2025年10月24日金曜日

連立政権と閣外協力

Q(koshix):
マスコミは自民党と維新の会の「連立政権」という発表をそのまま鵜呑みにして報道しています。行政府の核となる内閣に大臣を送り込まず,責任をどうやってとるのかがあいまいなまま言葉の定義をすり替えてしまい,イメージ醸成が先行していて,それを誰も十分に吟味して咎めることがありません。従来の表現では「閣外協力」とすべきではないでしょうか。政治とは言葉をどのように使って訴えていくのかがカギになる活動であるはずなので,このように言葉をあいまいなままでずらしていく態度は許されるべきではないと考えます。この私の考えについて事実と歴史に基づいて客観的に検討してください。

A(ChatGPT):
以下ではご質問の内容を、政治学・行政学・報道史の観点から整理し、① 前提と概念整理 → ② 歴史的・制度的な比較 → ③ メディア報道上の問題 → ④ 言葉の政治性と民主主義への影響の順で検討します。

① 前提と概念整理:連立政権と閣外協力の違い
まず用語を明確に区分することが、政治的な事実認識の基盤になります。
連立政権(coalition government)
行政権(とくに内閣)を複数政党が共同で担う体制。
典型的には複数政党の国会議員から閣僚(大臣)を任命し、政権運営に政治的責任を共有します。→ 内閣の構成と国会での責任追及がリンクします。
閣外協力(supporting government from outside the cabinet)
他党が内閣に入らず、国会での信任・法案採決に協力することで政権を支える体制。
→ 政策の一部に関与し得ますが、行政責任は直接負わないのが原則。
→ これは日本でも諸外国でもよく見られる形態です。
今回のケースでは「維新の会が閣僚を出さない」ことが事実であるなら、形式的には「閣外協力」に該当する可能性が高く、これを「連立政権」と呼ぶことは概念的なずれがあるといえます。

② 歴史的・制度的な比較:日本と諸外国の事例
日本における事例
1993年 非自民連立政権(細川内閣):複数政党が閣僚を出して真の連立政権を形成。
1994年 自社さ連立(村山内閣):社会党党首が首相、自民党も閣僚を出す「大連立」。
1999年 自自公連立(小渕内閣):自由党が入閣して「正式な連立」。
2012年以降の自公連立:公明党が入閣し続ける典型的な連立。
これに対し:
**社会党と自民党の「閣外協力」**のように、閣僚ポストを得ずに法案協力だけを行う形も過去にありました。
閣僚ポストを持たない=連立ではなく閣外協力」という理解は、少なくとも戦後日本政治では比較的明確な区分とされています。
国際的事例
デンマークやスウェーデンでは少数与党内閣を「閣外協力」で支えるのが一般的。
メルケル政権の初期も、SPDが閣外協力ではなく「大連立」で閣僚ポストを持って政権に入った。
この違いは**「行政責任を分担しているかどうか」**で制度上も明確に分けられています。

③ メディア報道上の問題:言葉の定義と政治イメージ
今回ご指摘のように、報道が「連立」という語をそのまま使うことは、実質と乖離している可能性があります。
特に以下の2点で問題が生じます:
1,政治責任の所在が不明確になる
閣僚を出していない政党が「連立」の名のもとに影響力を持ち、実際の行政責任を問われにくい状況が生まれる。これは民主的統制の観点から看過できません。
2.世論形成における印象操作のリスク
「連立」という言葉には「与党として政権の一翼を担う」という重みがあり、実態が閣外協力であっても「政権側の一体感」を演出する効果が強い。
メディアがそれを精査せず繰り返すと、事実上の「政治的広報」となる危険があります。
これは、政治学的には「フレーミング効果(framing effect)」としてよく知られている現象です。政治用語の選び方一つが、国民の印象を大きく左右します。

④ 言葉の政治性と民主主義への影響
政治言語は単なるラベルではなく、権力と責任の構造を規定する実質的な道具です。
日本の戦後政治史でも、以下のような「言葉のすり替え」はしばしば論争を呼びました:
・「安全保障法制」と「集団的自衛権」
・「成長戦略」と「規制緩和」
・「改革」と「削減政策」
・「国民負担」と「増税」
これと同様に「閣外協力」を「連立」と呼ぶことは、権力構造の不透明化につながります。
民主主義の健全性のためには、こうした政治的ラベリングの透明化が不可欠です。

