2023年10月24日火曜日

因果関係(2)

因果関係(1)からの続き

物理法則が時間を含む微分方程式で表されている場合はどうなるだろう。

ある量$A(t)$の時間での一階微分が,$\dfrac{dA(t)}{dt}=B(t)$として与えられているとする。このとき,$A(t+dt)=A(t)+B(t) dt$とかけるので,次の時間ステップにおける$A(t+dt)$を決めているのは,その直前の自分自身の値$A(t)$と$B(t)$であり,$B$が$A$の原因を構成しているといえるかもしれない。

一方,$C(t) \equiv \dfrac{dA(t)}{dt}$と定義すると,$B(t)=C(t)$であり,$B(t+dt)=B(t)+\dfrac{dB(t)}{dt}dt$,すなわち,$B(t+dt)=B(t)+\dfrac{dC(t)}{dt}dt=B(t)+\dfrac{d^2A(t)}{dt^2}dt$ と書ける。これを$A(t)$が原因で,$B(t)$が結果として得られたということは可能なのだろうか?


さて,ファラデーの電磁誘導の法則の微分形は,
$\nabla \times \bm{E}(\bm{r},t) = -\dfrac{\partial \bm{B}(\bm{r},t)}{\partial t}$であり,磁石をコイルに近づけたり遠ざけたりすれば,コイルにつながったランプを点灯させることができる。多くの場合これは,磁石の移動(磁場の時間的変化)が原因で,その結果ランプが点灯する(電場の回転の発生)と解釈している。太田さんらを除いて。

しかし,変位電流を含むアンペール=マクスウェルの法則の微分形は,
$\nabla \times \bm{H}(\bm{r},t) = \bm{J}(\bm{r},t)) + \dfrac{\partial \bm{D}(\bm{r},t)}{\partial t}$であり,上記の式と同形であることから,電束密度の変化が原因で磁場の回転が結果として生ずるというふうに解釈したくなる。また実際,電磁波の伝搬はこれによって説明してきた。しかしながら,それがおかしいというのが最近のトレンドになっているのだった。

ところで,これらは$\ \bm{B}(\bm{r},t)$と$\bm{D}(\bm{r},t)\ $が一階の時間微分を含んだ式になっているので,そちら側が因果関係の結果側でなければならないということにはならない傍証としてもよいのだろうか。

謎はつきない。

0 件のコメント: