2024年8月13日火曜日

注目論文数

8月9日(金),科学技術・学術政策研究所(NISTEP)科学技術指標2024を公開した。早速ニュースで取上げられていたのは,注目度の高い論文数(上位10%)の国際順位である。昨年度と同様に過去最低の13位ということだった。研究開発費や研究者数などは,世界3-5位の水準なのだけれど,それに比べて目立つので毎年取上げられることになる。

今から,6年前の定年直前の9月に,奈良学園高校で出前授業をしたことがある。タイトルは20世紀の物理学−原子核の発見がもたらしたもの−なのだが,そこで,このデータを取上げて日本の科学の水準の危機を訴えたことがある。そのときは上位10%の論文数は世界第10位だった。

上位10%の論文というのは,自然科学の各分野の論文を被引用数の大きな順に並べたものの上位10%の論文について,各国の機関別寄与割合を集計した数である。実際には,各分野の引用慣行を補正するための,分野ごとの論文数の正規化が行われている。

各国の人口と研究者数や論文数には相関があるので,報道されている論文数を人口で割ったものを求めてみた。報道されているもとの論文数では,日本は第13位だけれど,人口比をとれば,第20位にまでランクダウンする。なお,上位1%でも12位から20位にダウンする傾向は同じだった。
 
 No国名人口(万人)10%論文数人口比(/万人)
122シンガポール5801,5202.621
217スイス8702,0712.380
37オーストラリア2,6705,1511.929
414オランダ1,7402,8781.654
521スウェーデン1,0701,5651.463
63英国6,8008,8501.301
78カナダ3,9104,6541.190
86イタリア5,8706,9431.183
925ベルギー1,1701,3371.143
102米国34,18034,9951.024
115ドイツ8,3307,1370.857
1211スペイン4,7503,9910.840
139韓国5,1704,3140.834
1423台湾2,3601,5110.640
1510フランス6,4904,0830.629
1615サウジアラビア3,7502,1400.571
171中国142,52064,1380.450
1812イラン8,9803,8820.432
1924ポーランド4,0201,4910.371
2013日本12,2603,7190.303
2118トルコ8,6302,0520.238
2219エジプト11,4501,8260.159
2316ブラジル21,7602,1310.098
2420パキスタン24,5201,6960.069
254インド144,1707,1920.050

もとのデータが論文数で25位までの範囲だけが示されているので,人口比データでは上位となる国のいくらかは取りこぼしているかもしれない。例えば,上位1%データではデンマークが第4位にランクインしてポーランドがランクアウト。ロシア,イスラエル,オーストリア,アイルランド,ギリシャ,ノルウェー,フィンランド辺りは取りこぼされているかもしれない。


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