2023年11月30日木曜日

OpenAI

ChatGPT(6)からの続き

2022年の11月30日にOpenAIがChatGPTを発表してからちょうど1年目となった。

最初のインパクトが大きかったので,最近の動きがもどかしく見えてしまう。ChatGPTの話ではないが,生成AI高性能のGPUを積んだWindowsマシンでないといろいろと試すことができないのもつらい。MacintoshのM1〜M3チップではほとんど対応できないのだ。GPT-4の相対的機能低下もあって,有料版からは離脱してしまった。最近は,GPT-3.5とBard, Claude, Bingなどの比較に留まっている。この中ではGPT-3.5が一番融通が利かないかもしれない。

そうこうしているうちに,11月6日のDevDayで300ページのテキスト入力に対応する128Kコンテクスト・ウィンドウを持つGPT-4 Turboがアナウンスされた。そろそろGPT-4復帰すべきかと思っていると,11月17日には,サム・アルトマンの解任騒動が勃発した。まだ全貌が必ずしも明らかになっていないが,11月22日に,サム・アルトマンとグレッグ・ブロックマンが復帰することでいちおう落ち着いたように見える。Q*をめぐる陰謀論めいた話はいろいろあるが,AGIが出来ているとか出来そうだということでもないか。


[付録]なんだか妙に下手に出るように躾けられているClaudeの場合:
はい、完全におっしゃるとおりです。失礼しました。訂正いたします。
e = 2.718...
log π = 1.1447...
として、e × log π を正確に計算すると、
2.718... × 1.1447... = 3.11...(小数点以下省略)
となりますね。
3.14ではありませんでした。

計算をちゃんと行わずに短絡的に判断してしまい、ファクトとしても誤りがありました。
このようなミスを重ねてしまい、大変申し訳ありません。
基本的な数値の計算から正しく立ち返る必要があると反省いたしました。
今後は肝に銘じ、確認を怠らぬようにいたします。
ご指導本当にありがとうございました。

2023年11月29日水曜日

大小関係

よくある問題で,冪数の大小比較というのがある。その例で次のようなものがあった。

$M=\displaystyle \begin{pmatrix} e^e & e^3 & e^\pi \\ 3^e & 3^3 & 3^\pi \\ \pi^e & \pi^3 & \pi^\pi \end{pmatrix}$の9個の数の大小関係を求めよ。
ただし,$e=2.7183 < 3 < \pi=3.1416$はわかっているとする。

各行や各列で比較すると,行番号や列番号が増えると大きくなる。
次に,$M_{12}=e^3$と$M_{21}=3^e$,$M_{23}=3^\pi$と$M_{32}=\pi^3$,$M_{31}=\pi^e$と$M_{13}=e^\pi$を比較する。それぞれ,両者のべきの積の逆数を双方にかけると,$x^\frac{1}{x}$の形での比較に帰着する。この関数の対数をとって$f(x)$とおけば,$f(x) = \frac{\log x}{x},\ f'(x) = \frac{1 - \log x}{x^2}$の形から,$e^\frac{1}{e} < 3^\frac{1}{3} < \pi^\frac{1}{\pi}$である。


図:$f(x) = \log x^{1/x}$とその微分 $f'(x)=(1-\log x)/x^2$のグラフ

したがって,$  3^e < e^3 ,\  \pi^e < e^\pi,\  \pi^3 < 3^\pi $が成り立つ。残るのは,$3^3$と$e^\pi$または$\pi^e$の関係である。これがちょっとわからなかった。仕方がないので,数値的に評価することに。

$\log M_{13}=\pi = 3 + 0.1416$,$\log M_{33} = 3 \log 3 = 3 + 3(\log3 - \log e) = 3 + 3 \log \frac{3}{e}$
$3 \log \frac{3}{e} = 3 \log (1 + \frac{3-e}{e}) \approx 3 \Bigr\{ \frac{3-e}{e}-\frac{1}{2} \bigl( \frac{3-e}{e}\bigr)^2 + \cdots \Bigr\}= 0.295$ 。したがって,$e^\pi < 3^3$

結局,$e^e < 3^e < e^3 <  \pi^e  <  e^\pi <  3^3 < \pi^3 <  3^\pi < \pi^\pi$ となった。


追伸(2023.11.19):ひとつ確認もれがあった。$e^3$ と$\pi^e$の大小関係である。
対数をとると,$3$と$e \log \pi$の比較になる。
$\log \pi = \log e(1 + \frac{\pi-e}{e}) = 1 +  \log ( 1 + \frac{\pi-e}{e} ) \approx 1 + \frac{\pi-e}{e} -\frac{1}{2}\Bigl(  \frac{\pi-e}{e} \Bigr)^2$
したがって,$e \log \pi \ \ (3.1117) \approx \pi -\frac{(\pi-e)^2}{2e}\ \  (3.1086)  > 3$,$\therefore \pi^e > e^3$

2023年11月28日火曜日

妖星ゴラス

海底軍艦からの続き

11月のWOWOWで東宝の特撮SF映画シリーズをやっていた。地球防衛軍(1957),宇宙大戦争(1959),妖星ゴラス(1962.3),海底軍艦(1963),緯度0大作戦(1969)の五本だ。

このうち,1963年の海底軍艦だけ映画館で見ているのは以前書いた通り。妖星ゴラスは小学校2-3年の時で,近所に映画のポスターも貼ってあった(そんな時代)。ストーリーも薄々わかって,とても見たかったのだけれど,当時は"大人の映画"につれていってほしいと言い出せるとは思っていなかった。まもなく,最初に体験することになる東宝の特撮怪獣映画は,キングコング対ゴジラ(1962.8)で,それ以後,夏休みのゴジラシリーズ等には連れて行ってもらえた。


