2022年1月20日木曜日

大学入学共通テスト(4)

A日程とB日程で混乱していた共通一次をリニューアルしたのが,センター試験(大学入試センター試験)だった。これは, 1990年度から2020年度まで,約30年にわたって,31回実施された。大きな問題もなく安定して運用してきたが,いいがかりをつけられて共通テスト(大学入学共通テスト)に衣替えさせられた。

2006年度にリスニングが導入されるまでは平和な時代だったが,その後は,細かな不祥事が発生するたびに,これに対処するための試験の注意事項が単調増加していき,監督者マニュアルを読み通すのが大変なことになってきた。事情がある受験生や,突発事態に対応するための別室受験の準備もふえ,試験監督や警備のための教員の出動が半端ないことになった。

かつては,監督に当たる大学教員は,50代の後半くらいでセンター試験の業務からは解放されていた。そうはいっても,個別学力検査では出題もしているため,この時期は監督業務や質問対応業務で忙殺されることにはなる。自分がその年代にさしかかっても業務免除対象になることはなかった。

自分の在職期間に経験した29回のセンター試験を通じて,試験監督をした年よりも裏方の入試管理部業務などに携わった年の方が多かったかもしれない。拘束時間や労働内容は試験監督より量的に多いが肉体労働が中心であり,試験時間の間はピリピリと張りつめることなしに過ごすことができる。

2004年に国立大学が法人化されるまでは,2日目の後片づけが終わった後に,管理部スタッフや警備スタッフの教職員が集まって,準備していたおでんを囲んで歓談したものだった。リスニングが導入される頃には,リスニングの再試験対応などもある関係で,終了時間も遅くなってしまうため,業務が終わると解散ということになった。

2022年1月19日水曜日

大学入学共通テスト(3)

大学入試センターから,今回の令和4年度大学入学共通テストの平均点の中間集計結果が公表されている。ほとんどの科目は昨年とおなじくらいだが,数学Ⅰ・Aが,57.7点から40.3点へ17.4点下がり,数学Ⅱ・Bが,59.9点から45.9点への14点ダウンだ。読解力という謎のキーワードに振り回されて,どう考えても作問に失敗しているようにみえる。

大学入学試験の共通化は,1979年の共通一次(大学共通第1次学力試験)からはじまった。これは,1989年まで約10年にわたり11回実施された。その共通一次の監督業務が当たるようになったのは,1982年に大阪教育大学の助手になってからだ。池田分校や,天王寺分校,平野分校などで監督に当たったが,年配の先生の指導の元,教室で受験生への説明をすることもあった。

当時は,いまよりもずっとのんびりしていて,事前の監督者説明会もなかったし,現場では多少の融通もきいた。自分で問題を解いてみたり,欠席者の席にすわってあたりを監督したり,場合によっては読書も可能だったが,今となっては全て禁止でまったく考えられない。

池田分校の門から玄関に至る道では焚き火をしており,焼き芋を焼くのが通例になっていた。天王寺分校で一二度,管理部要員にあたったことがある。用務員さんがトラクターのようなものを運転して,試験問題を1Fにあった管理部の窓から搬入していた。天王寺分校の校舎はかつての師範学校の教室であり,教室の横には銃剣が並んでいたとのことだった。その話をしてくれた当時の天王寺分校の岡森博和主事(数学教育)の部屋で,試験日程終了後にささやかな食事が振る舞われた。

岡森先生には後にコンピュータ教育の科研費の協力者に誘われて,情報処理センター設置のために準備していた資料を提供したことがある。共同研究者ではなかったが,寺田町の安い中華料理屋で開かれた宴会に誘われてご馳走になった。退官後の学長選にも立候補されていたが残念な結果だった。

2022年1月18日火曜日

大学入学共通テスト(2)

 大学入学共通テスト(1)からの続き

数学IAの問題について批判ばかりしていてもしょうがないので,時間を決めて解こうとした。問題と解答は公表されており,次のようなものだ。

70分で4問(必答2問,選択2問)
第1問 必答:[1]対称式,[2]三角関数,[3]円と三角形
第2問 必答:[1]2次方程式の解と集合・論理,[2]統計処理
第3問 選択(2/3)[1]場合の数と確率
第4問 選択(2/3)[1]不定方程式と剰余
第5問 選択(2/3)[1]三角形の重心
スタート早々につまづいた。第1問の[1]の問題の条件が(1)だけでなく,(2)に及ぶことが読み取れずに全く進まない。なんとかクリアしたら[3]の問題が解けない。うーん,円周角の定理と三角関数はどういう関係になっていたっけ・・・,とりあえずおいて第2問に進むと,簡単な2次方程式の話なのだが頭に入ってこない。

