事前のプロモーション広告がまったくなかったので,ネットで噂になりはじめたころも何のことかわからなかった。そういえば,岩波文化人吉野源三郎(1899-1981)の小説「君たちはどう生きるか」の題名を借りて10年ぶりに新作をつくるという話があったのを思い出した。
アニメーション作品「君たちはどう生きるか」の評価は完全に二分されていて,説明不足で期待外れの失敗作というものと,難解だけれど素晴らしい芸術作品だというものだ。いずれにせよ簡単に読み解けるようなストーリーではないらしい。そのため,ネット上のさまざまな雑音やネタバレ(考証ぶったクイズごっこや食通ぶった矛盾探し)を排除して,まずは虚心坦懐にみるのが最も重要だという説が多い。
そうはいっても,情報はどんどん入ってくるのであった。(1) 宮崎駿の個人的な体験が物語のベースになっている,(2) アニメーション作成現場についてのメタファーで構成されている,(3) 過去のジブリ作品のオマージュやシンボルが多数ちりばめられている,(4) 原作に相当するものとして次の2作品がある。失われたものたちの本(ジョン・コナリー)と幽霊塔(江戸川乱歩版,黒岩涙香版は青空文庫に)。
ところで,作品中の13という数字が宮崎駿のジブリ長編アニメーションの数だという解説があったけれど,それはちょっとうまく整合しないような気がするがどうなのか。宮崎駿監督の長編アニメーション作品をあげれば次のようになるので13ともいえるかも。
1978(37) 未来少年コナン(TV)1979(38) ルパン三世カリオストロの城1984(43) 風の谷のナウシカ1985(44) スタジオジブリ設立1986(45) 天空の城ラピュタ1988(47) となりのトトロ1989(48) 魔女の宅急便1992(51) 紅の豚1997(56) もののけ姫2001(60) 千と千尋の神隠し2004(63) ハウルの動く城2008(67) 崖の上のポニョ2013(72) 風立ちぬ2023(82) 君たちはどう生きるか
「君たちはどう生きるか」に一番近いのが「千と千尋の神隠し」らしいけれど, そういえばそれだってどんな話だったのかをみんな十分に理解しているわけではないような気がするので(自分だけ?),なぜ今回だけとくに不評なのだろうか。
P. S. 不評の原因を[4] が解読していた。さもありなん。
写真:1枚だけ公開されたポスター(スタジオジブリから引用)
[2]『君たちはどう生きるか』を理解できなかった人のためのネタバレ謎解き(ちょっと上級編)(海燕)
[3]君たちはどう生きるか で、宮崎駿は結局,何を描こうとしたのか?(三宅香帆)
[4]ジブリ新作映画『君たちはどう生きるか』の感想文の序論 - 予告なしの挑戦と対価と攻防(世に倦む日々)
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