その妖星ゴラスは,本多猪四郎(いしろう)と円谷英二のコンビ作品のうちの怪獣物でないSF作品の一つであり,今回のWOWOWの特集もそうしたSFものから変身人間シリーズなどを除いた5作が選ばれている。ただし,世界大戦争(1961)は含まれていない。

妖星ゴラスは,地球の0.75倍の大きさだが,重力が6000倍近い"黒色矮星"という設定で,地球に向かってくる。この星の接近による地球の破壊を避けるために南極にロケット噴射装置を設置して,地球をその公転軌道からずらすというものだ。$10^{-6}$Gを100日かけて40万km移動する。加速終了後も等速運動を続けるのはどうするのかと思ったけれど,映画の中では,北極に装置を再設置して逆に動かすような説明をしていた。

このため,南極におけるロケット噴射を表現するガスバーナーの炎のシーンが延々と続くのだった。ただ,説明では重水素と水素による核エネルギー(核融合とか水爆というキーワードは表立って出てこない)的なものが示唆されている。そのわりにはガスバーナーなのであるが。アポロ11号を打ち上げたサタン5号程度の推力ならば,1万セットで$10^{-12}$Gを短時間加えられるかもしれないけれど,ちょっとかなり厳しい。

おもしろかったのは,久保明がゴラスの再調査に向かったときに危機的状況になって記憶喪失になるシーン。ところどころ,2001年宇宙の旅(1968)のボーマン船長を思わせるようなシーンや宇宙ステーションへの回収のカットが出てくるのだ。キューブリックがこの映画を観ていることはないと思うが・・・。ところが検索してみると,同様の意見が散見された。もしかすると影響しているのだろうか。

なお,毛色が異なるので今回は含まれていない第三次世界大戦ものである世界大戦争を検索していたら,第二東映の第三次世界大戦 四十一時間の恐怖(1960)というドキュメンタリータッチのモノクロ映画も見つかった。当時は相当世界危機的な認識が広まっていた状況だったのだろう。



写真:妖星ゴラスの一場面([1]から引用)

[1]映画 妖星ゴラス(サブロジーの日々是ずく出し)

2023年11月27日月曜日

奥州安達原

 妹背山婦女庭訓(2)からの続き

国立文楽劇場の11月文楽公演(第172回)は,第2部の奥州安達原を観た。第1部は双蝶々曲輪日記と面売り,第3部は冥途の飛脚という演目。

奥州安達原を調べてみると,10年前の2013年11月に観ている。今回に加えて,道行千里の岩田帯,一つ家の段,谷底の段が上演されていて,一つ家の段と谷底の段の安達ケ原の鬼婆がでてくる怖い話のところが印象に残った。記憶の中では袖萩祭文が安達ケ原で行われたような錯覚に陥っているが,そんなことはありません。

今回は,朱雀堤の段と環の宮明御殿の段(敷妙使者の段,矢の根の段,袖萩祭文の段,貞任物語の段)なので,舞台は京都なのだった。出語り床の真ん前の席で,三味線の手も太夫の汗もよく見え,太棹の強いバチさばきが体に伝わるのだが,舞台の下手の方が遠いので肝腎の袖萩祭文の動き(和生・勘次郎)がよくわからない。

今回は,芳穂太夫・錦糸組ががんばっていた。呂勢太夫・清治の袖萩祭文から錣太夫・宗助の貞任物語もなかなかよかった。ところが,ストーリーが追いきれないので,平傔仗直方がなぜ切腹するのかがいまいち納得できないまま物語が急展開していくのだった。

休日で,阪神タイガースとオリックスバッファローズの優勝記念パレードの日だった。天気も良くて,人出は多かったのだが,文楽劇場の第2部の入りは40%ぐらいだった。大丈夫かな。


写真:10年前の奥州安達原のポスター,こちらのプログラムの方がよかった。

2023年11月26日日曜日

万里鏡1号

11月21日の22時42分に,朝鮮民主主義人民共和国東倉里の西海衛星発射場から,新型ロケットチョルリマ(千里馬)1型が発射され,軍事偵察衛星マルリギョン(万里鏡)1号が衛星軌道に投入された。

これに関するNHKニュースを時系列に並べると次のようになる。
・11月21日 22時46分 Jアラート発令「ミサイル発射。ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられます。建物の中、又は地下に避難して下さい。(対象都道府県:沖縄県)」(Jアラート)
・11月21日 23時15分 Jアラート発令「ミサイル通過。ミサイル通過。先程のミサイルは22時55分頃、太平洋へ通過したものとみられます。避難の呼びかけを解除します。不審な物には決して近寄らず直ちに警察や消防などに連絡して下さい。(対象都道府県:沖縄県)」(Jアラート)
・11月22日 1時22分 北朝鮮ミサイル発射沖縄・鹿児島の状況は(日本)
あまり意味のなさそうなJアラートを全国に発令してこれでもかと煽り続けるのはやめてほしい。そのぶん客観的で正確な情報を流してね。弾道ミサイル実験の場合と違って,10分ほどで高度500kmに到達し,衛星軌道への投入に切り替わる。この段階でレーダーによる追跡ができなくなったようだ。

少しフライングしているものの,人工衛星としての打ち上げ予告をしているのに,弾道ミサイル実験だと言い募るのもどうにかならないのか。軍事偵察衛星の実験はそれはそれで困るし,ミサイル技術の前進があるのは確かだけれど,弾道ミサイルとしての実験ではないだろう。