というわけで30分経っても1/3もできずに脱落してしまった。チーン。不定方程式はなおさらだし,統計や幾何の問題は頭に入ってこないのであった。時間制限にあわてると平均点もとれないかもしれない。むしろこれで40点も取れるほうがすごい。

共通一次試験やセンター試験のころは,監督の時間に問題をパラパラと見て,これなら解けそうだと思ったものだ。いまでは新聞に掲載されている問題の字が小さすぎて読むことすらできない。ネットに掲載されている問題ならば字が大きいので大丈夫かと思ったら,共通テストになって読解力重視になったせいで,文章が多すぎてこれまた最後まで読み通せないのだった。

2022年1月17日月曜日

大学入学共通テスト(1)

 今年の大学入学共通テストはたいへんだった。オミクロン株の感染者数が急上昇するなか,1月15日(土)には東大の試験会場前で傷害事件があり,1月16日(日)にはトンガの海底火山の爆発にともなう津波警報で試験ができなかった会場がでた。

大学入試センター試験が,いろいろあって,大学入学共通テストに模様替えしたときに「思考力,判断力,表現力等を発揮して解くことが求められる問題を重視した」結果,今年の問題は読解力を必要とする部分が増えて,難易度があがったらしい。

そんなわけで,数学の試験を眺めてみたら,あら,防衛省の不祥事をヒントとしたようにみえる問題があるではないか。2019年にイージス・アショア配備の調査にかかわって露呈した事件だ。配備地の設定根拠を説明する資料において,Google Earthを使って水平方向と鉛直方向の縮尺比を考慮せずに山の俯角を導いて,判断のための重要なデータにしたというお粗末な(悪質な)ものだった。

今回の問題では,水平10万分の1と鉛直2万5千分の1の縮尺比を考慮せずに図を読み取った結果,キャンプ地から山頂を見込む俯角が16度になったのを検証するというものだ。三角関数表からこの16度に対応する正接を読み取り,これを1/4した値を解答し,さらに,この正接値から逆引して真の俯角(4度〜5度)を導くというものだ。

はい,いい問題ですね。しかし,平均点は数学I・数学Aで20点,数学II・数学Bで18点も下がった

図:朝日新聞2019年6月記事と大学入学共通テスト数学I・A問題の比較

P. S. Twitterの感想によれば,第2問のデータ処理,第4問の整数問題はかなり評判悪い。やはり,その出発点が利権がらみ(後に消失か)だった共通テストは失敗で,センター試験のほうが良質だったようだ。

2022年1月16日日曜日

Cityroam

 eduroamは,欧州の教育研究のためのネットワークコミュニティGEANTで開発された,高等教育機関や研究機関のための無線LAN相互利用のための仕組み(ローミングサービス)である。日本では,国立情報学研究所が運用している。

大阪教育大学もeduroamに参加していて(国内では323機関が参加),cc.osaka-kyoiku.ac.jpアカウントを持っている自分もその恩恵を受けることができる。といっても,他の大学や研究機関を訪問する機会はほとんどない。2016年からは初等中等教育機関にも対象が拡大され,大阪教育大学の附属学校10校が国内の最初の事例となった(尾崎先生と佐藤先生のおかげだ)。なお,初等中等教育機関については,学校無線LAN連携コンソーシアムによる実証実験という形で進んでいくことになる。

Cityroamとは,「プロバイダや電話会社,学校またはゲスト用のアカウントを用いて,各種施設や市街地において安全で自動接続可能な公衆無線LANサービスを実現する,無線LANローミング・フェデレーション(連合)です。利用者は,ひとつのアカウントを持つだけで,国内外の様々な場所でシームレスに,公衆無線LANを利用できます」というのが,その説明であり,eduroamもcityroamを構成する認証基盤の1つになっている。つまり,eduroamアカウント(自分の場合は,大阪教育大学のアカウント)があれば,cityroamの範囲で,自由に無線LANをつかえるようになる。

