2020年10月9日金曜日

学術会議(4)

学術会議(3)からの続き 

学術会議の在り方問題に話を捩じ曲げてしまおうとする政府与党。在り方問題についてはこれまでも一定の議論がなされてきた。

(1)2003年7月の学術会議国際協力常置委員会による各国アカデミー等調査報告書では,旧7部制時代の各国アカデミーの比較であり,日本学術会議の予算は14億円だが,女性会員比率は3%にとどまっていた(現在は40%を越える)ころだ。科学アカデミーの設置形態は,欧米ではほとんどが非政府・非営利組織であるが,アジアは政府機関に位置づけられている。そうはいっても,例えば全米科学アカデミー(日本の20倍の予算・人員規模)でも設置には法令的根拠があり,年間予算のほとんどは,連邦政府機関から来ている。

(2)同じ2003年の2月には,総合科学技術会議(現在の総合科学技術・イノベーション会議)の専門調査会が「日本学術会議の在り方について」をまとめている。中央省庁改革の一環として当時総務省におかれていた日本学術会議の在り方を検討することになった。これを受けて7部制が3部制になり,会員選出方法も学会推薦から現行のものに変更され,連携会員が導入された。そこでは次のような提言がされている。

日本学術会議が、科学的水準の高い提言等の活動を行い、その権威を高め、社会に貢献していくためには、優れた研究者が科学的業績に基づいて会員に選出されることが重要であり、欧米諸国のアカデミーのco-optation方式(現会員による欠員補充)による選出を基本とすることが適切である。

 政府は,総合的・俯瞰的というのをこのあたりから引いているのかもしれないが,これは学術会議全体として実現されるべき要件であり,会員選出過程の要件としては明文化されていない。なお,設置形態については「 最終的な理想像としては、国家的な設置根拠と財政基盤の保証を受 けた独立の法人とすることが望ましい方向であると考えられる」としている。

(3)これを踏まえて,2015年3月には「日本学術会議の将来展望を考える有識者会議」の報告書が出ている。2005年改革で(2)の大きな課題がクリアされていたため,ここではマイルドな提案しかかでてきていない。例えば,会員選考については次の記述がある。

その会員・連携会員は,自らの専門分野において優れた成果をあげていることに留まらず,様々な課題に対し,自らの専門分野の枠にとらわれない俯瞰的な視点をもって向き合うことのできる人材であることが望ましい。

菅政権を支える官僚はこれから,6名を排除した言い逃れの文言を編み出したようだが,抽象度が高すぎ,これを用いればすべての人事に介入する道を開いてしまう。予算の話も同様だ。

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