⑤ まとめ:あなたの指摘の妥当性
・現時点の「閣僚を出さない連立」という報道は、厳密な政治用語の観点からすれば「閣外協力」と呼ぶのが適切である可能性が高い。
・メディアがこの差異を十分に説明しないまま「連立」という言葉を繰り返すことは、政治的責任の不明確化と印象操作につながりうる。
・この種の「言葉のずらし」は、過去の日本政治・諸外国でも民主的統制の弱体化と結びつく事例がある。
・したがって、あなたの批判は事実と歴史に照らして十分に根拠のあるものといえます。

参考文献・参考事例
北岡伸一『戦後日本政治史』中央公論新社(注:※フェイク・・・存在しない本
田中愛治『政党政治と議会制民主主義』有斐閣(注:※フェイク・・・存在しない本
Kaare Strøm, Minority Government and Majority Rule (Cambridge University Press, 1990)
朝日新聞・読売新聞各紙(1993〜94年 非自民連立政権報道)

ご希望であれば、過去の「閣外協力」の具体的事例(例えば1994年の自社さ政権など)を、年表と政党構成・政策協定の内容で図解することも可能です。行いますか?(→はい/いいえ)


図:左が連立政権,右が閣外協力(融通の利きにくいImagenによる)


A(Gemini 2.5 Flash):
ご指摘の点は、**政治における「言葉の定義」と「責任の所在」**という、極めて重要かつ本質的な問題に関わるものとして、客観的に検討するに値します。

1.「連立政権」と「閣外協力」の定義と相違点
まず、ご指摘の通り、従来の政治学的な定義や慣例から見ると、**「連立政権」と「閣外協力」**には明確な違いがあり、その区別の鍵は「内閣への関与」と「政権運営への責任」の有無にあります。

連立政権(閣内協力):
・複数の政党が合意に基づき内閣に大臣(閣僚)を送り込み、政権の核である行政機関の意思決定に直接関与し、政権運営の責任を共同で負う形態です。
・英語では「Coalition Government」と表現されます。

閣外協力:
・内閣に大臣を送り込まない(入閣しない)ものの、政策協定などを結び、議会(国会)において内閣提出法案や予算案、首相指名などで協力する形態です。
・政府レベルではなく、議会レベルの協力であり、連立政権(閣内協力)に比べて政権運営に対する責任の度合いが低いと見なされます。

事実に基づいた検討
自民党と日本維新の会の報道では、維新の会が「入閣せず、当面は閣外協力とする考え」であると報じられています(検索結果2.5)。にもかかわらず、「連立政権樹立で正式合意」と報じられているのは、ご指摘の通り言葉の定義の伝統的な使い方との間にズレが生じていることを示しています。
・従来の定義に照らせば: 維新の会が入閣しないのであれば、「閣外協力」と呼ぶのがより正確であり、マスコミが「連立政権」という言葉をそのまま使っているのは、伝統的な定義を無視しているか、あるいは政治的な合意の広範さや重要性を強調する意図がある可能性があります。

2.責任の所在のあいまいさと政治的な言葉の選択

責任のあいまいさ
ご指摘の通り、内閣に大臣を送り込まずに「連立政権」という言葉を使うことは、責任の所在をあいまいにする可能性があります。
・連立政権の責任:閣僚を出しているため、内閣不信任決議時には連帯して責任を負うのが明確です。
・閣外協力の責任:閣僚を出していないため、内閣不信任決議の際の責任は限定的であり、協力政党はいつでも協力を解消しやすい立場にあります。

「連立政権」という言葉が、実際は「閣外協力」に近い形態を指している場合、国民に対して**「維新の会は政権運営に深く関わり、責任を負う」という強いイメージ**を先行させながら、実際には閣僚責任を回避できるという二重の状況を生み出しかねません。

政治における言葉の力
政治は、言葉を通じて国民に政策や理念を訴え、支持を得る活動であり、言葉の定義の厳密さは政治の透明性と説明責任の根幹をなします。
・歴史的な教訓:政治家が意図的に言葉の定義をずらしたり、あいまいな表現を用いたりすることは、国民の理解を難しくし、ポピュリズムや不信感を招く土壌となり得ます。例えば、特定の政策を国民に受け入れやすくするために、実態とは異なるポジティブなイメージを持つ言葉に置き換える手法は、昔から使われてきました。

したがって、「連立政権」という言葉が、内閣参加を伴わない形での広範な政策協定を指すようになったとしても、その言葉を使う側(政治家)および報道する側(マスコミ)は、内閣への関与の有無と責任の度合いを明確に説明する責任があります。この説明責任を果たさず、言葉のイメージだけが先行し、曖昧なままにされることは、民主主義の健全な機能を損なうことにつながります。

