日本物理教育学会近畿支部総会が阪大全学教育推進機構で行われた。記念講演は,甲南大学理工学部物理学科の冨永望さんの「重力波天文学」。(参考:重力波天文学:名古屋大学西澤篤志)
2015年9月のLIGOによる初めての重力波の観測は,太陽質量の30倍程度のブラックホールの合体であり,その後も2ヶ月に1度程度の割合で観測されている。LIGOのハンフォードとリビングストンに加えて,2017年からはイタリアのVIRGOが加わったために,重力波源をより狭い範囲で特定できるようになった。2019年の日本のKAGRAのスタートが楽しみだ。
この期間に1度だけ中性子星の合体が観測された(GW170817)。その重力波はブラックホール合体の場合とは異り,57秒という長時間にわたって続いた。その後,すばる望遠鏡などでの光学的な観測が行われた。その結果,これが中性子星合体であり,それによる元素合成の可能性がより確かなものになった。というあらすじだった。
中性子星合体のほうが発生確率が高いが,ブラックホール合体の方が発生エネルギーが大きいため,10倍の距離まで観測できることから,有効体積が1000倍の範囲で観測しているので,地球で観測されるのはブラックホール合体が多くなるとのこと。超新星爆発によるニュートリノの観測は1987年に一度あったきりだが,重力波の方がどんどん観測されている。おまけにブラックホールシャドウまで観測された。すごい時代になったものだ。
(元素合成のr過程に続く)
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