いまでも,FreeWifiのスポットは沢山あるのだが,そのたびにユーザ登録が必要であり,シームレスではない。また情報通信の安全性についても必ずしも保証されていない。おまけに,G4でつながっているときに,softbankのFreeWifiスポットに割り込まれて作業が中断したりするので困る。

さて,cityroamはどこまで使えるかというと,残念ながらまだまだだ。奈良県には0ヶ所,大阪府で3ヶ所しかないのだから。


図:大阪府の cityroam スポット(cityroamのgoogle mapから引用)

2022年1月15日土曜日

めった汁

テレビアニメの「舞子さんちのまかないさん」で,郷土料理の紹介リストに,石川のめった汁という言葉が出てきた。めった汁は全国に通用する普通名詞ではないのか。小学校の給食では定番のメニューだったが,そういえば,この50年ほとんど聞いたことがなかった。

めった汁ってどんなものと聞かれて返事に困った。普通に自宅の晩ご飯にでてくる豚汁と同じもので,野菜やいもが沢山入ったみそ汁だ。早速確認すると,農林水産省の「うちの郷土料理」というサイトには石川県の郷土料理として採用されており,次のような定義があった。「めった汁とは,さつまいもや大根、人参といった根菜類を使った具だくさんの豚汁のこと。従来の豚汁と異なるのは,じゃがいもではなくさつまいもを使う点にある」。

この農水省サイトは親切なので,著作権表示をすれば画像コンテンツを比較的自由に利用できる。下記写真の画像提供元は青木クッキングスクールだが,うーん,微妙に具が大きすぎて違う気がする。むしろ,いつもの夕食に出てくる豚汁の方が,追想/幻想の「めった汁」に近い。


写真:めった汁(出典:農林水産省Webサイト

P. S.  うちの郷土料理のページはよくできている。石川県,福井県,奈良県,京都府,宮城県など27府県分はあるが,富山県,大阪府,兵庫県,静岡県,東京都など20都道府県分は未作成で,令和3年度末にできることになっているけれど,間に合うのかしら。

2022年1月14日金曜日

公用文(2)

公用文作成の考え方(建議)」を踏まえた,内閣からの指示文書はまだこれからということだろう。高等学校の「現代の国語」が実用文にこだわるのならば,半分はこれをやったらどうか。

そこで(どこで?),文章校正ツールに,公用文作成に特化したものがないか調べてみた。マーケティングの観点からは,公用文に特化するメリットがないので,そうしたものはなかった。有料の文章校正ツールの中では,文賢がめだった。クラウド型のアプリだが,SafariではだめでChromeのダウンロードが必要。

また,一太郎でおなじみジャストシステムのJust Right!6というソフトウェアは,4.5万円程度。なお,ATOK Passportプレミアムを契約していれば,クラウド型のATOKクラウドチェッカーが利用できる。

無料版の文章校正ツールとしては,PRUV(プルーフ)Ennoがある。前者は登録なしで400字,ユーザー登録すれば無料で2万字までの文書を扱える。後者は,ユーザ登録不要であり明示的な字数制限はない。非公開の文書,顧客取引先の文書,試験問題・模範解答,個人情報を含む文書を入れるなとしている。Ennoの作者による「日本語エラーチェックサイトenno.jpを作った理由」が公開されている。

[1]現代仮名遣い(昭和61年)
https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/gendaikana/index.html
[2]公用文における漢字使用等について(平成22年)
https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/kanji/index.html
https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/sanko/koyobun/pdf/kunrei.pdf
[3]常用漢字表(平成22年)
https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/pdf/joyokanjihyo_20101130.pdf
[4]法令における漢字使用等について(平成22年)
https://www.clb.go.jp/files/topics/3485_ext_29_0.pdf
[5]表外漢字字体表(平成12年)
https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kakuki/22/tosin03/index.html
[6]公用文等における日本人の姓名のローマ字表記について(令和元年)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/seimei_romaji/pdf/moshiawase.pdf

2022年1月13日木曜日

公用文(1)

 「公用文作成の考え方」について(建議)という文書が,1月7日に文部科学省の文化審議会から出ている。各省庁の審議会は,所管大臣からの諮問を受けて答申するのが普通だと思っていたので,建議という言葉が新鮮だった。

法的根拠は何かを調べてみた。文部科学省設置法の第13条で外局としての文化庁を置くこと,第20条で文化庁に文化審議会を置くこと,第21条の3項と4項で,旧国語審議会(現国語分科会)に対応する業務が規定されている。