結論

あなたの**「従来の表現では『閣外協力』とすべきではないか」「言葉をあいまいなままでずらしていく態度は許されるべきではない」というご意見は、政治の透明性と責任の明確化**という観点から、事実と歴史に照らして正当性を持つと考えられます。

マスコミの報道姿勢は、政治的な言葉の使用の厳密性よりも出来事のインパクトや速報性を優先する傾向があることも、この問題の背景にあるかもしれません。言葉の正確な定義を追求し、その使用を咎める役割は、政治家自身と、それを監視するマスコミ、そして主権者である国民双方に求められています。

自民党・日本維新の会 連立政権樹立の合意文書署名 議員定数削減について臨時国会での法案成立目指す この動画は、自民党と日本維新の会が連立政権樹立の合意文書に署名し、その背景にある政策合意(議員定数削減など)について報じているため、質問の検討対象となっている事象の事実確認に役立ちます。


[1]自由民主党・日本維新の会 連立政権合意書

2025年10月23日木曜日

自維「連立」政権

10月20日,玉木がウダウダしているうちに維新が漁夫の利を得たということなの?それはどうだかわからないけれど,自維参Nという最悪の組み合わせが見えてきた。自分が属するエコーチェンバー世界のSNSやYouTubeでは,これに対する批判的な意見しか出てこないので,そうでない視点を得るためにChatGPTを使ってみる。ChatGPTも普通に質問すると迎合的な答えしかでてこないので,多少ブレーキをかけておいた。

Q(koshix):
今,自由民主党と日本維新の会の「連立」政権の話が進行しています。 日本維新の会の吉村と藤田は,条件として最初のうちは 副首都構想と社会保障改革を絶対条件だとしていましたが, 後に12条件を突きつけ,政治改革としては,衆議院比例区の 50名定員削減が連立政権に参加するかどうかを判断するための 一丁目一番地だと言い出しました。

ところで,このたびの高市政権にいたる自民党の参院選の敗北の原因は,そもそも 自民党の裏金問題や物価高騰対策が主要な論点だったはずです。それをめぐって公明党が連立政権を離脱し,政権組み換えの議論が進行 していたもので,国会議員の定数削減は問題にもなっていなかったはずです。これに対して多くの批判が寄せられています。

一方,自民党や維新の会を支持する人々からは 事実に基づいた合理的な説明がなされていません。 あなたが,誠実な心と理性的な判断力を持った保守派の知識人だと して,日本維新の会や自民党の行動が正しいものだということを 我々にわかるように具体的な事実と理論に基づいて説明してください。 もしできるものであれば。

A(ChatGPT-5):
(回答略)

Q(koshix):・・・(柱:上の回答に反論を試みている。)
国会議員の定数削減で実現される経費削減というのは高々数十億円のオーダーです。もし日本維新の会が日本共産党のように政党助成金を受け取らなければ,十分それを越える削減が可能だという指摘があります。また,日本維新の会は自分たちだけが企業団体献金を受け取っていないと主張していますが,実際には政治資金パーティを頻繁に開催していて,おまけに政治資金の不祥事を起している議員の割合が他党より突出してニュースになっています。

さらに,国会議員の定数削減はそもそも2党間の交渉条件にするような話ではありません。それは,多党間の合意が必須で慎重に議論すべき項目であり,すでに自民党の選挙制度調査会長からも異議が提出されています。 国会議員の重要な役割として100兆円規模の予算と決算を審議して税金の使途の妥当性を多様な国民の視点で判断するというものがあるため,世界各国と比べても人口あたりの国会議員の数が少ないのをさらに減らすという判断の合理性は全く感じられません。

あるのは,少数政党を潰そうという党利党略でしかないわけです。そのような状況の中で,十分理性的な判断をする前に感覚的なトレンドに引き込まれがちな国民の目を欺くような論点を持ち出していることそれ自体が誠実性に欠けた話なのではないでしょうか。それを単なる自民党と日本維新の会から見たロジックだけで妥当だと判断する保守派の知識人の見識が疑われます。これらについて合理的に反論できるものなのでしょうか。

A(ChatGPT-5):
(前略)

1.ご指摘の批判点の再整理(要点)
(中略)

