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2022年5月10日火曜日

摩擦のあるカルノーサイクル(3)

 摩擦のあるカルノーサイクル(2)からの続き

摩擦のあるカルノーサイクルでクラウジウスの不等式を説明するためには,前回のようにWのなかの摩擦力による仕事δwとして表現するかわりに摩擦力で生じた熱δq=δw<0として扱うこともできる。

仕事として表現すると:
等温過程 AB:(QH>0,δwAB>0
WAB=VBVApdVδwAB=WABδwAB=QH
等温過程 CD:(QL<0,δwDC>0
WCD=VDVCpdVδwDC=WCDδwDC=QL
熱として表現すると:
等温過程 AB:(QH>0,δqH<0
WAB=VBVApdV+δqH=QH+δqH=QH
等温過程 CD:(QL<0,δqL<0
WCD=VDVCpdV+δqL=QL+δqL=QL

カルノーサイクルにおいては,系に入る熱量を温度でわった,エントロピーに対応する状態量QTの和が保存していた。すなわち,QHTH+QLTL=nRlogVBVA+nRlogVDVC=0

一方,摩擦のあるカルノーサイクルで,出入りする熱量に対して,温度で割ったものの和を考えると,QHTH+QLTL=QH+δqHTH+QL+δqLTL=δqHTH+δqLTL0

これを一般化すると,可逆過程だけのサイクルについては dQTex=0,不可逆過程を含むサイクルについては,dQTex0,ここで,dQは系が受け取る熱量で,Texはその熱量を与えた熱源の温度である。これがクラウジウスの不等式。


図:不可逆過程におけるクラウジウスの不等式


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