2020年12月9日水曜日

WHOのCOVID-19データ(1)

WHOがまとめている,COVID-19についての各地域の感染者数や死亡者数の経時データは以前はダッシュボードのCSVファイルとしてアクセスできたが,今は,一日分のCSVファイルしか提供されていない。経時データはグラフの形で見ることができる。しかし,JSON形式の経時データにはアクセスできるので,これから必要な情報を取り出すperlスクリプトを作った。

古いperlの知識しかないので,動作が思ったとおりではないけれど,とりあえず第1段階の結果が出た。引き続きプログラムを精査していきたいが・・・。

#!/usr/local/bin/perl
# 12/10/2020 K. Koshigiri
# usage: json.pl 2020/12/05 5
# above sample extracts 5 day data from 2020/12/05
# original data = https://covid19.who.int/page-data/table/page-data.json

use Time::Local 'timelocal';
\$tmp = "tmpx";
\$in = "whox";
\$out = "who-dat.csv";
\$jsn = "https://covid19.who.int/page-data/table/page-data.json";
(\$sec, \$min, \$hour) = (0,0,0);
(\$year, \$month, \$day) = split '/', \$ARGV[0];
\$epochtime = timelocal(\$sec, \$min, \$hour, \$day, \$month-1, \$year-1900)+32400;

open(IN, "<\$tmp");
system("lynx -source \$jsn | fsp -u > \$tmp");
open(OUT, ">\$in");
while(
) {
  s/],/],\n/g;
  print OUT;
}
close(OUT);
close(IN);

for (\$i=0; \$i<\$ARGV[1]; \$i++) {
  \$ut=\$epochtime+86400*\$i;
print "\$ut\n";
open(IN, "<\$in");
open(OUT,">\$out");
while(
) {
  s/\]//g;
  s/\[//g;
  if(/Country.*"value":"(.*?)"/) {
    $ct=$1;
    print OUT "$ct,";
  }
  if(/$ut/) {
    print OUT;
  }
}
close(OUT);

close(IN);
}


2020年12月8日火曜日

有馬さん(2)

 今日は12月8日で,このブログを開始してからちょうど2周年ということになる。

そして,8年前の2012年12月8日にも有馬さんとの接点があった。「高度専門型理系教育指導者養成プログラム~これからの中等理科教育指導者像を探る~」と題したシンポジウムが大阪教育大学天王寺キャンパスのミレニアムホールで開催され,その基調講演に有馬さんを招いたのだった。たぶん,仲矢さんが話をつけてきたのではなかったか。長尾学長とプログラム責任者の定金先生に加えて当時理事だったということで私も加わって,二部主事室で有馬先生と開催前の談話をしていた。名刺交換のときに軽く自己紹介したけれど,有馬先生は私のことを覚えていなかったと思う。

さらにさかのぼって,1996年の9月に南園先生が新大阪の大阪ガーデンパレスで開いた国際シンポジウムが,「International Symposium on Non-Nucleonic Degrees of Freedom Detected in Nuclei」であり,この基調講演にも有馬先生を招待していた。実行委員のメンバーの一人でもあったため,歩いて5分の新大阪の駅まで有馬先生を迎えに行くことになった。有馬先生はすぐに見つかり,かばんをお持ちしましょうといったのだけれど,いやいや大丈夫と断られた。ホテルまでの道筋でもそんな大した話はした記憶はない。ただ,森田研の出身であったということはなんとなく理解されていたのだと思う。

この大阪ガーデンパレスは,私立学校の共済組合の系列であり,城西国際大学に移られた森田先生がよく利用されていた。しばしばホテルに呼び出されて,その時点での研究状況等を報告してから,昼ごはんをごちそうになっていた。科研費の打ち合わせということで,謝金もたまに出ていた。

2020年12月7日月曜日

有馬さん(1)

 有馬さんが亡くなった。twitterでは,毀誉褒貶が喧しい。文部科学大臣や政治家としての彼の仕事に対する批判,東大関係者や俳句関係者からの賛辞などが集まっていた。同じ原子核理論で比較的分野の重なりもあったため,いくつかの記憶がある。