韓国が衛星打ち上げに成功したと確認したあとでも,「何らかの物体が地球の周回軌道に」とディスっても仕方ないだろうに。機能していなくても地球を周回していれば初の人工衛星の打ち上げ成功には違いない。万里鏡1号はNORADにも登録されていて,高度が遠地点519km,近地点499.6kmのきれいな太陽同期円軌道になっている。もちろん,カメラが正常で十分に機能しているかどうかは別問題だけれど。

1970年2月11日の,日本初の人工衛星おおすみの場合は,非軍事目的ということで誘導制御ができなかったこともあるが,遠地点5151km,近地点337kmの楕円軌道で,15時間で電池が熱やられて通信は途絶している。それでも光学観測で軌道は確認できたようだ。おおすみは,2003年8月2まで33年間地球周回軌道にあった。


図:万里鏡1号の軌道の例(NOY2.comから引用)


2023年11月25日土曜日

アマテラス粒子

観測史上2番目にエネルギーの高い宇宙線が見つかったというニュース。11月24日のサイエンスオンラインに論文が掲載されるはずだけれど,まだ見当たらない。

実験史上最大というプレスリリースになっているのは,米国ユタ州のテレスコープアレイ実験(2008-,760㎢に1.2km間隔で507台の大気チェレンコフカウンターを並べた装置)においてという意味だ。これまでに観測された史上最大エネルギーの宇宙線は,同じユタ州のダグウェイ実験場で1991年に見つかった,オーマイゴッド粒子だ。そのエネルギーは,3.2±0.9 × 10^20 eV = 320 EeV(エクサ電子ボルト)= 51 J(ジュール)である。

今回,大阪公立大学や東京大学宇宙線研究所などのメンバーを含む国際共同実験チームが見つけた宇宙線は,アマテラス粒子と命名され,そのエネルギーは 244 EeV = 38 J である。これがマスコミに報道されるとき,40Wの電球を1秒点灯させるだけのエネルギーというのはOKだけれど,1gで地球を破壊するほどのエネルギーだという例えに引っかかった。

この宇宙線の正体となる粒子が何であるか(粒子1個の質量)がわからなければ,1gに相当する粒子数が定まらない。とりあえず,銀河宇宙線の大半を占める陽子だとすると,質量は,1.67 × 10^-27 kg なので,6 × 10^23 個分にあたる。1g 分のアマテラス粒子群全体の持つエネルギーは,2.4 × 10^25 J なのだけれど,これで地球は破壊できるのだろうか。

広島に投下されたリトルボーイのエネルギーは,7 × 10^16 J らしいので,3億個の広島型原爆を落とされたことになる。また,チクシュルーブ・クレーターを作って恐竜を絶滅させたといわれる直径10km,速度20km/sの小惑星は,リトルボーイの1億倍のエネルギーに相当するので,この小惑星衝突の3個分のエネルギーに相当する。この表現のほうがわかりやすかっただろうか?

宇宙線研究所のプレスリリースには共同実験代表者の荻尾彰一さんの写真が大きく載っていた。彼は,大阪市立大学時代には物理教育学会近畿支部長を務められ,いろいろとお世話になったのだった。


図:大阪公立大学のプレスリリースから引用(©Ryuunosuke Takeshige)


2023年11月24日金曜日

ケプラー方程式

楕円軌道からの続き

軌道の形ではなく,時間発展を考える。
出発点は,$\bm{r}(t) = (x(t),y(t)) = ( a(\cos\theta(t) -e), a\sqrt{1-e^2} \sin \theta(t))$と,面積速度が一定であるということだ。
長半径$a$,短半径$b$,離心率$e$の 楕円の面積$S$は $S=\pi a b = \pi a^2 \sqrt{1-e^2}$なので,周期を$T$とすると,面積速度は,$\dfrac{dS}{dt}= \dfrac{S}{T} = \dfrac{\pi a^2 \sqrt{1-e^2}}{T}$である。

次に,楕円上の位置ベクトル$\bm{r}(t)$から面積速度を計算する。
$\dfrac{dS}{dt}= \frac{1}{2}(\bm{r} \times \dot{\bm{r}})_z = \frac{1}{2}(x \dot{y} - \dot{x} y) $
$= \frac{1}{2}  \{ a(\cos\theta-e) \cdot a\sqrt{1-e^2} \cos\theta \dot{\theta} - (-a \sin \theta \dot{\theta} ) \cdot a\sqrt{1-e^2}\sin \theta \}$
$= \dfrac{a^2 \dot{\theta}\sqrt{1-e^2}}{2} (\cos^2 \theta -e \cos\theta + \sin^2 \theta) =  \dfrac{a^2 \dot{\theta}\sqrt{1-e^2}}{2} (1 -e \cos\theta ) $

この2つの式が等しいので,$\dfrac{2\pi}{T} = \dot{\theta} ( 1- e \cos\theta)$となる。この両辺を時間$t$で積分して,$t=0$で$\theta=0$とすれば,次のケプラー方程式が得られる。
$\dfrac{2\pi}{T} t = \theta -\sin \theta \quad ( 0 \le t \le T \ \ \rightarrow\ \  0 \le \theta \le 2\pi) $
この解$\theta(t)$ を$\bm{r}(t) = (x(t),y(t)) = ( a(\cos\theta(t) -e), a\sqrt{1-e^2} \sin \theta(t))$に代入すれば,位置ベクトルが時間の関数として表される。

Mathematicaで計算してみた。
f[t_, e_] := FindRoot[u - e Sin[u] == 2 Pi t, {u, 0}]
g1[a_, e_] := 
  Table[{a (Cos[u] - e), a Sqrt[1 - e^2] Sin[u]} /. f[k/52., e], {k, 1, 52}];
gp1 = Graphics[{PointSize -> Large, Red, Point[g1[1, 0.2]]}];
g2[a_, e_] := 
 Plot[{a Sqrt[1 - e^2] Sqrt[1 - (x/a + e)^2], -a Sqrt[1 - e^2] Sqrt[
     1 - (x/a + e)^2]}, {x, -a (1 + e), a (1 - e)}, 
  AspectRatio -> Automatic, PlotStyle -> Blue]
gp2 = g2[1, 0.2];
Show[gp2, gp1]

図:ケプラー軌道の計算例(a=1, b=0.98,  e=0.2, r_ap=1.2, r_pe=0.8)

2023年11月23日木曜日

楕円軌道

昼夜時間(3)からの続き

惑星の楕円軌道についての復習の時間。


図:楕円の性質

図の左が,楕円の中心を原点とする$\ (X-Y)$座標系の表示である。長半径$a$の円を短半径$b$方向に$b/a$倍すると,$(X/a)^2+(Y/b)^2=1$という楕円が描かれる。このとき,縮小前の点への位置ベクトルが$X$軸となす角度を$\theta$として,楕円上の点の座標が$\ (X=a \cos \theta, Y= b \sin \theta)\ $となる。また,原点から種横転までの距離は$\ \sqrt{a^2-b^2}=ae$となる。ただし,離心率が$\ e=\sqrt{1-(b/a)^2}$と定義される。

図の右が,楕円の焦点を中心とする$\ (x-y)$座標系での表示である。原点から最も近い$x$軸方向の近地点までの距離を$r_{\rm pe}=a(1-e)$,最も遠い遠地点までの距離を$r_{\rm ap}=a(1+e)$とすると,$a=(r_{\rm ap}+r_{\rm pe})/2,\ b=\sqrt{r_{\rm ap} r_{\rm pe}}$である。また,楕円上の点への位置ベクトルは,その長さを$r$,$x$軸のなす角度を$\phi$として,$(x=r\cos\phi, y=r\sin\phi)$と表される。

ところで,$x = a \cos \theta - a e = r\cos\phi,\ y = b \sin \theta = r\sin\phi)$である。そこでこれらから,$\theta$を消去すれば,$r$と$\phi$の関係式が得られる。すなわち,$r=\sqrt{x^2+y^2} = a (1-e\cos\theta)$,$\tan \phi = \dfrac{y}{x} = \dfrac{\sqrt{1-e^2} \sin \theta}{\cos \theta - e}$
そこで,$\dfrac{1}{\cos^2\phi} = 1 + \tan^2\phi = \dfrac{(\cos \theta - e)^2 + (1-e^2)\sin^2 \theta}{(\cos \theta - e)^2}=\dfrac{(1-e\cos\theta)^2}{(\cos \theta - e)^2}$
$\therefore \dfrac{1}{\cos\phi} = \dfrac{1-e\cos\theta}{\cos \theta - e} =  \dfrac{r}{a\cos \theta - a e} =  \dfrac{r e}{a - r - a e^2} $
最終的に,$r = \dfrac{a(1-e^2)}{1 + e \cos \phi}$となる。



2023年11月22日水曜日

添田唖蝉坊

東京節からの続き

東京節(1918)の別名はパイノパイノパイで,ジョージア行進曲のメロディーに演歌師の添田知道(添田さつき)(1902-1980)が詞をつけたものだ。彼の父親は添田唖蝉坊(そえだあぜんぼう,1872-1944)という演歌師だった。

最後の演歌師といわれる桜井敏雄(1906-1996)がバイオリンをひきながら,なぎら健壱東京節を歌っているものや,打楽器奏者土取利行東京節解放節を聴くことができる。なかなか味わい深い。これが,後の高石ともや,フォーククルセダーズ,岡林信康などにつがなっているのかも。


写真:添田唖蝉坊(大磯町のページから引用)

[2]のんき節(添田唖蝉坊,土取利行)
[3]あきらめ節(添田唖蝉坊,土取利行)
[4]ストライキ節(添田唖蝉坊,土取利行)

2023年11月21日火曜日

東京節

柳澤眞一(1932-2022)といえば,奥様は魔女のダーリンだ。彼がYouTubeで榎本健一(1904-1970)の東京節を話題にしていた。「ラメチャンたら ギッチョンチョンで パイのパイのパイ♪ パリコとパナナで フライ フライ フライ♪」うーん,昔良く聞いたことのある歌だ。

そもそもこれはどういう意味なのかと調べると,なんとなくそれらしい解釈が見つかった。
果たして,AI諸氏はこれに答えられるだろうか。Bingは,検索できるのでこの答えをそのまま返してきた。その他はどうもいまいち。やはり,日本語を十分学習したLLMが必要だ。

Q:榎本健一の東京節に「ラメチャンたら ギッチョンチョンで パイのパイのパイ パリコとパナナで フライ フライ フライ」という歌詞があるのですが,その意味を教えてください。

