2019年5月19日日曜日

元素合成のr過程

重力波天文学からの続き)

宇宙の元素合成というと,昔は恒星の中の核反応しか知らなかった。それが,ビッグバン元素合成や超新星元素合成や中性子星合体元素合成などが加わって,元素合成の全体像が浮かび上がってきた。

昨日の甲南大学の冨永先生の講演で,疑問に思ったのが,中性子星合体にともなう元素合成のr過程のイメージだった。中性子星が合体する際の中性子捕獲の過程ということだったが,重力による束縛がゆらいだとしても中性子ばかりでは元素にならない。種になる原子核あるいは陽子はいったいどこからくるのかというものだ。

中性子がベータ崩壊して陽子ができているからだと思って自己納得したのだが,これは正しいイメージなのだろうか?ベータ崩壊といっても軽い核における相対的に精密な議論ばかり追いかけていたので,宇宙核物理学のおもしろそうな話はまったく勉強不足なのだった。

これは結局,中性子星の構造が理解できているかどうかの問題である。 その上で中性子合体反応で構造がどう時間発展して変化するかという問題に続いて,元素合成のメカニズムにつながっていく。1970年代後半に京都の原子核理論グループがやっていたπ凝縮の議論はこれにつながっていたわけだ。

図:中性子星合体による元素合成イメージ(国立天文台記事2014からの引用) 

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