有馬さんといえば,堀江・有馬の論文(Configuration Mixing and Magnetic Moments of Odd Nuclei)だ。この延長線上に,1970年代末の東大の鈴木俊夫さんらの論文「12Cの非弾性電子散乱におけるM1磁気形状因子に対するコア偏極の効果」があり,それが自分の博士論文の「A=12体系のベータ崩壊におけるコア偏極と交換流の効果」の話につながっていく。この博士論文のコピーは大坪先生からの助言で,有馬先生にも送っている。そんなわけで,阪大における堀江さんの原子核殻模型の集中講義は非常によく飲み込めた。また,鈴木らの論文をめぐる理論上の問題では,矢崎紘一さんとガチの計算のやりとりをしたのもなつかしい。向こうの論文に若干の欠陥はあったものの,その指摘の過程でのこちらの計算の意味付けにも誤解があったことを矢崎さんは鋭く見抜いたのだった。

自分が大学院に進学した1970年代の後半には,有馬・IachelloのIBM(相互作用するボゾン模型)が隆盛のピークを迎えていた。1980年に阪大で開催された物理学会では,原子核理論のシンポジウムで,有馬さん(IBM)と丸森さん(TDHF)の一騎打ちがみられた。それに比べれば,中間エネルギー核物理と核構造という一点で東大グループとは重なっていたとはいえ,原子核の弱い相互作用はマイナーな分野だった。

有馬さんが物理から離れるとともに東大の原子核理論グループ(大塚孝治さんら)もIBMを離れて,本格的な大規模殻模型の数値計算に進んでいき,その段階では我々はまったく追いつくことができなかった。1980年ごろには,殻模型の伝統のある東大でも0pシェルのcfpもおぼつかないのではと大坪さんが話していたのだけれど,それはあっという間のことだった。

2020年12月6日日曜日

はやぶさ2

はやぶさ2のサンプルリターンカプセルが,2020年12月6日にオーストラリアのウーメラ砂漠で無事に回収されたようだ。はやぶさ2本体は化学エンジン噴射プロセスTCM5により再び地球軌道を離脱した。1998KY26という小惑星に2031年7月に接近する予定である。

はやぶさ2がここまでで達成したこと(世界初)は以下の通り
1.小型探査ロボットによる小天体表面の移動探査
2.複数の探査ロボットの小天体上への投下・展開
3.天体着陸精度 60 cm の実現
4.人工クレーターの作成とその過程・前後の詳細観測
5.同一天体2地点への着陸
6.地球圏外の天体の地下物質へのアクセス
7.最小・複数の小天体周回人工衛星の実現

ウェブ上のBBCのニュースでは,多くの科学者のインタビューにより科学的な意味を丁寧に解説していたが,NHKのニュースでは,解説の分量もBBCのそれよりは少ない上に,はやぶさを支えた日本の技術というところに重点をおいたエモーショナルな内容だった。いつものことである。

2020年12月5日土曜日

UNIX Time

WHOのCOVID-19のデータ形式が先月の途中から変更されてしまったので,対応に苦慮しているところ。とりあえず,perlで処理するための準備をする。

#!/usr/local/bin/perl

# usage: time.pl 1607100000

# usage: time.pl 2020/12/05 21:30:00

# conversion of UNIX time & local time


use strict;

use warnings;

use Time::Local 'timelocal';


if ( @ARGV == 1 ) {


my \$unix_time = \$ARGV[0];

my (\$sec, \$min, \$hour, \$mday, \$mon, \$year);


(\$sec, \$min, \$hour, \$mday, \$mon, \$year) = gmtime(\$unix_time);

\$year += 1900;

\$mon += 1;

printf("GMT:\t%04d/%02d/%02d %02d:%02d:%02d\n", \$year ,\$mon, \$mday, \$hour, \$min, \$sec);


(\$sec, \$min, \$hour, \$mday, \$mon, \$year) = gmtime(\$unix_time);

\$year += 1900;

\$mon += 1;

\$hour +=1;

printf("CET:\t%04d/%02d/%02d %02d:%02d:%02d\n", \$year ,\$mon, \$mday, \$hour, \$min, \$sec);


(\$sec, \$min, \$hour, \$mday, \$mon, \$year) = localtime(\$unix_time);

\$year += 1900;

\$mon += 1;

printf("LOCAL:\t%04d/%02d/%02d %02d:%02d:%02d\n", \$year ,\$mon, \$mday, \$hour, \$min, \$sec);


