さて,このように具体例で示してもらうと非常にわかりやすかった。ショックだったのは,圏の対象を結ぶ射とは,関数のようなものをイメージしていたにもかかわらず,しりとりの圏ではこれが実体としての文字列であるというところだ。そうなのか。目からウロコ状態である。圏は射による関係性のネットワークであって,それがモノによる集合論的な見方との違いの本質だと思っていた。その射がモノだったわけで,モノとコトの見え方がこうして入れ替わることになる。なんだかすごいわ。その次の行列の圏の例でも同様だった。射は行列という実体だった。
圏C 行列の圏 しりとりの圏
対象 Obj(C) 自然数 ひらがな1文字
射 Mor(C) 行列 ひらがな文字列
恒等射 id 単位行列 長さ1の文字列
結合 f;g 合成行列の掛け算 しりとり結合
対象の集合 自然数の集合 N ひらがな1文字の集合 H
射の集合 行列の集合 Mat ひらがな文字列の集合 HStr
というわけで,次の圏を定義するには次の要素が必要だった。
(1) 対象(と呼ばれるモノ)の集合
(2) 射(と呼ばれるモノ)の集合
(3) 射に,域(または始域と呼ばれる)対象を対応させる関数(一般的にはdomと書く)
(4) 射に,余域(または終域と呼ばれる)対象を対応させる関数(一般的にはcodと書く)
(5) 対象に恒等射(と呼ばれる)射を対応させる関数(一般的にはidと書く)
(6) cod(f) = dom(g) のときにだけ定義される結合(と呼ばれる)二項演算(一般的にはf;gと書く)・・・普通の合成関数のような図式順でない表記g○fなどもあるので注意する
※始域,終域は始対象,終対象とは違うので注意しよう
※(1) (2) では集合と書き切っているが,集合(公理的集合論で定義されるもの)でなくてもよいらしいが,そもそも集合論の公理,ZF/ZFCとかがまったく腑に落ちていない...orz
※グラフ理論とは違って,2つの対象を結ぶ射はいくつ(?)あっても構わない
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