2019年2月11日月曜日

小出の質量公式

微細構造定数からの続き)

微細構造定数のところで,Bohrによる「電子と陽子の質量比が云々」という話があった。陽子はクォーク3個からなるハドロンで,構成要素のクォーク質量自身は小さいため,質量の起源はカイラル対称性の自発的な破れ(南部陽一郎)にあると考えられるようだ。これだと陽子の質量と電子の質量が関係した基本原理を導く数学があるということは考えにくい。

ところで,レプトン同士の質量比については次のような小出の質量公式が成り立つことが,1982年に小出義夫によって示された(Lettere al Nuovo Cimento 34, 201 (1982); Physics Letters B 120, 161 (1983))。この段階ではむしろ,$m_\tau$を予言したというのが正確らしい。
\begin{equation}
m_e+m_\mu+m_\tau = \frac{2}{3} \bigl( \sqrt{m_e}+ \sqrt{m_\mu} + \sqrt{m_\tau } \bigr) ^2
\end{equation}
小出先生は金沢生まれのようだ。私の実家から歩いて10分の二水高校から金沢大学に進み,広島大学で博士課程を修了されている。小出の質量公式をめぐるその後の展開は,「荷電レプトンの質量公式が拓いた道(2015)」に詳しい。私の阪大物理での同級生の西浦宏幸君(2012年度素粒子メダル受賞者=マヨラナニュートリノのCP位相に関する研究)も小出の質量公式についての小出先生との共著論文がある。

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