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2020年3月8日日曜日

感染症の数理シミュレーション(6)

感染症の数理ミュレーション(5)からの続き

湖北省(武漢以外)のデータでは,新規/累計感染者数 f(t), g(t) と新規/累計死亡数 h(t), i(t) を簡単な近似関数で表現した。これを用いると,感染症の数理シミュレーション(3)のSIIDR2モデルにおけるパラメータを絞り込むことができるのではないだろうか。

そこで,前回示したSIIDR2の方程式系と今回の実測データ近似関数の関係を整理してみよう。
S:du1dt=βnu1u2=βnα2fu1I1:du2dt=βnu1u2u2α1u2α2=βnα2fu1(1+α2α1)fI2:du3dt=u2α2u3γ1u3γ2=f(1+γ2γ1)hD:du4dt=u3γ2=hR:du5dt=u2α1+u3γ1=α2α1f+γ2γ1hIa:du6dt=u2α2=f
これから次の関係式が得られる。
u1=nu2u3u4u5u2=α2fu3=γ2hu4=hdt=iu5=α2α1g+γ2γ1iu6=fdt=g
さらに,次の前提条件が成り立つとする。
①感染者の2割が発症する[1]。
②致命率(発症者の死亡率)は0.7%である[2]。
③発症までの平均潜伏期間はα=5とする(1/α=1/α1+1/α2) [3]。
④基本再生産数Ro=2.2(1.4〜3.9)より,β=Ro/λ=0.46±0.12  である [2]。
⑤湖北省(武漢以外)の新規死亡数h(t)は20日のピークに0.006/日,40日目の累計で0.12人(1万人当り)[4]。
⑥同上の新規感染者数f(t)は12日のピークに0.25/日,40日目の累計で3.70人(1万人当り)[4]。

I2u3に対する微分方程式du3/dt+u3/γ=fを解いて求めたu3の関数形がγ2hに近づくように定めると,γ=5, γ1=5/0.965,γ2=5/0.035が得られる。ただし,(1/γ=1/γ1+1/γ2)である訂正有り 3/13/2020)→感染症の数理シミュレーション(7)

各関数のT日目の値がわかれば,非感染者の減少分Δu1は次式で与えられる。
Δu1=nu1(T)=u2(t)+u3(T)+u4(T)+u5(T)
さらに湖北省(武漢以外)のT=40日のデータを代入して,u2(T)=α2f(T)0, u3(T)=γ2h(T)0より,Δu1=α2α1g(T)+γ2γ1i(T)+i(T)=14.8+3.4=18.2である。ここで,α1=5/0.8,α2=5/0.2という①の仮定を用いた。

u1(t)において,βが定数であると仮定して微分方程式を解けば,u1(t)=nexp(βnα2g(t))となることから,βα2を与えれば,u1(T)=9982が得られる。先ほどの式と組み合わせるとβ=0.2となる。

まとめると,湖北省(武漢以外)のデータを再現するSIIDR2モデルのパラメタのセットは次のようになる。訂正有り 3/13/2020)→感染症の数理シミュレーション(7)
α1=50.8, α2=50.2, β=0.2, γ1=50.965, γ2=50.035

SIIDR2モデルでは,感染率を時間の関数β(t)として感染対策が行われることを表している。上記のβはそれを平均したものと考えることができる。ところで,上記のI2u2に対する微分方程式は,du2/dt+u2/α=βu2と近似できる(u1/n1)ことから,次のように与えられる。
β(t)=du2/dtu2+1α
u2(t)=α2f(t)を上式に代入したものと,感染症の数理シミュレーション(5)で考えたモデル感染対策時間因子でβ=0.91,λ=7,τ=7と置いたものを下記の図に示す。


図:湖北省(武漢以外)のデータからSIIDR2で導いたβ(t)(下)とモデル化したβ(t)(上)

また,このモデル化された感染対策時間因子β(t)をt=0からt=40まで積分したものを40日で割って平均すると(T=40,β=0.91,λ=7,τ=7),
ˉβ=1TT0β15(8+7tanh((tτ)/λ)dt=0.24
となって,先ほど湖北省(武漢以外)のデータからSIIDR2モデルを経由して導いたβ=0.2と矛盾しないような感染対策時間因子のパラメタセットが存在することがわかる。

[1]新型コロナウイルス感染症対策の見解(厚生労働省)
[2]新型コロナウイルス(COVID-19)感染症(川名・三笠・泉川)
[3]新型コロナウイルス肺炎COVID-19(下畑享良)
[4]tenetニュースサイト
[5]Coronavirus disease (COVID-2019) situation reports(WHO)
[6]COVID-19(奥村晴彦)

感染症の数理シミュレーション(7)へ続く

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