} elsif (@ARGV == 2) {


my (\$year, \$month, \$day) = split '/', \$ARGV[0];

my (\$hour, \$min  , \$sec) = split ':', \$ARGV[1];

my \$epochtime = timelocal(\$sec, \$min, \$hour, \$day, \$month-1, \$year-1900);

print \$epochtime."\n";


}


2020年12月4日金曜日

Eテレ廃止

大阪維新と同様に 菅政権のブレーンにはろくなメンバーがいないのであるが,高橋洋一がEテレ売却論をとなえて,NHKへの圧力を強めている。橋下徹が大阪府立国際児童文学館を廃止したときや,文楽協会への補助金をカットしたときにも,相当びっくりしたけれど,それに匹敵するかそれ以上の話である。SNSでの意見に同感だけれど,NHK教育テレビチャンネルがあるので,受信料を払う気になっているのだ。それがなければ,これほど偏向したNHKの報道を喜んで買う必要はない。たぶん,日本学術会議への圧力と根元は通じていて,それが新自由主義的な栄養環境下ではこのように発現するということだろう。

2020年12月3日木曜日

大阪モデル

 COVID-19の大阪モデルのモデリング指標が大阪府のホームページに公開されている。第1波の段階では,それまでの安倍政権や小池知事の東京都の対応と比較して,「(相対的に)吉村知事の決断力すげー」みたいな空気が大阪マスメディアを中心として沸き起こった。ところが,その後のカッパ・イソジン騒動などでどんどん株は下落を続けた。特にひどかったのが,大阪府のコロナ感染のモデリング指標が吉村の恣意的な操作によってコロコロ変えられたことである。いまでは二度と赤信号がつかないひどい基準になっている。それもこれも「大阪市廃止特別区設置(いわゆる大阪都構想)」の住民投票のときに赤信号が灯らないようにするためだったのでなはいかと想像される。切羽詰まった状況になったので,再び恣意的な指標変更に相当する運用がされるようだ。なお,その基準というのは以下のようになっている。

(1) 新規陽性者における感染経路不明者7日間移動平均前週増加比(黄:2以上),かつ,(2) 新規陽性者における感染経路不明者数7日間移動平均(黃:10人以上/緑:10人未満で解除),(3) 7日間合計新規陽性者数[うち後半3日間](黃:120人以上かつ後半3日間で半数以上),(4) 直近1週間の人口10万人あたり新規陽性者数(緑:0.5人未満解除),(5) 患者受入重症病床使用率[重症患者数÷確保病床数](赤:70%以上 ただし「警戒(黄色)」信号が点灯した日から起算して25日以内/緑:60%未満で解除)

現時点では警戒基準(黄信号)の条件も満足していないが,解除基準も満足されていないことから,点灯した黄信号が長期に渡って継続している。このため25日以内条件は永遠にみたされず,赤信号が点灯することはない。どうして,こんなに合理性に欠ける基準を作って誰も恥じることがないのだろうか。東京都は基準とアラートが直結せず,あらかじめ恣意的な判断がはいるようになっているので,より巧妙だといえるかもしれない。


2020年12月2日水曜日

AlphaFold2(1)

 twitter界隈では,AlphaFold2が騒ぎになっている。タンパク質の立体構造を求める競技でこれまでの手法から飛び抜けた成果を得る深層学習の方法が考案されたということらしいが,専門外の自乗なのでよくわからない。田口善弘さんが相当に凄いといってるのでたぶんそうなのだろうと思う。

タンパク質の立体構造というとDNAの立体構造と並んで,X線結晶解析の応用分野の花形だったような気がする。教養の化学の授業担当が,阪大の吹田にあった蛋白質研究所(1958-)助教授の芦田玉一先生(後に名大工学部)で,デュワーの「新しい化学入門」が教科書だった。この教科書は量子力学の成果をフルに生かした化学の教科書であり,物理学科の我々にはふさわしいものだったかもしれない。

