2020年10月3日土曜日

学術会議(1)

85万人の日本の研究者から選ばれる日本学術会議の210名の会員は,6年の任期で3年ごとに半数改選される。第25期がこの10月1日から始まったが,菅内閣は日本学術会議から推薦された105名のうち6名の任命を拒否した。これまでは,学問の自由を踏まえるという政府の国会答弁に基づき,学術会議から推薦された会員をそのまま内閣総理大臣が任命してきた。菅内閣はこの慣行を破ったうえに,その説明をまったく放棄している。

 「日本学術会議法」では,学術会議の目的や職務が以下のように規定されている。

日本学術会議法(前文があることに注意)
 日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、 わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与する ことを使命とし、ここに設立される。

第一章 設立及び目的
第一条 この法律により日本学術会議を設立し、この法律を日本学術会議法と称する。
2 日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄とする。
3 日本学術会議に関する経費は、国庫の負担とする。
第二条 日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする。

第二章 職務及び権限
第三条 日本学術会議は、独立して左の職務を行う。
一 科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること。
二 科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること。
第四条 政府は、左の事項について、日本学術会議に諮問することができる。
一 科学に関する研究、試験等の助成、その他科学の振興を図るために政府の支出する交付
金、補助金等の予算及びその配分
二 政府所管の研究所、試験所及び委託研究費等に関する予算編成の方針
三 特に専門科学者の検討を要する重要施策
四 その他日本学術会議に諮問することを適当と認める事項
第五条 日本学術会議は、左の事項について、政府に勧告することができる。
一 科学の振興及び技術の発達に関する方策
二 科学に関する研究成果の活用に関する方策
三 科学研究者の養成に関する方策
四 科学を行政に反映させる方策
五 科学を産業及び国民生活に浸透させる方策
六 その他日本学術会議の目的の遂行に適当な事項
第六条 政府は、日本学術会議の求に応じて、資料の提出、意見の開陳又は説明をすることが できる。
第六条の二 日本学術会議は、第三条第二号の職務を達成するため、学術に関する国際団体に 加入することができる。
2 前項の規定により学術に関する国際団体に加入する場合において、政府が新たに義務を負 担することとなるときは、あらかじめ内閣総理大臣の承認を経るものとする。

参議院議員の小西洋之は,twitterで,「現時点で内閣府が認めた事実。確信犯だ」
として,以下の経緯を明らかにしている。
・H29(2017) に学術会議の軍事研究(抑制的解禁)声明
・H30(2018) に内閣府と内閣法制局で「総理が任命拒否可」の解釈を作成
・本年(2020) 8/31に105名推薦名簿を受理
・9月上旬に上記解釈を再確認
・9/16の菅政権発足後,9/24に6名除外した99名の任命起案を起草し,9/28決裁
また「仮に説明しても任命拒否は違法であり,許されない。なぜなら,日本学術会議法において,総理には推薦に対して形式的任命権しかなく実質的任命権がないからである」としている。

6名が任命されないことが新しい委員の任期がはじまる10/1の2日前に,学術会議側に伝えられたようだが,その結果,時間の猶予もなくこの事態を招くことになった。 

追伸:毎日新聞によれば,2016年の第23期の補充人事(定年70歳によるもの)の際にも「学術会議が候補として挙げ,複数人が首相官邸側から事実上拒否された」とのこと(官邸周辺に生息している日本会議人脈の影響が強く疑われる)。|

[1]国立アカデミー
[2]日本学術会議
[3]日本学術会議の設立と組織の変遷

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