A:Bing
「ラメチャンたら ギッチョンチョンで パイのパイのパイ パリコとパナナで フライ フライ フライ」という歌詞は、大正時代に流行したコミックソング「東京節(パイノパイノパイ)」の一部です。この歌詞には、大正時代の東京の町や建物の名前が歌い込まれています。歌い出しは「東京の中枢は 丸の内 日比谷公園 両議院」。コーラス部分の「ラメチャンタラ ギッチョンチョンで パイノパイノパイ」は、日本の民謡の囃子言葉(はやしことば)のように、歌の調子を整える意味のない言葉です。 「ラメチャン」の「ラメ」は、「デタラメ」の「ラメ」に由来しています。 「ギッチョンチョン」は、お座敷歌『ぎっちょんちょん』から転用されたものかもしれません。 「パイ」は、大正時代の日本で当時新しかった洋食の一つです。 後述の「フライ」も同様です。 「パリコト」の「パリコ」とは、1918年に終結した第一次世界大戦の戦後処理として、1919年に締結されたパリ講和会議を意味しています。

A:Bard
榎本健一の東京節の歌詞「ラメチャンたら ギッチョンチョンで パイのパイのパイ パリコとパナナで フライ フライ フライ」の意味は、以下のとおりです。
ラメチャン:デタラメの「ラメ」のこと。デタラメちゃん。深い意味はない。
ギッチョンチョン:擬音語。何かが動く音を表す。
パイのパイのパイ:囃子言葉。意味はない。
パリコ:当時流行していた菓子の名前。
パナナ:当時珍しい果物の名前。
この歌詞は、歌の途中で挟まれる囃子言葉です。深い意味はなく、単にリズムをとったり、雰囲気を盛り上げたりする役割があります。
「ラメチャン」は、当時流行していたアメリカの流行歌「テネシーワルツ」の歌詞に出てくる「ラメイ」という単語を、日本語風に言い換えたものです。この「ラメイ」は、もともとは「デタラメ」という意味の俗語です。
「ギッチョンチョン」は、何かが動く音を表す擬音語です。この場合は、ラメちゃんが何かを動かしている様子を表現していると考えられます。
「パイのパイのパイ」は、囃子言葉としてよく使われる言葉です。特に意味はありません。
「パリコ」と「パナナ」は、当時流行していた菓子と果物の名前です。この歌詞では、ラメちゃんがこれらの食べ物を手に持っている様子を表現していると考えられます。
このように、この歌詞は、当時の流行や風俗を反映した、ユーモラスで軽快な囃子言葉です。

A:Claude
榎本健一さんの「東京節」は、東京の街とそこに住む人々の生活をユーモラスに歌った曲です。
ご指摘の歌詞部分の意味は以下のように解釈できると思います。
「ラメチャンたら」は、ラーメン屋さんの景色を描写しています。
「ギッチョンチョンで」は、客がラーメンを食べている様子。ギッと音を立てて食べるさま。
「パイのパイのパイ」は、ラーメン屋の中で流れているBGM。「パイパイパイ」と重なる音。
「パリコとパナナで」は、ラーメンの具材。チャーシュー(パリコ)とメンマ(パナナ)。
「フライ フライ フライ」は、揚げ物料理をいうスラング。ラーメン屋のメニューを描写。
このように、東京のラーメン屋の雰囲気を特徴的な言葉で表現した歌詞だと思われます。
言葉遊び的な面白さがある反面、一見意味不明にも見える歌詞ですが、東京の街空間を体感できる造形力があると思います。

A:perplexity
「ラメチャンたら ギッチョンチョンで パイのパイのパイ パリコとパナナで フライ フライ フライ」という歌詞は、榎本健一の「東京節(パイのパイのパイ)」の一部であり、東京の観光名所や食べ物を歌ったものです。以下が歌詞の全文です。
(略:全文に近いが間違っているものを引用している)
したがって、「ラメチャンたら ギッチョンチョンで パイのパイのパイ パリコとパナナで フライ フライ フライ」という歌詞は、東京節の中で、東京の観光名所や食べ物を歌ったものであると言えます。

A:ChatGPT
「ラメチャンたら ギッチョンチョンで パイのパイのパイ パリコとパナナで フライ フライ フライ」という歌詞は、榎本健一が作詞した歌「東京節」の一部です。この歌詞は、単語やフレーズが連なっていて、直接的な意味があるようには見えません。
一部の歌詞やフレーズは、単にリズムや響きを重視した言葉遊びや音の連なりである場合もあります。したがって、この歌詞の具体的な意味は作者の意図や解釈者によって異なる場合があります。
もしこの歌詞が特定の文脈や背景を持っている場合は、それに基づいた意味があるかもしれませんが、一般的な日常会話や表現としては認識されていないようです。


そうこうしているうちに,OpenAIのChat-GPTは更なる進化を遂げているようだ。

[1]榎本健一(NHKアーカイブス人物)

2023年11月20日月曜日

チェレンコフ放射(2)

チェレンコフ放射(1)からの続き

チェレンコフ放射の理論的取り扱いは,JacksonのClassical Electrodynamicsをみればよいらしいけれど,それは宿題ということで・・・。

ここでは,原子炉から核燃料から放出される典型的なβ崩壊の高エネルギー電子の速度を求めてみる。キセノン133,ヨウ素131,セシウム137などでは,ベータ線の運動エネルギーは0.5MeVから1MeV程度である。この電子の速度が 媒質中の光速度 $c'=c/n$ を超えるかどうかが知りたい。つまり$T$求めた $v/c$が,$1/n$を超えれば,チェレンコフ光が観測される。ただし,$n$は媒質(水)の屈折率である。

