2020年4月26日日曜日

COVID-19雑感(2)

昨日のものを再編してみた。

○ニューヨーク州の抗体検査による既感染累計が人口の14%というのはほんとうだろうか。
 (もしそうならモデルパラメタの前提がそもそも間違っている)

○スウェーデンの試み(ロックダウンしない)は成功するのだろうか。死亡数累計が人口の0.02%を越えて増加中である。スペインの0.04%よりは小さいが,増加率が・・・

○ブラジル,ロシアなどもじわじわと増えている。


図 欧州・米州の新規感染数累計の推移(人口の10ppm時点を原点)

2020年4月25日土曜日

COVID-19雑感(1)

徒然なるままに・・・

○日本は相変わらず情緒的な対処法で乗り切ろうとしている。正確なデータがないままに。

○シンガポールの新規感染数累計は,人口比で0.2%となり湖北省の0.1%を越えた。まだ収まる様子がみえないのだけれど大丈夫かしら(それにしては死亡数累計が少ない)。

○東京は,韓国・オーストラリアを越えてまだ収束先がみえない。日本全体も上昇中。
 (残念なことに,石川県と福井県が人口比で東京についで2位と3位なのだ)

○台湾,中国,韓国,香港は,第1段階が終息している。


○通常のインフルエンザと比較して問題なしとする正論?は正しいのだろうか。

図 アジア・太平洋の新規感染数累計の推移(人口の10ppm時点を原点)

2020年4月24日金曜日

原子核の周期表

京大の萩野浩一さんと前野悦輝さんが,原子核の周期表を考案し,三次元化したモデルを「ニュークリタッチ」(元素の周期表の三次元モデル「エレメンタッチ」の仲間)と命名したとの発表が京都大学からあった。

論文のほうは,A Nuclear Periodic Table で,Foundations of Chemistry に発表される。

いやー,かつてのシェルモデルユーザとしては盲点でしたね。なかなかおもしろく,教育的な価値もあると思う。

2020年4月23日木曜日

遠隔授業のばたばた(6)

遠隔授業のばたばた(5)からの続き

今日は1回生の「科学のための数学」の初回である。昨日は主に2回生でmoodleにも慣れている集団だったが,今日はどうだろうか。

受講登録者52名の内,45名が出席チェックを通過,46名がアンケートをクリアした。
自宅が44名,寮・下宿が1名,その他(どこやねん)が1名。デスクトップPCが1名,スマホが4名,41名がノートPCである。50GB程度は速度制限なしに利用できるが2名,上記より小さいかわからないが3名,41名が自宅のネットワークなどで無制限に利用できる。まあだいたい昨日と同じ傾向だった。

なお,高等学校で数Ⅲを履修していないものが,11名/46名と1/4あるので毎年のように授業の進め方が難しい。全員化学を選択しているが,物理は35名,生物は13名といったところ。

練習課題の提出でひとり手間取った。手順は次の通りである。

① スマホなどで課題を撮影した写真を PC に取り込む。
② PowerPoint に上記写真ファイルを貼る。
③ 写真を選択した状態で,書式→図の圧縮 または 図の書式設定→圧縮 を実行する。
 (最小のメールサイズにして下さい)
④この PowerPoint ファイルを koshigiri-k-0420.pptx のように名前を付けて保存。
⑤ koshigiri-k-0420.pptx を pdf ファイルとして出力し moodle の課題提出箱に提出する。

これをチャットで手取り足取り教えることになった。なかなかハードルの高い道のりである。

2020年4月22日水曜日

遠隔授業のばたばた(5)

遠隔授業のばたばた(4)からの続き

いよいよから今日から自分の最初の授業「古典力学(前期水曜2限)」が始まった。とりあえず用意したものは,moodleのページとOneDriveに置いた音声付きノート3ページ(各10分≒10MB)である。

moodleのページの段取りは以下の通りである(学生は自己登録でゲストアカウントも可にしている)。学年暦の都合で次回は今週の土曜日にやってくる。
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第1回  オリエンテーション(4/22水)

学生からの質問箱
 質問や意見はこちらにどうぞ。

第1回出席チェック
 出席チェックが終わったら受講生アンケートに進んで下さい。

受講生アンケート
 受講生アンケートが終わったらチャットルームを試して下さい。

第1回チャットルーム
 授業時間中はここでも質疑応答を受けます。

第1回の講義内容
 この中のファイルを視聴して下さい。

練習課題の提出ボックス
 練習課題を本日中に提出して下さい。
 練習課題「ノートに自分の学籍番号と名前,今日の感想(数行)を書いたものを撮影し,pdfファイルにして提出する」

第1回の課題を提出
 第1回課題は次回(4/25土)までに提出してください。
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10時半をすぎると出席チェックが増え出した。結局36名の受講者全員が出席チェックしている。チャットルームはほとんどみんな通りすぎていく。質問が2,3件あった。
アンケートは匿名であったがほぼ解答している。通信環境不明が2名,5G以下が3名,50G以下が1名,他は無制限だ。受講場所は,寮・下宿が3名で,他は自宅だ。端末はスマホが8名,タブレットが1名,デスクトップPCが1名,他はノートPCだ。高校で数Ⅲを履修していないものが6名いた。

練習課題がなかなか集まらない。授業終了の12時ごろで1/3,13時をまわったところでようやく半数だったので,moodleのアナウンスメントを使って全員にメールによるお知らせをして,困った場合は申し出るようにする。

まあ,第1回なので評判はそこそこであった。しかし準備にかなりの時間がとられてしまうのが難点である。このままいつまで続けられることだろうか。でも,授業としてはこの形態のほうが望ましいとも思えた。反転授業に大きくかじ取りすべきかもしれない。

P. S. 夕方,zoomによる全学説明会があった。オンライン授業は5月末まで延長というか,実技・実験・実習科目以外は基本オンライン授業でということだ。問題は,中国留学生,期末試験,実習などだろうか。いまのところmoodleの負荷問題は深刻化していない。

2020年4月21日火曜日

ウルフラムの物理

Stephan Wolfram の "A Class of Models with the Potential to Represent Fundamental Physics" がarxiv.orgに投稿されていた。440ページもあるぞ。
A class of models intended to be as minimal and structureless as possible is introduced. Even in cases with simple rules, rich and complex behavior is found to emerge, and striking correspondences to some important core known features of fundamental physics are seen, suggesting the possibility that the models may provide a new approach to finding a fundamental theory of physics.
可能な限り最小で構造のないモデルのクラスが紹介されている。単純なルールの場合でも,豊かで複雑な振る舞いが現れることがわかり、基礎物理学の重要な核となる既知の特徴との顕著な対応が見られ、このモデルが物理学の基礎理論を見つけるための新しいアプローチを提供する可能性を示唆している。
目次は次のとおりである。
 1. Introduction
 2. Basic Form of Models
 3. Typical Behaviors
 4. Limiting Behavior and Emergent Geometry
 5. The Updating Process for String Substitution Systems
 6. The Updating Process in Our Models
 7. Equivalence and Computation in Our Models
 8. Potential Relation to Physics
    Additional Material
    References

発売予定のハードカバー,A Project to Find the Fundamental Theory of Physics(816ページ)のドラフトかと思ったけれど,そうではなかった。WolframのA New Kind of Science から続いている思想の延長線上にある。たぶん,大学に入る前に新聞でカタストロフィーの理論をみて,わーこれはすごい!と思ったが,実際のところはそうでもなくてちょっと残念だったのに近いのではないかと予想しているのだけれど。それでもちょっとワクワクする。

[1]A Class of Models with the Potential to Represent Fundamental Physics(上記のオンラインバージョン)

2020年4月20日月曜日

遠隔授業のばたばた(4)

遠隔授業のばたばた(3)からの続き

4月20日,いよいよ今日からはじまった。ただ,こちらから観測されている範囲では大きなトラブルはない。教務システムUNIPAも学習管理システムmoodleも無事に動いているようだ。もっとも,現場は学生からの質問で大わらわ状態のようだが。

現時点でmoodleに登録されている授業で検索にかかった主なものは下記のとおり。
   1限  2限  3限  4限 5限 6限 7限  合計
月曜 14  18  23  16  5  8  4  88
火曜 13  23  18  18  3  5  6  86
水曜 10  17   0   1  0  5  4  37
木曜 10  28  26  16  4  1  4  89
金曜 13  21  19  17  6  2  3  81
合計 60 107  86  68 18 21 21 381

うーん,大丈夫なのだろうか。

2020年4月19日日曜日

遠隔授業のばたばた(3)

遠隔授業のばたばた(2)からの続き

大阪府立大学の講義動画作成法のYouTubeがなかなか参考になった。田崎晴明さん方式 にしようかどうしようか。そこで,各種方法をまとめてみると次のようになる。
  1. 講師動画&板書動画(1ファイル)(300MB/45分)
  2. 講師音声&板書動画(1ファイル)(200MB/45分)
  3. 講師音声&ノート画像(1ファイル)(100MB/45分)
  4. 講師音声,ノート画像(2ファイル)(10MB/45分)
それらの作成方法は以下のようになる。
  1. zoomの講義録画   → a
  2. zoomの画面共有録画 → b
  3. QuickTimeの録画機能 → c
  4. PowerPoint/Keynoteの録画機能 → c
  5. iOSの録音機能+手書きアプリ → d (→ c FFmpegで編集:50MB/45分)
データ容量としては d. が有利であるが2ファイルを扱う手間がやや心配。

むしろ問題は学生からの課題回収のほうである。大学からはmoodleサーバ保護の観点から,テキストなどなるべく軽いデータで課題を出させよとのお達しがきた。A4プリント1枚の解答をスマホの写真で撮れば2MB程度になるので,50人のクラスでは100MB/授業1回となる。2000クラスで15回の授業を行えば3TBとなる。うーん,なかなか微妙なラインではある。写真をpdf化することに負担もあってどうしたものか思案のしどころ。
(こんなことばかりしていて肝腎の授業ノートが1ミリも進んでいない・・・orz)