五月祭のときだったろうか,何かのきっかけで,芦田先生にお願いして物理学科の数名でタンパク質研究所を見学させてもらった。たぶん,佐藤秀明くんが言い出しっぺで,みんなでそれに便乗したのではなかったか。日本で初めて構造が決定されたタンパク質であるカツオ・チトクロームCの立体構造模型を見せていただいた。秀明くんは,英語の藤井治彦先生の授業でも,ジェームズ・ワトソンの「二重らせん」をテキストにできないかという交渉をしていたのだけれど,こちらは残念ながら却下されたのであった。

2020年12月1日火曜日

Mac雑誌

アップルと私からの続き 

Appleのシリコンチップ搭載Macの発表直前の11月11日に(サンフランシスコ or 日本),青木剛一(@drikin)さんと松尾公也(@mazzo)さんが,ドリキンのVLOGで,「新型Macの発表前夜に語る,元MacUser編集長と元Apple信者のAppleシリコンへの期待!(第1118話 #シネマティック対談)」という対談をしていて,いろいろ回想しながら楽しく聞いていた。

で,日本のMacの三大雑誌としてMacLife,MacPower,MacUserをあげていたが,どうも自分の記憶とずれているので,確認してみたところ,次のようであった。初期(1980年代)のMacワールドからMac+とMacLIFEはすべて買っていたと思う。そのうち,The BASICでなじみのあった技術評論社からMacJapanが発刊されたので,休刊になるまでそれを買っていたような気がするし,Software Designが1990年に創刊されているので,それに乗り換えたようにも思う。

1 Macワールド->Mac+ 1986-1991
2 MACLIFE BNN 1987.8-2002.1
3 MacJapan 技術評論社 1989.5-1993.5
4 MacPower アスキー 1990.2-2007.10
5 MacWorld 1991-1998.4
5 日経Mac 日経BP 1993.2-2000.1
6 MacFan マイナビ 1993.4+
7 MacUser ソフトバンク 1993.11-1998.3
8 MacPeople アスキー 1995.12-2014.11

大阪教育大学にMacintoshが導入されたのが1988年ごろなので,とにかく情報がほしかった。そういえば,Appleから直接APDAlogも買っていた。

[1]日本のMac雑誌(Old Apple World)
[2]我が国最初のMac専門誌「MACワールド日本語版」顛末記(Apple/Macテクノロジー研究所)
[3]20年ぶりに再会〜Mac Japan誌の想い出(Apple/Macテクノロジー研究所)


2020年11月30日月曜日

素数の計算(1)

 ソフィー・ジェルマン素数の続き

件の記事の中には,「p=999671で 2p+1=1999343,が約数となる。 2^p−1=2^99671−1 は10進法で300932桁となったが,開発用等ではないスペックのかなり低いパソコンでも2~3分で計算してくれた」とあったので追試しようとして,はまってしまった。

Mathematicaでは,このあたりのソフィー・ジェルマン素数を次のように一瞬で計算した。
In[1]:= Timing[ Do[p = Prime[2^16 + i];  If[Mod[p, 4] == 3 && PrimeQ[2*p + 1],  Print[p, " : ", Mod[2^p - 1, 2*p + 1]]], {i, 12900, 13000}]]
999611 : 0
999623 : 0
999671 : 0
1000151 : 0
1000211 : 0
1000403 : 0
Out[1]= {0.007209, Null}

In[2]:= Timing[Print[p = Prime[10^8], " ", PrimeQ[p]]]
2038074743 True
Out[2]= {0.000185, Null}
そこで,10^8番目の素数をpython3で計算して判定すると,
from sympy import *
import time
start_time=time.time()
p=prime(10**8)
end_time=time.time()
print(p,isprime(p),end_time-start_time)

2038074743 True 2.994921922683716

同様に,10^8番目の素数をjulia 1.5で計算して判定すると, 

using Primes
n=10^8
function sgp(n)
  p=prime(n)
  println(isprime(p)," ",p)
end

@time sgp(n)
true 2038074743
420.535971 seconds (333.45 M allocations: 4.970 GiB, 0.24% gc time)

なお,p=999671は,prime(78476)であり,この計算時間はjuliaでも0.153秒だった。それにしてもこの遅さはいったい何ということでしょう・・・? 

