2023年7月22日土曜日

最小二乗法(2)

最小二乗法(1)からの続き

間接測定と誤差伝播(でんぱ)の法則について考えるため,物理量$z$が,独立な物理量 $a,\ b,\ c,\ \cdots$の関数で,$z=f(a,\ b,\ c,\ \cdots) $と表されるとする。

ここで,$(a_i,\ b_i,\ c_i\ \cdots)$を各物理量の$i$番目の測定値とする。また,残差を用いて,$(a_i,\ b_i,\ c_i\ \cdots) = (\bar{a}+\delta^a_i,\ \bar{b}+\delta^b_i,\ \bar{c}+\delta^c_i,\ \cdots)$とする。

$z(a_i,\ b_i,\ c_i,\ \cdots) = f (\bar{a}+\delta^a_i,\ \bar{b}+\delta^b_i,\ \bar{c}+\delta^c_i,\ \cdots) $
$\simeq f(\bar{a}, \bar{b}, \bar{c}, \cdots)+  \frac{\partial f}{\partial a} \delta^a_i + \frac{\partial f}{\partial b} \delta^b_i + \frac{\partial f}{\partial c} \delta^c_i + \cdots = \bar{z} + \delta^z_i $ 
として,$ \delta^z_i$を定義する。

残差と平均二乗誤差の関係から,間接測定される物理量zについて,$\displaystyle \sigma_z^2 = \frac{1}{n-1} \sum_{i=1}^n (\delta^z_i )^2$ が成り立つ。

$\displaystyle \therefore \sigma_z^2 = \frac{1}{n-1} \sum_{i=1}^n \Bigl( \frac{\partial f}{\partial a} \delta^a_i + \frac{\partial f}{\partial b} \delta^b_i + \frac{\partial f}{\partial c} \delta^c_i \cdots \Bigr)^2$
$\displaystyle = \frac{1}{n-1} \sum_{i=1}^n \Bigl \{ \bigl( \frac{\partial f}{\partial a} \delta^a_i \bigr)^2+ \bigl(\frac{\partial f}{\partial b} \delta^b_i \bigr)^2 +\bigl ( \frac{\partial f}{\partial c} \delta^c_i \bigr)^2+ \cdots \Bigr\}$

$\displaystyle \therefore \sigma_z^2 = \Bigl( \frac{\partial f}{\partial a}\Bigr )^2 \sigma_a^2 + \Bigl( \frac{\partial f}{\partial b} \Bigr)^2 \sigma_b^2 +\Bigl( \frac{\partial f}{\partial c} \Bigr)^2  \sigma_c^2 + \cdots$

これが誤差伝播の法則といわれるものである。
なお,ここで独立な物理量の残差の積和がゼロになると仮定している。例えば,
$\displaystyle \sum_{i=1}^n \delta^a_i \delta^b_i = 0\ $などなど

2023年7月21日金曜日

最小二乗法(1)

授業シリーズその1,オンライン授業の1コマ分を実験誤差のテーマにするべく頑張った話

昔,最小二乗法の計算は手回し計算機で大変な思いで計算していた記憶がある。実験ノートは,測定データ$x_i$と$y_i$の計算表で埋め尽くされていた。データ処理といえばこれだった。後に,関数電卓にもその機能が組み込まれるようになったが,今では Excelで一発なのかもしれない。

まず,誤差を定義する必要がある。我々が昔勉強した本では,誤差=実験値−真の値 から出発していた。しかし,最近の本ではどうも様子が怪しくなっている。そもその真の値とはなにか,どうやって定義するのか,などなど。かといって,いきなり確率分布関数を持ってきて数理統計学の枠内で議論するのも大層な話だ。精度ということばも測定の不確かさに置き換わっているようだ。

とりあえず,1つの物理量$x$ の測定を考える。その真の値が$X$であると仮定する。$n$回の測定で$\ (x_1,\  x_2,\  x_3,\  \cdots,\  x_n\ )$ という測定値が得られたとする。誤差を$\ \varepsilon_i = x_i - X$で定義する。誤差は真の値のまわりで偏らずに分布する,すなわち$\  \displaystyle \sum_{i=1}^n \varepsilon_i = 0$であるとする。これから,$\displaystyle \sum_{i=1}^n x_i = n X$となる。これを$X$の定儀式とみなすと,真の値$X$が $n$や実験データ$x_i$に依存することになってしまう。

そこで,$\displaystyle \bar{x} = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^n x_i$で平均値を定義する。これは真の値の推定値(最確値)だと考えられる。このとき,残差=実験値−平均値,すなわち,$\delta_i = x_i - \bar{x}$ で定義する。

次に,実験データの精度は誤差のばらつきで表現される。平均二乗誤差は,$\displaystyle \sigma^2 = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^n \varepsilon_i^2\ $で定義し,標準偏差は $\sigma =\sqrt{\sigma^2}\ $とする。

ところで,この定義では,真の値がわからないので,誤差の$\varepsilon_i$は未知であり,平均二乗誤差も求まらない。そこで,残差の$\delta_i$から導くことを考える。$\varepsilon_i = x_i - X = x_i - \bar{x} + \bar{x} -X = \delta_i + \bar{x} - X$ となることから,

$\displaystyle \sigma^2 = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^n \Bigl\{ \delta_i + (\bar{x} -X) \Bigr\}^2 =  \frac{1}{n} \sum_{i=1}^n \Bigl\{ \delta_i^2 + 2 \delta_i (\bar{x} -X) +  (\bar{x} -X)^2 \Bigr\}  $
$\displaystyle = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^n \delta_i^2 + (\bar{x} -X)^2$

ここで,$ \displaystyle \sum_{i=1}^n \delta_i = 0$を用いた。また,$\displaystyle \sum_{i \neq j}^n \varepsilon_i \varepsilon_j = 0$より 上式第2項は,
$\displaystyle ( \bar{x} -X )^2 = \{ \frac{1}{n} \sum_{i=1}^n (x_i - X) \}^2 =  \frac{1}{n^2} \sum_{i, j=1}^n \varepsilon_i \varepsilon_j = \frac{1}{n} \sigma^2 $ 

