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2022年5月8日日曜日

摩擦のあるカルノーサイクル(2)

 摩擦のあるカルノーサイクル(1)からの続き

「エントロピーについての理解を図るため,不可逆過程の具体的な例を構成したい。そのためカルノーサイクルの等温過程においてのみピストンに散逸のある抵抗力=摩擦力が働くモデルを考える。この摩擦力は,ピス トンの運動方向と逆向きに作用し,その仕事はピストンに熱として放出され,カルノーサイクル の作業物質である理想気体には影響を及ぼさないものとする。この考察において作業物質の系=理想気体がする仕事は,ピストンを用いて測定されることに留意する。すなわち,ピストンに働く力の総和とピストンの変位の積によって作業物質系が「する」仕事や「される」仕事(=負の「する」仕事)が定義される」

ということで,前書きをかいて計算をはじめてみたもののなかなか難渋するのであった。


図:摩擦のあるカルノーサイクルの散逸過程

等温過程 A B:(δAB>0
WAB=VBVApdVdBdAfdx=nRTHlogVBVAδwAB=QHδwAB=QH
断熱過程 B C:
WBC=VCVBpdV=CBdU=UBUC=nCV(THTL)
等温過程 C D:(δDC>0
WCD=VDVCpdVdDdCfdx=nRTLlogVDVCδDC=QLδwDC=QL
断熱過程 D A:
WDA=VAVDpdV=ADdU=UDUA=nCV(TLTH)

したがって,この摩擦のあるカルノーサイクルの効率は次の式で与えられる。
Wc=WAB+WBC+WCA+WAD
=nRTHlogVBVAδAB+nRTLlogVDVCδDC=QHδAB+QLδDC
η=Wc/QH=1QLQH1QLQH(1+δwDCQL)(1+δwABQH)
1(QLQH)=1TLTH=ηc

こうして,摩擦のあるカルノーサイクルの効率ηは,カルノーサイクルの効率ηcより小さくなる。しかし,このままでは,dQT0の説明にうまくつながらない。

(注)ここではサイクルに入る熱量をすべて正,サイクルが外部にする仕事を全て正にとる。

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