2020年11月29日日曜日

ソフィー・ジェルマン素数

twitterでソフイー・ジェルマン素数の話を見かけた。初めてのJuliaプログラミング,ソフィー・ジェルマン素数を使ってメルセンヌ数の約数を求めてみたというMathlogの記事である。

ソフィ・ジェルマン(1776-1831)は,18世紀から19世紀のフランスの女性数学者,物理学者である。古代ローマ時代にはアレクサンドリアのヒュパティアがいたが(映画の「アレクサンドリア」で初めて知った),ソフィ・ジェルマンが近世における最初の女性数学者の魁だろうかと調べたところ,イタリアのマリア・ガエターナ・アジェーニ(1718-1799)が最初らしい。最もヨーロッパの大学で最初に教授(解剖学・物理学)になったのは,ラウラ・バッシ(1711-1778)だ。Timeline of Women in Scienceをみればさらに詳しいことがわかる。

その,ソフィー・ジェルマン素数である。2p+1が素数となる素数pのことを指す。このとき,2p+1を安全素数という。で,問題の定理は,「ソフィー・ジェルマン素数pが,p≡3(mod 4)を満たすとき,メルセンヌ数2^p-1は安全素数2p+1を約数に持つ」というもので,これをjuliaによる計算で確かめたというものだった。

2020年11月28日土曜日

学術会議のコロナフォーラム

 オンラインで,日本学術会議の「新型コロナウイルス感染症コントロールに向けての学術の取り組み」が開催されている。なかなか有用な情報がコンパクトにまとめられていて,公開されている資料は参考になる。さすがにお医者さんたちは,COI(利益相反)について断ってから話し始めている。中野さんのK値は,twitter上ではみんなでよってたかってボロクソに叩いているが,今日の話を聞く限りではそこまで荒唐無稽な論を展開しているわけではない。

もっとも専門家からすれば,なんとプリミティブでナイーブなのか,ということになるのかもしれない。ただ,物理屋の議論の出発点なんていうのははたいていそんなもので,しかし,その単純化が(ごく稀に)新しいものを見つける場合もあるということもなきにしもあらずだから,大阪維新や宮沢孝幸が,政策やプロパガンダに利用(悪用)しない限りはいいのではないかしら。カッパもイソジンも被害者側なんだから。

喜連川先生の声が聞こえてくると,別のサイバーシンポジウムかと思ってしまう。そうした教育の話題やこうした医療・公衆衛生の話題など,公共性に係る課題は,総合科学技術・イノベーション会議の範疇ではない。

2020年11月27日金曜日

日本学術会議Q&A

 11月26日に日本学術会議の記者会見があったようだ。野尻美穂子さんのtwitterコメントしか見ていないので,詳しい状況はわからないが2点。

(1) 第25回幹事会の記者会見の資料が公開されている。地道にこれまでの活動を説明しようとしている。内閣府特命担当大臣(科学技術政策)の井上信治はこれらを完全に無視しながら,政府機関からの離脱を迫っている。

(2) 日本学術会議に関するQ&Aが公開されている。誠実に疑問に答えているが,攻める側はむちゃくちゃなフェイク言説で負の感情を掘り起こしながら,側面や背面から攻撃を仕掛けてくるので,有効な反撃になっていない。一部(ほとんどの?)マスコミは,その側面や背面からの攻撃を煽り立てて,生贄ショーを盛り上げることを主眼としているため,残念な状況は続く。

2020年11月26日木曜日

日本国憲法の改正手続きに関する法律

 日本国憲法の改正手続きに関する法律の改正案の件だ。とりあえず,衆議院憲法審査会(今203国会での第3回)での採決はなさそうだとのことだったが,維新の馬場が強行採決動議を出し,幹事会での協議に持ち込まれて散会なのか。実質審議にも入ったということでまったく予断を許さない。

審議される改正案の議案と説明資料は,2018年7月の第196国会の衆議院憲法審査会に提出されている。議案そのものは,2016年の公職選挙法改正に伴う形式的な変更であるが,より本質的な問題である広告規制がまったくかからないまま,改正手続きが整ったという名目で,憲法改正プロセスが起動してしまう危険性が大きいため,野党(準与党の維新と国民民主党を除く)はブレーキをかけている。

大阪都構想で維新が使った広告費が4億円ということだから,100億も出して電通をフル稼働させれば,簡単に憲法改正が実現してしまう国なのだろう。

2020年11月25日水曜日

M1(3)

