クォーク模型の提唱者の一人で「クォーク」の命名者であるマレー・ゲルマン(1929-2019)が亡くなった。
リーとヤンによる弱い相互作用におけるパリティ非保存の提案とウーによるコバルト60のベータ崩壊における実験的検証を受けて,ゲルマンはファインマンとともに弱い相互作用のV−A理論をつくる。大学院では原子核の弱い相互作用(ベータ崩壊)をテーマとしていたので,このV−A理論を出発点として計算を進めることになった。ワインバーグ・サラムの電磁相互作用と弱い相互作用の統一理論はようやく実験的なエビデンスが固まって確立しつつある時期だったが,原子核の低エネルギーの電弱過程でかつ中性カレントも関係ないとすれば,V−A理論で十分なのであった。
ゲルマンといえば,ゲルマン=大久保の質量公式や中野・西島・ゲルマンの法則など,日本人物理学者との関連も深い。もちろんクォーク模型自身が坂田模型や池田・大貫・大久保対称性などからつながるものだった。
クォークはジェイムズ・ジョイスの小説「フィネガンズ・ウェイク」の一節"Three quarks for Muster Mark!"から来ているが,ゲルマンによるクォーク模型の前段階の理論のEightfold Way(八道説)は仏教のNoble Eightfold Path(八正道)を暗示して命名されている。
(付 5/30/2019)かつてCalTechに在学していたスティーブン・ウルフラムがゲルマンへの長い追悼文を書いている。
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