これを先ほどの式に代入して移項の上整理すると,$\sigma^2 $を$\delta_i$を用いて表せる。
$\displaystyle \sigma^2 = \frac{1}{n-1} \sum_{i=1}^n \delta_i^2 $

2023年7月20日木曜日

大学教育とChatGPT(14)

大学教育とChatGPT(13)からの続き

文部科学省からの高等教育機関向けの通知があったので増えるかと思ったがそうでもなかった。日本大学から入学者選抜における生成AIツールの取り扱いについてが出ていた。

今後,このような入試関係の注意が多くなっていくのだろうか。学内でコントロールできる試験に比べて,さらに生成AIを使ったかどうかの検証は難しいと思われる。というか,これまでだって,第三者の助力支援の有無はわからなかったのではないか。

7月12日
生成AI(ChatGPTなど)の利活用に関する方針
大阪工業大学 学長 井上晋
https://www.oit.ac.jp/japanese/students/detail.php?i=9355

7月13日
本学における生成AI(ChatGPT、Bard、BingAI等)の利用について
清泉女学院大学 学長 田村俊輔
https://www.seisen-jc.ac.jp/info/2023/07/chat-gpt.php

7月13日
入学者選抜における生成AIツールの取扱いについて
日本大学
https://www.nihon-u.ac.jp/admission_info/news/2023/07/636/

7月13日
生成AI(ChatGPT、Stable Diffusion等)の使用に関する留意事項について
同志社女子大学 教務部長 真部真里子
https://www.dwc.doshisha.ac.jp/current/generative_AI

7月13日
「チャットGPT」など対話型生成AIとの向き合い方について
東海学園大学 学長 石川清
https://www.tokaigakuen-u.ac.jp/news/detail.html?id=1226

7月14日
滋賀大学における生成AIの利活用について
滋賀大学 学長 竹村彰通
https://www.shiga-u.ac.jp/15539/
https://www.shiga-u.ac.jp/15529/

7月14日
生成AIの活用について-本学の方針-
徳島文理大学 AI・データサイエンス専門委員会
https://www.bunri-u.ac.jp/info/2023071400027/

7月14日
ChatGPT等の生成系AIの使用に関する留意事項について
岐阜聖徳学園大学 学長 観山正見
ChatGPT 等の生成系 AI の使用に関する留意事項について
http://www.shotoku.ac.jp/information/images/ChatGPT_for_student.pdf
http://www.shotoku.ac.jp/information/images/ChatGPT_for_staff.pdf

7月14日
ChatGPT等の生成系AIに関する基本方針
山梨学院大学 学⻑ ⻘⼭貴⼦
https://www.ygu.ac.jp/news/2022/

2023年7月19日水曜日

死の島

君たちはどう生きるかからの続き

宮崎駿君たちはどう生きるかイメージ参照絵画の例として,ルネ・マグリット(1898-1967)の「ピレネーの城」,アルノルト・ベックリン(1827-1901)の「死の島」,ジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978)の「通りの神秘と憂鬱」があげられていた。

マグリットもキリコも良くご存知だったけれど,ベックリンって誰だっけ?と思っていたが,なんのことはない単に忘れていただけだ。小説の死の島福永武彦(1918-1979)の長編小説であり,自分の読書体験ベスト20には必ず入ってくる作品だ。

1977年の米島君との沖縄旅行では,飛行機の切符が手に入らず,神戸から船で与論島へ向かった。一泊目の夜は高知沖の太平洋上で船が揺れたため,座っているのが気持ち悪くて船室に寝ころんだままだった。そのとき,気を紛らわすために米島君に枕元で読んでもらったのが福永武彦の死の島(新潮文庫)だった。旅行後に急いで本屋へ走った。

相見綾子と萌木素子という韻を踏んだ二人の女性の名前と広島を暗喩する暗い島の絵が印象的で,シュールレアリスティックな構成の大作だ。福永武彦の小説は新潮文庫でそれまでも何冊か読んでいた。萌木素子が描いた暗い島の絵はベックリンの死の島とつながっていて,本文中でもベックリンの死の島の解説がされていた。なお,文庫本の表紙絵はムンクなのだった。

Wikipediaには死の島(小説)の解説はなかった。



写真:ベックリンの死の島(1880)

2023年7月18日火曜日

君たちはどう生きるか

7月14日,宮崎駿(1941-)監督のジブリ作品「君たちはどう生きるか」が公開された。

事前のプロモーション広告がまったくなかったので,ネットで噂になりはじめたころも何のことかわからなかった。そういえば,岩波文化人吉野源三郎(1899-1981)の小説「君たちはどう生きるか」の題名を借りて10年ぶりに新作をつくるという話があったのを思い出した。

アニメーション作品「君たちはどう生きるか」の評価は完全に二分されていて,説明不足で期待外れの失敗作というものと,難解だけれど素晴らしい芸術作品だというものだ。いずれにせよ簡単に読み解けるようなストーリーではないらしい。そのため,ネット上のさまざまな雑音やネタバレ(考証ぶったクイズごっこや食通ぶった矛盾探し)を排除して,まずは虚心坦懐にみるのが最も重要だという説が多い。

そうはいっても,情報はどんどん入ってくるのであった。(1) 宮崎駿の個人的な体験が物語のベースになっている,(2) アニメーション作成現場についてのメタファーで構成されている,(3) 過去のジブリ作品のオマージュやシンボルが多数ちりばめられている,(4) 原作に相当するものとして次の2作品がある。失われたものたちの本(ジョン・コナリー)と幽霊塔(江戸川乱歩版,黒岩涙香版は青空文庫に)。

