2020年3月12日木曜日

各国の感染者比(2)

各国の感染者比(1)からの続き

新型コロナウイルス感染症の話。
感染者数が一定の数あるいは人口比になった日時とその値を共通の原点として,各国の感染者数や人口比を対数グラフに表して観察する方法についてSNS上であれこれ話題になっている。最初の指摘は「他国と比べて日本だけが特異な振る舞いを示しているのは人為的な要因(検査の絞り込み等)の結果ではないか」というものであった。

これに対して,感染者数基準のプロットではほとんど重なって見えた他国・地域については,人口比にすれば分離して見えることを指摘した。それにもかかわらず,中国,湖北省(武漢以外),韓国,日本,イタリア,イランの比較では日本だけが異なった傾向を見せた(緩慢な指数関数型増加)。一方,症例の少ない多くの国を含めて比較すれば,日本だけが特異なのではないというクレームがついていた。ただし,無原則にあれもこれも混ぜてしまうのは問題の本質を見失う危険性があるので正しくない方法論だ。

そこで,アジア太平洋地域で一定の感染者が報告されている国々と日本,韓国について前回と同様の分析を行った。対象は,韓国,日本,台湾,香港,シンガポール,オーストラリアの6カ国とした。なお,今回の追加データは,ジョンズ・ホプキンズ大学のアーカイブから取得している。各国の人口,1ppm達成日,3/9時点での新規確定感染数累計(Confirmed)/人口(Population)は,オーストラリア(2460万人,2月29日,3.7ppm),日本(12600万人,2月22日,4.1ppm),韓国(5180万人,2月19日,140ppm),シンガポール(560万人,1月27日,15ppm),台湾(2360万人,2月20日,1.9ppm),香港(740万人,1月26日,8.1ppm)である。


図 各国の感染者比(基準日は1ppm時点,縦軸はppmの常用対数)

(1)韓国と台湾は,それぞれ異なった水準ではあるが収束に向かう様子が窺える。

(2)欧州の感染者急増国の多くは韓国と相似形の振る舞いをしている。

(3)取り上げたアジア太平洋諸国(韓国,台湾以外,日本を含む)は対数グラフでおおよそなだらかな1次関数で増加している(すなわち,底の小さな指数関数的増加)。したがって,まだ収束の様子はみられない。

(4)香港とシンガポールは1次関数のスロープが原点から2週目以降でよりゆるやかに変化している。なんらかの抑制策が効果を発揮したのかもしれない。シンガポールは0日から18日まで平均15.5%,18日から42日まで平均3.5%で増加,香港は0日から15日まで平均11.0%,15日から43日まで平均4%で増加している。なお,日本は,0日から16日まで平均9%とその中間になっている。

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