 M1(2)からの続き

日本では,COVID-19の感染拡大がいよいよ可視化されつつあって,GOTOの影響があるのかないのか,そもそも効果があるのかないのか,など喧しいが,YouTube界隈ではあいかわらずApple M1チップ搭載Macの話題が続いている。ソフトウェアのM1対応状況については,IsAppleSiliconReady のサイトが詳しい。

*WHOダッシュボードのCOVID-19データが,当日だけになった(JSONを探せ)。
・AppleのFinal Cut Pro Xでは,4K120pの動画編集がぎりぎり可能である。
・Davince Resolve 17 はフリーでも使える動画編集ソフトで,軽い動画ならこれでも可。
・Desktop Audio Wowkstation のバリバリの編集は結構重くて厳しい。
・Rosetta2でほぼカバーできているが,開発環境系はまだ十分に対応できていない。
・ParallelsやVMWareFusionなどの仮想デスクトップ系はまだだめ。
*pLaTeX→upLaTeX→LuaLaTeXと進化しており,美文書8版でもカバーできつつある。

[1]物書堂(egword M / かわせみ R)
[2]google(Chrome M / 日本語入力R)
[3]Homebrew(R)https://github.com/mikelxc/Workarounds-for-ARM-mac
[4]MacTeX(R)MacTeX-2021を待て http://www.tug.org/mactex/aboutarm.html
[5]Julia(R) https://github.com/JuliaLang/julia/issues/36617
[6]Mathematica(✕) https://community.wolfram.com/groups/-/m/t/2088978
[7]Office2019/365(M)https://support.microsoft.com/en-us/office/microsoft-365-and-office-2019-support-for-apple-silicon-c55b603e-14a6-4b69-bdc0-2bb4c9a36834
[8]Twitter(M)
[9]Graphic Converter(R)
[10]JEditΩ(R)

やはり来年以降かな。

2020年11月24日火曜日

政治資金規正法

 総理大臣主催の公的行事である「桜を見る会」は例年4月中旬に新宿御苑で開催されている。その前夜に,ホテルニューオータニやANAインターコンチネンタルホテル東京で,安倍晋三後援会が主催して開かれた「前夜祭」の資金の流れについて,昨年5月に国会で取り上げられたが,安倍晋三は適当な言い逃れを重ねて,有耶無耶になっていた。この度,東京地検特捜部が安倍の公設秘書から聞き取りをしているということで,検察のリークによる一部の情報が報道されている。

で,仮に安倍晋三が国会の参考人として呼ばれても,捜査中ということで全く答えないまま終止するだろうが,そのテレビ画像を忌避したい自民党は,野党の要求を拒否している。ただ,その背景において菅首相チームがどのようなスタンスで関わっているのかがよくわからないため,様々な憶測が飛び交っている。

ところで,責任の尻尾切りがどのように行われるかを確かめるため,政治資金規正法をチラっと眺めてみた。現職国会議員の資金管理団体一覧によると,安倍晋三の欄には,総務大臣届け出の晋和会だけが上がっている。一方,公益財団法人の政治資金センターによる「安倍晋三自民党総裁・衆議院議員・内閣総理大臣の2014年分政治資金収支における特徴(2017.03.09)」では,6つの政治団体があがっており,このうち晋和会は安倍晋三が代表であるが,安倍晋三後援会は配川博之が代表となっている。もう,この段階で簡単に尻尾切りができてしまいそうな感触で満ち溢れていた。

追伸:書き終えておやすみしようとしたら,ホテルニューオータニの件の領収書の宛先が,安倍晋三が代表の晋和会だったという情報が飛び込んできたが,いずれにせよ会計責任者や秘書のせいにして逃げ切るのだろう。

2020年11月23日月曜日

選択的夫婦別姓制度

選択的夫婦別姓制度にはもちろん賛成だと思っていたけれど,別姓を選択した夫婦の子どもの名字はどうなるのかと考えると,自分は理解していないことがわかったので,さっそくググってみた。

サイボウズの青野慶久さんの昨年の記事がでてきた。法務省のFAQにもあるように,「平成8年の法制審議会の答申では,婚姻の際に,あらかじめ子どもが名乗るべき氏を決めておくという考え方が採用されており,子どもが複数いるときは,子どもは全員同じ氏を名乗ることとされています。」ということで,問題はなかった。