ところで,作品中の13という数字が宮崎駿のジブリ長編アニメーションの数だという解説があったけれど,それはちょっとうまく整合しないような気がするがどうなのか。宮崎駿監督の長編アニメーション作品をあげれば次のようになるので13ともいえるかも。
1985(44) スタジオジブリ設立
1989(48) 魔女の宅急便
1992(51) 紅の豚
1997(56) もののけ姫
2013(72) 風立ちぬ

「君たちはどう生きるか」に一番近いのが「千と千尋の神隠し」らしいけれど, そういえばそれだってどんな話だったのかをみんな十分に理解しているわけではないような気がするので(自分だけ?),なぜ今回だけとくに不評なのだろうか。

P. S.  不評の原因を[4] が解読していた。さもありなん。


写真:1枚だけ公開されたポスター(スタジオジブリから引用)


[1]『君たちはどう生きるか』を理解できなかった人のためのネタバレ謎解き(海燕)
[2]『君たちはどう生きるか』を理解できなかった人のためのネタバレ謎解き(ちょっと上級編)(海燕)

2023年7月17日月曜日

複素平面上の三角形

Twitterでyujitachさんが,次の式が複素数(a, b, c)の入れ替えについて対称なのはなぜ?という疑問を呈していた。与式は,$\left| \sqrt{a-b}+ i \sqrt{b-c}\ \right| +\left | \sqrt{a-b}-i\sqrt{b-c}\  \right | $ である。見かけ上はまったく対称でないので不思議な感じがする。

Twitterの集合知はすごいもので,早速回答が寄せられていた。$x=\sqrt{a-b},\ y=\sqrt{b-c}, \ z=\sqrt{c-a}$とおくと,$x^2+y^2+z^2=(a-b)+(b-c)+(c-a)=0$である。

与式は$|x+i\,y|+|x-i\,y|$であり,その二乗は,
$(x+i\,y)(x^*-i\,y^*) + (x-i\,y)(x^*+i\,y*) + 2\left| (x+i\,y)(x-i\,y) \right |$ 
$= 2|x|^2+2|y|^2+2\left | x^2+y^2 \right | = 2 (|x|^2+|y|^2+|z|^2)$

したがってこれは(x,y,z)の入れ替えについて対称であり,(a, b, c) の入れ替えについても対称となる。その幾何学的な意味は,(a, b, c) が表す複素平面上の三点を結ぶ三角形の三辺の長さの二乗和である。

2023年7月16日日曜日

GRAPE

NHKのコズミックフロント「天文シミュレーションがコンピューターの世界を変えた!?」で,杉本大一郎(1937-)先生が登場されていた。まだ御存命でした。重力多体問題専用計算機GRAPEの開発における伊藤智義さんと牧野淳一郎さんの話題が中心で,戎崎俊一さんはストーリーにかんでいなかった。

そんなこともあって,ネットを調べていたら天文月報に杉本大一郎のロングインタビューが5回に渡って掲載されていてなかなかおもしろかった。杉本さんは長岡京の生まれで京大の工学部電子工学科に入学し,その後理学部物理学科に転科している。

大学院では,新設された原子核物理教室(後に物理学教室になる)の林忠四郎(1920-2010)研究室(天体核)の2期生となる。この天体核研究室の出身者には,佐藤文隆,蓬茨霊運,富田憲二,松田卓也,池内了,佐藤勝彦,富松彰など錚々たるメンバーが並んでいる。

杉本さんが大学時代にマルクス経済学や武谷三男(1911-2000)の弁証法の諸問題(三段階論)に大きな影響を受けたというところが,意外だった。もうひとつはエントロピーの捉え方であり,星の進化と宇宙の進化がともに非平衡熱力学的な世界観で統一的に考えることができるという話が展開されていた。元素合成のような具体論は野本憲一(1946-)に任せてしまい,もっと大きな話に関心があったようだ。


2023年7月15日土曜日

核融合スタートアップ

核融合に関する自分の知識が古いままなので,新しい話題についていけてない。

いちおう原子核物理を専門としていて,名大のプラズマ研を見学し,友達には核融合をテーマとして原研に就職した人たち(佐藤正泰君とか藤井常幸君とか)がいて,院生時代には,レーザー核融合研究センターの壮大な建物を横目に原付で核物理センターに通っていたので,それなりの耳学問的知識はあるのだけれど,そこまで真面目に勉強したわけではない。

自分のこれまでの乏しい知識はおよそ以下の通り。
 ○制御核融合の方式には,磁場閉じこめ慣性閉じこめがある。
 ○前者はトカマク型と,なんだかよくわからないヘリカル型に分けられる。
 ○後者はレーザ型と,あまりよくわからないイオンビーム型に分けられる。
 ○現在のトップはトカマク型の国際熱核融合実験炉ITERと,これに続くレーザ型のローレンス・リバモア国立研究所国立点火施設(NIF)のもの。ともに莫大なコストがかかる。
 ○これらの延長線上で実証炉や商業炉に到達するのはかなり先の話

そんなわけで核融合スタートアップの現状がどうなっているのか調べようとしていると,文部科学省の核融合の挑戦的な研究の支援の在り方に関する検討会の資料があった。京都フュージョン・エンジニアリングの共同創設者でもある武田秀太郎(1989-)のものだ。それらをまとめると+αで次の知識が得られた。

 ○核融合の研究開発が,国や大学から民間企業(スタートアップ)に移った。  
 ○高温超伝導による強磁場のトカマクでは装置のサイズが1/1000で済む。
 ○レーザー核融合のエネルギー充填を半導体レーザーにしてエネルギー効率を高めれば,パルス周期が非現実的な数時間から1/10秒以下にできる。
 ○FRC(逆転磁場配位型)などの新しい方式や燃料 p+11B が登場してきた。
 ○HelionやTAEを除き,中性子の運動エネルギーで湯沸かし発電の範囲に留まる。
 ○p+11Bはマシだが,中性子による放射化やトリチウムの問題は残っている。
 ○核融合炉でもトリチウムやHe3を巡って,核燃料サイクルという概念がある。

