2020年3月2日月曜日

全国の小中高等学校の休業の効果

新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する中,2月27日(木)の夕方,安倍首相は全国すべての小学校・中学校・高校・特別支援学校等に,3月2日から春休みまでの期間,臨時休業とするよう要請する考えを表明した。そして今日からその休業が始まった。

ここではその是非ではなくて,感染機会を減少させる上で休業の効果がどの程度ありうるかについて考えてみたい。人間の1日の生活時間において感染の機会は,その活動における他人との接触による(間接的なモノを通しての感染もあるとは思う)。このとき,人との距離が近い密集した空間のほうがその危険性は大きいとNHKでも宣伝していた。そこで,1日の活動時間とその活動時の単位面積当りの他者の人数の積和を全国民に渡って平均すれば,感染機会の大きさを定量的に評価できるのではないかと考えた。

まず,生活時間を調べよう。5年おきに実施している最新の平成28年社会生活基本調査のデータをみよう・・・うーん。面倒なので勝手に考えることにする。睡眠7時間,家庭・食事5時間,通勤・通学等1時間,仕事・学校・塾8時間,その他活動3時間。

また,次に平成27年国勢調査学校基本調査を参考にしよう・・・うーん。まあだいたい,1億2700万人の国民が,幼稚園・幼保連携型認定こども園・保育園に400万人(3%),学校(小〜大)に1700万人(13%),職場に5900万人(47%),老人・乳幼児等が4500万人(35%),病院・介護施設等に200万人(2%)となる。国勢調査によれば世帯数は5300万世帯で,世帯人数が1人(34%),2人(28%),3人(18%),4人(13%),5人以上(7%)となっている。

まず,家庭での時間を考える。15㎡の部屋に家族が集まって食事や団欒の時間を過ごす。その時間が3時間として,睡眠時間を含め9時間は1人でいるものとする。そこで感染機会Cに寄与するのは複数で過ごす時間である。
C(家庭) = 0人/㎡*9時間 + (0*0.34 + 1*0.28 + 2*0.18 + 3*0.13 + 4*0.07)人/15㎡*3時間 = 0.21

次に,学校と職場である。教室の面積を9*7=60㎡として,平均収容人数を30人とすると,
C(幼保+学校) = (0.03 + 0.13)*30人/60㎡*8時間 = 0.64
職場は非常に多様な環境であり,えいやっと1人1坪のオフィスや工場を考える。
C(職場) = 0.47*1人/3.3㎡*8時間 = 1.14

通勤通学時間は,NHKによる2015年の国民生活時間調査と国勢調査が参考になる。徒歩(7%),自転車等(15%),自家用車(47%),電車バス等(31%)である。また,電車の1人当り立席専有面積は0.3㎡らしいので,3.3人/㎡を用いることにする。
C(通勤+通学) =(0.03+0.13+0.47){ (0.07+0.15+0.47)*0人/㎡*1時間 + 0.31*3.3人/㎡*1時間 }= 0.64

その他はよくわからないので,ざっくりと職場と学校の平均0.4人/㎡をとる。
C(その他) = 0.98* 0.4人/㎡ *3時間 = 1.18

病院・介護施設もよくわからないが2%なので家庭に含めてしまった。したがって,
C(全体) = C(家庭) + C(幼保+学校) + C(職場) + C(通勤通学) + C(その他) = 0.21+0.64+1.14+0.64+1.18 = 3.81

学校が休業になるとC(学校)とC(通学)の分は減るが,半分は学童保育などで残るだろう。
なお,小中高等学校だけなので,全人口に対する寄与率は0.13ではなく,高等教育機関などを除いた0.10である。そこで学校一斉休業による減少項は,
C(休校) = {0.10*30/60*8 + 0.10*0.31*3.3 } * 0.5 = 0.25

つまり,この度の全国一斉学校休業による感染機会Cの減少効果は,0.25/3.81≒7%ということになる。まあこんなものだろうか。これからみると,さらに努力することができる部分は家庭や仕事以外のその他の部分である。

P. S. 時差出勤やテレワークなどによって,通勤時の混雑緩和をはかり,乗車率が50%になれば,C(通勤)= {0.47*0.31*3.3 } = 0.24 だけ減少するので,ほぼ全校休校措置と同程度の効果をもたらすことになる。かもしれない。

[1]新型コロナウイルス感染症対策本部(首相官邸)
[2]新型ウイルス研究者試算 対策組み合わせで入院患者6割以上減(NHK)


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