2022年11月12日土曜日

一谷嫩軍記

久々の国立文楽劇場で,第二部の一谷嫩軍記を観劇する。

弥陀六内の段(睦太夫・團吾)から,脇ヶ浜宝引の段(織太夫・燕三),熊谷桜の段(希太夫・清丈)まで気持ちよく寝てしまった。織太夫は病休の咲太夫の代演だったようで,ここはちゃり場だとはいうものの,声が大きいだけで粗っぽくあまり聞く気にはならなかった。家人によれば希太夫が良かったということだが,これは残念ながら聞き逃してしまった。

熊谷陣屋の段の前半が竹本錣太夫と竹澤宗助。モチモチした語り癖はあるとはいうものの,うまく語り分けていて,熊谷次郎直実と妻相模と敦盛の母の藤の局のややこしい話が進んでゆく。後半の切は豊竹呂太夫と鶴澤清介。語り始めの三味線の前奏部分は,似たようなメロディだけれど,宗助に比べると清介の音の方が一段と澄んでいる。バチ捌きはともにするどい。呂太夫は相変わらず声が出ていない。瞬間的なバーストがあったものの,なんだか残念だ。

熊谷陣屋の段は何度か見ているはずだけれど,いまだに物語が飲み込めていなかった。義経が出した桜の前の制札にある「一枝を伐らば一指を剪るべし」の後半の「一指」が「一子」にかかっていて,敦盛を討取ったと見せかけて自分(熊谷直実)の子どもの小次郎の首を差し出すことにせよと解釈するところまではよい。そこに絡む藤の局と相模の関係とか,弥陀六の位置づけがわからなかった。今回,肝腎のその説明部分で寝ていたのだけれど,最終盤で義経を挟んで弥陀六,藤の局,相模,熊谷次郎直実の5人が対称的に並んで見得を切っていたのでなんとなく雰囲気はわかった。

今日は珍しく花道が設置されていたが,第三部に弁慶の勧進帳があるからだった。


図:一谷嫩軍記の熊谷次郎直実(Wikipediaから引用)

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