P. S. 課題の画像ファイル(2MB)は,PowerPointに貼り付けて画像圧縮(メールサイズ)にしてpdf出力すれば,100KBのオーダーに抑えることができた。

2020年4月18日土曜日

遠隔授業のばたばた(2)

遠隔授業のばたばた(1)からの続き

今日も朝からmoodle支援を2件すませた。昼からは国立情報学研究所(NII)【第4回】4月からの大学等遠隔授業に関する取組状況共有サイバーシンポジウム(4/17オンライン開催)に大阪教育大学の尾崎君が登場するようなので,さっそくアクセスすべくCiscoのWebexやブラウザエクステンションをインストールするなどの準備を行う。

画質と音質はだいぶ落としていたけれど,内容はかなりおもしろかった。とくに尾崎君の「オンライン授業実施に向けた個別サポートデスクの実施体制の構築とその運用」は,実用的でシンプルで汎用性も高いので,喜連川先生もほめていた。

そんなわけで,昨日に続いて試行錯誤が続いている。神戸高校の杉木勝彦先生(大阪教育大学理科教育専攻物理の稲垣研出身)が,遠隔授業用の教材作成に取り組んでいる。iPadのGoodnotesで作成した静止画に,コントロールセンターで有効にした画面収録機能を使って,音声を重ねるというものである。まず,ターゲットとなるノートを開いた状態でコントロールセンターを呼び出して画面収録をオンにする。説明のお話が終わったところで録画中ボタンをタッチして終了する。これにより写真のところに収録された動画がmp4形式で保存された(毎分7.5MB程度か)。

もう少し軽くならないかと検索しまくったところ,FFmegを使って,静止画と音声ファイルから動画を作るというのがあった。四苦八苦してあれこれ試したところ次のようにするとうまくいくことがわかった。結城浩さんのおかげである。

静止画(img.jpg)と音声ファイル(snd.m4a,iPhoneのボイスメモで収録)を使って,mp4ファイルを作るには次のようにする(-pix_fmt yuv420pがミソだった)。
  ffmpeg -loop 1 -i img.jpg -i snd.m4a -ab 24k -vb 72k -c:v libx264 -pix_fmt yuv420p -shortest out.mp4
また,2つのmp4ファイルを結合するには次のようにする。
 ffmpeg -safe 0 -f concat -i mylist.txt -c copy out3.mp4
ただし,mylist.txtには結合前のファイルを並べておけば良い。
 cat mylist.txt (out?.mp4は同じコーデックで作ったファイルであること)
 file ./out1.mp4
 file ./out2.mp4

あとはコンテンツだ。熊本大学の鈴木克明さん(昔,日本文教出版の高等学校の情報の洋教科書でいろいろお世話になった。今,日本教育工学会の会長になっておられた)が上のシンポジウムで指摘していたように,無理せずにゆるゆると真の目的を見据えながらやるのがよろしいようだ。

遠隔授業のばたばた(3)に続く








2020年4月17日金曜日

米国の集団免疫率(2)

米国の集団免疫率(1)からの続き

トランプは4/17の会見で米国におけるCOVID-19の死亡数は6〜6.6万人にとどまるとした。これは勝手な想像ではなく,IHMEの最新の予測である。前回の10〜25万人から減少させたことを自分の政策の成果であるかのようにアピールしつつ,ロックダウンを解消して経済回復を誘導しようという意図に基づくものだろう。

前回のSIIDR2モデルの適用はちょうど2週間前だったので,あらためてこのモデルと上記の主張を組み合わることで米国の集団免疫率を推定してみる。前回のように1ppm到達の基準日3/10から4/17までの39日分の新規感染数累計と死亡数累計の人口比データを示す。
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xa=[0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,
14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,
28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38]
ya=[0.014,0.021,0.030,0.038,0.051,0.051,0.051,
0.106,0.107,0.215,0.317,0.462,0.462,0.958,
1.280,1.576,1.929,2.074,2.587,3.136,3.722,
4.268,4.953,5.684,6.483,7.335,8.310,9.327,
10.13,11.03,11.99,12.93,14.00,14.96,15.92,
16.81,17.55,18.33,19.20]
za=[0.06,0.08,0.09,0.11,0.12,0.12,0.12,
0.18,0.18,0.30,0.46,0.61,0.61,1.22,
1.43,2.04,2.68,3.01,3.77,5.06,6.41,
7.28,8.65,11.7,14.6,17.8,21.3,25.4,
29.0,32.9,38.7,44.5,50.4,56.2,62.0,
66.7,71.2,78.5,85.6]/100
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SIIDR2の計算において次のパラメタを用いると上記の米国のデータが再現できる。
$\beta = 0.60, \nu =0.12, \lambda=28, \tau=16$, $\alpha_1=5/0.80, \alpha_2 = 5/0.20$, $\gamma_1 = 15/0.95, \gamma_2 = 15/0.06$。前回と異なり,$\gamma_2$の値は,中国や韓国などを説明した値の方にややに戻している。

 図1 米国の感染カーブ(u3=重症感染数,u4=死亡数,u6=新規感染数累計)


図2 米国の感染カーブ(同上,u5=回復(免疫獲得)数)

① 米国では重症感染数のピークを迎えている。
② 最終的な死亡数は6〜7万人程度になる。
③ 第1回目の終息が想定される2ヶ月後の集団免疫率は1〜2%のオーダーである。






2020年4月16日木曜日

遠隔授業のばたばた(1)

今,日本中の大学教員が試行錯誤の真っただ中にいるはずだ。Facebookの「新型コロナ休講で,大学教員は何をすべきかについて知恵と情報を共有するグループ」には今日現在で15,000人以上が登録している。令和元年度の学校基本調査では,大学教員の数は19万人弱なので,その8%程度に相当する。なかなか壮観だ。

私も,大阪教育大学で使われてきたmoodleの利用支援の猫の手として活動をすることになった。4月20日からインターネットを活用した授業がはじまるので待ったなしだ。通常の対面授業は5月11日(月)から再開する予定だが,今後の感染拡大の状況によっては,感染拡大防止期間を延長し,引き続きインターネットを活用した授業等を行うということなのでますます大変である。通年で3800科目あるうち前期が半分だとして1900科目,そのうち1100科目のコースがmoodle上に観測された。約6割に相当する。実験・実習・演習科目などもたくさんあるので,これらがどうなるのかは心配だ。

さて,自分が前期に担当する演習・実験以外の授業は3科目(古典力学・科学のための数学・電磁気学)だ。moodleのコースの枠組みは3回分作成したが,問題はコンテンツである。とりあえず,ギガに優しい田崎晴明さん方式でやることを想定している。写真にとって pdf化したノートと,iPhoneもしくはiPadで録音した音声データは,MicrosoftのOneDriveに置くことにする。なお,m4a音声データは,次のようにmp3に変換する予定である。

  m4aからmp3への変換
   ・Apple Music App を開く
   ・メニューバーで「ミュージック」>「環境設定」の順に選択
   ・「ファイル」タブをクリックし、「読み込み設定」をクリック
   ・「読み込み方法」の横のメニューをクリックし、曲の変換先の
    エンコード形式を選択,「OK」をクリック
   ・キーボードの「option」キーを押しながら「ファイル」>「変換」>
    「[環境設定で指定した読み込み方法]に変換」の順に選択
   ・読み込んで変換したい曲が入っているフォルダまたはディスクを選択
    変換前の形式の曲と、変換後の曲がライブラリに表示

それでもなお,板書形式が可能かどうかを模索している。
① Notabilityがよいということだったが,OneDriveに置こうとして撥ねられた。
② Goodnote5と画面記録がよいということで,画面記録アプリをさがしたところ,
 DU-Recorder(App内課金が高額),ApowerREC(機能しませんでした)があった。
③ iPadとMacを有線で結んで,Mac側のQuickTimeで録画先をiPadに指定して録画する
 方法があった。これはうまくいった。ただ,45分で200MBを越えるのでどうするか。
④ この場合でも,NotabilityよりはGoodnote5のほうがなんとなく使いやすそうである。
⑤ PC側のzoomの録画の方が便利ではないか,ということで,上記の設定をzoom側で
 保存してみたところ,終了時に録画ファイルをm4aに変換してくれた。まあまあ。
試行錯誤は続く・・・というかもうあまり時間が残されていない。

遠隔授業のばたばた(2)に続く


2020年4月15日水曜日

モビリティデータ

Appleが,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止に向けた世界各地での活動を支援するため,Appleマップによるモビリティデータの傾向を示すデータ(Apple Maps Mobility Trends Reports)を提供した。

しばらく前にはgoogleも同様のデータ(COVID-19 Community Mobility Reports)を公開していた。例えば日本の時系列はpdfファイルとして提供されている。このデータを再構成して,4月5日の時点でのいくつかの国の特徴を比較したものが次の図である。
図1 グーグルモビリティトレンドからの4/5の傾向(平常時との比率)

アップルの方は,上方の種類は限定されているが,時系列のCSVデータも提供されていてありがたい。ここではその結果だけを例示してみよう。

図2 日本のモビリティトレンド(1/13-4/15)

図3 韓国のモビリティトレンド(1/13-4/15)

日本の3月下旬の緩みがはっきりと現れている。まだまだ活動制限のレベルは不十分であり,西浦博さんがあせって,重篤者85万人,死者40万人という発表を(遅すぎると思うが)したのもわからなくはない。しかし前提条件がよく理解できないのだ。例えばNHKのニュースでは,以下のような説明があったが・・・
外出自粛などの感染防止対策を何も行わなかった場合、感染が広がり始めてからおよそ60日でピークを迎えると推計しています。
その場合の重篤な患者は合計で▽15歳から64歳まででおよそ20万人、▽65歳以上で65万人の合わせておよそ85万人に上るとしています。
その場合、人工呼吸器が足りず、必要な治療が受けられなくなり、中国でも重篤患者の半数が死亡しているという研究があるということで、日本国内でも半数にあたるおよそ40万人以上が死亡すると推計しています。
いずれにせよ,相変わらず安倍政権支持率は40%の水準を維持しており,日本の政治はびくともしていない。