三 文部科学大臣又は文化庁長官の諮問に応じて国語の改善及びその普及に関する事項を調査審議すること。

四 前号に規定する事項に関し、文部科学大臣、関係各大臣又は文化庁長官に意見を述べること。

したがって,前者が諮問に対する答申,後者が建議だと考えられる(建議:① 意見を役所、上位の人、機関などに申し述べること。また、その意見。建白。(小学館日本国語大辞典より))。 

公用文作成の考え方は6ページほどにまとめられているが,これに対する解説があるので,全体では36ページのpdfファイルとして公開されている。これまでは,昭和26年(1951年)に文部省の国語審議会の建議「公用文作成の要領」が,昭和27年4月に内閣から「公文書改善の趣旨徹底について」として各省庁次官宛てに出されていた。

1952年の要領では,「句読点は,横書きでは「,」および「。」を用いる。」となっていたものが,2022年の考え方では,「句読点に「。」(マル)読点には「、」(テン)を用いることを原則とする。横書きでは読点に「,」(コンマ)を用いてもよい。」になった。

Wikipediaの公用文作成の要領をみるとこれはなかなか面倒な話がたくさんあるものと想像される。

[1]公用文の書き方資料集三訂版(文化庁,1960)

[2]公用文の書き表し方の基準資料集

2022年1月12日水曜日

メトロポリタン美術館展

 NHKの日曜美術館の新年スペシャル#アートシェア2022で,メトロポリタン美術館展を紹介していた。ラ・トゥール(1593-1652)の「女占い師」について,「傑作中の傑作だと思う。これが日本で見られるというのは世紀の大事件だと思います」と荒木飛呂彦が語っている。あら,ルーブル美術館にもある「いかさま師」の作者だったのか。

家人によれば,日経新聞紙面では毎日のようにこの美術展の大きな広告をうっていたとのこと。大阪市立美術館の最終日が1月16日ということで,ちょっと迷ったがオンライン予約して,今日の午前中の授業が終わってから出かけることになった。

天王寺駅で待ち合わせ,大阪維新によって無残に改造されてしまった天王寺公園を通り抜けて大阪市立美術館に向かう。雪交じりの寒い日だったが,当日券や予約時間なしチケットのための長い行列ができていた。その列を横目にスイスイ進んで検温後,QRコードの入場券を見せると,入場口付近はかなりの人で混みあっている。それでも,会場内ではわりとスムーズに観客が流れていた。

メトロポリタン美術館(MET)の館長やスタッフによる作品のビデオ紹介(13分)によれば,西洋絵画の建物に改修工事がはいるため(2023年オープン),これまで館外に出されることになかった作品を含み,65点(うち46点が日本初公開)が大阪市立美術館(天王寺)と東京の国立新美術館(六本木・乃木坂)で公開されることになった。

印象派を含む有名どころの画家の小品が1-2点づつまんべんなく網羅されていたがスルスルと通り抜けた。印象に残ったのは,(1) ラ・トゥール「女占い師」,(2) フェルメール「信仰の寓意」,(3) ターナー「ヴェネツィア,サンタ・マリア・デッラ・サールテ聖堂の前廊から望む」くらいか。

ターナーの明るく光ただようヴェネツィアは,グアルディの写実的で遠くまでピントがあう「サンマルコ湾から望むヴェネツィア」と対照的だった。

写真:メトロポリタン美術館のロゴ(YouTubeチャンネル The Met から引用)

2022年1月11日火曜日

ドローン操縦士資格

 奈良自動車学校でドローン操縦士資格がとれるという広告が目に飛び込んできた。確かに車の操縦とドローンの操縦には共通点があるかもしれない。

最初は,自分が38歳ごろに免許を取得した奈良交通自動車教習所かと思ったが,スクールバスの経路がなんだか奈良県北部に偏っていてどうもおかしい。もう一度確かめてみると,近鉄奈良線の学園前あたり見える奈良自動車学校だった。自分がもう少し若くてお金と時間に余裕があればドローン教習に通ったかもしれない。

ドローン操縦技能+安全運航管理者コース講習は,3日間の学科9時間,実技11時間で25万円だ。日本でのドローン規制はますます強まるので,こうした講習が成り立つのかもしれない。奈良交通自動車教習所でもやっているかと思ったが,こちらは,大型1種や大型2種などの方を売りにしていた。

