摩擦のあるカルノーサイクル(2)からの続き
摩擦のあるカルノーサイクルでクラウジウスの不等式を説明するためには,前回のようにW′のなかの摩擦力による仕事δwとして表現するかわりに摩擦力で生じた熱δq=−δw<0として扱うこともできる。
仕事として表現すると:等温過程 A→B:(QH>0,δwAB>0)
W′AB=∫VBVApdV−δwAB=WAB−δwAB=Q′H
等温過程 C→D:(QL<0,δwDC>0)
W′CD=∫VDVCpdV−δwDC=WCD−δwDC=Q′L
熱として表現すると:
等温過程 A→B:(QH>0,δqH<0)
W′AB=∫VBVApdV+δqH=QH+δqH=Q′H
等温過程 C→D:(QL<0,δqL<0)
W′CD=∫VDVCpdV+δqL=QL+δqL=Q′L
カルノーサイクルにおいては,系に入る熱量を温度でわった,エントロピーに対応する状態量QTの和が保存していた。すなわち,QHTH+QLTL=nRlogVBVA+nRlogVDVC=0
一方,摩擦のあるカルノーサイクルで,出入りする熱量に対して,温度で割ったものの和を考えると,Q′HTH+Q′LTL=QH+δqHTH+QL+δqLTL=δqHTH+δqLTL≤0
これを一般化すると,可逆過程だけのサイクルについては ∮d′QTex=0,不可逆過程を含むサイクルについては,∮d′QTex≤0,ここで,d′Qは系が受け取る熱量で,Texはその熱量を与えた熱源の温度である。これがクラウジウスの不等式。
図:不可逆過程におけるクラウジウスの不等式
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