反対しているのは,日本会議などを背景とする自由民主党の右派議員だけであり,そこに悪目立ちしている極右女性議員が集まっているのもネックになっているかもしれない。

2020年11月22日日曜日

K値再々訪

 (中野さんのK値K値再訪からの続き

阪大RCNPの中野さんがK値を提唱してから半年が経過した。大阪維新はまだこれを使っているらしいので,なんだかなあというが巷の定評である。これを予想に使おうとするからおかしいのであって,現在の感染拡大状況の指標の一つと考えれば,別に問題ないということはこれまでも繰り返し指摘してきた。とりあえず,7月1日から11月19日までのK値を眺めてみた。

アジアのK値(2020.7.1〜11.19)


図1 アジアのK値(2020.7.1〜11.19)

香港の7月の感染拡大が特徴的に可視化されている。同様に日本や東京の7月からの第2波が見えている。そして,今第3波の兆しが出てきたが,累計の絶対値が大きくなるにつれて感度は鈍くなっている。

欧米のK値(2020.7.1〜11.19)

図2 欧米のK値(2020.7.1〜11.19)

こちらのグラフはアジアの半分程度のK値を倍に拡大したものに相当する。欧米の3波の様子がはっきりわかる。フランスとスペインが先行し,英国がこれに続いた。最近,ドイツ,イタリア,米国がこれに追随している。ロシアの非常に滑らかな曲線が逆に不自然さを感じさせてしまう。


2020年11月21日土曜日

CFR(致命率)(4)

 CFR(致命率)(3)からの続き

WHOのダッシュボードを眺めていると,やなり新規感染数のピークと死亡数のピークは1〜3週間ほどずれているので,致命率の定義を修正したバージョンを考える。「致命率*=死亡数累計(t)/新規感染数累計(t-14)」として,感染確認時に対して死亡時には2週間(14日)の遅延があると仮定した。また,英国の新規感染数累計と死亡数累計にあった不連続をWHOのデータを再確認して解消した。最近3ヶ月の定性的な結果は同じだけれど,4〜5月あたりの感染急拡大期の振る舞いは大きく変動している国もあった。なお,このように定義した致命率*の値の最新値(2020.11.19時点)を示しておく。

アジアの致命率*:

イラン 6.6%,武漢 6.6%,中国 5.2%,インドネシア 3.7%,フィリピン 2.1%,香港 2.0%,日本 1.9%,韓国 1.8%,インド 1.6%,東京 1.5%,台湾 1.2%(2020.11.19 現在)

図1 アジアの致命率*(2020.5.1〜2020.11.19)

欧米の致命率*:

メキシコ 10.6%,イタリア 6.0%,英国 4.8%,スペイン 3.2%,フランス 3.1%,ブラジル 3.0%,トルコ 3.1%,米国 2.7%,ドイツ 2.2%,ロシア2.0%(2020.11.19 現在)

図2 欧米の致命率*(2020.5.1〜2020.11.19)


2020年11月20日金曜日

CFR(致命率)(3)

 CFR(致命率)(2)からの続き

およそ半年前に,COVID-19の致命率について書いた。その後のデータが蓄積してきたので改めて考えてみよう。前回は「致命率 = 死亡数累計(t)/新規感染数累計(t-7)」と定義して,2月から5月あたりの3ヶ月分くらいのデータを見ていた。今回は,大局的な振る舞いを比較するため,5月1日から11月19日までのアジアと欧米の主要国の「致命率」=死亡数累計(t)/新規感染数累計(t)とあらためて定義して,その時間変化と国別の比較について考察する。なお,データは,WHO Coronavirus Disease (COVID-19) Dashboard を用いた。また,通常のインフルエンザの致命率は0.1%未満のオーダーであることに注意する。

(1)アジアの場合


図1 アジアの致命率(2020.5.1-2020.11.19)

いくつかの例外を除いて,ここでのサンプル諸国の多くはCFR=1〜2%の範囲に収まっており,地域による大きな違いがないことがわかる。最初に感染が拡大した武漢とその効果が大半を占める中国ではCFR=5〜7%と高い値を示しているが,中国では随分前に感染がほぼ完全に収束しており,初期の結果がそのまま凍結されているためだ。その段階では感染者に対する適切な治療の処方策が確立していなかった。そのことは,5月ごろの日本や東京についても当てはまっており,当時は病院のリソースも不足しておりCFR=5%を越えていたのが上のグラフから見て取れる(その後,現在の日本の値CFR=1.6%あたりに収束している)。

