2022年5月24日火曜日

三角関数(1)

 先週,5月17日の衆議院財政金融委員会で,日本維新の会の藤巻健太(1983-)が質問している(藤巻健太の同学年が,今井絵理子,音喜多駿,丸山穂高なのだ・・・orz)。

金融教育がこれからの日本において重要であるという文脈で,自分が高校の時に受験で点を稼ぐために数学とくにサイン・コサインを朝から晩まで勉強したが,受験の翌日から20年使っていないという。また,サイン・コサインは測量,航空機の姿勢制御,星の距離を測るなどの特殊な分野だけに必要な専門知識であるとした。「知識として多くの人にとって三角関数より金融経済に関する知識のほうが重要で優先度が高いのでは」と文部科学省に尋ねた。

文部科学省の森田正信官房審議官は,大学入試や学習指導要領についての原則を無難に回答したが,藤巻健太が最後に,あなたは三角関数と金融経済のどちらが優先されるべきと考えるかを尋ねた。森田審議官の回答は,金融経済は,高等学校の公民科の必履修科目である「公共」に含まれる内容であるが,三角関数は,高等学校の数学科の必履修科目である「数学Ⅰ」には含まれていない(選択科目の数学Ⅱや数学Ⅲにある),とういものだった。

これで完全に論破されて議論終了のはずなのだが,藤巻がTwitterでこれを蒸し返したものだから,一週間にわたって騒動がつづいている。まあ,日本維新の会のお得意の,支持層受けをねらった学問芸術分野攻撃による炎上商法なのであろう。

炎上を招いた藤巻のTwitterでの主な発言はなかなか含蓄が深いので下記に引用する。

私の言う金融経済とはいわゆる金融リテラシーのことです。株や為替や国債とは?から始まり、保険・年金・投資信託・デリバティブとは?住宅ローンの変動・固定金利どう違うのか?多くの人にとって、人生を生きる上でそういった知識の方が、三角関数よりも必要だと考えます。

小学校の算数、中学数学はその概念・考え方を学ぶ上でとても重要だと思います。しかし高校数学は専門知識の側面が強いのではないでしょうか?三角関数などは、その道に進む人が大学で学べばいいと考えます。 

 車の安全な運転の仕方を知ることは大事だが、車の構造は知らなくていい。電子レンジの操作方法は知る必要があるが、電子レンジの仕組みは知らなくていい。三角関数が多くの技術に応用されているのはわかるが、必ずしも知っている必要はない。

三角関数は例えば木の高さを測るのに使われる。1人が木の高さを測ればいい。残りの99人は、木の高ささえ知っていればいい。99人にとっては、安全のために木を切る必要があるのか、どう切るのか、あるいはどうやって木を紙に変えるのか、その紙をどう流通・管理・販売していくかの方が遥かに大事だ。 

 世の中は分業し、お互いの知識を信用し合い、成り立っている。木の高さを測る人、木を切る人、木の安全を管理する人、木の役割を研究する人、木から紙を作る人、その紙を流通させる人、販売する人、それぞれに専門知識がある。三角関数はその専門知識の一つ。全ての専門知識を学ぶ時間はない。

三角関数が科学や工学のあらゆる分野において果たしている役割とその重要性についての決定的な理解の欠如があることは間違いない。それにしても我々は学校教育で何を学ぶべきかという重要な問いを含んでいることも確かだ。

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