2020年4月14日火曜日

基準の変更と比較

アジアの状況欧州の状況,からの続き

アジア太平洋と欧州・北米の新規感染者数累計を人口で規格化したグラフを考えてきた。これを並べて比較してみる。これまでは基準を人口の1ppmを越えた時点としてこれを各国の共通の原点とした対数グラフを考えた。その基準点を人口の10ppmになった時点に変更して比べてみる。累計数がかなり増加してきたため,最近の特徴をよく観察したいと思ったので。

図1 アジア・太平洋地域の新規感染数累計対人口比の推移(100ppm)

図2 欧州・北米地域の新規感染数累計対人口比の推移(100ppm)

イランは比較のために両方のグラフに含めている。欧米はすべてイランを上回っている。グラフで示した欧米主要国の新規感染数累計は人口比ではすでに湖北省を越えているわけだ。しかし,アジアでは震源地の中国湖北省以外はすべてイランの水準を下回っている。

①欧米は同じ傾向で推移している。指数関数的増加の時定数がしだいに減りつつある
②アジアは,中国が既に収束し,韓国がこれに続いている。
③オーストラリア,香港,マレーシアも減速の兆が見える。
④台湾は一貫して低水準に押さえ込んでいる。
⑤シンガポールは当初,台湾や香港と並んだ優等生だったが,その後抑え切れていない。
⑥日本(東京)は,ほぼ一定の時定数での指数関数的な増加を続けている(新規感染数累計は1.107倍/日,死亡数累計は1.046/日の割合で増えている)。

もし,この定数が変化しなければ,緊急事態宣言の期限である5月6日には日本の新規感染数累計は6万人に達する。これは人口比で500ppmであり,韓国の200ppmや湖北省(武漢以外)の370ppmを超える水準に相当する。また,このときの死亡数は260人程度にとどまり,そのまま推移すれば,死亡数(5/6の21日後)/新規感染数累計(5/6) = 1%というリーズナブルな値が得られる(感染数と死亡数の間に21日程度の遅れがあると仮定している)。

2020年4月13日月曜日

欧米の状況



欧米の状況を見ると新規感染数累計は人口比で10ppmを越えているところがある。スペインの30ppmは湖北省(武漢以外)の10倍近い水準であり,下記の国々の新規感染数累計をはすべて湖北省(武漢以外)以上の値となっている。ただし,対数グラフ上は上に凸となっていて増加率は減少に向いつつある。


図1 人口当りの新規感染数累計(単位100ppm,基準日は1ppm達成時)


図2 人口当りの新規感染数累計の対数(単位100ppm,基準日は1ppm達成時) 

2020年4月12日日曜日

アジアの状況

新型コロナウイルス感染症の感染者数の増加が5/6には収まるように考えている人が多いのかもしれない。うまくいけば7月には一端終息に向ったようにみえる可能性もある。しかし,集団免疫が獲得できずワクチンもない現状では,緊急事態宣言レベルの制限を継続するか,断続的に緩めたり強めたりすることの繰り替えしかの二択ではないだろうか。中国以外で終息に近い状態を実現しているのは台湾だけだ。それに近いのは韓国。香港もシンガポールも完全にはおさまっていない。どこまで耐えられることか。

図1 人口当りの新規感染数累計(単位100ppm,基準日は1ppm達成時)

図2 人口当りの新規感染数累計の対数(100 ppm,基準日は1ppm達成時)

注:上記は武漢を除いた湖北省の値であり,370ppmに収束している。武漢を含めた湖北省の収束値は1150ppmであり,上記の3.1倍に相当する。湖北省の全体イメージは湖北省(武漢以外)を全体に3倍程度スケールしたものと考えられることに注意する。

2020年4月11日土曜日

zoom

よくわからないまま,zoom を使った moodle による遠隔教育の設定支援要員に駆出されることになってしまった。手元のMacbookは古いので(2.5GHz Dual Core Intel Core 5i )背景が設定できなくて悲しい。自分のコースさえまともに完成していないのに大丈夫なのかな。猫の手も借りたい逼迫した状態にあることは間違いない。


2020年4月10日金曜日

BCG

Wikipediaによれば,BCG  とは次のようなものだった。
BCGは,実験室で長期間培養を繰り返すうちにヒトに対する毒性が失われて抗原性だけが残った結核菌であり,BCGワクチンはBCGを人為的にヒトに接種して感染させることで,結核に罹患することなく結核菌に対する免疫を獲得させることを目的としたものである。
小学生の時には,毎年ツベルクリン反応を調べる注射が恒例行事だった。ツベルクリン(独: Tuberkulin)とは,結核菌感染の診断に用いられる抗源である。前腕の内側に注射して数日後にこれが赤く腫れている(陽性)か変化なし(陰性)かを透明の物差しで測って確認する。たぶん1cm以上のサイズなら陽性なのでこれでOKだ。それ未満なら陰性や疑陽性,すなわち結核菌に対する抗体がないので,BCGを注射しなければならない。したがって小学生にとってはこれはなかなかドキドキする検査なのである。

自分が小学生低学年の間は陰性が続いていて,ほぼ毎年のようにBCGを注射していたような気がする。1回くらいのBCGでは抗体ができなかったということか。で,BCGも初めのうちは今のようなスタンプ型ではなかった。それがいつの間にか(日本では1974年から)定期化され全員接種に切り替わっていた。

そのBCGが新型コロナウイルス感染症に効果があるかどうかということで議論になっている。乳児向けのBCGが不足することがないように祈るだけである。

2020年4月9日木曜日

緊急事態宣言と接触制限モデル(3)

緊急事態宣言と接触制限モデル(2)からの続き

4月7日のtwitterで牧野淳一郎さんがいうには
一応どれも現実をモデルしているはずのところで、そこまで行動抑制しないといけない割合が、西浦氏:0.2、大橋氏「0.45](R_0>1でいくとして)、佐藤氏 0.02 で3人で20倍違う時点で少なくとも2人は間違っているのは明らかであろう。
西浦氏は,緊急事態宣言と接触制限モデル(1)で取り上げた西浦博さん(北海道大学),大橋氏は,新型コロナウイルス感染症の 流行予測の大橋順さん(東京大学),佐藤氏は,COVID-19情報共有の佐藤彰洋さん(横浜国立大学)である。

上に示されている数字は行動抑制の因子であり,モデルの感染率にかける係数だと思われる。ここでは,どれが正しいかについては考察せずに,ドイツなど欧州の基本再生産数$R_0=2.5$(7日増倍率が7倍)に基づいた西浦さんの計算(我々の評価では$R_0=2.3$だったが)を,東京の現状に合わせて再計算した結果を報告する。

前回述べたように,現在の東京では,7日増倍率が2.5倍($R_0=1.65$)程度なので,西浦さんが用いている値よりかなり小さいのだ。単純なSIRモデルを用いてこれを再現するパラメタセットを探し,その場合に接触制限の効果がどうなるかを調べよう。

やり方は前回と同じなので,パラメタを示す。β=0.28,初期値はν=0.005とすれば上記の増倍率が再現できた。つまり,さきのMathematicaコードにおいて,
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 
f[n_, β_, α_, ν_, p_]:= 
NDSolve[{S'[t]==-(p+(10-p)*Tanh[2*(20-t)])/10*β/n*J[t]*S[t], 
J'[t]==(p+(10-p)*Tanh[2*(20-t)])/10*β/n*J[t]*S[t]-J[t]/α, 
R'[t]==J[t]/α, S[0]==n, J[0]==ν, R[0]==0}, {S,J,R}, {t,0,100}];
n=1400; β=0.28; ν=0.005; p=10;
sol = f[1400, β, 7, 0.005, p];
s[t_] := S[t] /. sol[[1, 1]];
i[t_] := J[t] /. sol[[1, 2]];
cft1[t_]:= (p+(10-p)*Tanh[2*(20-t)])/10*β/n*i[t]*s[t];
・・・
Plot[{cf1[t], cf2[t], cf3[t], cf4[t], cf5[t], cf6[t]},
{t, 10, 30}, PlotRange -> {0, 0.1},
GridLines -> {{19, 20, 21}, {0.005, 0.01, 0.015, 0.02, 0.025}}]
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 
などとすると計算結果は次のようになった。

図 SIRモデル+シグモイド関数制限措置による新規感染者数の変化(東京のデータ)
 (上から順に,青:制限なし,80%,60%,50%,40%,20%に制限)

増加と減少の臨界点は50%あたりにある。すなわち,数字だけでいえば大橋氏の値と近い結果が得られたのかな。大橋氏の資料に対する牧野さんのもろもろの批判にはうなずけるものもあるけれど。そう,このブログも拡散してはいけない情報の仲間である。

まとめ
新型コロナウイルス感染症専門家会議(というか西浦博さん)から出てきた接触8割削減の前提条件は,欧州並の$R_0=2.5$に対応する場合ということだった。それを現在の東京の$R_0=1.65$に対応させると,上記のように接触6割削減で新規感染数は減少させることができる。いずれにせよモデル計算の結果なので,他地域の今後の動向や安全率も勘案して,目標値として接触8割削減を掲げることは意味があるだろう。

P. S. 佐藤彰洋さんのシミュレーションに対する疑義がでてきた。ちょっと安心した。Delay Differential Equationによるモデリングは,それでもまだ自分には理解できていない。

P. P. S. 4/10に牧野淳一郎さんの解説が出てきたので問題点がよく理解できるようになった。ただ,6割削減でも新規感染数が減少に転ずるという牧野さんの解説は,7割削減が必要であるというこちらの結果とは食い違っていた。

[1]人との接触7~8割減、効果は 専門家「感染抑制できる」、全員やれば6割減でも 新型コロナ(朝日新聞)→タイトルと本文があまり整合していない記事
[3]いろいろなモデル計算(牧野淳一郎,2020.4.10)
[4]交通整理(牧野淳一郎,2020.4.12)
[5]公開質問状に対するコメント(佐藤彰洋,2020.4.13)
[6]交通整理の続き(牧野淳一郎,2020.4.12)
[7]交通整理の続きその2(牧野淳一郎,2020.4.16)



