問題のテクタイトである。NHKのコズミックフロントの「ロスト・クレーター79万年前の天体衝突」で取り上げられていた。テクタイトとは,高速で衝突した巨大な隕石のエネルギーで蒸発帰化した地表の石や砂が上空で急冷して固まった天然ガラス(数cmの円形や水滴上のもの等)が広範囲に飛散したものである。
ただし,これが実際に見つかっている例は,北米(チェサピーク湾,3400万年前,隕石直径 数km),ヨーロッパ(ドイツ・チェコ,1400万年前,隕石直径 1.5km),アフリカ(コートジボアール,100万年前),アジア・オーストラリア(ラオス,79万年前,隕石直径 2km)の4つだけである。
最初の3つは,衝突の際にできたクレーターが見つかっているが,アジア・オーストラリアに広く分布したテクタイトの原因である衝突クレーターが未発見だった。それを探るというのが番組の趣旨で,国際研究チームに日本の千葉工業大学の地球学研究センターの多田隆治,多田賢弘チーム(80万年前に東南アジアで起きた小天体衝突の位置、規模、様式特定と環境への影響評価:科研費国際共同研究強化B)が参加していた。
その結果,衝突地点がラオスのボーラウェン高原にあって,新しい溶岩堆積層に覆われたものと考えられるようになった。この79万年前の衝突により,地域的な生物絶滅(急減少)が起こったらしい。ジャワ原人の絶滅にも影響しているとか。
写真:テクタイト(Wikipediaから引用)
千葉工大の地球学研究センターのページには松井孝典(まついたかふみ)さんが,センター所長として載っていた。彼は,2020年には4年間の任期で千葉工大の学長にも就任していたが,2023年2月に亡くなっていた。そのあたりのコメントくらいあってもよかったのに。千葉工大の次期学長は伊藤譲一だった。
[1]チェリャビンスクイベントと天体衝突リスク(日本惑星科学会誌)
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