電子の静止エネルギーを$mc^2$,電子の相対論的な全エネルギーを$E=\dfrac{mc^2}{\sqrt{1-(v/c)^2}}$,相対論的な運動エネルギーを$T=E-mc^2$とおく。これから$\ v/c\ $を$T$の関数として表せばよい。
$(T + mc^2)^2=\dfrac{(mc^2)^2}{1-(v/c)^2}$であるから,$1-(v/c)^2 = \dfrac{1}{(T/mc^2 + 1)^2}$
$\therefore (v/c)^2 = 1 - \dfrac{1}{(T/mc^2 + 1)^2} = \dfrac{(T/mc^2)^2 + 2(T/mc^2)}{(T/mc^2 + 1)^2}$

$\therefore v/c = \dfrac{\sqrt{T^2 + 2mc^2 T\ \ }}{T+mc^2} = \dfrac{\sqrt{\tau^2 + 2\tau\ \ }}{\tau + 1}$

ここで,$\tau=T/mc^2$である。例えば,$\tau=\{0.5, 1, 2\}$に対して,$v/c=\{0.74,\ 0.86,\ 094\}$なので,水の屈折率の逆数$1/n= 1/1.33 = 0.75$ をほぼ超えることがわかる。


写真:チェレンコフ放射の例(Wikipediaから引用)


2023年11月19日日曜日

チェレンコフ放射(1)

チェレンコフ放射は知っている。

屈折率が,$n=\sqrt{\varepsilon_r \mu_r} > 1\ $である媒質中の光速度は,$c' = c/n$と真空中より遅くなる。ここで,$\varepsilon_r,  \mu_r\ $は無次元の比誘電率と比透磁率である。この媒質中を進む荷電粒子が媒質中の光速度を超える場合,波面の作る包絡線に垂直な方向に生ずるのがチェレンコフ光である。典型的な例は水に浸かった原子炉中の核燃料が出す放射線から生ずる青白い光である。

ところで,荷電粒子が電磁波を放出するのはそれが加速度運動している場合である。上記の放射線(高エネルギーのベータ線)は媒質の水の中を等速度で運動している。

砂川さんの理論電磁気学によれば,点電荷の座標を$\bm{r}(t_0')$,観測点の座標を$\bm{x}$,粒子の位置から観測点に向かう単位ベクトルを$\bm{n}(t_0')=\dfrac{\bm{x}-\bm{r}(t_0')}{|\bm{x}-\bm{r}(t_0')|} = \dfrac{\bm{x}-\bm{r}(t_0')}{R(t_0')}$とする。
さらに次の量$\ \bm{\beta}(t_0') = \bm{\dot{r}}(t_0')/c\ $と$\ \alpha(t_0')=1-\bm{n}(t_0')\cdot \bm{\beta}(t_0')\ $を定義した。
ただし,$t_0'\ $は$\ t_0'=t -|\bm{x}-\bm{r}(t_0')|/c \ $の解であり,$t_0'$のなかに$\bm{x}$が含まれる。

スカラーポテンシャル$\phi(\bm{x},t)$とベクトルポテンシャル$\bm{A}(\bm{x},t)$は,次式で与えられる。
$\phi(\bm{x},t)=\dfrac{e}{4\pi\varepsilon_0}\dfrac{1}{\alpha(t_0') R(t_0')}$
$\bm{A}(\bm{x},t)=\dfrac{\mu_0 e}{4\pi}\dfrac{\bm{\dot{r}}(t_0')}{\alpha(t_0') R(t_0')}$
また,電場$\bm{E}(\bm{x},t)$と磁場$\bm{B}(\bm{x},t)=\dfrac{1}{c}\bm{n}(t_0')\times \bm{E}(\bm{x},t))$は,
$\bm{E}(\bm{x},t)= \dfrac{e}{4\pi\varepsilon_0}\Biggl[ \dfrac{(\bm{n}-\bm{\beta})(1-\bm{\beta}^2)}{\alpha^3 R^2}+\dfrac{(\bm{n}-\bm{\beta}) (\bm{n}\cdot \bm{\dot{\beta}}) - \alpha \bm{\dot{\beta}}  \} }{c\alpha^3 R} \Biggl]_{t_0'}$
$\bm{B}(\bm{x},t)= \dfrac{\mu_0 e}{4\pi\varepsilon_0}\Biggl[ \dfrac{(\bm{\beta}\times \bm{n})(1-\bm{\beta}^2)}{\alpha^3 R^2}+\dfrac{ (\bm{\beta}\times \bm{n})(\bm{n}\cdot \bm{\dot{\beta}}) + \alpha \bm{\dot{\beta}} \times \bm{n} \} }{c\alpha^3 R} \Biggl]_{t_0'}$

加速運動する荷電粒子から生ずる電磁波は$\bm{\dot{\beta}}$の項からくる。これを含まない項は,遠方で$R^{-2}$で減衰するのでエネルギーの放射には関係しない。一方,媒質中で光速を超える場合は,$\bm{\dot{\beta}}=0$ではあるが,同時に$\alpha=0$になる可能性がある。そこでこの項が消えずに残るというのが,ものの資料[1]の説明だったが,イマイチよくわからない。フーリエスペクトル以降の計算を追えていない。

結局,チェレンコフ放射についても自分はよくわかっていなかった。まあそんなものだ。

図:チェレンコフ放射のイメージ(github-nakashoから引用)





2023年11月18日土曜日

三角形(2)

三角形(1)からの続き

半径$r$の円が内接する直角三角形で,円の接点が斜辺を$a,\ b$に分割するものの面積が,簡単な表式 $S=ab$で与えられるので,ピタゴラスの定理を経由せずに幾何学的に説明できそうな気がする。


