大人を過ぎてから初めて目にした概念はなかなか覚えられない。フェルマーの小定理がそれだ。鈴木貫太郎の大学入試数学チャンネルもなくなってしまったので,なおさらだ。
フェルマーの小定理は,素数をpとし,pとたがいに素な整数を a(gcd(a,p)=1)として,ap−1≡1(mod p) 。あれれ,gcd(a,p)=1 をはずせば,ap≡a(mod p))でもいいのか。
証明は次のとおり。
整数 a,x,素数pとする。二項定理で(x+1)pを展開すると,
(x+1)p=xp+Cp1xp−111+Cp2xp−212+⋯+Cpp−1x11p−1+1p
ところで,上式のCp−kk=p!k!(p−k)!であり,分母のk<p, p−k<p には分子の p を割り切る数は含まれていない。したがって,(x+1)p≡xp+1(mod p) である。
これから,ap≡(1+(a−1))p≡1+(a−1)p(mod p)
ap≡1+(a−1)p≡1+1+(a−2)p≡⋯≡a+0p(mod p)
aとpは互いに素なので,両辺をaで割って,ap−1≡1(mod p)
オイラーの定理は,フェルマーの小定理のべきの素数部分を拡張したものに相当する。
正の整数mに対して,集合 r(m)={a | 1≤a≤m, gcd(a,m)=1} を考え,その要素数をオイラー数 φ(m)=#r(m) とよんでいる。そこで,r(m)={r1,r2,⋯,rφ(m)}。なお,pに対して,φ(p)=p−1。
集合 r(m)のすべての要素にaをかけて,mod m をとれば,その集合 ar(m)={ar1,ar2,⋯,arφ(m)} は r(m)={r1,r2,⋯,rφ(m)}と等しくなる。そこで,これらの要素の積を考えると,aφ(m)Πφ(m)i=1ri≡Πφ(m)i=1ri(mod m) なので,
オイラーの定理,aφ(m)≡1(mod m) が得られる。
(注)なお,ar(m)={ar1,ar2,⋯,arφ(m)}(mod m)≡{r′1,r′2,⋯,r′φ(m)} の要素 r′i はすべて,a,mと互いに素であり,同じものは含まれない。
(1) p,qを素数として,m=pq である場合,φ(m)=φ(p)φ(q) となる。
φ(m) は,{1,2,⋯,m}から,pの倍数とqの倍数を除いたものになるので,それぞれ,q個,p個あるが,pqは両方で重なっている。そこで,p,qの倍数でないものの個数は,φ(m)=pq−p−q+1=(p−1)(q−1)=φ(p)φ(q) となる。3個以上の場合も同様。
(2) p を素数,kを正整数として,m=pk である場合,φ(m)=pk−pk−1 となる。これは,{1,2,⋯,pk} の中で,{1p,2p,⋯,pk−1p} はmと互いに素でないので,その個数を引けばよいからだ。
(3) これらを組み合わせると,m=pk11pk22⋯pknn として,φ(m)=m(1−1/p1)(1−1/p2)⋯(1−1/pn) となる。
図:オイラーのファイ関数のグラフ(Wikipediaから引用)
[1]オイラー関数の定義・性質4つとその証明(数学の景色)
[2]オイラーのファイ関数のイメージ(高校数学の物語)
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