[1]TAE Technologies(米 1998-  1100億円)FRC p+11B
[2]General Fusion(加 2002-  500億円)Magnetically Confined Acoustic Compression
[3]Tokamak Energy(英 2009-  200億円)Spherical Tokamak 高温超伝導磁場
[4]First Light Fusion(英 2011-  100億円)Hyper Velocity Inertial Confinement
[5]Helion Energy(米 2013-  650億円)FRC D+He3 -> Microsoftが電力購入契約
[6]Commonwealth Fusion Systems(米 2018-  2600億円)Tokamak 高温超伝導磁場
[7]京都フュージョンエンジニアリング(日 2019-  120億円)
[8]EX-Fusion(日 2021-  18億円)レーザー核融合
[9]Helical Fusion(日 2021-  0.7億円)ヘリカル型核融合
[11]民間資金での核融合研究(武田秀太郎他)
[12]トカマク式核融合が超小型化(野澤哲生)
[13]核融合に第3の方式が登場(野澤哲生)

2023年7月14日金曜日

シンセティック・メディア(4)

シンセティック・メディア(3)からの続き

ニュースでデジタル分身という言葉をみかけた。シンセティック・メディアで生成するパーソナリティに対して,自分の使ってきた仮想人格という表現が妥当なのかどうか,ChatGPTにきいてみた。
Q:User
シンセティック・メディア が作り出すパーソナリティを何とよぶのが一般的でしょうか。(1) バーチャルビーイング,(2) 仮想人格,(3) デジタル分身,(4) その他 あるいはもっと適当なものがあれば紹介してください。

A:ChatGPT
シンセティック・メディアは、AIやコンピュータグラフィックスなどを使用して作られる人工的なメディアコンテンツを指します。それによって作り出されるパーソナリティは通常、「バーチャルビーイング」や「デジタル分身」などと呼ばれますが、用語は使用するコンテキストや状況によります。以下に各用語の一般的な使用方法を説明します。

バーチャルビーイング: これは、デジタル空間に存在する人工的なエンティティを指します。これらは通常、AIや他の形式の計算技術を使用して作成されます。バーチャルビーイングは通常、人間のように行動したり、人間のような特性を模倣したりします。 
仮想人格: この用語は、バーチャルリアリティ環境内のキャラクターを指すことが多いです。これらのキャラクターは人間の特性や行動を模倣することができ、また一部の設定では人間のユーザーと直接対話することができます。 
デジタル分身: これは、特定の人物、特に実在の人物のデジタル表現を指します。デジタル分身は、その人物がオンラインで行う活動や交流を補完するため、または代替するために使用されます。 
その他: 他の関連用語には「AIアバター」、「デジタルヒューマン」、「バーチャルインフルエンサー」などがあります。これらの用語は、特定の種類のシンセティックメディアや特定のコンテキストで使用されることが多いです。
これらの用語は一部重複している部分がありますが、それぞれ特定のニュアンスや用途を持っています。どの用語が最も適切かは、そのパーソナリティがどのように作られ、どのように使用されるかによります。

2023年7月13日木曜日

大学教育とChatGPT(13)

大学教育とChatGPT(12)からの続き

前期末の試験やレポートが近づいてきたので,再び各大学からの注意喚起が増えてきたような気がする。現状は森木銀河さんのページ(https://note.com/pogohopper8/n/n3126b312f209)が最も詳しい。ところでgoogle検索の仕様が変わったのだろうか。+site:ac.jp では絞り込みができず,ac.jp だけにしたほうが良いようだ。そこで,ac.jp 生成AI|生成系AI|ChatGPT|人工知能  で google検索している。

文部科学省が7月13日付けで,大学・高専における生成 AI の教学面の取扱いについてという通知をだした。その趣旨は,
(1) 各大学・高専において、具体的に行われている教育の実態等に応じて対応を検討することが重要であり、学生や教職員に向けて適切に指針等を示すなどの対応を行うことが望ましい
(2) 技術の進展や指針等の運用状況などに応じ、対応を適宜見直していくことが重要である。
ということだ。後半の留意すべき観点では,(1) 生成 AI と学修活動との関係性、成績評価,(2) 生成 AI の技術的限界(生成物の内容に虚偽が含まれている可能性),(3) 機密情報や個人情報の流出・漏洩等の可能性,(4) 著作権に関する留意点,の4項目について言及している。

6月19日
授業におけるChatGPT等生成AIの利用方針について
松山大学 学長 新井英夫

6月27日
学修における「ChatGPT」等の生成系 AI の利用について
横浜市立大学 学長 相原道子

6月27日
生成AI(生成系AI)の使用について(ガイドライン)
玉川学園理事(高等教育担当) 小田眞幸・玉川大学 ICT教育研究センター長 倉見昇一

6月30日
教育活動における生成系AIの利用に関する留意事項について
北海道教育大学 理事(教育担当) 海老名尚

6月30日
生成AI(ChatGPT等)の利用について
京都ノートルダム女子大学

7月3日
本学における生あきょう成系AIへの対応について
京都先端科学大学 学長 前田正史

7月3日
Chat GPT をはじめとする生成 AI の利活用について
宇都宮共和大学

7月4日
聖泉大学における ChatGPT 等の生成系 AI の使用に関する基本方針
聖泉大学 学長 唐楽寧

7月6日
生成系AIの利用に関する留意事項について
札幌大学 学長 大森義行

7月5日
生成AIの活用について
名古屋大学 副総長(教育担当) 藤巻朗

7月5日
生成AIを利用したレポート課題等の作成における留意点と成績評価における取り扱いについて
大阪法科経済大学 学長 中井英雄

7月5日
生成AI(人工知能)の利用について
志學館大学

7月6日
ChatGPT等の生成系AI利用の留意事項について
園田学園女子大学 学長 大江篤

7月6日
学習における生成 AI の利用について
埼玉大学 理事(教学・学生担当)・副学長 柳澤哲哉

7月6日
生成系 AI の利用について
仙台大学 学長 髙橋仁

7月7日
定期試験・レポート作成等における生成系AIツールの使用について
関西大学 副学長(教育推進担当)