2020年4月8日水曜日

緊急事態宣言と接触制限モデル(2)

緊急事態宣言と接触制限モデル(1)からの続き

緊急事態宣言がでた翌朝(4/8)の日本経済新聞にも再び西浦さんの図が「感染拡大阻止 接触8割減が必要」という記事とともに掲載されていた。安倍晋三も同内容を専門家の見解として強調していた。

図 日本経済新聞(2020.4.8 朝刊3面)から引用

日経の記事を批判的に読み解いてみる。

①「接触8割減」は政府の専門家会議メンバーで,感染者数の予測を数理モデルで解析している北海道大学の西浦博教授がはじいた数字だ 。
→ 西村さんは新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の当初の構成員ではなかった。クラスター対策班のメンバーか。

②1人の感染者が平均で何人に感染させたかを示す「実効再生産数」は3月21〜30日の改定データで推定1.7。
→新規感染者数累計の1週間の増倍率を$k$とすると,実効再生産数$R_0$との間に,$R_0=1+5/7*\log k $の関係がある(倍加時間と基本再生産数)。東京(3/20-3/31)のデータは,平均で$k=2.3$であることから,$R_0=1.6$となった(注:$R_0=1.7$に対応するのは$k=2.7$)。

③その時点では数万人の感染者が出ていたドイツ(2.5)を下回っていたが,
→ドイツ(3/20-3/31)のデータは,平均で$k=3.9$であることから,$R_0=2.0$となった(注:$R_0=2.5$に対応するのは$k=8$,3/10以前には$k=8$を超えていたが・・・)。

④4月に入っても感染増が続き,実効再生産数は3を超えてドイツを上回った可能性があるという。
→実効再生産数がを3を超えるとは。$R_0=3$に対応するのは$k=16$である。日本でそのようなタイミングがあったのだろうか。福岡で9倍,福井で20倍くらいのタイミングは一時的に見られるが,これらはいずれも感染数が少なくて揺らぎが効いてしまう段階の話である。

⑤このままだと1日あたりの新規感染が米ニューヨークのように数千人に達する。
→仮定が④であれば正しいし,指数関数的な増大であれば常に正しい言明ではあるが,事態を強調するためにやや話を盛っている印象を受けた。

ただし,新規感染数累計について単純な指数関数型増加傾向が続くと仮定すると(接触制限の効果がない場合),直近の増倍率は東京で1.15/日,大阪で1.10/日となっているので,
 東京:4/14:3千人,4/21:8千人,4/28:2万人,5/5:5万人
 大阪:4/14:1千人,4/21:2千人,4/28:4千人,5/5:8千人
である。1日あたりの数ではなく累計であることに注意。


図 新規感染数の1週間増倍率$k$と実効再生産数$R_0$

2020年4月7日火曜日

緊急事態宣言と接触制限モデル(1)

北海道大学の西浦博さんが4月3日にマスコミで示していた図がある。対策がない状態の新規感染者数が指数関数的な増大をしているときに,人の接触を20%減らした場合と80%減らした場合の新規感染者数の変化を示した図だ。これにより彼は欧米に近い外出制限の必要性を訴えていた。残念ながら,これは専門家会議や政府の共通のコンセンサスとはならず,やがて4月7日の7都府県に対する5月6日までの緊急事態宣言につながっていく。

ここではその図がどのようにして得られたものかを,素人が持っている簡単な道具と知識で理解することを目指す。報道されたニュースや伝わってくる情報は鵜呑みにはせず,自分で考えることが必要だから。集団としては人口1400万人の東京都を想定する。日本経済新聞におけるこの内容に関する報道の文脈でも東京を対象としていることがうかがえる。東京の4月3日における新規感染者数は14人(新規感染数累計は753人)であり,人口の1ppm条件がちょうど達成された頃なので,これ以降をSIRモデルなどの単純な微分方程式系で扱うことは可能だろう。

今,探してもみあたらないのだが,西浦さんはこの報道の後に解説のための動画を公開していた。それによればしばらく前のドイツなみの再生産数を仮定し,現時点から15日目以降に制限措置を行った場合をシミュレートしているとした。なお,彼のモデルでは,計算開始から15日目が現在であり,30日目が制限措置の開始時点となる。

今から3週間前のドイツでは新規感染数累計の7日増倍率が7倍になっていた。仮に6.3倍(1日に1.3倍)を仮定すると,基本再生産数は$R_0 = 1 + 5/7 * \log 6.3 \approx 2.3$となる*。一方現在の東京では新規感染数累計の7日増倍率が2.5倍(1日に1.14倍)程度なので,基本再生産数は$R_0 = 1 + 5/7 * \log 2.5 \approx 1.65$(倍加時間と基本再生産率を参照)である。だからこのドイツ並の仮定はちょっとどうかと思うが,いちおうこれを採用する。
(*西浦さんはドイツなどの欧州の平均基本再生産数が$R_0=2.5$であると話していた)

つまり,現在100人の新規感染者数はこのまま放置すると15日後のt=30(1.3^15≒50)に5000人以上に達するという状況を西浦さんは想定していると思われる。今の東京の水準をそのままあてはめた場合は,15日後のt=30(1.14^15≒7)に東京の新規感染者数は700人程度であることに注意しよう。

SIRモデルに接触制限措置の効果を含めた微分方程式系をMathematicaで書くと次のようになる。nは集団人口(1400,以下人数の単位は1万人当りとなる),βは感染率(0.44),αは感染期間(5),νは感染数の初期値(0.0002),pは制限措置の程度(p=10→制限なし,p=9→80%に制限,p=6→20%に制限)である。なお,接触制限措置は,βにかけるシグモイド関数(幅が1日のオーダー)によってモデル化して階段関数は用いない。t=15が4月3日現在(新規感染者数=100)に対応する。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
f[n_,β_,α_,ν_,p_]:=
NDSolve[{S'[t]==-(p+(10-p)*Tanh[2*(30-t)])/10*β/n*J[t]*S[t], 
J'[t]==(p+(10-p)*Tanh[2*(30-t)])/10*β/n*J[t]*S[t]-J[t]/α, R'[t]==J[t]/α, S[0]==n,J[0]==ν,R[0]==0}, {S,J,R}, {t,0,100}]

β=0.44 sol = f[1400, β, 7, 0.0002, 10];
s[t_] := S[t] /. sol[[1, 1]];
i[t_] := J[t] /. sol[[1, 2]];
r[t_] := R[t] /. sol[[1, 3]];
cf1[t_] = (10+0*Tanh[2*(30-t)])/10*β*i[t]*s[t]/1400;

sol = f[1400, β, 7, 0.0002, 9];
s[t_] := S[t] /. sol[[1, 1]];
i[t_] := J[t] /. sol[[1, 2]];
r[t_] := R[t] /. sol[[1, 3]];
cf2[t_] = (9+1*Tanh[2*(30-t)])/10*β*i[t]*s[t]/1400;

sol = f[1400, β, 7, 0.0002, 6];
s[t_] := S[t] /. sol[[1, 1]];
i[t_] := J[t] /. sol[[1, 2]];
r[t_] := R[t] /. sol[[1, 3]];
cf3[t_] = (6+4*Tanh[2*(30-t)])/10*β*i[t]*s[t]/1400;

Plot[{cf1[t], cf2[t], cf3[t]}, {t, 15, 45}, 
PlotRange -> {0, 2}, GridLines -> 
{{29, 30, 31}, {0.1, 0.4, 0.5, 0.6, 0.7, 0.8}}]
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

計算の結果,次のグラフが得られた。西浦さんのものと概ね一致する。


図1 SIRモデル+シグモイド関数制限措置による新規感染者数の変化
 (縦軸の単位は万人,横軸の単位は日=3/20を基準とした経過日数,
青:制限なし,オレンジ:80%に制限,緑:20%に制限)


図2 上記に,60%,40%,30%に制限などの場合を加えたもの

なるほど,中途半端な制限ではだめだということか。30%に制限するあたりが増加かどうかの臨界点かもしれない。この度の緊急事態宣言はどの程度の効果があるのだろうか。


2020年4月6日月曜日

奈良コンベンションセンター

4月1日,近鉄奈良線新大宮駅から徒歩10分の大宮通りと三条通りに挟まれた区域に奈良コンベンションセンターがオープンした。近くのホテルマリオットはまだオープンしていなかったが,おしゃれな蔦屋書店は中川政七商店とコラボレーションしながら開店していた。新型コロナウイルス感染症で不要不急の外出を自粛させられている中,用事があったのと,まあ人はいないだろうという予測のもとに探索に出かけた。実際お客さんはほとんどいなかった。地下の駐車場もガラガラだった。

蔦屋書店がおしゃれであることは認めるけれど,本屋の価値の本質はおしゃれにあるわけではないので,あまり好きではない。見掛け倒しのために洋書を壁面に糊付けするセンスには耐えられないのだった(それはここじゃないけど)。もう一つの大問題。理工書がほとんどないのである。しかも数学と物理は妙にかけ離れた場所に存在していた。なんだかなあ。

もちろんビレッジバンガード(こちらはきらいじゃない)とか丸善などの本のアレンジだって好き嫌いはあるのだろうけれど,ジュンク堂にがっつり並んだ理工書のボリュームを見ると安心するのであった。

そんなわけで,文句をいいながらも,無人支払機を試してみるべく久しぶりに文庫本を一冊買って帰った。親切に使い方を教えていただいてありがとうございました。

2020年4月5日日曜日

ニューヨーク州の集団免疫率

米国の集団免疫率からの続き

前回に続いて,IHME(Institute for Health Metrics and Ecaluation)におけるニューヨーク州(人口1900万人)の新型コロナウイルス感染症についての予測について考える。4月4日のWHOのデータによれば,米国の新規感染数累計は24万人,死亡数累計は5800人である。ニューヨーク州ではそれぞれが10万人と2900人であることから,米国全体の40%と50%をしめている。

