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2023年10月15日日曜日

導体球(3)

導体球(2)からの続き

物理科学概説の授業で,表面に一様な電荷が分布する球殻内部の電場や電位の問題を説明しようとした。積分にまで踏み込めないが,立体角を使えばなんとか説明できる。ところでこれを真面目に積分計算しようとすると,電場中の導体球と同じ問題(面倒な楕円関数の積分が必要)が生ずることに今さらながら気がついた。

力学の重力ポテンシャルの場合も同じ問題があったはずで,これまでどうやって回避していたか思い出してみると,観測点の位置ベクトルの方向をz軸にとっている。これにより球対称性から簡単に積分ができていた。この方法が,一様電場中の導体球による表面電荷分布に対しても使えそうな気がしたので再挑戦してみる。

(1) 導体球の中心に置いた原点から観測点Pへの位置ベクトルrの方向をz軸にとる。
そこで,r=(0, 0, r)

(2) 一様電場ベクトル方向の導体球面上の位置ベクトルexy平面への射影をx軸にとる。このとき,e=(Rsinλ, 0, Rcosλ),ここで導体球の半径をRとしている。

(3) 導体球面上の点Qへの位置ベクトルを,r=(Rsinθcosϕ, Rsinθsinϕ, Rcosθ)とする。Qにある電荷要素は,ρ(r)dS=σR2cosωsinθdθdϕである。ここで,σは電荷面密度,cosωは,erのなす角度であり,cosω=erR2=sinλsinθcosϕ+cosλcosθである。

(4) 観測点Pと電荷要素点Qを結ぶ距離は,|rr|=r2+R22rRcosθとなる。

そこで,この電荷密度分布ρ(r)がつくる静電ポテンシャルV(r)は次のようになる。
V(r)=σR24πε0(sinλsinθcosϕ+cosλcosθ)sinθdθdϕr2+R22rRcosθ

ここで,積分のうち,2π0dϕを実行すると,分子のcosϕ を含む項はゼロになり,残りの項は2π倍となるので,
V(r)=2πσR24πε0(cosλcosθ)sinθdθr2+R22rRcosθ

さらに,α=r2+R2β=2rR と置くと,αβ=|rR|, α+β=r+R である。t=cosθと変数変換して,dt=sinθdθ  なので,
V(r)=σR2cosλ2ε011tdtαβt

この積分Iは部分積分によって実行され,次のような結果を得る。
I=11tdtαβt=4α3β2(αβα+β)23β(αβ+α+β)
すなわち,I=2r3R2 (r<R),I=2R3r2 (r>R)
最終的に,導体球の中の電位は線形になり,電場は一定になる。
V(r)=σcosλ3ε0r(r<R)

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