11月3日文化の日,午前7時50分に例のけたたましいJ-アラートが新潟県・山形県・宮城県に発出された。7時40分にミサイルが発射されたということだったが,続報では,午前7時48分に日本上空を通過したとなり,その後ミサイルは日本海上空で消失したなどと情報は二転三転する。
防衛省が11月3日の落ち着いた段階で発表したものは次の通り。
北朝鮮は本日7時台から8時台にかけ,ICBM級の可能性があるものも含め,少なくとも3発の弾道ミサイルを,東方向に向けて発射しました。詳細については現在分析中ですが,落下したのはいずれも我が国の排他的経済水域(EEZ)外であり,飛翔距離等については以下の通りと推定しています。① 7時39分頃,北朝鮮西岸付近から発射し,最高高度約2000 km程度で,約750 km程度飛翔し,朝鮮半島東側の日本海に落下。当該ミサイルはICBM級の可能性があります。② 8時39分頃,北朝鮮内陸部から発射し,最高高度約50 km程度で,約350 km程度飛翔し,朝鮮半島東岸付近に落下。③ 8時48分頃,北朝鮮内陸部から発射し,最高高度約50 km程度で,約350 km程度飛翔し,朝鮮半島東岸付近に落下。なお,日本列島を超えて飛翔する可能性があると探知したものについては,その後,当該情報を確認したところ,探知したものは日本列島を超えず,日本海上空にてレーダーから消失したことが確認されました。
実際に弾道ミサイルの飛来を探知した場合は,まず航空総隊/BMD統合任務部隊にデータが送信され,防衛省を経て内閣総理大臣および各省庁にデータが送られる。総務省は,全国瞬時警報システム(J-アラート)を通じてマスメディアや地方公共団体に警報を伝達する。国民には,報道や防災無線を通じて屋内退避などの自己防衛が指示される(Wikipedia J/FPS-5から引用)。
ということならば,問題は,Jアラート側というより,航空自衛隊の警戒管制レーダーの精度と分析能力にあることになる(あるいは発出の政治的判断を含めて)。こんな調子で,防衛費を今後5年間で48兆円に倍増しても大丈夫なのかな。
なお,失敗ともいわれているICBM級ミサイルの軌道は高高度のロフテッド軌道に準ずるものだ。前回の4600kmとんだものの高度は1000kmだったので,失敗としてもその2倍に達している。先に作ったコードを用いて,加速パラメタを共通(0.0446 km/s^2)にしておけば,投射角度と燃焼時間を調整することで,成功したロフテッド軌道(最大高度6250 km,到達距離1090 km,到達時間 4000 秒)と,今回の(失敗かもしれない)ロフテッド軌道(最大高度 1980 km,到達距離 760 km,到達時間 不明)をそれぞれ再現することはできそうだった。
このとき,11月3日午前7時39分に発射された弾道ミサイルの飛行時間は27分前後=1650秒となるので,落下時間は午前8時6分ごろである。多段式だとすれば,今のモデルではうまく記述できていないのだが,第1段の落下時刻はこれより早かったと思われる。
(* g = 0.0098; R = 6350; τ = 86.2; p = 0.75; a = 0.0446;
s = 86 Degree; T = 4000; *)
g = 0.0098; R = 6350; τ = 77; p = 0.65;
a = 0.0446; s = 84 Degree; T = 1650;
fr[t_, τ_] := a*Sin[s]*HeavisideTheta[τ - t]
ft[t_, τ_] := a*Cos[s]*r[t]*HeavisideTheta[τ - t]
fm[t_, τ_] := -p/(τ - p*t)*HeavisideTheta[τ - t]
sol = NDSolve[{r''[t] == -fm[t, τ]*r'[t] + h[t]^2/r[t]^3 -
g R^2/r[t]^2 + fr[t, τ], r[0] == R, r'[0] == 0,
h'[t] == -fm[t, τ]*h[t] + ft[t, τ], h[0] == 0}, {r,
h}, {t, 0, T}]
f[t_] := r[t] /. sol[[1, 1]]
d[t_] := h[t] /. sol[[1, 2]]
Plot[{6350, f[t]}, {t, 0, T}]
Plot[{f[t + 1] - f[t], d[t]*R/f[t]^2, d[t]/f[t]}, {t, 0, T},
PlotRange -> {-4, 8}]
tyx[TT_] := {TT, f[TT] - R, NIntegrate[R d[t]/f[t]^2 , {t, 0, TT}]}
tyx[T]
ParametricPlot[{NIntegrate[R d[t]/f[t]^2 , {t, 0, tt}],
f[tt] - R}, {tt, 0, T}]
図:11月3日朝の弾道ミサイルのロフテッド軌道
P. S. 1 成功したロフテッド軌道(最大高度6250 km,到達距離1090 km,到達時間 4000 秒)の条件で,投射角度を45度にすると,到達時間 4850秒で到達距離 14300 kmとなる。北米大陸は射程内だ。
P. S. 2 アメリカの軍事偵察衛星からでは発射直後の赤外線を感知できるが,日本のレーダーでは,高度100 kmに達しないと感知できないという説明がサンデーモーニングであった。もしそうならば,上記の11月3日朝のロフテッド軌道が感知できたのは,発射後66秒後となる。
P. S. 3 仮に上記弾道ミサイルの第1段が,同じ条件で燃料噴射後60秒で放物運動に至る物体だとすれば(切り離された第1段とは正確には一致しないが),それは(最大高度 1000 km,到達距離 470 km,到達時間 1100 秒)で飛行することになる(高度100 km に達するのは 発射後 64秒後)。
[1]ミサイル防衛について(防衛省・自衛隊)
[2]弾道ミサイル防衛(平成20年3月,防衛省)
[3]国民保護ポータルサイト(内閣官房)
[4]北朝鮮 弾道ミサイル「火星17型が飛行に失敗か」(NHK)
[5]北朝鮮からの射程距離(地図蔵)
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