ALPS処理水のトリチウム以外の放射性物質の量を管理するために,告示濃度比総和という量が用いられている。
ALPSにおける除去対象62核種+放射性炭素14について,原子力規制委員会で定められた排水に対する国の濃度規制基準値[1]と測定濃度比の和が1以下になるようにするというのが国と東京電力の方針だ。この状態になったALPS処理水を,トリチウム単独の規制基準値の1/40(WHOの飲料水基準の1/7)の1500 Bq/L以下になるように薄めて放出することになっている。[1][2][3]のデータを整理すると主な放射性物質の排水の告示濃度と → 実測値のオーダーは以下のようになる。
トリチウム(12.3年,β崩壊) 6万 Bq/L → 30万Bq/L(5×40 = 200倍希釈)炭素14(5730年,β崩壊) 2千 Bq/L → 100 Bq/Lコバルト60(5.27年,β崩壊) 200 Bq/L → 1 Bq/Lストロンチウム90(28.8年,β崩壊) 30 Bq/L → 10 Bq/Lイットリウム90(64.6時間,β崩壊,ストロンチウム90から) 300 Bq/Lルテニウム106(374日,β崩壊) 100 Bq/L → 1 Bq/Lロジウム106(29.8秒,β崩壊,ルテニウム106から) 30万 Bq/Lアンチモン125(2.67年,β崩壊) 800 Bq/L → 0.5 Bq/Lテルル125m(57.4日,IT) 900 Bq/Lヨウ素129(1570万年,β崩壊) 9 Bq/L → 1 Bq/Lセシウム134(2.06年,β崩壊) 60 Bq/L → 0.2 Bq/Lセシウム135(230万年,β崩壊) 600 Bq/Lセシウム137(30.2年,β崩壊) 90 Bq/L → 1 Bq/Lバリウム137m(2.55分,IT,セシウム137から) 80万Bq/L
既設ALPS,増設ALPS,高機能ALPSの処理前と出口の放射性濃度が[2]に与えられている。その上限を測定値として上の告示濃度の右に示している。ALPSにより,セシウム137やストロンチウム90やアンチモン125の放射能は十万分の一に,コバルト60やルテニウム106は百分の一になっているが,ヨウ素129は百分の一から十分の一程度にとどまっている。
[1]放射線を放出する同位元素の数量等を定める件(原子力規制委員会,2020.3)
[2]多核種除去設備出口の放射能濃度(東京電力,2023.6.30)
[3]処理水ポータルサイトQ&A(東京電力)
[4]処理水に関するQ&A(在上海日本国総領事館)
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