2023年7月29日土曜日

フランクになろう

楠本君から同窓会出席の連絡メールがあった。そこに,次のエピソードが書かれていた。
あなたは、私たちの学生時代に いつぞや、「人間に関する問題の解決のためには(…だったか、このあたりの私の記憶は不正確です)、すべての人びとが神経で繋がっていればよいのだ」、というような言葉を言った事を覚えていますか? 変な事を言う人だなぁ、と私は強く印象付けられたので、忘れずに覚えています。言葉は正確ではありませんが、大体そのような事をあなたは言っていました。

全く憶えていないのだけれど,自分ならばそういうことをいうかもしれない。次の返事を書いた。

「人間に関する問題の解決のためには、すべての人びとが神経で繋がっていればよいのだ」と自分がいった記憶はないのですが,そのようなことを言いそうな気もします。高校時代によんだブライアン・オールディスのSFに「フランクに行こう(Let’s be Frank)」というのがあって,遺伝によって単一意識が複数の人の上に実現するというものです。
SFマガジンの1969年10月号(No. 125)に「フランクになろう(Let's Be Frank)」 として掲載されたものだ。高校2年のときだけれど,いつまでも記憶に残る短編だった。創元推理文庫のジュディス・メリルの短編集では「率直(フランク)に行こう」という題名になっていた。

さがしてみると,archive.orgに原文があったのでDeepLにかけて再読してみた。

アン・ブーリンがロンドン塔で処刑されてから4年後なので1540年ころから物語は始まる(ちなみに,トマス・モアがロンドン塔で斬首されたのは1535年)。サー・フランク・グラッドウェッブに男の子が生まれたが19年間眠り続けたままだった。彼が目覚めた時サー・フランクは驚愕した。同じくフランクと名づけた息子の目を通して自分を見ているのだった。つまり同一意識が2人の人の上に実現したわけだ。そして子孫にそのままその能力は受け継がれ,20代目の2015年には1つのフランクという意識(男女や身分階級を越えて)が3億人に達していた。そして..
「21世紀の初めには、グレートブリテン島はフランク族だけで構成されていた。老いも若きも、太っていようが痩せていようが、金持ちであろうが貧乏人であろうが、みなひとつの巨大な意識を共有していた。プライバシーは存在しなくなり、新しい家はすべてガラス張りになり、カーテンは廃止され、壁は取り払われた。警察は姿を消し、法律も一夜にして消滅した。外交問題に対処するための議会のパロディーは残ったが、政党政治、選挙、新聞の指導者(新聞そのものさえ)は廃止された。芸術の大半は消え去った。あるフランクの姿は、別のフランクの姿を見ようとはしなかった。テレビ、出版、ティン・パン・アレイ、映画スタジオ......灯りのように消えた。」
このフランクの集合意識は新大陸で第二の集合意識と向き合うことになる。

AGIが実現するとき,世界全体が1つのAGIによって統合されるのかどうかという問題について,宗教的=文化的な背景によって複数に分割されるのではないかと想像していた。キリスト教,イスラム教,仏教,ヒンズー教,ユダヤ教などなど。あるいはロシアや中国は別かもしれない。まあ,それに類した状況が想像できる。あるいは超国家企業別=ポイント別=OS・UI別の集団分割みなるかもしれないが。

遺伝工学的な工夫をしても単一意識を複数個体に分散して実装することはできないと思われるが,仮想空間におけるパーソナライズされたAGIアシスタントが共有意識と結合されていれば,人間+AGIアシスタント系が単一意識の熱浴中で相互作用しているイメージとなる。人間+AGIアシスタント系の結合度が高くなればなればなるほど,フランク的な集合意識に近い状態になるかもしれない。まあ,いまでもSNSによって強結合する個人の集合がネトウヨ的な集団運動としての疑似集合意識を創発しているわけで・・・


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