致)
相違点:
・教員が教材を作成して利用することは可能だが、標準仕様としてHTML5+JavaScriptの枠組みが設けられているわけではない。


Q10:システムのバージョンアップはどうなりますか
   教室の無線LANネットワーク経由で必要な時に負荷分散しながら実行します。教科書会社から毎年の差分データもくるかも。
→ ○(概ね一致)
相違点:
・基本的にはクラウド経由での更新が行われる。


Q11:ノート部分のデータはどこに保存されますか
 教科書の横の余白のノーレイヤーに書き込みますが,データは端末ローカルに保存されます。バックアップはTimeMachineみたいに教室単位で保存され,複製・移動復元可能です。つまり,センターに集約しません。
→ ×(概ね異なる)
相違点:
・現在のデジタル教科書はクラウド保存が基本(自治体ごとに異なる)。
・端末ローカル保存のみ、という方式ではない。


システム運用の問題
Q12:小学校1年生から使うのですか
 9歳未満は禁止^_^;;;です。小学校3年から使ってね。1・2年生は,これまでどおり手を使ってください。なお,教員用やグループ活動には小学校1年から使えます。
→ ×(概ね異なる)
相違点:
・2025年の導入は小5から段階的に進められる。


Q13:家でも使えるのですか
 ランドセルやカバンにいれて毎日持ち運びます(1kg以下)。学校においておくと,管理がたいへんですからね。家でもそのまま使えますので,宿題もでます。
→ ○(概ね一致)
相違点:
・端末は持ち帰り可能な自治体もあるが、学校管理のもとで運用されることが多い。


Q14:壊れたらどうしますか
 教室や学校に予備機があります。データは教室のサーバに残っていますので,必要部分だけ復元してそのまま使えます。保証に入っていますので,学校に届け出ると交換機種が宅配されます。
→ △(部分的一致)
相違点:
・一部の自治体では予備機の配備があるが、全国的に統一されていない。


インターフェースの問題
Q15:ノートを指で入力するんじゃないでしょうね
 指でもスタイラスでも使えます。細かい入力作業が必要な場合は筆箱?からスタイラスを取り出して使ってくださいね(ここ一番弱点・致命的かも)。
→ ○(概ね一致)
相違点:
・指入力・スタイラス入力の両方に対応している。


Q16:音声入力,文字認識,翻訳はできますか
 まあ,iPhone程度には実現可能です。カメラ・ビデオ撮影も(ここが微妙),音声記録も可能で,楽器としても使えます。理科実験の測定器としてもね。
→ ○(概ね一致)
相違点:
・音声入力、OCR機能、翻訳機能は一部端末で可能。


Q17:教科ごとに別のソフトの使い方を覚えるのですか
 基本操作は説明書なしで使えます。操作も統一され,超高速ブラウジングと柔軟なタッチ入力が可能です。標準状態では非常にシンプルな造りになっています。
→ △(部分的一致)
相違点:
・各教科書会社のUIが統一されているわけではなく、一定の操作統一はあるが完全ではない。


教師の指導の問題
Q18:教員が使いこなせるでしょうか
 授業で教科書を使ったりノートを取ったりする部分がおきかわるだけで操作は単純です。教員がアプリケーションの使い方を覚えなければならないということはありません。
→ △(部分的一致)
相違点:
・研修の実施は自治体ごとに異なるため、必ずしも十分とはいえない。


Q19:プリントの配布や宿題のチェックはどうなりますか
 教室で全員にオンライン配布と回収できます。従来通り赤ペンでチェックしながら作業してそのまま返却できます(ほんとかな,この部分重要)。
→ ○(概ね一致)
相違点:
・クラウド上で課題配布・提出が可能な環境が整いつつある。


データ管理の問題
Q20:古い教科書やノートはどうなりますか
 えーっと,すべて持ち歩けます。わからなくなったら古い教科書やノートを見直してください。
→ △(部分的一致)
相違点:
・教科書の保存期間やアクセス制限がある可能性がある。


Q21:個人情報とか著作権とかどうなりますか
 すぐにはどうにもなりません。社会の方が変わらないことには。
→ △(部分的一致)
相違点:
・文科省は個人情報・著作権の管理についてガイドラインを定めている。

#なんで20の質問なのに21あるんだろうか?