7月7日
学生の皆さんへ~生成AIの利用における基本指針と注意点~
広島国際大学

7月7日
生成AIの利用に関する留意事項
千葉科学大学

7月10日
本学における生成系AI 活用に関する基本方針について
ノートルダム清心女子大学 学長 シスター 津田葵

7月11日
本学の教育現場における生成AIへの向き合い方
滋賀医科大学 理事(教育・学生支援・コンプライアンス担当)・副学長 松浦博
滋賀医科大学 情報総合センター教授・医療情報部長・マルチメディアセンター長 芦原貴司

7月12日
文星芸術大学における生成AIの利用ついて
文星芸術大学 学長 田中久美子

7月12日
ChatGPT 等の生成系 AI について
創価大学 通信教育部長 吉川成司

2023年7月12日水曜日

ローラ・ニーロ

1969年の11月ごろヒットした,フィフス・ディメンションウェディング・ベル・ブルースである。

作詞作曲者がシンガー・ソングライターのローラ・ニーロ(1947-1997)であり,1967年に彼女自身のデビューアルバム「モア・ザン・ナ・ニュー・ディスカバリー」に収録されていたとは知らなかった。そもそも,ローラ・ニーロって聞いたことあるわという自分の知識≒記憶が,ニーノ・ロータ(1911-1997)やロバート・デ・ニーロ(1943-)と混線しているのであった。いずれもイタリア系なのでよけい話がややこしい。

ローラ・ニーロが作った楽曲は主に他のアーティストがヒットさせることになった。フィフス・ディメンションがヒットさせた曲でいえば,ウェディング・ベル・ブルースの他に,ストーンド・ソウル・ピクニックスィート・ブラインドネスイーライズ・カミングブローイング・アウェイセイヴ・ザ・カントリーとなっている。いずれも懐かしい。

ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズアンド・ホエン・アイ・ダイもローラ・ニーロの作詞作曲なのだけれど,ピータ・ポール・アンド・マリーがこれを歌っているのは聞いたことがなかった。

1960年代後半から1970年代初めのにかけての中高生時代,洋楽ポップスとSFが趣味だった。入門はビージーズや後期ビートルズからだった。中でも誰を一番推していたかというと,フィフス・ディメンションだった。自分が最初に買ったアルバムも,フィフス・ディメンションの日本版のファーストアルバムだった(たぶん,海外の1stアルバムUp Up and Away と2nd アルバム The Magic Gardenを日本向けに組み合わせたのだと思う)。そんなわけで,3edアルバムの Stoned Soul Picnic が日本ではセカンドアルバムとなったのではないか。その後の,The Age of AquariousPortrait とあわせて4枚ものアルバムを買ったのはフィフスディメンションだけだった。


2023年7月11日火曜日

Threads(2)

Threads(1)からの続き

7月6日から始まったThreadsの登録数が5日で1億件を越えた。ChatGPTより速いスピードだった。Twitter,Mastodon,Bluesky,Threadsと巡回するのが面倒になってきた。そこで,自分が使ったことのある主なSNSについてまとめみる。

Facebook(2004.2-):憶えていないけれどいつから使い始めたのだろうか。ここに登場するのは知り合いばかり。あと,若干の有名人をフォローしているのでその情報は貴重だ。萩原雅之,橋本大也,増井俊之,岡口基一,神田敏晶,千坂恭二などなど。高齢化が進んでいて,若者は参加していない。友達の数は395人。

Mixi(2004.2-):これもいつから使い始めたのだろうか。誰かのページを見ると足跡が残るのだった。一次かなり盛り上がっていたが,アカウントは削除してしまった。

Twitter(2006.3-):2008年8月11日にiPhoneを買って8月18日にまちがえて,TwitterクライアントのNatsuLionをインストールして以来だ。Twilogに利用記録がある。最近のタイムラインアルゴリズムはグダグダ担っていたが,イーロンマスクに買収されて以後,さらにもろもろ全部おかしくなってしまった。それでも多くの人が残っているのでやめられない。フォロー中915人,フォロワー 953人,投稿数9758件。

Instagram(2010.10-):登録したのはiPhoneのアイコンが古いバージョンのときからなのだが,実際に写真をあげるようになったのは最近のことである。キラキラ投稿が多い中,地味に散歩写真をあげている。フォロー中331人,フォロワー288人,投稿数695件。

Mastodon(2016.3-):2017年4月の最初のブームで複数のMastodonインスタンスに登録した。そのうち自分のアカウントが残っているのが,日本のメジャーインスタンスであるmstdn.jpと数式を投稿できるmathtod.onlineの2つだけだ。サーバーが分散しているので,一番期待できるはずなのだけれど・・・。フォロー中285人,フォロワー319人。

Bluesky(2023.1-):結城浩さんから招待コードをもらうことができて,2023年5月中旬から使い始めた。参加者総数が少ないので,なかなか必要な情報が得られない。タイムラインはOKかと思われる。フォロー中86人,フォロワー32人,投稿数6件。

Threads(2023.7-):このムーブメントに乗り遅れないようにと予約したものの,ぼやぼやしていたら100万人番目は越えてしまっていた。まあ1億から見れば,1%の程度の位置にはあるのだけれど。タイムラインアルゴリズムがいまいちなのと,真面目な話をしにくい雰囲気が煽られている。フォロー中336人,フォロワー102人,投稿数11件。


