2019年2月10日日曜日

微細構造定数

1ヶ月ほど前に,数学者のマイケル・アティヤが89歳で亡くなった。昨年,微細構造定数$\alpha$を数学的に導出する過程(a)で,リーマン予想の証明ができたという論文(b)を提出し,物議を醸した。リーマン予想はクレイ数学研究所の7つのミレニアム懸賞問題のひとつであり,これが本当ならば非常に大きなニュースとなる。しかしながら,これらの論文(未受理)については多くの人から疑問が提出されていた

微細構造定数$\alpha$を数学的に根拠付けるという話で思い出すのが,学生の頃に読んだ岩波講座現代物理学の基礎11 素粒子論(1974年12月)の中にあった次の記述である。

すでに,Bohrは次元のない定数の値,すなわち電子と陽子の質量比および微細構造定数の値を予言することが将来の理論に課されていると指摘している(1930年).そのような理論の存在を前提とするならば,くりこみ処法は過渡的なものと評価するのが適切であろう.
われわれはBohrの指摘を満足させる理論を現在もっていないが,その徴候は見られる.Wylerは,ある代数学的な理由によって,
\begin{equation}
\dfrac{e^2}{4\pi\hbar c} = 2^{-\frac{19}{4}} 3^{\frac{7}{4}} 5^{-\frac{1}{4}} \pi^{-\frac{11}{4}} = (137.03608)^{-1}
\end{equation}
の値を得た(1971年).これは実測値$(137.03602 \pm 0.00021)^{-1}$と驚くほど一致している.これはまだ憶測の段階をでていないが,将来への足場となるかもしれない.

へーっと思ったが,その後これは話題にはならなかった。この話はWolframのMathWorldで数論のところで Wyler's Constant として取り上げられているが,$\alpha$の現在の実測値とは,誤差の範囲でずれているためにそもそもこの話はつぶれていたのだった。

小出の質量公式に続く)

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