IHMEのニューヨーク州の予測を,我々のSIIDR2モデルで追試してみる。ニューヨーク州のデータは上記の観察から,前回求めた米国のデータyaを2.5で,zaを2.0で割ることで求める(アバウトすぎるがオーダーがわかればよいという立場なので)。時間データxaは前回と同じ基準日(3月10日)である。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
xa=[0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,
10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,
20,21,22,23,24]
ya=[0.014,0.021,0.030,0.038,0.051,0.051,0.051,0.106,0.107,0.215,
0.317,0.462,0.462,0.958,1.28,1.58,1.93,2.07,2.59,3.14,
3.72,4.27,4.95,5.68,6.48]/2.5
za=[0.06,0.08,0.09,0.11,0.12,0.12,0.12,0.18,0.18,0.30,
0.46,0.61,0.61,1.22,1.43,2.04,2.68,3.01,3.77,5.06,
6.41,7.28,8.65,11.7,14.6]/100/2.0
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

SIIDR2モデル計算の下図の結果は次のパラメタで与えられる。
$\beta = 0.89, \nu = 0.01, \lambda = 21, \tau = 14, \alpha_1 = 5.0/0.80 ,\alpha_2 = 5.0/0.20, \gamma_1 = 15/0.92, \gamma_2 = 15/0.08$
$\gamma_2$は米国の場合と比べて2/3程度にとっていることに注意する。


図1 ニューヨーク州の感染カーブ(u3=重症感染数,u4=死亡数,u6=新規感染数累計)

図2 ニューヨーク州の感染カーブ(同上,u5=回復(免疫獲得)数)

IHME予測の定性的な振る舞いを再現することができたりできなかったりしている。
① 4月10日の中旬(t=30)に重症感染数はピークアウトする(図1u3のピーク位置)
 は10日ほど後にずれている。
② ピーク時の必要病床数(図1 u3のピーク値)が7.5万床→6.5万床程度。
③ 6月上旬(t=90)段階の死亡数は1.6万人に達する(図1のu4の収束値)はほぼ再現。
④ 6月上旬(t=90)にはおおむね終息している(ただしu3はテイルが長い)。
⑤ 終息後のニューヨーク州の集団免疫率は4%にになる(図2のu6の値400/1万=4%)


主観的意見:たぶん報道の様子からすると,米国の様々な感染症対策はこのIHMTのデータに基づいて立案されているのではないかと推察される。しかし,日本にはこれに対応するシミュレーションが存在しない,若しくは存在していてもオープンにされていない,若しくは存在しているがインプットデータの信頼性が著しく低いので正しく利用されていない(印象操作には用いられている)。

[1]基本再生産数と集団免疫率(2020.3.27)
[2]倍加時間と基本再生産数(2020.3.29)
[3]新規感染数累計の増倍率(2020.3.31)
[4]湖北省の集団免疫率(2020.3.28)
[5]韓国の集団免疫率(2020.4.3)

2020年4月4日土曜日

米国の集団免疫率(1)

韓国の集団免疫率からの続き

ワシントン大学にある研究所のIHME(Institute for Health Metrics and Ecaluation)では,COVID-19 Projections として,米国の新型コロナウイルス感染症についての予測を行っている。入院病床,ICU病床,人工呼吸器などの必要数がシミュレーションされている。それによればこれらは4月の中旬にピークアウトし,ピーク時の必要病床数波26万床(必要ICU病床数は4万床)である。また,7月の初旬には終息するとされている。また7月段階での死亡数は9万人以上に達する。

これは,3月27日付の論文 "Forecasting COVID-19 impact on hospital bed-days, ICU-days, ventilator- days and deaths by US state in the next 4 months"  によるものであり,Githubには彼らのGeneric curve fitting package with nonlinear mixed effects model の説明とそのコードもある

これを我々のSIIDR2モデルで追試してみる。まず米国のデータをWHOのSituation Reportsからとって人口で正規化すると1万人当りの新規感染数累計ykと死亡数累計zkが得られる。なお,新規感染数累計が人口の1ppmを超えた基準日は3/10であり,3/10から4/3までの25日分のデータを与える。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
xa=[0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,
10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,
20,21,22,23,24]
ya=[0.014,0.021,0.030,0.038,0.051,0.051,0.051,0.106,0.107,0.215,
0.317,0.462,0.462,0.958,1.28,1.58,1.93,2.07,2.59,3.14,
3.72,4.27,4.95,5.68,6.48]
za=[0.06,0.08,0.09,0.11,0.12,0.12,0.12,0.18,0.18,0.30,
0.46,0.61,0.61,1.22,1.43,2.04,2.68,3.01,3.77,5.06,
6.41,7.28,8.65,11.7,14.6]/100
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

SIIDR2モデル計算の下図の結果は次のパラメタで与えられる。
$\beta = 0.72, \nu = 0.03, \lambda = 21, \tau = 14, \alpha_1 = 5.0/0.80 ,\alpha_2 = 5.0/0.20, \gamma_1 = 15/0.87, \gamma_2 = 15/0.13$
これまでの韓国や湖北省の計算では,$\gamma_1 = 15/0.96, \gamma_2 = 15/0.04$に固定していたが,それでは死亡数が再現できなかったので約3倍の値に設定していることに注意する。これによって1万人当たり(米国の人口は3.27億人なので下記を3270倍すると実人数になる)の値が得られる。

図1 米国の感染カーブ(u3=重症感染数,u4=死亡数,u6=新規感染数累計)

図2 米国の感染カーブ(同上,u5=回復(免疫獲得)数)

我々のモデルでもIHME予測の定性的な振る舞いを再現することができる。
① 4月の中旬(t=35)に重症感染数はピークアウトする(図1u3のピーク位置)。
② ピーク時の必要病床数は26万床に達する(図1 u3のピーク値)。
③ 7月上旬(t=110)段階の死亡数は9万人に達する(図1のu4の収束値)。
④ 7月上旬(t=110)には終息している。
終息後の米国の集団免疫率は1%にすぎない(図2のu6の値100/1万=1%)

[1]基本再生産数と集団免疫率(2020.3.27)
[2]倍加時間と基本再生産数(2020.3.29)
[3]新規感染数累計の増倍率(2020.3.31)
[4]湖北省の集団免疫率(2020.3.28)
[5]韓国の集団免疫率(2020.4.3)


2020年4月3日金曜日

韓国の集団免疫率

湖北省の集団免疫率からの続き

中国以外の多くの国では感染拡大が終息していないが,韓国では中国に続いて感染拡大が収まりつつあるように見える。そこで,韓国では現在どの程度の集団免疫が獲得されたかを,前回と同様にSIIDR2モデルで推定してみよう。

まず,データはいつものようにWHOのSituation Report(South Korea)を用いる。新規感染数累計(Confirmed)と死亡数累計(Deaths)の日次統計を韓国の人口5180万人でわったものから,1万人当りの人口比データを取り出した。新規感染数累計が人口の1ppm(百万分の一)を越えた時点を基準日とすると,韓国の基準日は2020年2月19日となる。このデータを示しておく。xkが基準日からの日数(2/19〜4/2までの44日間),ykがConfirmedの人口比(/万人),zkがDeathsの人口比(/万人(zk全体を100で割っていることに注意する)。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
xk=[0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,
10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,
20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,
30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,
40,41,42,43]
yk=[0.010,0.020,0.039,0.067,0.116,0.147,0.189,0.243,0.341,0.451,
0.608,0.721,0.813,0.929,1.029,1.113,1.213,1.306,1.377,1.425,
1.450,1.497,1.519,1.540,1.561,1.576,1.590,1.606,1.606,1.624,
1.670,1.699,1.718,1.730,1.745,1.764,1.784,1.802,1.830,1.850,
1.865,1.889,1.909,1.926]
zk=[0.00,0.02,0.02,0.04,0.10,0.14,0.19,0.23,0.25,0.25,
0.33,0.35,0.42,0.54,0.62,0.68,0.81,0.85,0.97,0.98,
1.04,1.16,1.27,1.27,1.39,1.45,1.45,1.56,1.56,1.62,
1.81,1.97,2.01,2.14,2.32,2.43,2.53,2.68,2.78,2.93,
3.05,3.13,3.19,3.26]/100
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

SIIDR2モデルのパラメタを次のようにとると韓国の上記データがおおむね再現できる。
$\beta=0.95, \nu=0.03, \lambda=8, \tau=5, \alpha_1=5.0/0.80, \alpha_2=5.0/0.20, \gamma_1=15.0/0.96, \gamma_2=15.0/0.04$
なお,下記の図では,u3が重症感染者,u4が死亡数累計(Deaths),u5が回復(免疫獲得)者,u6が新規感染数累計(Confirmed)を与えている。
図1 韓国の感染カーブ

もちろん他のパラメタセットの範囲でも同じ結果を与えるが,その場合でも最終的な目標値の集団免疫率の推定値は同じオーダーに収まっている。集団免疫率は集団全体に対する回復(免疫獲得)者の割合なので,現時点での図からわかるように,韓国における集団免疫率は10人/1万人〜0.1%のオーダーに過ぎない

なお,最近(25〜40日)のu6は落ち着いているとはいうものの完全な収束ではなく,直線状に増加しているようにみえるので,我々のモデルではこの定性的な振る舞いを説明できていない。これは毎日,人口の0.2%程度にあたる一定数の感染者が引き続き発生していることを意味している。

参考のため,このモデルの結果を与えている実効再生産数(パラメタセットで定まる)$R_{\rm eff} = \alpha*\beta(t)$を以下に示しておく。

図2 韓国の実効再生産数カーブ


2020年4月2日木曜日

「オーバーシュート」の見分け方

新型コロナウイルス感染症対策本部は2020年1月30日に閣議決定により内閣官房に設置された。内閣総理大臣を本部長とし,官房長官や他の国務大臣が構成員である。その後3月26日に改めて,「新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号) 第15条第1項の規定に基づいて新型コロナウイルス感染症対策本部を設置した」とされた。

