しばらく前に,東北地方の上空を未確認飛行物体が通過していった。未確認ではあるが,その形は捉えられていて,白い気球に太陽電池やプロペラが付随したものらしい。高度10〜50kmの成層圏を通過していたが,国内からの報告がないことから,日本の西側にあるいずれかの外国からジェット気流に乗って東に進んできたものと推測される。で,これが領空侵犯であると断定的に書かれた記事があったので,領空とはどこまでのことを指すのかと調べたところ,一筋縄では行かなかった。
平成28年には逢坂誠二さんが第192国会の80番目の質問主意書で「一 領空とは、国家が領有している領土もしくは領海上の空域と認識しているが、政府の認識はどのようなものか。見解を示されたい。二 日本の領空とは、国家主権が及ぶ領域と政府は認識しているのか。見解を示されたい。」と尋ねているが(この質問もあいまいなのだけれど),安倍総理によるその回答は,「一般に,領空とは領土,領水の上空であり,我が国の主権が及ぶと認識している」なので,結局わけがわからない。まあ,はっきり定義を述べないことは政治的には正しいのかもしれない。しかし,質問主意書や答弁書のpdfファイルが擬似縦書きになっているのは許せない。素直にテキスト化できないのだ。こんなことだから,ITで百年遅れをとる。
そこへ行くと名和小太郎先生の説明はていねいで理路整然としていて救われる「領空か 宇宙空間か(情報管理第50巻(2007)5号)」。ただし,結局,領空の定義に関する結論ははっきり定まっていない。名和先生は,1996年から2001年まで,関西大学総合情報学部に在席していらっしゃった。そのとき,同じ学部の水越敏行先生をリーダーとする高等学校の教科情報の教科書を初めて作るということで,会議でお隣に同席させていただいたことがある。名和先生も出身が東大物理なので,おっしゃることや書かれたものは飲み込みやすかった。その縁で著書を1冊恵贈していただいた。
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