図:長方形への図形断片の埋め込み

そこで,一辺が$a,\ b$の長方形を対角線で分割した△AQB=$ab/2$に,前回の図における図形の断片がきれいに埋め込めるのではないかないかと思ってトライしてみる。2種類の三角形は底辺の$a, \ b$と高さ$r$をそのままにして頂点の位置をずらせばきれいにおさまる。すなわち,△BCQ=$ar/2$と△ACQ=$br/2$である。

長方形を対角線で分割した三角形△AQBからこれらの面積を除けば,薄い三角形△ABCが余る。したがって,この面積は,△ABC $= \frac{1}{2}\{ab -(a+b)r\}$である。前回の円を内接する直角三角形の面積条件は,$S=r(a+b+r)$だったので,△ABC $= \frac{1}{2}\{(ab -S) + r^2\}$となる。つまり,△ABC =$r^2/2$を満足する場合に$S=ab$となって,断片が長方形に収まることになる。

何だか回りくどい話になって,図形からすんなりと説明できたとはいいにくかった。上の例では,面積を保ったままA→Eに変形すれば,△ABC=△EBCになっているのだけれど,それは特別な場合である。

2023年11月17日金曜日

三角形(1)

三角形の面積を求めるという小中学生向けの問題があったので,ちょっと一般化してみた。逆行進化している自分のレベルにふさわしいかもしれない。

次のような直角三角形OABと内接円Cがあって,斜辺ABと円Cの接点をQとする。与えられているのは,AQとBQの長さであり,このとき直角三角形ABCの面積を求めるのが課題だ。


図:三角形の面積の問題

円の半径を$r$として三平方の定理から$r$の方程式を作れば簡単に解ける。この方程式は次の形になる。$(a+r)^2+(b+r)^2= (a+b)^2$。これを整理すると,$r*(r+a+b) = ab$となる。これから二次方程式の解の公式を使ってモチャモチャしていたのだけれど,その必要はなかった。

三角形OABの内接円の中心CからA,B,P,Q,R点と結ぶ線を切り離して並べ替えると,高さがrで幅が(r+a+b)の細長い長方形ができる。この長方形の面積$ r*(r+a+b)$がもとの三角形OABの面積と等しい。すなわち先ほどの式の右辺である$ab$が答えの面積になるのだった。

2023年11月16日木曜日

相似形

同志社大学田辺キャンパスの交隣館でおにぎりをほおばりながら,Facebookをみていたら,芳賀さんが,盛大に算数の教科書をディスっていた。

教科書にあるのは,相似の例題だ。校舎の高さを影の長さと相似の関係で求めたり,校舎を挟んで立っている2本の木の距離を,運動場の一点から見た角度を測って求めるといった問題だ。目的がその値を求めることなら,屋根から降ろしたロープの長さをはかるとか,学校の設計図面で確認するほうが早いだろうという主張である。みんなで便乗して,算数教育の在り方を批判していた。

そこまで,いじめなくてもよいのにと思ってしまう。自分がこどものときに読んだ「数のふしぎ・形のなぞ」では,ピラミッドの高さの図り方としてこの方法が説明されていた。ピラミッドの横に棒を立ててその影の長さと棒の長さの比を求めておく。ピラミッド頂上の影の長さに相当する距離を測って,先ほどの比を当てはめればピラミッドの高さが推定できるというものだ。

小学校の算数の時間に運動場で測量を行ったときは,確かに角度を正確に求めるのが難しかった。なので,気持ちがわからないこともない。しかし,この方法を理解しておけば,簡単にいろいろな量の概算ができるので,それはそれでよいのではないでしょうか。最も効率のよい方法だけに固執する必要はない。環境次第では,何かの役に立つこともあるかもしれない。

そんなことを考えながら,キャンパスを歩く学生さんを見ていたら,みんな自分の身長の1.3倍くらいの影をずるずる引きずりながら,スイスイ進んでいた。今ごろの太陽高度は南中時刻でも40度はないのだろう。ところが自分の視線の方向を変えると,短くなった影はお団子のように人の後に張り付いていた。そうだ,影を観察する方向によってその見かけの長さを制御できるのだ。

ということで,身長と影の長さが等しくなる方向を選択すれば,ややこしい計算なしに,目標とする高いものの高さがほぼ水平距離に置き換えることができる。それはそれで学びの成果になるだろうか?

図:高さ2の影が4のとき,方向によって長さ2にできる

[1]太陽高度(一日の変化)(CASIO高度計算サイト)

2023年11月15日水曜日

忘れ物

天理市では火曜日と金曜日が燃えるゴミ(生ゴミ)の回収日だ。

それをすっかり忘れていて,非常勤の授業に向かおうとして玄関を出ると,まだゴミが回収されずに積んであった。さっそく,取って返して台所の生ゴミをまとめて・・・とバタバタして駅に着いたら,iPhoneとボールペンを携帯するのを忘れていることに気がついた。

切符は予備のPiTaPaで対応し,ボールペンは大学に予備が置いてある。ところが,電車の待ち時間や電車の移動時間の間が持たない。普段は,常時iPhoneに没頭して情報入力しているので,それがないと調子が狂うのだ。

かばんの中には文庫本(ハヤカワ文庫JA,AIとSF)があったので,早速これを読んで無事に過ごすことができた。最近,本を読めなくなったことの最も大きな原因が,インターネットにつながった端末からの情報入力に取って代わられていることをあらためて痛感する。

大学のエスカレータを上りながら縷々考えてみると,毎日の食事によって身体の再生産を維持するのと同様に,人間は日々情報をインプットしてアウトプットしないと生きていけないのでは思い至った。そして,人やその食物が地球物質循環の中に位置づくように,人と世界の相互作用の中にある情報循環のイメージが浮かんできた。