2023年7月10日月曜日

エアレボルーション

最近お薦めに上がってきたエアレボルーションは,島田雅彦(1961-)と白井聡(1977-)とジョー横溝(1968-)が毎週ゲストを招いて対談するチャンネルだ。

長い対談が月額770円で週3回配信されるが,そのうち前半の40分から120分ほど無料で公開されている。外山恒一,鈴木涼美,柄谷行人,鈴木エイト他,多彩なゲストが続いている。無料分だけを見ているが,1月に配信されていた金平茂紀(1953-)の回がおもしろかった。

金平さんは昨年秋まで報道特集のキャスターをしていて,ときどきみていたが,ソ連崩壊の1991-1994までJNNのモスクワ支局長として派遣されていた。島田雅彦は東京外国語大学のロシア語科出身で,白井聡は研究テーマがレーニン主義,社会思想,政治学だ。このベストメンバーがウクライナ=ロシア戦争について語っていた。

金平さんはこの正月に1週間ほどモスクワに観光客として旧知の人を訪ねており,現在のモスクワの様子を伝えていた。我々が目にする耳にするのは,西側のフィルターを通過して,日本のマスコミによって増幅された大政翼賛会的な情報だけなので,新鮮なものがあった。

ロシアは見かけ上ほとんど疲弊しておらず,このままだとウクライナ戦争がベトナム戦争化しそうだとのことだ。アメリカがクラスター爆弾を提供するというのも日本のテレビではシラッと何も問題がないかのように伝えられている。

昨年2月に始まったウクライナ戦争と7月の安倍首相殺人事件を奇貨として,防衛費が倍増され南西諸島へのミサイル配備が進むということになってしまった。

2023年7月9日日曜日

警告メッセージ

7月7日七夕に遭遇した怖い話。

Blogspot(google)から警告がとどいた。最初は,投稿したページになにやら警告マークが出てきて何が何だかよくわからずに焦った。ログアウトして再アクセスしてみると,警告付ではあるもののワンクッションおけば一応は見える最低限のレベルものだった。

YouTube(これもgoogleだ)で収益化できなくなった哲学系ユーチューバ−じゅんちゃんが遭遇した理不尽な話などを散々聞いていたので,これはまずいことになったと思った。あらためて自分の記事を読み返してみて,話題のイーロンマスクとTwitterの話がまずかったのか,最後のBlueskyの招待枠の話がまずかったのか,表現に過激なところがあったのか,誰かに刺されたのか・・・わからない。気になるところをすべて無難なものに修正して再投稿したが,同じ警告がついてしまった。がーん。

少し頭を冷やしていると,googleアカウントにBlogspot運営側からメールが届いていたのに気がついた。引用すると次のようなものだった。
 ご存知のこととは存じますが、Blogger のコミュニティ ガイドライン では、Blogger で許可されるコンテンツと禁止されているコンテンツについて概説されています。Blogger では、お客様の「 Bluesky(2)」というタイトルの投稿について審査の必要があるとの報告を受けました。審査の結果、この投稿には慎重に扱うべきコンテンツが含まれていると判断し、投稿を閲覧しようとした読者に警告メッセージが表示されるようにいたしました (投稿の URL: 略)。読者がこの投稿とブログを閲覧するには、この警告を承諾する必要があります。

さらに,

お客様のブログ投稿に警告メッセージが表示されるようになった理由:この投稿のコンテンツが、アダルト コンテンツに関する Blogger のポリシーに違反していることが判明いたしました。

 えーっ,それはないわ。修正して再審査を申し込めということだけれど,どこがアダルトなのかさっぱりわからない。さらに熟考してみると,どうやら参考コードのなかの英文字列がやや微妙だったことに気付いた。これを直して再審査を申し込んだがなしのつぶてである。

しかたがないので,新しく微修正版(アルファベット3文字×2箇所修正)を投稿したところ無事にパスした。

教訓:言論や表現の自由は,その手段をAIでブラックボックス化されたビッグビジネスに握られている限り,常に風前のともしびであり,相当なコストを費やすことなしに説明責任など果たされることは期待できない。分散IDと分散SNSの普及が待たれる。

2023年7月8日土曜日

Threads(1)

Bluesky(2)からの続き

MetaがはじめたTwitterにかわるSNSがThreadsだ。7月6日8:00ごろから時間前倒しでリリースしたところ,2時間で200万人,4時間で500万人,7時間で1000万人,半日で3000万人,2日7000万人のユーザーを集めたらしい。

メタの旧社名はフェイスブックであり,マーク・ザッカ—バーグ(1984-)がメタバースに入れ込むまではSNSの会社だった。フェイスブック社は2012年に写真・動画共有SNSのインスタグラム社を買収した。インスタグラムは,2010年にAppStoreに登場し,2ヶ月で100万人,8ヶ月で500万人,約1年で1000万人のユーザを集めている。現在のアクティブユーザ数は10億人のオーダーだ(登録アカウントは20億)。インスタ映えは普通名詞になってしまった。

Threadsをはじめるには,インスタグラムのアカウントが必要である。巧妙な作戦だ。インスタグラマー10億人のうち1%が参加すれば,簡単に1000万人に達するわけだ。周到に準備されたためか,他のマイナーなSNSとは異なり,これだけ短時間に集中して負荷がかかるスタート時のアクセスを軽々とこなしているように見える。Blueskyはそれに対応できるだけのリソースを持たないので招待制で細々とやってきたわけだ。

ユーザインターフェイスや,機能についてはまだ揺らいでいて評価は定まっていないけれど,迷走状態のTwitterがさらに霞んでしまいそうな雰囲気だ。自分が使えるようになって最初のタイムラインには,瀬戸弘司やドリキンの顔とフォローもしていないスレッドが流れてきて訳が分からなかったが,どうやらフォロー数が少ない場合,アルゴリズムでお薦めをコントロールしているらしい。その他の特徴は以下の通り。