イランでは,当初からCFR=5%くらいの値で高止まりしている。この理由ははっきりわからない。現在のイランでは新規感染数の第3波が観察されている。インドネシアはゆっくりではあるが,CFRは標準的水準に近づいている。ただし,新規感染数はあいかわらず増加中だ。インドの感染数増大ペースも当初は危機的に見えた。絶対値はあいかわらず大きいのだが,すでに第1の増大ピークは越えているし,CFRもそれほど高くない値で収束している。

台湾や韓国はほぼ一定で推移しているので,当初からそれなりの医療体制が整備されて適切な治療が行われていたように見える(これは日本と大きく違うところだ)。香港も同様だったが,政治的不安定性が原因なのだろうか,いまでは必ずしも最優等生グループには属していない。

(2)欧米の場合

図2 欧米の致命率(2020.5.1-2020.11.19)

ここでもいくつかの例外を除いてCFR=2〜3%の範囲に収まりつつある。例外はCFR=10%のメキシコであり,南米で感染トップ数のブラジルの致命率が,CFR=2.8%と落ち着いてきているのと対照的である。

ヨーロッパでは,当初急速な感染拡大で十分な対策が取れないまま死亡数が急増していたため,CFRも10〜20%という非常に高い水準にあった。この記憶が後に,日本はよくやっているという誤解につながり,不十分な対策を自己肯定してしまうという困った隘路に入る要因となった。当初の大きな山を越えると,仏・英・伊・西のCFRはみごとにアジアのレベルと同等な領域に収束してきた。CFR=1.7%のロシアだけは当初からアジア並みの水準で推移しており(当初はかなり怪しい値ではないかという指摘もあった),CFR=1.6%のドイツも他の欧州の国々に比べて低い水準で安定している。なお,現在の欧州の感染拡大によって,各国のCFRが影響されている様子はまだ今のところ観察されていない。

米国は,感染数の指数関数的増加の第三波のただ中にあるのだけれど,CFRの観点から見ると,当初の6%程度から現在の2.2%になったということであり,日本と比べてもそれほど大きいわけではない。高々日本の1.5倍程度の水準であり,感染数は2桁違うとはいうものの,感染後の状態については日本とはあまりかわらないと考えられる。

(3)その他

したがって,欧米とアジアの違いは感染数にあるといってよい。死亡数はこれに連動するが,アジアでも欧米でも収束すれば,CFR=1〜3%とその差は大きくない。なお,これは通常のインフルエンザに比べれば1桁以上大きいので,「COVID-19はインフルエンザ並みの感染症だから心配はいらない」という言説は必ずしも妥当しない。

現時点での人口1万人あたりのアジアの新規感染数累計は,イラン96人,インド67人,フィリピン41人,東京25人,インドネシア18人,日本10人,韓国6人,中国0.6人,台湾0.3人となっている。また,同様に,欧米の場合は,米国341人,スペイン310人,フランス302人,ブラジル284人,英国215人,イタリア211人,ロシア137人,ドイツ103人である。

日本の新規感染数累計の人口比は,欧米に比べれば1.5桁小さいといえるが,アジアでは必ずしもトップグループではない。東アジアが欧米に比べて感染数の人口比が1桁小さくなっている理由ははっきりせず,オーストラリアやニュージーランドも同様に感染率が小さいことから,社会文化的な要因だけで説明できるのか疑問なところがある。ネアンデルタール人の遺伝子が絡んでいるのかについても同様によくわからないし,あるいは複合要因からなる偶然なのかもしれない。

いずれにせよ,日本のCFRは他の国々と同じ水準なので,これ以上感染数が増加しないような医療と検査の体制の整備が急務であることは間違いない。GO TOの看板を掲げたまま怪しいキャッチフレーズや,効果が疑問であるマナーの押し付けで自助を促している場合ではない。あるいは,本当に必要なのは大袈裟太郎のいうようにGO TO VOTEなのかもしれない。