図:電子教科書のイメージ(DALL-E3によるもの)


2025年2月22日土曜日

電子教科書(1)

twitter13周年からの続き

学習者用のデジタル教科書はすでに,教科書代替教材としてすでに小中学校の英語で100%,算数数学で55%の学校に導入されている。

さらに,次期学習指導要領が実施される2030年度から,デジタル教科書が従来の検定教科書と同等のものとして導入される方向で議論が進んでいる。どういう仕組みでどんなものになるのかがまだよく理解できていない。それに関する自分の過去の記憶。


下図は自分のTwitter投稿数/月の統計である。15年前の2010年2月から3月にかけて一つのピークがあり一日平均7-8件投稿していた。このときTwitterで電子教科書=デジタル教科書の話題盛り上がっていたからだ。このときの論客が,GLOCOMの豊福晋平さんや新潟の片山敏郎さんだ。

インターネットの商用利用がスタートした1990年代の中頃から,研究室の学生さんたちの卒業研究でデジタル教材を作成し始めていた。自分が考えていた電子教科書というのは,小中高校生が一人一台の端末を持って,そこに教科書・教材コンテンツを載せるというものだ。前者の部分はGIGAスクール構想として2019年からスタートしている。後者のデジタル教科書部分の検定教科書化が2030年からというわけだ。

当時,デジタル教科書とよぶか電子教科書とよぶかで議論があったが,ハードウェアとソフトウェアを一体化して考えた自分は後者だった。ところが,多数派はデジタル教科書を支持し,その後,日本デジタル教科書学会デジタル教科書教材協議会(現在の超教育協会)などが設立された。


図:Twilogの統計画面(2008.8-2025.2)

2010年2月前夜の自分のTwitterはこんな調子だった。
2010年01月11日(月)
SF第7弾:弐千拾五年電子教科書日本全国一律配布電子石板芯端末仕様策定委報告/十歳以上教室常置九時間電源無線歪杯青葉有機燐光表示拾寸多指接触両面撮像光石投射立体集発音超音波探信全球位置磁場三軸加速度赤外線放射温度/音声画像認識栗可応答電子紙挟辞書事典図書蔵名画音盤芸能映画漫画満載
そして議論の結果,自分の中の電子教科書は
電子教科書5つの原則(2010.02.26 http://twilog.org/koshix)

1.子どもが一人一台持って学校の授業や校外の学びで使うもの
2.教科書や他の教材をマルチメディア拡張して視聴し操作するもの
3.ワークシートやノートのように記録しながら学びを進めるもの
4.学習の過程を教師や子どもがネットワークで共有可能であるもの
5.誰にとっても自然でシンプルで使いやすくてワクワクするもの
としてまとめられた。



2025年2月21日金曜日

こっき(2)

こっき(1)からの続き

国旗アプリを改良しようと考えた。1ステップ前の国旗に戻れるようにするものだ。最初は,左下の1/4×1/4領域に,前回表示した国旗の小さなイメージを表示させてそこをクリックすると前の表示に戻るようにするものだ。国名は通し番号をつけて右下に移動した。

ChatGPT o3-mini-highにお願いしたところ,何度かのやりとりの後に目的のものはできたにはできたが,国旗が2つも表示されているのは子どもにはわかりにくそうだ。やり直し。

Q(koshix):
国旗表示アプリ
以下のウェブアプリに修正を加えてください。
(1) 各国旗には次の3つの番号を持ちます。(a) アルファベット順の通し番号,(b) アイウエオ順の通し番号,(c) アプリ起動後にその国旗が最初に表示されたときの通し番号
(2) カタカナの国名表示部分を,通し番号:カタカナ国名 の形に修正してください。このときの通し番号は,表示モードに対応したものとします。
(3) 右下に半透明グレーのボタン領域を設定してください。その機能は後で説明します。まずは,(1) (2) を実装した全体コードをお願いします。
なお,修正前のコードは以下のとおりです。

Q(koshix):
ボタン領域を「もどる」というなまえにして,ここをクリックすると選択された領域で表示されている国旗より通し番号がワンステップ小さいものに戻って表示するようにしてください。