 ○投稿文字数は500字まで,写真10枚,動画は5分まで
 ○Web版はないが(アプリに誘導される),自分の投稿へのリンクは可能
 ○ハッシュタグや検索(ユーザアカウントを除く)は機能しない
 ○いいねの数はわかるが,リツイート=再投稿の数はわからない
 ○タイムラインの+マークからすぐにフォローできる
 ○引用とRT(再投稿)はあるが,DMはない
 ○アカウント削除には,インスタグラムのアカウントごと削除する必要
 ○社会派,物理屋などはまだあまり流れ着いていない

そんなわけで,7月6日はThread祭りの日だった。フォロー関係の構築で一日がつぶれる。



写真:Threadsの参加証@Instagram(2023.7.6)

[4]Threads国内フォロワー数(UserLocal)
[6]世界ソーシャルメディア統計 (Stat Counter)


2023年7月7日金曜日

Bluesky(2)

Bluesky(1)からの続き

いよいよTwitterがややこしくなってきた。7月1日,イーロン・マスク(1971-)はTwitterアカウントの種類に応じて一時的に閲覧回数の制限を設けた。認証済みアカウントは6000件(1万件),未認証アカウントで600件(1000件),作成されたばかりの未認証アカウントで300件(500件)というわけだ(括弧内は7月2日の泥縄的修正値)。制限の理由については,インターネット上のデータ収集や処理における不正な操作の急増に対応するためとしている。

実際には,TwitterがAPI課金を急騰させたことを原因とするウェブスクレーピングの増加だとか,サーバーを運用しているクラウドとの契約の関係だとか,Twitterコードのバグが自分自身に対するDOS攻撃をしたのが原因だとか,諸説がある。いずれにせよTwitterのコントロールがいよいよ効いていないことが明らかになった。

このため,再びTwitterから他のSNSへの流失が進んでいるらしい。その候補の一つはジャック・ドーシー(1976-)がはじめたBlueskyだけれど,招待制の登録者はまだ20万人だ(Twitterは4.5億人)。他に T2 とか MetaのThreads が話題になっている。どうなることか。現在のところ,Twitterに流れる情報の方がまだまだ有用度が高い。

そのBlueskyの歩き方というドキュメントがmd形式で流れていた。pdfに変換しようと考えた。たぶんpandocが使えるはずなのだが,調べてみると一手間必要だった。これをまとめると次のようになる。
$ brew install pandoc ✓
$ brew cask install mactex ✓
~/.zshrc に次の行を追加
export PATH=/usr/local/texlive/2019/bin/x86_64-darwin/:$PATH
$ source ~/.zshrc
$ pandoc bluesky.md -o bluesky.pdf --pdf-engine=xelatex -V documentclass=bxjsarticle -V classoption=pandoc
これをシェルスクリプトにすると
$ cat md2pdf.sh
#!/bin/zsh
# usage mdspdf.sh test
# input test.md output test.pdf
#
pandoc $1.md -o $1.pdf --pdf-engine=xelatex -V documentclass=bxjsarticle -V classoption=pandoc

これで無事にmdファイルをpdfファイルに変換できた。

P. S. Blueskyの招待コードが若干余っているので必要な方はメール,TwitterのDM,Facebook Messengerなどでご連絡ください。

2023年7月6日木曜日

大学教育とChatGPT(12)

大学教育とChatGPT(11)からの続き

ChatGPTにもそろそろみんな飽きてきたけれど,世間ではまだダラダラと続いている。GPT-4も最近はどうも調子がすぐれない。難しい問い対してブチ切れてしまう現象が頻発している。最新のデータにアクセスできるBing連携の部分も公開が停止されてしまった。かといって,Bard,Perplexity,Bingなどがイマイチである状況には変わりがない。

そうこうしているうちに,国産LLMのニュースがいろいろと入ってきた。しかしそれらは企業・行政向けや研究開発用の特殊なシステムを指向している。いずれもパラメタ数が数十B以下の小規模LLMなのだ。良質な日本語テキストをたっぷりと学習させた,自由に使える標準的な日本語LLMが現れてほしい。
6月28日
ChatGPT等の生成AIについて
常磐大学 学事センター長 河野敬一・学生支援センター長 菅田浩一郎

6月29日
佐賀大学における生成AI を始めとするデジタル技術の利活用に関する基本方針について
佐賀大学

6月29日
Chat GPT等の利用について
周南公立大学 副学長(教学担当) 渡部明

6月29日
学修における生成系AIの使用について
恵泉女学園大学

6月30日
生成AIの使用に関する注意喚起
奈良教育大学 副学長(教育担当) 越野和之

7月1日
金城大学生成AI(ChatGPT、Midjourney等)の活用に関する基本的な考え方
金城大学 学長 米島學

7月3日
生成系AIの利活用に係る注意喚起
筑波技術大学 情報処理通信センター

7月3日
生成AI活用に関するガイドライン(学生向け)(ver. 1.0)について
島根県立大学 学長 山下一也

7月3日
ChatGPTをはじめとする生成系AI利用についての本学の基本的な考え方
沖縄大学 学長 山代寛

7月3日
京都府立大学生成AI利用ガイドラインの策定
京都府立大学 AIデータサイエンス教育研究センター

7月4日
ChatGPT等の生成系AIの利用について
日本社会事業大学

7月4日
仁愛大学におけるChat GPT等生成系AIの活用に係る基本方針
仁愛大学 学長 田代俊孝

2023年7月5日水曜日

生成AI学校向けガイドライン

7月4日,文部科学省は,日本の初等中等教育の学校を管理している各都道府県・各指定都市教育委員会教育長や都道府県知事などに対して「初等中等教育段階における生成 AI の利用に関する暫定的なガイドライン」の 作成についてという通知を発出した。

マスコミのニュースを聞く限り,例によって,各大学のガイドラインのような生ぬるいものがでてきたのかと思っていた。ところが,現物は24ページ相当のプレゼン資料を含めて16ページという,かなり気合いが入ったものだった。

