2025年3月2日日曜日

オイラーの定理

フェルマーの小定理オイラーの関数からの続き

大人を過ぎてから初めて目にした概念はなかなか覚えられない。フェルマーの小定理がそれだ。鈴木貫太郎の大学入試数学チャンネルもなくなってしまったので,なおさらだ。

フェルマーの小定理は,素数を$p$とし,$p$とたがいに素な整数を $a$(gcd($a, p$)=1)として,$a^{p-1} \equiv 1 \quad ({\rm mod}\ p)$ 。あれれ,gcd($a, p$)=1 をはずせば,$a^p \equiv a \quad ({\rm mod}\ p)$)でもいいのか。

証明は次のとおり。
整数 $a, x$,素数$p$とする。二項定理で$(x+1)^p$を展開すると,
$(x+1)^p = x^p + C_1^p x^{p-1} 1^1 + C_2^p x^{p-2} 1^2 + \cdots + C_{p-1}^p x^1 1^{p-1} + 1^p$
ところで,上式の$C_k^{p-k}=\dfrac{p!}{k! (p-k)!}$であり,分母の$k<p, \ p-k < p\ $には分子の$\ p \ $を割り切る数は含まれていない。したがって,$(x+1)^p \equiv x^p+1 \quad ({\rm mod} \ p) $ である。

これから,$a^p \equiv (1+(a-1))^p \equiv 1 + (a-1)^p \quad ({\rm mod}\ p ) $
$a^p \equiv 1+ (a-1)^p \equiv 1+ 1 + (a-2)^p \equiv \cdots \equiv  a + 0^p  \quad ({\rm mod} \ p ) $
$a$と$p$は互いに素なので,両辺を$a$で割って,$a^{p-1} \equiv 1 \quad ({\rm mod} \ p) $

オイラーの定理は,フェルマーの小定理のべきの素数部分を拡張したものに相当する。
正の整数$m$に対して,集合$\ r(m) = \{a\ |\ 1 \le a \le m, \ {\rm gcd} (a, m) = 1\} $ を考え,その要素数をオイラー数 $\varphi(m)= \#r(m)$  とよんでいる。そこで,$r(m) = \{r_1, r_2, \cdots, r_{\varphi(m)} \}$。なお,$p$に対して,$\varphi(p) = p -1$。

集合 $r(m)$のすべての要素に$a$をかけて,${\rm mod}\  m$ をとれば,その集合 $ar(m) = \{ a r_1, a r_2, \cdots, a r_{\varphi(m)} \}$ は $r(m) = \{r_1, r_2, \cdots, r_{\varphi(m)} \}$と等しくなる。そこで,これらの要素の積を考えると,$ a^{\varphi(m)} \Pi_{i=1}^{\varphi(m)} r_i \equiv \Pi_{i=1}^{\varphi(m)} r_i \quad ({\rm mod }\ m )$ なので,
オイラーの定理,$a^{\varphi(m)} \equiv 1 \quad  ({\rm mod }\ m )\ $ が得られる。

(注)なお,$ar(m) = \{ a r_1, a r_2, \cdots, a r_{\varphi(m)} \} \quad ({\mod \ m }) \equiv \{ r'_1, r'_2, \cdots, r'_{\varphi(m)} \} \ $の要素$\ r'_i \ $はすべて,$a, m$と互いに素であり,同じものは含まれない。

(1) $p, q$を素数として,$m=p q\ $である場合,$\varphi(m) = \varphi(p) \varphi(q)$ となる。
$\varphi(m)\ $は,$\{1,2, \cdots, m \}$から,$p$の倍数と$q$の倍数を除いたものになるので,それぞれ,$q$個,$p$個あるが,$p q$は両方で重なっている。そこで,$p, q$の倍数でないものの個数は,$ \varphi(m) = pq -p - q +1 = (p-1) (q-1) = \varphi(p) \varphi(q) $ となる。3個以上の場合も同様。

(2) $p$ を素数,$k$を正整数として,$m = p^k\ $である場合,$\varphi(m) = p^k - p^{k-1} \ $ となる。これは,$\{ 1, 2, \cdots , p^k \} $ の中で,$ \{ 1 p, 2 p, \cdots , p^{k-1} p\}$ は$m$と互いに素でないので,その個数を引けばよいからだ。

(3) これらを組み合わせると,$m = p_1^{k_1} p_2^{k_2} \cdots p_n^{k_n}\ $ として,$\varphi(m) = m (1-1/p_1) (1-1/p_2) \cdots (1-1/p_n) $ となる。


図:オイラーのファイ関数のグラフ(Wikipediaから引用)

[2]オイラーのファイ関数のイメージ(高校数学の物語)

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