2月16日には,この対策本部のもとに,国立感染症研究所の脇田隆字所長を座長として医学・医療関係者からなる新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が設置され第1回の会合が開かれている。なお,テレビでよくみかける感染症数理が専門の北海道大学の西浦博教授は座長が出席を求める関係者だった。

3月19日開催の第8回会議における「新型コロナウイルス感染症の対策の状況分析・提言」において,第1回から第7回までまったく登場していなかった「オーバーシュート」というキーワードが突如として次の文脈で デビューした(強調は筆者)。
特に,気付かないうちに感染が市中 に拡がり,あるときに突然爆発的に患者が急増(オーバーシュート(爆発的患者急増))す ると,医療提供体制に過剰な負荷がかかり,それまで行われていた適切な医療が提供でき なくなることが懸念されます。
SNSでは理系の人々を中心に違和感ありまくりでブーイングが起こっている。
 ○オーバーシュートは指数関数的増大でなく過渡現象の振れ過ぎ部分を指すものだ。
 ○爆発的患者急増はアウトブレイクというのではなかったのか(図1)。
 ○手元の辞書にはそんな意味が載っていない。
 ○何故一般向けにわかりにくい英語の専門用語を使うのか。
 ○そもそもこれは学術専門用語ではない(日本環境感染学会用語集に存在しない)。
 ○欧米の感染症情報にもほとんど出てこないしあってもまったく意味が違う。
 ○指数関数的増大のどこからがオーバーシュートなのかわからない。

図1 outbreak(赤) と overshoot(青) の google serarch trend (30日)
上は世界全体,下は日本

それにもかかわらず,マスコミや政治家によってオーバーシュートは我が国に定着することになった。さすがにちょっと気が引けたのか,専門家会議は4月1日の専門家会議の後の会見で,オーバーシュートの定義を次のように説明することになった
副座長の尾身茂氏(地域医療機能推進機構・理事長)は「オーバーシュートは欧米で見られるように爆発的な患者数の増加を示すが,2日ないし3日のうちに累積患者数が倍増し,しかもそのスピードが継続的にみられる状態を指すと私たちは定義した」と述べた。
実は,「医療提供体制に過剰な負荷がかかり,それまで行われていた適切な医療が提供できなくなる」ことが彼らの強調したいことであって,そのためにあえて新しい用語の選択によって注意喚起したのではないかとも推察できるが,これをグダグダいっても仕方がないので, 2から3日のうちに累積患者数が倍増しという定義を受け入れた場合のオーバーシュートの見分け方について考える。

前提として,SIR的なモデルを仮定し感染期間(感染者数の崩壊定数)を$\gamma$=5日とする。累積患者数は 新規感染数累計,$J(t)=\int_{0}^{t} I(t') dt'$のことであるとして,感染者数が非常に少ない状態から指数関数的に増大する場面を設定する。すでに基本的な関係式は下記参考資料で導出しているので,ここでは結果のみ整理する。時刻$t$日の$J(t)$に対する$\tau$日後の$J(t+\tau)$の比率を$r$とおく。なお,$R_0$は基本再生産数(あるいはその時点での実効再生産数)とする(図2)。
\begin{equation}
\begin{aligned}
r &= \dfrac{J(t+\tau)}{J(t)} = \dfrac{e^{\frac{R_0-1}{\gamma}(t+\tau)}-1}{e^{\frac{R_0-1}{\gamma} t}-1} =  \dfrac{e^{\frac{R_0-1}{\gamma}\tau}-e^{-\frac{R_0-1}{\gamma} t}}{1 - e^{- \frac{R_0-1}{\gamma} t}} \approx e^{\frac{R_0-1}{\gamma}\tau}\\
R_0 &= 1 + \dfrac{\gamma}{\tau} \log r
\end{aligned}
\end{equation}
① 3日で2倍すなわち$\tau=3, r=2$とすると,$R_0$=2.15となる。
② $R_0$=2.15の場合,7日で何倍かというと,$r=e^{7 * 1.15 /5}$=5.00倍になる。
③ 東京では,7日で3倍になっているので,$R_0$=1.78となる。

図2 1週間での$J(t)$の増倍率$r$と基本再生産数$R_0$

つまり,日次報告されている新規感染数累計(Confirmed)$J(t)$が 1週間で5倍程度になる状況が続けば,いわゆる「オーバーシュート」の状態であるということになる。東京ではこれが3倍程度でありそこまでは至っていない。欧州や以前の韓国や湖北省ではオーバーシュートの状態が生じていたが,現在は収まっており$r$も減少している。北米ではオーバーシュート近傍にあるが,$r$は減少傾向にある。日本や東京ではオーバーシュート状態ではないが,$r$は増加傾向にあって予断を許さない(下記の各国の感染者比で$r$を確認)。

$r$は比率なので,報告されている感染数の把握度が不十分であっても(見逃している感染数がかなり存在しているかもしれないとしても),把握度の時間依存性が大きくない限りこの結論には影響しない。

[1]新規感染数累計の増倍率(2020.3.31)
[2]倍加時間と基本再生産数(2020.3.29)
[3]基本再生産数と集団免疫率(2020.3.27)
[4]感染症の数理シミュレーション(8)(2020.3.15)
[5]各国の感染者比(2)(2020.3.12)
[6]各国の感染者比(1)(2020.3.10)
[6]感染症の数理シミュレーション(2)(2020.2.25)
[7]感染症の数理シミュレーション(1)(2020.2.24)


2020年4月1日水曜日

インターネット授業への道

昨日,非常勤先の大阪教育大学の方針が変更された。当初,予定されていた学年暦どおりに4月8日から授業を開始するとのことであったのだが,やはりこの状況なので,通常授業は困難であると判断され,4月8日から4月19日までは休講となった。一安心。

4月20日からインターネット授業(インターネットを活用した授業),5月11日からは対面授業を含めて実施ということである。昨日はzoomによる緊急のFDが開催されて,moodleを活用したインターネット授業の典型例,実施のための体制はどうすればよいか,ということが議論された。

昨年度の大阪教育大学のmoodleの活用率は1/6程度らしいのでなかなか険しい道のりなのである。


学習院大学の田崎さんのGIGAにやさしい遠隔授業を参考にしようと思うが,あと3週間で準備できるだろうか。

2020年3月31日火曜日

新規感染数累計の増倍率

ある集団の単位時間(1日)当りの新規感染数を$f(t)$,新規感染数累計(Confirmed)を$g(t)=\int_{t_0}^t f(t') dt'$とする。$t_0$は基準日である。このとき,$r(t)=g(t+\tau)/g(t)$は期間$\tau$の間に新規感染数累計が何倍に増えたかを示す増倍率を表す。感染が終息すれば
$f(t)$は0となり,$g(t)$は一定に近づくので$r(t) \rightarrow 1$となる。

新規感染数が指数関数的に増大する場合は,$f(t)= a e^{t/\lambda}$となるので,$g(t) = a \lambda (e^{t / \lambda} - 1)$ となる。この場合,$r(t) = \dfrac{e^{(t+\tau)/ \lambda}-1}{e^{ t/\lambda}-1}$であることから,$\lim_{t \to \infty} r(t) = e^{\tau / \lambda}$ に漸近する。

そこで,WHOが毎日報告しているCOVID-19のSituation Reportsの各国の新規感染数累計(Confirmed)の日次統計から $\tau$=7日間としたときの$r(t)$を求めてその特徴を比較する。日次統計には揺らぎがあるので,$\bar{r}(t) = \frac{1}{5} \int_{t-2}^{t+2} r(t') dt'$という5日移動平均をExcelによって求めてグラフを描いた。なお基準日はWHOの統計が始まった2020年1月21日をt=1(日)とする。図1のアジア・太平洋地域の国々はt=41(3月1日)〜t=68(3月28日)を,図2の欧州・北米の国々はt=47(3月7日)〜t=68(3月28日)の範囲で計算した。

図1 アジア・太平洋地域の$\bar{r}(t)$

図2 欧州・北米地域の$\bar{r}(t)$

① アジア・太平洋地域の直近で,オーストラリアの4倍〜韓国の1倍までに対して,欧州・北米地域でアメリカ合衆国の6倍〜イラン・イタリアの2倍の範囲にあり,それぞれ漸減中である。ただし,東京・日本は増加傾向にあり,カナダはっきりした減少傾向が見えない。

② 初期にインフレーションを起した韓国・イラン・イタリアはその後単純な減少カーブを描いている。それ以外の国で複数の山が観測される。例えば,当初収束しているといわれていた台湾,香港,シンガポールに第二の緩やかなピークが生じ,マレーシアやオーストラリア,スペインやアメリカにも大きな第二のピークが現れている。

2020年3月30日月曜日

深紅の碑文:上田早夕里

上田早夕里は,しっかりした世界観に基づいた骨太のSF作品を産み出し続けている。「深紅の碑文」はオーシャンクロニクルシリーズの「華竜の宮」に続く長編作品だ。ホットプルームによる海底隆起で陸地が水没し,人類が陸上民と遺伝子操作された海上民・魚舟に分離する世界で,さらなる環境激変(大異変)にどう対応するかが,複雑な社会関係と政治的駆け引きを書き込みながら語られる。

小松左京と比較されることが多いが,一定の科学的論理に裏付けられて大きな物語が構築される様子は似ているのだろう。ただ,小松左京には,その短編にも見られるような関西のお笑いのノリ(初期の漫才台本原稿の効果?)というのか,長編にも明るさが感じられるのだが,上田早夕里はどこかきまじめでその語りにも甘さより複雑な苦さや暗さが先にくる。日本酒の分類表みたいなものであり,どれも味わい深いのだけれど。最も上田早夕里の他のシリーズは読んだことがないのであくまでも個人の感想です。

ハヤカワJA文庫下巻の渡邊利道さんの解説によれば,長編パートはこれで終了であとは中短編による連作らしいが,海と地球だけでなく深宇宙の物語も早く読んでみたい。

2020年3月29日日曜日

倍加時間と基本再生産数

マスコミを巧妙に活用した情宣作戦というのか,"やってる感パフォーマンス"の演出が大好きなのは維新と安倍だが,土曜日の夕方にまたまた"記者会見もどき"の宣伝工作を行っていた。内容はないようだったが,いつものように滑舌が悪くて"指示"が"Siri"になってしまうため,どこでもDIGA視聴中のiPadがよけいな応答をして画面が止まってしまうのだった...orz

