2020年10月19日月曜日

認証官

日本学術会議の会員6名に対する任命拒否にからみ,首相の菅義偉(1948-)と並んで 内閣官房副長官(事務)の杉田和博(1941-)の関与があったのではないかと囁かれている。警察庁の役職を歴任した杉田は,2004年に63歳で第二次小泉内閣の内閣危機管理監を退任して世界政経調査会会長として天下った。その後,2012年に71歳で第二次安倍内閣の内閣官房副長官(事務)に就任し,2020年の菅内閣の現在まで8年近くこのポストを続けて79歳に達している。

このポストは,自治省,警察庁,厚生省の事務次官経験者レベルで回しているようだ。1987年から1995年の8年7内閣にわたって石原信雄(自治省)が務めているが,それでも69歳で退任している。

2001年の第二次森内閣のときに,内閣法が改正されて内閣官房副長官は認証官となっている。認証官とは任免にあたって天皇の認証が必要な官吏である(通称であり法律用語ではない)。

日本国憲法第7条

第7条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。

 5 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。

ということで,内閣官房副長官は官吏なので国家公務員法を参照することになるが,これは,一般職ではなく特別職であるため,この法が直接適用されるわけではないので,その任免や基準についてはよくわからなかった。

内閣法には,第十二条で「内閣官房を置く」とし,第十四条で「内閣官房に、内閣官房副長官三人を置く。2 内閣官房副長官の任免は、天皇がこれを認証する」とあるだけだ。ということは,内閣官房副長官の任免は内閣の職権でおこなわれることから,内閣総理大臣が提案して閣議で決定されるということだろうと思われる。特別職として委嘱するので定年という概念はあてはまらないということか。

非常に重要なポストであるにもかかわらず,他の認証官と比べて制度が意図的に明確化されていないために,長期に渡って特定の人物が滞留する現象が起こるわけだ。

さて,元に戻れば,立教大学の中原淳が日本学術会議問題について語っているのが本質をついているような気がする。

本丸は、おそらく「大学」「メディア」「司法」。つまりは、この国の「言論」と「判断」だと思う。それらを政治のコントロールのなかに入れることが「本丸」だと思う。陰謀論のように感じられるかもしれないが、おそらく、そうだろう。。。学術会議は、その格好の「最初の餌食」だ。なぜなら、学術会議の功績は、世間からは遠い。世間からもっとも成果が見えにくいところをついて、世論を味方にして任命権の拡大解釈を行う。世論を味方にする最高の方法は「携帯電話の料金引き下げ」だ。それは、実現すれば、僕だって嬉しい(笑)。

しかし、これを背景にした「任命権の拡大解釈」こそが今後の「すべての既成事実」となりうる。「任命」を「任命拒否することも含む」と解釈しその理由もさして述べる必要なく「俯瞰的・総合的な判断で決めました」でよいのなら、あとは「やりたい放題だ」個人的には、今回の件を「既成事実」にして、この流れが「他の領域に拡大されること」を最も憂慮する。

すなわち、拡大されるのは、大学・メディア・司法。事実、政権の「任命」する職は少なくない。たとえば、国立大学の長は、文部科学省大臣の「任命」。NHKの長を選ぶ経営委員会は、国会をへて、内閣総理大臣によって「任命」。検事総長も内閣総理大臣による「任命」。下でどんな議論をしようが、上で「拒否できる」任命権が「任命拒否も含むと解釈できる」という「既成事実」をつくったならば・・・。きっとこの件は、長く禍根を残すと思う。



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