2023年7月26日水曜日

妹背山婦女庭訓(2)

妹背山婦女庭訓(1)からの続き

国立文楽劇場の7月夏休み文楽特別公演(第171回)は,第2部で妹背山婦女庭訓の四段目の通し公演(4月に続いての)だった。第1部は親子劇場でかみなり太鼓と西遊記,第3部はサマーレイトショーの夏祭浪花鑑

これまでに見た妹背山婦女庭訓(2010年,2016年)は一日がかりの二部構成だった。前半が,初段:小松原の段(23)・蝦夷子館の段(42),二段目:猿沢池の段(13),三段目:太宰館の段(34)・妹山背山の段(115)であり,後半が,二段目:鹿殺しの段(7)・掛乞の段(15)・万歳の段(23)・芝六忠義の段(54),四段目:杉酒屋の段(29)・道行恋苧環(35)・鱶七上使の段(45)・姫戻りの段(14)・金殿の段(45)である。

今回は春と夏の2回に分けた通し狂言だったため時間に余裕があって,二段目の組み換えはなくなり,4月公演には,初段:大序 大内の段,7月公演には,四段目:井戸替の段:入鹿誅伐の段が新しく追加されていた。「鱶七上使の段」が「鱶七使者の段」に変わったのはなぜ?(明治12年の床本 https://dl.ndl.go.jp/pid/856493/1/157 では確かに鱶七使者の段とある)

久しぶりの日曜日の文楽劇場だったが,客の入りは6〜7割くらいだろうか。前回と同様,床の直下だったけれど,回りには空席も目立っていた。一つ前回と違うのは外国人観光客向けの English という看板を持った案内の方が立っていたことだ。パンフレットの一部の説明も英文になっていた。なんば・日本橋界隈は外国人であふれていたけれど,文楽劇場ではそこまで目立つわけではなかった。

今回が初見の井戸替えの段は,小住太夫+藤蔵でちゃり場的な場面だったが,途中でまぶたが閉まった。杉酒屋の段は芳穂太夫+錦糸で玉勢演ずる子太郎が主導して似たような雰囲気の段だった。道行恋苧環の開始のところで清治が小声でハイという合図をして全員が礼をし,次のハイで直れとなった。そういう仕組みだったのか。

最後の入鹿誅伐の段は,メンバーも軽めの短い段であり,入鹿がやられておしまいという事なのだ。(1) 入鹿の妹の橘姫が,宝剣の奪取に失敗し入鹿に斬られてしまうが,その後,隣の池に飛び込んで日高川入相花王の蛇に化けた清姫よろしく泳いでいったたのは一体なんなのか。最後には鎌足の鎌で斬られた入鹿の首が空中を飛び回っていた。クライマックスが済んでしまった最後の段というのはだいたいこうなる運命にあるのだった。

P. S. 1 なお,藤原淡海(不比等)は橘姫と結ばれるらしいので,池に溺れて死んだわけではない。
P. S. 2 この度人間国宝になった吉田玉男(1953-)は,第3部の夏祭浪花鑑の団七九郎兵衛を演じるので,第2部には登場していなかった。


写真:最後がかわいそうなお三輪(2023.7.23撮影)

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