さて,あいかわらず醜悪なポエムに包まれた左右首振りプロンプター官僚作文の中で,一点だけ定量的な発言として興味を引いたのが,感染者数が2週間で30倍以上になるというくだりだった。さっそく前回のメモ基本再生産数と集団免疫率の式を使って考えてみよう。

とりあえず,簡単のためここで登場した感染者数はSIRモデルの$I(t)$のことだとしよう。初期条件が,$S(0) = N, I(0) \ll 1, R(0)=0$の場合,$t=0$近傍の方程式は,次のように近似される。
\begin{equation}
\begin{aligned}
\dfrac{dI}{dt} &=\beta \dfrac{S}{N} I -\dfrac{I}{\gamma} \\
& \approx \bigl( \beta -\dfrac{1}{\gamma} \bigr) I \\
&= \dfrac{R_0 - 1}{\gamma} I
\end{aligned}
\end{equation}
ただし,$R_0 = \beta \gamma $を用いた。これから次の解が得られる。
\begin{equation}
I(t) = I(0) \ e^{\frac{R_0 - 1}{\gamma} t}
\end{equation}
$k$倍加時間を$\tau_k$として,
\begin{equation}
\begin{aligned}
k &= \dfrac{I(\tau_k)}{I(0)} =  e^{\frac{R_0 - 1}{\gamma} \tau_k} \\
\log k &= \frac{R_0 - 1}{\gamma} \tau_k \\
\therefore R_0 &= 1 + \dfrac{\gamma \log k}{\tau_k}
\end{aligned}
\end{equation}
そこで,2週間で30倍≒2倍加時間が3日であることから,$k=2, \gamma=5, \tau=3$をあてはめると,この場合の$R_0=1+ \dfrac{5*0.6931}{3} = 2.15$となる。

付録A:
感染者数というのが$I(t)$でなく,通常示されている新規感染数累計(Confirmed)(→$J(t)$と定義)のことだと解釈するとどうなるだろうか。
\begin{equation}
J(t) = \int_0^t I(t') dt' \approx  \int_0^t I(0) e^{\frac{R_0 - 1}{\gamma} t'} dt' = \dfrac{I(0) \gamma}{R_0-1} \Bigl\{ e^{\frac{R_0-1}{\gamma} t } - 1 \Bigr\}
\end{equation}
2週間で30倍ということは,$30 = \frac{J(t_0+14)}{J(t_0)}$であるが,これを数値計算すると$t_0$=3.8日となる。まあ,そういう解がありうるという以上の情報はないので,これは$R_0$に対する制約条件にはならないということか。

追伸(2020.4.1)
 付録B:
新規感染数累計の増倍率では,感染数の指数関数的な増大$f(t)= a e^{t/\lambda}$が観測される場合の一定期間における累計の増倍率$r(t)$を次のように定義した。
\begin{equation}
r(t) = \dfrac{e^{(t+\tau)/ \lambda}-1}{e^{ t/\lambda}-1} =  \dfrac{e^{\tau/ \lambda}-e^{-t/\lambda}}{1-e^{ -t/\lambda}} \approx e^{\tau/ \lambda}
\end{equation}
これを上記の$J(t)$と組み合わせると,$\lambda=\dfrac{\gamma}{R_0-1}$とすればよい。
したがって,
\begin{equation}
\lim_{t \to \infty}r(t) =  e^{\frac{\tau (R_0-1)}{ \gamma}}
\end{equation}

2020年3月28日土曜日

湖北省の集団免疫率

基本再生産数と集団免疫率からの続き

昨日の基本再生産数と集団免疫率のところで,湖北省(武漢以外)における集団免疫率をSIIDR2モデルで推定したところ,0.2%という結果が得られた。ところで湖北省の感染中心である武漢はどうだろうか。そこで,武漢を含む湖北省について同様の計算を行った。

パラメタを決定するための新規感染数累計と死亡数累計のデータとしては,WHOのSituation Reportを使う。ただし,データが存在しているのは,2月1日のNo.12から3月15日のNo.55までであり,死亡数データはNo.25からNo.55までに限定されている。また2月13日のNo.24から2月14日No.25以降の新規感染数累計のデータには,確定感染者(Confirmed)の定義変更に伴うギャップが存在する。そこで,次のようにデータを加工した。

①定義変更ギャップについては変更前後のデータ倍率を古いデータにも当てはめて新しい定義にそろえる。
②欠落している初期部分については指数関数的な振る舞いを仮定して,未欠落部分につががるように補完する。こちらの方は,データ数もそれほど多くないので,後のモデルパラメタ推定にはそれほど大きな影響を与えない。

2月1日を基準日0として50日分の以下のjuliaコード用のデータが得られた。xhは時間(日)
yhは新規感染数累計,zhは死亡数累計である。なお湖北省の人口を5900万人として,1万人当りの数に換算している。

xh=[0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,
22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,
43,44,45,46,47,48,49]
yh=[0.370,0.478,0.612,0.777,0.979,1.223,1.517,1.944,2.420,2.957,
3.684,4.387,4.982,5.677,6.225,6.872,7.428,7.885,8.318,8.811,
9.221,9.534,9.861,10.168,10.455,10.514,10.621,10.755,10.862,
10.896,10.981,11.049,11.118,11.172,11.244,11.340,11.373,11.393,
11.412,11.435,11.456,11.469,11.476,11.482,11.485,11.487,11.488,
11.489,11.490,11.491]
zh=[0.028,0.031,0.035,0.039,0.043,0.049,0.054,0.060,0.067,0.075,
0.084,0.094,0.105,0.117,0.130,0.145,0.162,0.181,0.202,0.223,
0.247,0.271,0.287,0.303,0.326,0.344,0.363,0.381,0.398,0.423,
0.434,0.443,0.448,0.455,0.462,0.468,0.475,0.480,0.487,0.492,
0.497,0.502,0.506,0.510,0.513,0.516,0.518,0.519,0.521,0.523]

SIIDR2モデルのパラメタを次のようにとると,上記データがほぼ再現できる。
$\alpha_1=5/0.80, \alpha_2=5/0.20, \gamma_1=15/0.96, \gamma_2=15/0.04, \beta=0.88, \nu=0.30, \lambda=7, \tau=5$。もちろんパラメタには不定性があるが,データの再現性を制約条件とした場合に,感染数や回復数(免疫獲得数)などの結果が大きく変わることはない。以下の図では,u2:軽症感染数(無症状含む),u3:重症感染数(隔離済),u4:死亡数累計=Deaths,u5:新規感染数累計=Confirmed,u6:回復数(免疫獲得数)である。

図1 湖北省(2/1〜3/15)の1万人当り感染状況

つまり,人口5900万人の湖北省では1万人当り約60人の水準(0.6%)で免疫獲得数が飽和している。これを前回の結果(武漢以外の湖北省で1万人当り約20人)と組み合わせると,武漢市の免疫獲得者は5900*60-4800*20=258,000人となり,武漢市の集団免疫率は2.6%になる。これでもまだ少ないのでいつでも再燃する可能性がある。

このパラメタにおける実効再生産数 $R_{\rm eff}= \alpha \beta(t)  = \alpha \dfrac{\beta}{15}\{8+7 \tanh(-\frac{t-\tau}{\lambda}) \} $は次のようになる。$t$=20日までの平均で$R_{\rm eff}=1.415$,$t$=30日までの平均は$R_{\rm eff}=1.044$となる。


図2 湖北省データを再現する実効再生産数 R_eff(t=0〜49)

2020年3月27日金曜日

基本再生産数と集団免疫率

感染症数理の基本的なモデルであるSIRモデルについて自分は十分理解できていなかった。奈良女子大の高須さん[1]や神戸大の牧野さん[2]や京大の門さん[3]の資料が大変わかりやすくて勉強になった。

きっかけはツイッター@nagayaさんの次のコメント
R0=2なら国民の50%、3なら66%、逆に1.5なら33%の免疫獲得で理論上は収束に向かいます(この理論値を超えて免疫獲得した分が「オーバーシュート」)。日本は自粛とクラスター追跡、検査を絞って1.2程度にして医療崩壊を避けようとしたんでしょう。無理です。長期化しますし、指数関数的に潜在します。
基本再生産数$R_0$と集団免疫率に関係あったっけ?ということで高須さんの資料で学び直し。

SIRモデルは,感受性保持者(Susceptible,$S(t)$)・感染者(Infected,$I(t)$)・免疫保持者(Recovered,$R(t)$ )からなる力学系モデルであり次の微分方程式を満たす($\beta, \gamma$の定義に注意 )。ここで$t$は時間であり,最も単純なバージョンでは集団の人数を$N$として$S(t)+I(t)+R(t)=N$は保存量である。なお,$\beta$は感染率(1人単位時間当りの感染数),$\gamma$は感染期間である。
\begin{equation}
\begin{aligned}
\dfrac{dS}{dt} &= -\beta \dfrac{S}{N} I\\
\dfrac{dI}{dt} &= \beta \dfrac{S}{N} I  - \dfrac{I}{\gamma} \\
\dfrac{dR}{dt} &=  - \dfrac{I}{\gamma}\\
\end{aligned}
\end{equation}
これからわかること。集団中の感受性保持者(免疫非保持者)の割合を$p(t)=\dfrac{S}{N} $とすると,$p(t) > \dfrac{1}{\beta \gamma}$で感染拡大,$p(t) < \dfrac{1}{\beta \gamma}$で感染縮小となる。そこで,基本再生産数を$R_0 = \beta \gamma$と定義すると,$p(0)=1$の初期状態において,$R_0>1$で感染拡大,$R_0<1$で感染縮小となる。なお,実効再生産数が$R_{\rm eff}=R_0 p(t)$  と定義される。

