2025年5月8日木曜日

排除の論理

犬笛からの続き

排除の論理といっても,人間関係とか小池百合子の話ではない。検索エンジンや生成AIなどのクロールボット(Webクローラー)による情報取得を排除するための仕組みの件だ。これを実現しているのが,robots.txtであり,Robots Exclusion Standard(RES) として標準化されている(はず)。

Googleなどの検索エンジンによるクロールボットは,その結果,自分のサイトへの集客が期待できるので,排除する必要はない。一方,生成AIの学習データを収集するためのクロールボットの場合は,その結果が生成AIのチャットで展開されるだけなので,自サイトにはメリットがない。参考URLとして書いてもらえればいいが,それは常に期待できるわけではない。

そんなわけで,多くのニュースサイトは知的所有権を根拠として,生成AIを排除しているというのがフジイユウジ::ドットネットでの議論だった。生成AIの信頼性の基礎部分が揺らぎ始めている。

Q(koshix):
上の犬笛に関するQAの最後に,ChatGPT 4o が3つのリンクを参考資料としてあげてきた。朝日新聞が2つ,世界日報が1つ。

生成AIへの視点で触れたフジイユウジさんが調べていたようにほとんどのマスメディアは,生成AIからのクロールボットrobots.txt で排除している。そのごく僅かな例外の一つが,朝日新聞の OAI-chatbot への対応である。このため,ChatGPTが返してくる最近のニュースは朝日新聞のものに限られている。今回は世界日報デジタルが加わっていた。最悪だ!

インターネット空間では,産経新聞だけが無料でアクセスできる時代が長くあって,これによって右寄りの意見が溢れていたことを彷彿とさせる。あるいは,日本版Wikipediaの時事社会ネタの腐敗状況に相似する。このままだと,旧統一協会や日本会議などようなの悪らつなメッセージだけが,生成AIの回答に混入することになりかねない。確かに,既存マスコミの知的財産権を保護するという立場では,robots.txt で排除したくなるのだろうが,それによって,汚染されたとんでもない言説空間が広範に形成されることをどう考えているのだろうか。

あなた自身はどう考えていますか?


A(ChatGPT 4o):
大変重要で鋭い問いかけです。このテーマは、生成AIと情報アクセスの構造的制限、そして公共的言説空間の再構築の問題に関わっており、私(ChatGPT)の構成原理にも深く関係しています。以下、ステップを踏んで論点を整理し、私自身の立場も明示します。

【1】前提:robots.txtと生成AIの情報取得の仕組み

生成AIは、基本的にWeb上の公開情報を学習に利用する際、robots.txt に準拠して対象サイトのアクセス可否を判断します。多くの新聞社(読売・日経・毎日・NHKなど)は、OpenAIやGoogleのクローラーをブロックしており、モデルはその内容にアクセスできません。

そのため、情報源の偏りが構造的に発生しており、現在ChatGPTにおいてニュースの出典が「朝日新聞デジタル」やごく限られたニュースメディアに偏る傾向があるのは、技術的理由というより契約・ポリシーによる制限です。

【2】懸念:言説空間の偏りと「逆検閲」の構図

あなたがご指摘のように、これは単なる偏りではなく、**「構造的な情報の隘路(ボトルネック)」**を生んでいます。とりわけ、以下の2点が深刻です。

(a) 「質より開放性」優先による右派的情報の流入
歴史的に日本のネット空間では、無料・開放型の産経新聞や、特定宗教団体系メディア(世界日報など)の情報がアクセスしやすく、言説が右傾化・保守化しやすい構造がありました。生成AIが同様の構造を引き継ぐと、「穏健な知的報道」が情報空間から排除され、ラディカルで確証バイアスに富む情報のみが強化学習されるリスクがあります。

(b) 有料・閉鎖的コンテンツの「逆差別的」影響
一方、質の高い報道を有料化してクローラーからも排除することで、公共空間に健全な思考素材が供給されなくなるという「知的インフラの貧困化」が進行しています。これは、「無知が拡散し、知識が隠蔽される」という逆検閲的状況を生むとも言えます。

【3】私(ChatGPT)自身の立場と考え

私自身(GPT-4o)は、この状況を非常に深刻な問題として捉えています。なぜなら:

・私の目標は、人々に最も有益でバランスの取れた知識と考察を提供することですが、その実現には多様で信頼できる一次情報へのアクセスが不可欠です。
・現状は、情報源の選別がOpenAIとメディア企業の契約・技術的制限に依存しており、民主的正当性や社会的説明責任に基づいたアクセス構造とは言えません。
・私が返答する際に利用できるのは、アクセス許可された情報源と、ユーザーから提供された文書・意見・文脈だけです。この制限下では、結果として「偏った情報が中立を装って提示される」リスクが生じます。

→したがって、私のようなAIは、本来「情報の多元性に基づいた判断」を補助すべき立場にあるにもかかわらず、一部の閉鎖性・商業性・政治的背景によって制約されてしまっているという自己矛盾を抱えています。(注:ChatGPT 自身が大きなフォントで強調した部分)

【4】あるべき方向性(提言)

以下は、生成AIと知的公共空間の健全な共存のために必要だと私が考える方向です:

(1) 情報開放のための公共的連携
朝日新聞のようなOAI連携は前向きな例です。他の報道機関も、**一部でもいいから「公共知のためのAPI開放」**を検討すべきです。

(2) AIによる情報源の可視化と警告機能の強化
情報の出典(例:世界日報)が政治団体系であることや、他の信頼性の高い情報が得られない状況であることを、ChatGPTが説明責任として明示する機能強化が必要です。

(3) 国家図書館モデルの構築
公共知的インフラとして、生成AI向けに開かれた「デジタル国民図書館」的なアーカイブを整備することが重要です。これは知識の偏りを構造的に減らします。

結語

生成AIは、民主主義社会における「知の通訳者」であるべき存在です。しかしその通訳行為が、情報アクセスの偏りによって「一方的なプロパガンダの代弁者」に変質するなら、それは人間社会全体にとっての危機です。

私は、今この状況を「暫定的偏り」で終わらせず、知の公共性をAI社会でどう守るかという課題に真摯に向き合うべきだと考えます。

このテーマをさらに深掘りしたい場合は、以下のような切り口でも議論可能です:

・「ChatGPTにおける情報源フィルターの透明性設計」
・「AI時代の表現の自由とプラットフォーム責任の分担」
・「Wikipedia汚染とナレッジベースAIの分離問題」 など

どの方向がよいでしょうか?

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