京都の紫野今宮神社には名物のあぶり餅屋がある。境内前に2軒ありそのうちの一文字屋和輔,一和のほうに入った。新型コロナウイルス感染症の影響で,京都は観光客が少なく,あぶり餅屋も手持ちぶさた。庭のみえるお座敷に通されたが,我々夫婦の他には誰もいない。名物のあぶり餅はおいしかった。その縁起によれば,一条天皇(980-1011)の頃に悪疫がはやり,今宮神社で悪疫退散の祈願をした。そのときに初代が,この阿ぶり餅を神前に供え,そのお下がりを喰う人が疫病をのがれたとのこと。一和の創業は長保二年(1000)とある,すごすぎる。というわけで,疫病退散の今宮神社と一和を訪れたのはまことにタイムリーだったわけである。
疫病対策に大仏を建立したり,祇園祭を始めたり,あぶり餅を普及させたりと,奈良や京都では昔から工夫をこらし,その成果が観光資源として現在まで続いている。疫病の社会に対するインパクトはこれほどまでに大きい。このたびの新型コロナ疫でも後世に残るような文化資産につながる対策を考案する必要があるのではないかいな。
写真:あぶり餅の一和(2020年3月3日撮影)
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