2019年6月28日金曜日

教育ビッグデータ(3)

教育ビッグデータ(2)からの続き)

新時代の学びを支える先端技術活用推進方策 (最終まとめ)の,2.学校現場における先端技術・教育ビッグデータの効果的な活用をもう少しだけ読んでみた。

前段の「学校現場で先端技術の効果的な活用を促進するために」の方は次の項目からなる。
・遠隔・オンライン教育
・デジタル教科書・教材
・協働学習支援ツール
・AV・VR
・AIを活用したドリル
・センシング
・統合型校務支援システム

このうち遠隔・オンライン教育にかなりの説明を割いていることが目立つ。SINETの開放(といってもVPNの提供くらいしかメリットがなさそうだけど)に加えて,大学や企業を巻き込む「マッチング&アドバイザリープラットフォーム」機能を有するポータルサイトを創設するという提案まで踏み込んでいる。初等中等教育をダシに,SINETの強化を図るということ?よくわかりません。

その他の項目はなんだか手垢のついたものばかりで,目新しいものはないし,センシングも腰が引けている。総じて教育ビッグデータとの関連をきれいに見せきれていない。最近の情報教育の主流派のみなさんが推奨してきた一連のシステムを,総花的に並べている。なぜか,教育工学の伝統につながる学習履歴の収集とその分析というキーワードが強調されていないような気がする。危険・注意だからかもしれないが。

後段の「教育ビッグデータの現状・課題と可能性」では,関連企業団体であるICT CONNECT21 からの海外事例報告のあと,多くのページをデータの標準化の話に割いている。文部科学省による学校調査を自動化・効率化するためのシステムとして「教育ビッグデータ的なもの」を使うという話であればそれでよいのだろうと思う。まさに,英国モデルであり,各ベンダーはその標準を満足する個別システムを自由に設計すればよいのだから。

ところで,教育ビッグデータが目指しているとして,この政策まとめで最初に謳ったものはなんだったのだろうか。非常な危険を伴うが,「公正に個別最適化された学び 誰一人取り残すことなく子供の力を最大限引き出す学び」なのであれば,ちょっとベクトルが違うような気もしないではない。しかしながら,道徳教育でフル回転している現在の文部科学省が,教育ビッグデータといった瞬間,「道徳教育ビッグデータ」で統合される恐ろしい世界が迫ってくるようでなので,そうなれないのであれば逆に良いのかもしれない。

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