これで目的のものはできた。361行のウェブアプリである。やはりどういうロジックにするかを想定しながらプロンプトを考えるのが重要だ。前回は単なる仕様だけで依頼したので,うまく機能しなかったので結構モチャついた371行



図:kokki.htmlのiPhoneでの実行画面

以下が,修正版のkokki.htmlのソースコードだ。108行目あたりのkazaha.jpgを自分のイメージファイルに変えて,kokki.htmlと同じフォルダに設置して,ブラウザで閲覧すればOKだ。

<!DOCTYPE html>
<html lang="ja">
<head>
  <meta charset="UTF-8">
  <meta name="viewport" content="width=device-width, initial-scale=1.0">
  <title>かざは の こっき</title>
  <style>
    html, body {
      margin: 0;
      padding: 0;
      background-color: #f0f0f0;
      height: 100%;
      font-family: sans-serif;
    }
    /* トップページ(スタート前) */
    #top-page {
      text-align: center;
      padding: 20px;
    }
    #top-page h1 {
      font-size: 2em;
      margin-bottom: 20px;
    }
    #top-page img {
      width: 437px;
      height: 377px;
      margin-bottom: 20px;
    }
    /* スタートボタン */
    #start-button {
      padding: 12px 24px;
      font-size: 1.5em;
      border: none;
      border-radius: 8px;
      background-color: #007aff;
      color: #fff;
      cursor: pointer;
    }
    /* 国旗表示ボックス */
    #flag-container {
      width: 90vw;
      height: 70vh;
      margin: 5vh auto;
      position: relative;
      background-color: #000;
      border: 5px solid #fff;
      box-shadow: 0 4px 8px rgba(0,0,0,0.5);
      cursor: pointer;
      display: none; /* スタート前は非表示 */
      touch-action: manipulation;
    }
    #flag-container img {
      width: 100%;
      height: 100%;
      object-fit: contain;
      opacity: 0;
      transition: opacity 0.8s ease-in-out;
      position: absolute;
      top: 0;
      left: 0;
    }
    #country-name {
      position: absolute;
      bottom: 10px;
      left: 10px;
      background: rgba(255, 255, 255, 0.7);
      padding: 4px 8px;
      border-radius: 8px;
      font-size: 1.2em;
      z-index: 10;
    }
    /* 設定パネル */
    #control-panel {
      position: absolute;
      top: 10px;
      left: 50%;
      transform: translateX(-50%);
      background: rgba(255,255,255,0.9);
      padding: 8px;
      border-radius: 8px;
      z-index: 10;
      display: flex;
      gap: 10px;
      align-items: center;
    }
    #control-panel select {
      font-size: 1em;
      padding: 4px;
    }
    /* 右下の半透明グレーのボタン領域(もどるボタン) */
    #button-area {
      position: absolute;
      bottom: 10px;
      right: 10px;
      background: rgba(128, 128, 128, 0.5);
      padding: 10px;
      border-radius: 8px;
      z-index: 10;
      cursor: pointer;
      user-select: none;
    }
  </style>
</head>
<body>
  <!-- トップページ(初回表示) -->
  <div id="top-page">
    <h1>かざは の こっき</h1>
    <img src="kazaha.jpg" alt="かざはの顔">
    <br>
    <button id="start-button">スタート</button>
  </div>
  
  <!-- 国旗表示エリア -->
  <div id="flag-container">
    <img id="flag-image" src="" alt="国旗">
    <div id="country-name"></div>
    <div id="control-panel">
      <div>
        <label for="order-select">表示順序:</label>
        <select id="order-select">
          <option value="alphabetical">アルファベット順</option>
          <option value="japanese">アイウエオ順</option>
          <option value="random">ランダム</option>
        </select>
      </div>
      <div>
        <label for="region-select">表示領域:</label>
        <select id="region-select">
          <option value="all">全世界</option>
          <option value="eastAsiaOceania">東アジア〜オセアニア</option>
          <option value="southWestAsia">南〜西アジア</option>
          <option value="europe">ヨーロッパ</option>
          <option value="africa">アフリカ大陸</option>
          <option value="americas">アメリカ大陸</option>
        </select>
      </div>
    </div>
    <!-- 右下の「もどる」ボタン領域 -->
    <div id="button-area">もどる</div>
  </div>