もしかして,全国の自動車教習所で同じような動きがあるのではと思って調べてみた。案の定,一般社団法人全国自動車学校ドローンコンソーシアム(ジドコン)という業界団体ができていて,30校ほどが加盟している。自動運転の時代には,自動車教習所の性格も変化するだろうから,こうした対応が必要なのだろう。


写真:ドローンのイメージ(奈良自動車学校から引用)

2022年1月10日月曜日

四項間漸化式

 三項間漸化式からの続き

前回の問題を次のように修正する。2次方程式$\ x^2-p x + q = 0\ $の解を$\alpha, \beta$として,$a_n = \alpha^n +\beta^n$と定義する。ただし,$a_0=2,\  a_1 =\alpha + \beta = p,\  a_{-1}=\frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\beta} = \frac{\alpha + \beta}{\alpha \beta} = \frac{p}{q}$である。

このとき,次の漸化式,$a_{n+1}=p\ a_{n}-q\ a_{n-1}, \ (n=0,1,2 \cdots)$が成り立つ。

また,数列の一般項は $a_n = \alpha^n + \beta^n = \Bigl( \dfrac{p + \sqrt{p^2-4q}}{2} \Bigr)^n +  \Bigl(\dfrac{p - \sqrt{p^2-4q}}{2} \Bigr)^n$ で与えられる。

これを3次方程式に拡張すると次のようになる。3次方程式$\ x^3-p x^2 + q x -r = 0\ $の解を$\alpha, \beta, \gamma$として,$b_n = \alpha^n + \beta^n + \gamma^n$と定義する。ただし,$b_0=3,\  b_1 =\alpha + \beta + \gamma = p,\  b_{-1}=\frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\beta} +\frac{1}{\gamma} = \frac{\alpha \beta + \beta \gamma + \gamma \alpha}{\alpha \beta \gamma} = \frac{q}{r}$である。

このとき,漸化式は,$b_{n+2}=p\ b_{n+1}-q\ b_{n}+r\ b_{n-1}, \ (n=0,1,2 \cdots)$となる。

さらに,数列の一般項は $b_n = \alpha^n + \beta^n + \gamma^n$なので,基本対称式の値,$p=\alpha+\beta+\gamma,\ q=\alpha \beta + \beta \gamma + \gamma \alpha,\ r=\alpha \beta \gamma$の多項式になる。2次方程式の場合のように,3次方程式の一般解を代入してもよいが,非常に煩雑な表現になってしまい,Mathematicaを持ってしてもExpandとSimplifyを組み合わせて n=8で行き詰まってしまった。もちろん,漸化式を使えば大丈夫なのだが。

a = x /. Solve[x^3 - p x^2 + q x - r == 0, x];

b[n_] := a[[1]]^n + a[[2]]^n + a[[3]]^n

Table[Expand[b[i]] // Simplify, {i, 1, 8}]

{p, p^2 - 2 q, p^3 - 3 p q + 3 r, p^4 - 4 p^2 q + 2 q^2 + 4 p r, p^5 - 5 p^3 q + 5 p q^2 + 5 p^2 r - 5 q r, p^6 - 6 p^4 q + 9 p^2 q^2 - 2 q^3 + 6 p^3 r - 12 p q r + 3 r^2, p^7 - 7 p^5 q + 14 p^3 q^2 - 7 p q^3 + 7 p^4 r - 21 p^2 q r + 7 q^2 r + 7 p r^2, p^8 - 8 p^6 q + 20 p^4 q^2 + 8 p^5 r - 32 p^3 q r + 24 p q^2 r + 2 q (q^3 - 4 r^2) - 4 p^2 (4 q^3 - 3 r^2)}

2022年1月9日日曜日

寒中見舞い

 2019年3月に定年退職したのを機に,2019年の正月から年賀状をやめて3年目になる(あれ,4年目かな,あるいは2020年の正月からかな・・・)。このように人間(老人)の記憶はあやふやなものだ。

世間のしがらみからは完全に逃れるだけの勇気がないので,親戚の一部には今でも年賀状を出している。出していない友人などからの年賀状を受け取った場合には,なるべく寒中見舞いを出す。記憶回路が劣化しつつあるのでときどき忘れるかもしれない。