2023年11月14日火曜日

宮腰

NHKの午後の列島ニュースでは,地方局からの話題が2局ずつペアで紹介されていく。

先日,青森局と金沢局のニュースがあって,後者は石川県立美術館国立工芸館の共催による「皇居三の丸尚蔵館収蔵品展」の入場者数がこのシリーズで過去最多だったといいうもの。

問題は,前者のほうだ。青森県中泊町の旧家で大正ステンドグラスが残る宮越家の美術品や書状などが展示されたという話題だ。同時に宮越家の離れと庭園の秋公開も行われている。宮越というのは金沢市金石(かないわ)の旧地名なので,そのルーツは金沢なのではないかと思って調べてみた。

自分が勘違いしていたのは,金石の旧称は宮越ではなく宮腰(みやのこし)だったこと。しかしルーツが石川県というのは正しかった。中泊町の宮越家の初代は江戸時代に加賀国江沼郡(石川県加賀市)の宮ノ越から移住して代々庄屋などをつとめていた。

なお,金沢の宮腰は,初代中村歌右衛門(1714-1791)の出身地でもある。


写真:宮越家の大正ステンドグラス(青森県観光情報サイトから引用)

2023年11月13日月曜日

昼夜時間(3)

昼夜時間(2)からの続き

昼夜時間の式はできたものの,現実の天理市(緯度:34.6°,経度:135.8°)の日の出,日の入りとは差がある。日本標準時との違いは,0.8°だから3分程度になるが,それだけでは足りないような気もする。

そもそも,冬至(12月22日)に向けて,日の出が最も遅くなる日(1月8日ごろ)と日の入りが最も早くなる日(12月6日ごろ)が違うのは,単純な円軌道モデルでは説明できないのではないか。

とりあえず,国立天文台計算室のこよみの計算によって,天理市の日の出時刻(7:04〜4:43),日の入り時刻(16:46〜19:14)を求めてみた。±2時間半くらいは変化する。この結果,昼時間は9時間50分から14時間30分までかわる。南中時刻はこんなにフラフラするものだったのか。


図:天理市の日の出時刻,日の入り時刻,昼時間,南中時刻

[1]こよみの計算(国立天文台計算室)

2023年11月12日日曜日

奈良の神社寺院

融通念仏宗からの続き

散歩の犬棒で思い出したが,うちの近所の寺には融通念仏宗が多いような気がする。早速,調べてみよう。日本の神社・寺院検索サイト「八百万の神」という,センスのよい有難い場所がある。誰が運営しているかというと,株式会社 INFO UNITE というあまり聴いたことのない会社だった。とりあえずなんとなくニュートラルな印象で,他にも日本の住所というデータベースを運営している。なんなのだろうか。

その結果を以下に整理した。まず。奈良県の神社・寺院数を市町村別に見たベスト7だ。五條とか宇陀などがかつては相対的に栄えていたのかもしれない。
奈良市   396   12%
五條市   238   7%
宇陀市   229   7%
橿原市   214   7%
大和郡山市 193   6%
桜井市   156   5%
天理市   155   5%
その他   1602  50%
また,神道の系列別のベスト7は次のようになる。八王子神社も散歩でよく見かける。
春日系列  146  20%
八幡系列  139  19%
祇園系列  83  11%
天神系列  81  11%
八王子系列 39  5%
伊勢系列  35  5%
稲荷系列  24  3%
その他   188  26%
問題の仏教の宗派別のベスト7は次のとおりで,融通念仏宗は第3位,奈良県ではけっこう存在感を示していた。
浄土真宗本願寺派 424  24%
浄土宗      318  18%
融通念仏宗    205  11%
高野山真言宗   164  9%
真宗大谷派    100  6%
曹洞宗      74  4%
真宗興正派    67  4%
その他      441  25%
なお,天理市には融通念仏宗の寺が25あった。なるほど近所でよく見かけるわけだ。


写真:融通念仏宗本山は大阪市平野区の大念彿寺(Wikipediaから引用)

2023年11月11日土曜日

融通念仏宗

朝の散歩でたまに珍しいものに出会う。犬も歩けば棒に当たる

11月8日の水曜日,北東に向って天理喜殿町セブンイレブンまで往復の散歩。ひまわり保育園の近くの八幡神社の向いに融通念仏宗大念仏寺の大きめののマイクロバスが停まっていた。中には運転手だけが待っている。こんな朝早くから法事でもあるまいし?そのまま北東に向かった。

帰り道,どこかから鉦の音が響いてくる。やっぱり法事なのだろうか。しかし,あいかわらずマイクロバスは空のままだ。さらに進むと,止んだと思った鉦の音が大きくなってきた。そちらの方をみると遠くに黒衣の坊さんが歩いているようだ。そのあたりには確か墓地があるが,そこに向かって田んぼの中のあぜ道を5人ばかりが鉦を鳴らしながら進んでいた。

うーん,これはいったい何だろう。本当にあのマイクロバスと関係があるのか。あのなんの変哲もない田んぼの中の小さな墓地に一体何があるのだろうか。謎は謎をよぶばかりだ。

かくして,人間は僅かな情報から,これらを結びつける説明や物語を紡ぎ出そうとする。


写真:鉦の音のなる方向に見えたのは(撮影 2023.11.08)

[1]融通念仏縁起絵巻(Wikipedia)
[2]融通念仏縁起絵巻(クリーブランド美術館)
[3]融通念仏縁起絵巻(シカゴ美術館)