  <!-- Kuroshiro と Kuromoji の読み込み -->
  <script src="https://unpkg.com/kuroshiro@1.1.3/dist/kuroshiro.min.js"></script>
  <script src="https://unpkg.com/kuroshiro-analyzer-kuromoji@1.1.0/dist/kuroshiro-analyzer-kuromoji.min.js"></script>
  
  <script>
    // グローバル変数
    let allCountries = [];
    let countries = [];
    let currentIndex = 0;
    let kuroshiro;
    let randomDisplayCounter = 1; // ランダムモードで初回表示されたときの番号用
    
    // 初期化処理全体をまとめる
    async function initializeApp() {
      // トップページを非表示、国旗エリアを表示
      document.getElementById("top-page").style.display = "none";
      document.getElementById("flag-container").style.display = "block";
      
      // Kuroshiro の初期化
      try {
        kuroshiro = new Kuroshiro();
        await kuroshiro.init(new KuroshiroAnalyzerKuromoji({
          dictPath: 'https://unpkg.com/kuromoji@0.1.2/dict/'
        }));
        console.log("Kuroshiro initialized");
      } catch (error) {
        console.error("Kuroshiro initialization failed:", error);
      }
      
      // 国データの取得
      await fetchCountries();
      // イベントリスナーの設定
      setupEventListeners();
    }
    
    // 国データ取得
    async function fetchCountries() {
      try {
        const response = await fetch("https://restcountries.com/v3.1/all");
        const data = await response.json();
        allCountries = await Promise.all(data.map(async country => {
          const flagUrl = country.flags && country.flags.png ? country.flags.png : "";
          const nameEn = country.name && country.name.common ? country.name.common : "";
          const jpName = (country.translations &&
                          country.translations.jpn &&
                          country.translations.jpn.common) ? country.translations.jpn.common : nameEn;
          let nameKatakana = "";
          try {
            nameKatakana = await kuroshiro.convert(jpName, { to: "katakana", mode: "normal" });
          } catch (err) {
            console.error("Conversion error:", err);
            nameKatakana = jpName;
          }
          return {
            flag: flagUrl,
            name_en: nameEn,
            name_katakana: nameKatakana,
            region: country.region || "",
            subregion: country.subregion || ""
          };
        }));
        // 不要なデータの除外
        allCountries = allCountries.filter(c => c.flag && c.name_en && c.name_katakana);
        
        // 各国旗に対してグローバルな番号を付与
        // (a) アルファベット順の通し番号
        let sortedAlpha = [...allCountries].sort((a, b) => a.name_en.localeCompare(b.name_en));
        sortedAlpha.forEach((country, index) => {
          country.numAlpha = index + 1;
        });
        // (b) アイウエオ順(カタカナ順)の通し番号
        let sortedKatakana = [...allCountries].sort((a, b) => a.name_katakana.localeCompare(b.name_katakana, "ja"));
        sortedKatakana.forEach((country, index) => {
          country.numKatakana = index + 1;
        });
        // (c) ランダムモード用(初回表示時に設定)の番号は未設定状態に
        allCountries.forEach(country => {
          country.numDisplay = null;
        });
        
        // 初期のフィルタ・ソート処理
        filterCountries();
        sortCountries();
        displayCountry();
      } catch (error) {
        console.error("Error fetching countries:", error);
      }
    }
    
    // 表示領域でフィルタ
    function filterCountries() {
      const regionValue = document.getElementById("region-select").value;
      if (regionValue === "all") {
        countries = allCountries.slice();
      } else if (regionValue === "eastAsiaOceania") {
        countries = allCountries.filter(c => 
          (c.region === "Oceania") ||
          (c.region === "Asia" && (c.subregion === "Eastern Asia" || c.subregion === "South-Eastern Asia"))
        );
      } else if (regionValue === "southWestAsia") {
        countries = allCountries.filter(c => 
          c.region === "Asia" && !(c.subregion === "Eastern Asia" || c.subregion === "South-Eastern Asia")
        );
      } else if (regionValue === "europe") {
        countries = allCountries.filter(c => c.region === "Europe");
      } else if (regionValue === "africa") {
        countries = allCountries.filter(c => c.region === "Africa");
      } else if (regionValue === "americas") {
        countries = allCountries.filter(c => c.region === "Americas");
      }
      currentIndex = 0;
    }
    