寒中見舞いはいつ出すものかと,早速インターネットで確認してみた。二十四節気小寒から大寒にかけてということで,1月5日ごろから2月4日ごろとなる。これが過ぎればもう立春だ。そうすると暑中見舞いは,立秋まえの小暑から大暑にかけての7月7日ごろから8月6日ごろなので,前半は梅雨がまだ明けていないわけか。

さらに,立秋は残暑見舞い,立春には余寒見舞いと続くが,これは出したことがない。と思う。

ところで,年賀はがきの発行枚数は年々減少している。ピーク時の2003年には44億枚だったものが,2021年には18億枚であり,最近5年間では,平均2.9億枚づつ(-12%)減っている。2011年から2016年までは平均1.2億枚(-3.6%)でなので,発行枚数の減少は加速化している。この調子だと2028年(ちょうど自分が後期高齢者の75歳に差しかかるころ)には,年賀はがきの発行は0となってしまう計算だ。我々昭和世代とともに,はがき・手紙・新聞などの文化は消えていくのかもしれない。


図:年賀葉書発行枚数の推移(Yahoo Newsから引用)

2022年1月8日土曜日

三項間漸化式

鈴木貫太郎のチャンネルで, $p = a+\dfrac{1}{a}\ $が与えられたときに,$a^6+\dfrac{1}{a^6}\ $を求める問題があった。これを一般化して,$b_n \equiv a^n+\dfrac{1}{a^n}\ $を求める問題を考えた。

ここで,$b_{n+1}=p\ b_n- b_{n-1}$ が成り立つ。これは三項間漸化式なので,このあたりに一般解法がある。漸化式の特性方程式 $x^2 - p\ x + 1 = 0$の解を$\alpha=\frac{p + \sqrt{p^2-4}}{2},  \beta=\frac{p - \sqrt{p^2-4}}{2}$とする。このとき,$b_n = A \alpha^n + B \beta^n \ $で一般解が与えられることにより,$b_0=2, b_1=p\ $の初期条件から$A, B$を決定すると $A=B=1$となる。

つまり,$b_n = \Bigl( \frac{p + \sqrt{p^2-4}}{2} \Bigr)^n +  \Bigl(  \frac{p + \sqrt{p^2-4}}{2} \Bigr)^n$ となる。例えば,$b_{10} = -2 + 25 p^2 - 50 p^4 + 35 p^6 - 10 p^8 + p^{10}$ だ。

これをMathematicaでプロットしたら,こんな感じのグラフが出てきた。ただし,$a$が実数ならば,$| p | \ge 2$ なのだ。


図:Plot[b[10], {p, -2.4, 2.4}]のグラフ

2022年1月7日金曜日

絵本太功記

 昨日は授業がなかったので(曜日振り替えの日),国立文楽劇場の初春文楽公演(文楽座命名150年)の第二部「絵本太功記」を見に行った。

最近は,コロナ対策のため上演時間を短くした三部制となっている。パンフレットにある竹澤宗助の談によれば,演者は自分の舞台が終わるとすぐ帰ることになっていて,先輩の舞台を見て勉強する機会が減っているとのこと。

実際,第二部は14:15から16:40までの2時間半弱とかなり短くなっている。2011年の夏休み特別公演では,「二条城配膳の段」「千本通光秀館の段」「妙心寺の段」「夕顔棚の段」「尼ヶ崎の段」で3時間50分あったのに。それでも,午前中から久々に大阪に出てデパート巡り(といってもなんばの高島屋だけなのだが)をして疲れていたので,早々に寝てしまう始末だった。

今回は,「二条城配膳の段(太夫5名−勝平)」と「夕顔棚の段(藤大夫−團七)」と「尼ヶ崎の段(呂勢太夫−清治,呂太夫−清介)」という配役だった。そうか,咲寿太夫が森蘭丸だったのか,その辺は夢の中でよくわかっていなかった。最後の呂太夫−清介でようやく目覚めることができた。

今日は,呂太夫も声がでていたし,清介は太棹三味線の糸を切る迫力だったのでなかなかよかった。「夕顔棚のこなたよりあらわれ出でたる武智光秀」で有名な尼崎の段は,以前,清介が素人向けの浄瑠璃教室の練習テーマにとりあげてやっているのをネットで見たことがある。ただ,この物語はどうにも感情移入しにくくて苦手である。


写真:尼ヶ崎の段の床本(国立国会図書館から引用)


2022年1月6日木曜日

2022年1月4日火曜日

2022年1月3日月曜日