ところでその中身をみると,山越えの暗い見通しの悪い道を,車内からワァーワァーいわれて,アクセルとブレーキを踏みながらとばしているような微妙なことになっている。

ポイントは,(1) 利用規約を守れ(ChatGPTは13歳以上+18才までは保護者同意,Bingは未成年には保護者同意が必要,Bardは18歳以上),(2) パイロット的な取り組みを進めよ,(3) 一般の学校はおとなしくせよ,というものだった。AI以前の話なのだけれど「全ての学校で,情報の真偽を確かめること(いわゆるファクトチェック)の習慣付けも含め・・・」とか,そもそも大人ができていないのでは・・・。

一番言いたかったのではないかと思われる事項は,チェックリストの第8項目にあった。
 「読書感想文などを⻑期休業中の課題として課す場合には,AIによる生成物を自己の成果物と して応募・提出することは不適切又は不正な行為であること,自分のためにならないことなどを十分に指導しているか。保護者に対しても,生成AIの不適切な使用が行われないよう,周知・理 解を得ているか」

追伸:この通知を出したのは,初等中等教育局長の藤原章夫さんだ。平成24年(2012年),学長・事務局長らと文部科学省に行ったあと新橋あたりの居酒屋で一度会っている。そのときは,初中局の教職員課長だったのか。大阪教育大学は教職大学院の設置申請を計画中であり,新任の事務局長の若井祐次さんが大学振興課の方々と併せてセッティングした。長尾先生と栗林先生はそれについて若井さんを大層評価していた。藤原さんがかつてフランス大使館にいたころのことが話題になっていたが,ひたすらよろしくお願いします的なことで終始していた。

2023年7月4日火曜日

シンセティック・メディア(3)

シンセティック・メディア(2)からの続き

シンセティック・メディア=マルチモーダルなAI技術による仮想人格的インターフェースだとすると,その適用分野や帰結がどうなるのかが気になる。想定される分野を考えてみると,結局,新聞紙面のようなことになるような気がしてきた。

図:シンセティック・メディアの主な適用分野


個別に何が起こるか考えようと思ったが,そもそも生成系AIがどのように利用できるかというと,(1) 対話型モード,(2) 一括処理モード になる。昔の会話型TSS処理とバッチ処理の再来だ。シンセティック・メディアが有効なのは,前者の対話型モードの場合だろう。

対話型モードを使うときに,自分が,(1) 受信サイドなのか,(2) 発信サイドなのかで意味が異なってくる。とりあえず,利用のための必要条件やリソース等を度外視して考える。

(1) 受信サイドでは,自分の疑問に対して対話的に回答を得ること,対話型でコンテンツ・リソースを創作すること,共感を得るための対話相手としての時間を費やすこと,などがあげられる。本や論文の単なる要約だけならば,バッチで十分である。多くの場合,ある種の専門家としての仮想人格が必要になる。

 (2) 発信サイドでは,自分の分身を作成しておけば,時間と空間の制約を越えて,多数の人と対話しながらメッセージを伝えることができる。ただ,普通の人がSNSで発信するのはいいとして,視聴者がさらに対話的に深いコミュニケーションを取りたいとなるようなケースはそれほど多いのかという疑問は残る。

これらを別に視点から見ると,(1) 専門家としての仮想人格と,(2) 友人としての仮想人格の2種類のニーズが発生するということなのかもしれない。専門家というのは,必ずしも学術分野における研究者やいわゆる専門職だけを指すのではなく,生活や趣味,普通の職業や地域社会などでの現実世界の細部に関する現実の経験を持っているかどうかが鍵になる。

また,上記の仮想人格のそれぞれに対して,(1) 非実在人物に対応,(2) 歴史上の実在人物に対応,(3) 現存の実在人物に対応,の場合が考えられる。仮想人格も著作物になるのだろうか。面倒な話ではある。

さらに人間=現実人格(P)と仮想人格(V)とのコミュニケーションの時空形態からすれば,現在のインターネット・コミュニケーションと同様に考えられる。時間的には,(1) 同時交流(チャットやライブ)と,(2) 遅延交流 (メールやブログ)が,空間的には,(1) 一対一交流(P−V)と (2) 集団交流(P^m ×V^n ) が考えられる。ここで,仮想人格は複数人存在できるということに注意が必要だ。

そうなると最重要問題は,PとVが区別できるかということに帰着するのかもしれない。まさに フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」に登場するフォークト=カンプフ感情移入度検査法 が必要な時代になってしまった。

2023年7月3日月曜日

満月

満月が出てるよというので,ベランダに出て見ると南東の低い空につぶれた楕円形に光る月が出ていた。満月じゃないのではと,iPhoneの六曜で月齢を確認してみると満月でした。

先日の人間ドックでは眼鏡をかけて右眼が0.4,左眼が0.9だった。そんなわけで,裸眼では無限遠方の光点はたいてい歪んでぼやけて見える。早速眼鏡をかけて月の形を確認してみると確かに満月だ。

ところで,なぜこんな低い空にかかっているのかと思ったけれど,良く考えれば,昨日が夏至からおよそ10日後の半夏生。春分や秋分における月の南中高度は90度−緯度である。これに地球の公転面に対する自転軸の傾き23.4度をプラスマイナスしてあげれば,冬至や夏至の南中高度がわかる。

探してみると奈良県の各市町村の緯度経度の値が見つかった。天理市は,東経135.8度,北緯34.7度になるので,夏至における月の南中高度は 90-34.7-23.4=31.9度となる。それは低いわけだ。これが冬至になれば,90-34.7+23.4=78.7度となる。こんなにも違うのか。梅雨時に満月を見ることはあまりなかったので,ちょっとビックリ。

天理市の経度緯度は,市役所の位置だけでなく,東西南北端の値も出ている。このうち西端がいつもの散歩コース上にあり,ファミリー公園のちょっと東側の田んぼの中だ。



図:国土地理院の地形図から天理市西端近傍