    // 表示順序でソート
    function sortCountries() {
      const order = document.getElementById("order-select").value;
      if (order === "alphabetical") {
        countries.sort((a, b) => a.name_en.localeCompare(b.name_en));
      } else if (order === "japanese") {
        countries.sort((a, b) => a.name_katakana.localeCompare(b.name_katakana, "ja"));
      } else if (order === "random") {
        // ランダムモードでは Fisher-Yates シャッフルを実施
        for (let i = countries.length - 1; i > 0; i--) {
          const j = Math.floor(Math.random() * (i + 1));
          [countries[i], countries[j]] = [countries[j], countries[i]];
        }
      }
      currentIndex = 0;
    }
    
    // 現在の国を表示
    function displayCountry() {
      if (countries.length === 0) {
        console.error("No countries available for the selected region.");
        document.getElementById("country-name").textContent = "データなし";
        document.getElementById("flag-image").src = "";
        return;
      }
      const currentCountry = countries[currentIndex];
      
      // 表示モードに応じた番号を取得
      const orderMode = document.getElementById("order-select").value;
      let displayNumber;
      if (orderMode === "alphabetical") {
        displayNumber = currentCountry.numAlpha;
      } else if (orderMode === "japanese") {
        displayNumber = currentCountry.numKatakana;
      } else if (orderMode === "random") {
        if (!currentCountry.numDisplay) {  // 初回表示時のみ番号を付与
          currentCountry.numDisplay = randomDisplayCounter++;
        }
        displayNumber = currentCountry.numDisplay;
      }
      
      // 国旗画像の切替演出
      const flagImage = document.getElementById("flag-image");
      flagImage.style.opacity = 0;
      setTimeout(() => {
        flagImage.src = currentCountry.flag;
        // 「通し番号:カタカナ国名」の形式で表示
        document.getElementById("country-name").textContent = displayNumber + ":" + currentCountry.name_katakana;
        flagImage.onload = () => {
          flagImage.style.opacity = 1;
        };
      }, 800);
    }
    
    // イベントリスナーの設定(タッチ対応の場合は touchend を優先)
    function setupEventListeners() {
      const flagContainer = document.getElementById("flag-container");
      
      function nextCountry() {
        currentIndex = (currentIndex + 1) % countries.length;
        displayCountry();
      }
      
      // タッチまたはクリックで次の国を表示
      if ('ontouchstart' in window || navigator.maxTouchPoints) {
        flagContainer.addEventListener("touchend", function(e) {
          nextCountry();
        }, false);
      } else {
        flagContainer.addEventListener("click", function(e) {
          nextCountry();
        }, false);
      }
      
      // 表示順序・表示領域の変更時の再ソート/再表示
      document.getElementById("order-select").addEventListener("change", () => {
        sortCountries();
        displayCountry();
      });
      document.getElementById("region-select").addEventListener("change", () => {
        filterCountries();
        sortCountries();
        displayCountry();
      });
      
      // 「もどる」ボタンのイベント設定
      const buttonArea = document.getElementById("button-area");
      
      // タッチイベントに対応
      buttonArea.addEventListener("touchend", function(e) {
        e.stopPropagation();
        e.preventDefault();  // タッチ操作時のデフォルト動作を防止
        if (countries.length > 0) {
          currentIndex = (currentIndex - 1 + countries.length) % countries.length;
          displayCountry();
        }
      }, false);
      
      // PCなど、タッチ以外のデバイス用のクリックイベントも残す
      buttonArea.addEventListener("click", function(e) {
        e.stopPropagation();
        if (countries.length > 0) {
          currentIndex = (currentIndex - 1 + countries.length) % countries.length;
          displayCountry();
        }
      }, false);
    }
    
    // スタートボタンのイベント設定(pointerup イベントを使用)
    document.getElementById("start-button").addEventListener("pointerup", () => {
      initializeApp();
    });
  </script>
</body>
</html>