また集団免疫率を$\pi(t) = 1-p(t)$と定義すると,感染拡大と縮小の分岐点$\tau$では,$1-\pi(\tau) = \dfrac{1}{R_0}$である。これが@nagayaさんの示した関係式だった。

次に十分時間がたって$I(\infty)=0$となるときの集団免疫率$\pi(\infty)$と$R_0$の関係を求めてみよう。もとの微分方程式系の第1式と第3式から次の微分方程式が得られる。
\begin{equation}
\begin{aligned}
\dfrac{dS}{dR} &= -R_0 \dfrac{S}{N}\\
\dfrac{dS}{S} &= -R_0 \dfrac{dR}{N}\\
\log S + C &= -R_0 \dfrac{R}{N} = -R_0 (1-\dfrac{I}{N} - p(t) ) = -R_0 (\pi(t) - i(t) )\\
\end{aligned}
\end{equation}
ただし,$i(t)=\dfrac{I}{N}$であり,$i(\infty)=0$。そこで,$S(0)=N$として$\pi(\infty)=\pi$とすると,
\begin{equation}
\begin{aligned}
\dfrac{S(t)}{S(0)} &= e^{-R_0\{ \pi(t) - i (t) \}} \\
p(t) = 1-\pi(t) &=  e^{-R_0\{ \pi(t) - i (t) \}} \\
1- \pi &= e^{ -R_0 \pi } \\
R_0 &= - \dfrac{1}{\pi}\log (1- \pi )
\end{aligned}
\end{equation}
図1 t=∞における集団免疫率π(横軸)と基本再生産数R0(縦軸)

分岐点における$\pi(t)$と$R_0$の関係式とは異なった関係を与えていることに注意しよう。

付録:juliaにおける上記プロットのコード
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
using Plots
gr()
x = 0.05:0.05:0.95
f(x) = .- 1 ./ x .* log.(1 .- x)
y = f(x)
plot(x, y, label="")
savefig("sir.png")
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

追伸:
以上は簡単なSIRモデルの場合だが,湖北省(武漢以外)をおおむね説明したSIIDR2モデルにたいして,十分な時間がたったときの湖北省(武漢以外)の集団免疫率はどのように推定できるだろうか。パラメタセット,$\alpha_1=5/0.80, \alpha_2=5/0.20, \gamma_1=15/0.96, \gamma_2=15/0.04, \beta=0.915, \nu=0.025, \lambda=7, \tau=7$について計算すると,Recovered $u_5$は1万人当り19程度に収束し,集団免疫率はたかだか0.2%にどどまる
図2 湖北省(武漢以外)のSIIDR2モデルよる集団免疫率の評価

[1]伝染病のモデル−大域情報学(高須夫悟)
[2]コロナウィルス(SARS-CoV-2)の(単純な) 数学モデル(牧野淳一郎)
[3]この感染は拡大か収束か:再生産数 R の物理的意味と決定(門信一郎)

2020年3月26日木曜日

パーセク

天文学における距離の単位に,光年とならんでパーセクがあるが実感としてわかっていなかった。もちろん定義も。

どこかで,1天文単位(太陽地球間の距離)を見込む角が1秒になる距離がパーセクであるという定義をみかけた。散歩中に暗算してみたが,その過程で太陽半径(地球半径の100倍,64万km)は地球−月軌道半径(38万km)より大きいことに驚いてしまった。まあ,いわれてみればそうである。で,太陽を見込む視角と比較しようとしたが,暗算力が落ちていてよくわからなかった。

まず,1秒をラジアンに直す。1秒 = 1/3600度 = 1/3600 * π/180 ラジアン = 1/(6^3*10^3) ラジアン ≒ 1/(2*10^5) ラジアンかな。1パーセク× tan 1秒 = 1天文単位なので,1パーセク =
1天文単位 ÷ {1/(2*10^5)},1天文単位は1.5×10^8 kmなので,1パーセクは3×10^13 kmだ。1光年は 3×10^5 km /s * π×10^7 s = 10^13 km なので,1パーセクは3光年くらいかな。しらんけど。


2020年3月25日水曜日

DeepL翻訳

googleからスピンオフしたチームによる「DeepL翻訳」のクオリティが高いという評判だったので試してみた。

One hundred years have passed since Ryunosuke Akutagawa published "The Spider's Thread". The theme of the class costume procession in the autumn school festival in the second year of high school was the spider thread. He cut the bamboo of the Buddha's paradise tower from the neighborhood and drew a picture of the flames and smoke of hell. When he was a hell-raiser flocking to the spider thread (the mountaineer's red foil) after Gubata.

カンダタがGubataになっているものの,なんとなくうまくできているようだ。タイトルの On a thread of the web は,ウエブのスレッドということでした。以前のみらい翻訳と比べてどうだろうか。一長一短かもしれない。

2020年3月24日火曜日

翔んで兵庫

先日,大阪府の吉村知事は,春分の日を含む三連休に大阪府と兵庫県の間での不要不急の往来自粛を要請した。法的根拠を指摘されると,厚生労働省から非公開の文書が出ていたのでそれを重視して府知事の判断で要請を発したと弁明した。

ところがこの「大阪府・兵庫県における緊急対策の提案(案)(3月16日,北海道大学西浦博教授)」が公開されるとSNS上ではさっそく突っ込みが入り,危険区域は大阪府・兵庫県であり,「大阪府・兵庫県内外の不要不急な往来の自粛を呼びかける」とは大阪府と兵庫県の間だけの遮断を意味するのではないだろう,読解力はないのかという声があがった。

吉村知事の判断は,半分はリーズナブルで,半分はいつものような維新の粗っぽい決断力顕示欲(パフォーマンス)が見られるような気がする(本気ならば関西広域連合の定例会にも出席し,兵庫県と打ち合わせした上で決断するべきだろう)。それはさておき,ここではシミュレーションによってその判断の合理性を検討する(ただし,吉村も大阪府もまともに分析・吟味はしていないだろう,していれば説明できるはず)。

問題を,「感染者が急増している地域とそれほどでもない地域の間の交流の遮断が,感染者の増加率やピーク日にどのような影響があるのか」というふうに設定しよう。簡単のためにSIRモデルを用いる。大阪府の人口は880万人,兵庫県への移動人口は11万人(1.25%→pとおく),兵庫県の人口は550万人,大阪府への移動人口は33万人(6.00%→qとおく)であり,感染確率は大阪府的A地域で$\beta_a$=0.20,兵庫県的B地域で$\beta_b$=0.25とし,B地域の方がより感染が拡大していると仮定する(本当のところは,大阪府のPCR検査拒否率がトップであることを考えるとよくわからない)。なお,3/22現在の感染者数は,大阪府125人(14ppm),兵庫県107人(19ppm)であるが,初期条件はともに10ppmから計算をはじめる。(注:この移動人口は平日の場合だろうと思われるが,これを適用する。)

2つの地域A,Bに対して,SIRモデルをあてはめ,感染者の移動人口分も感染に寄与すると仮定すると次式が成り立つ。計算はExcelで1000人を1単位,時間は1日を1単位として差分(以下では微分方程式で表現)により実行する。したがって,人口の初期値はA地域で$n_a$=8800,B地域で$n_b$=5500とする。また平均回復日数を$\gamma$=10とする。$p,q$は各地域の移動人口の割合である。

\begin{equation}
\begin{aligned}
\dfrac{dS_a}{dt} &= - \beta_a \dfrac{S_a}{n_a} \{ I_a - (1-p) q I_b \} \\
\dfrac{dI_a}{dt} &= \beta_a \dfrac{S_a}{n_a} \{ I_a - (1-p) q I_b \} - \dfrac{I_a}{\gamma} \\
\dfrac{dR_a}{dt} &= \dfrac{I_a}{\gamma} \\
\dfrac{dS_b}{dt} &= - \beta_b \dfrac{S_b}{n_b} \{ I_b - (1-q) p I_a \} \\
\dfrac{dI_b}{dt} &= \beta_b \dfrac{S_b}{n_b} \{ I_b - (1-q) p I_a \} - \dfrac{I_b}{\gamma} \\
\dfrac{dR_b}{dt} &= \dfrac{I_b}{\gamma}
\end{aligned}
\end{equation}

図 SIRモデルシミュレーションの対数プロット

その結果,次のことがわかった。なお,感染ピークは感染者数 $I(t)$ のピーク日,感染倍率は $I(t)$ を等比級数に近似した場合の公比/日である。ピーク日が前倒しされ,感染倍率が増えるほうが危険度が増すということになる。

①両地域($\beta_a$=0.20, $\beta_b$=0.25)を分離した場合はそれぞれ次のようになる。
(感染ピークA 94日,感染倍率A 1.099,感染ピークB 68日,感染倍率B 1.148)
②①の両地域がp=1.25% q=6.00%で結合した場合は次のようになる。
(感染ピークA 81日,感染倍率A 1.116,感染ピークB 67日,感染倍率B 1.151)
③②の条件で地域Bの感染率が低い場合($\beta_b=0.15$)は次のようになる。
(感染ピークA 93日,感染倍率A 1.102,感染ピークB 130日,感染倍率B 1.066)

したがって,自分の地域よりも感染率の高い地域は遮断したほうがよい(感染者数が倍増する日数が7.5日から6.5日になる程度)。感染率の低い地域を遮断してもあまり影響はない(それでも若干危険度は増大する)。ただし現実の大阪・兵庫がこのモデルのケースに当てはまっているかどうかは断定できない。モデルが単純すぎるかもしれないし,基礎データの信頼度が低いと思われることによる。

2020年3月23日月曜日

2020年3月22日日曜日

(春休み 4)

「お彼岸のきれいな顔の雀かな」 (勝又一透 1908-1999)

2020年3月21日土曜日

2020年3月20日金曜日

(春休み 2)

「淡雪のつもるつもりや砂の上」 (久保田万太郎 1889-1963)

2020年3月19日木曜日

(春休み 1)

「春の雪青菜をゆでてゐたる間も」 (細見綾子 1907-1997)