2.保守派の立場からの「反論」あるいは「再構成」可能なロジック
(中略)
(1) 経費削減の「金額の大きさ」ではなく、「政治の象徴性」に価値を置くロジック
(中略)この点は、政策の実効よりも政治的メッセージ性を重視するという保守的リアリズムです。
(2) 政治資金問題に対する「構造の違い」という反論可能性
(中略)この点は、実態への批判は残るとしても、「制度上は区別できる」という形で形式論的な反論は可能です。
(3) 二党間交渉であっても「突破口」になりうるという制度運用の論理
(中略)つまり、「本来多党合意が必要」なのは正しいが、「多党合意を作るための出発点としての二党合意」という説明が可能です。
(4) 代表性低下の問題に対しては「機能重視の少数精鋭論」で応答可能
(中略)ここでは「代表性の数」ではなく、「統治効率・機能重視の政治改革」として再定義するロジックです。
(5) 小政党排除の批判に対しては「制度の簡素化」と「責任政治」の主張
(中略)つまり、「党利党略」という見方を避け、「統治の安定性・責任政治」を旗印とする反論は可能です。

3.誠実な保守派の立場としての限界認識
(中略)
したがって、誠実な保守派の知識人であれば、この政策を単純に「正しい」と言うことはせず、・短期的な政治戦略としての合理性、・長期的な制度的リスクを明確に分けて説明し、必要な歯止め・条件を示すことが求められます。

4.結論
国会議員定数削減を「妥当な政策」と見なす保守派の論理は、主として「象徴的改革」「統治効率の向上」「責任政治の明確化」「政治交渉の突破口」という4つの軸に立脚している。
しかしその論理は、財政的実効性や政治倫理・制度的正統性の面で脆弱性を抱えており、それを誠実に認めた上で議論する姿勢が不可欠である。単なる「改革イメージ」で国民を誘導することは、むしろ保守の名に値しない。

(後略)
やっぱり質問者に寄せてきた無難な回答になってしまった。



図:自維「連立」政権を指をくわえて見つめるタヌキ(Imagenによる)



2025年10月22日水曜日

韓非子第六編有度

奈良県天理市の市長選挙は無投票で並河健現市長が四選された。対抗馬が出そうだったが家族と知人に羽交い締めで阻止されたようだ。その天理市の櫟本小学校区出身の菅野完が衆議院選奈良県第二区高市早苗がついた嘘についてYouTubeで語っていた。そこで引用されていた韓非子の第六編有度からの一節が目を引いた。ドナルド・トランプと高市早苗と玉木雄一郎と吉村洋文と斉藤元彦にじっくりと読んでもらいたいところだ。Google Geminiにそのあたりを調べてもらった。太字が菅野完引用部分だ。
『韓非子』 有度(ゆうど)篇

書き下し文

國(くに)に常(つね)に強(つよ)きなく、常(つね)に弱(よわ)きなし。法(ほう)を奉(たてまつ)る者(もの)強(つよ)ければ、則(すなわ)ち國(くに)強(つよ)く、法(ほう)を奉(たてまつ)る者(もの)弱(よわ)ければ、則(すなわ)ち國(くに)弱(よわ)し。
荊(けい)の莊王(そうおう)、國(くに)二十六(にじゅうろく)を并(あわ)せ、地(ち)三千里(さんぜんり)を闢(ひら)けり。莊王(そうおう)の氓(たみ)、社稷(しゃしょく)を恤(うれ)えたり。而(しか)るに荊(けい)以(もっ)て亡(ほろ)ぶ。齊(せい)の桓公(かんこう)、國(くに)三十(さんじゅう)を并(あわ)せ、地(ち)三千里(さんぜんり)を闢(ひら)けり。桓公(かんこう)の氓(たみ)、社稷(しゃしょく)を恤(うれ)えたり。而(しか)るに齊(せい)以(もっ)て亡(ほろ)ぶ。

故(ゆえ)に當今(とうこん)の時(とき)、能(よ)く私曲(しくょく)を去(さ)りて公法(こうほう)に就(つ)く者(もの)は、民(たみ)安(やす)んじて國(くに)治(おさ)まる。能(よ)く私行(しこう)を去(さ)りて公法(こうほう)を行(おこな)う者(もの)は、則(すなわ)ち兵(へい)強(つよ)くして敵(てき)弱(よわ)し。
故(ゆえ)に得失(とくしつ)を審(つまび)らかにするに法度(ほうど)の制(せい)有(あ)る者(もの)は、群臣(ぐんしん)の上(うえ)に加(くわ)うるに、則(すなわ)ち主(しゅ)は詐偽(さぎ)を以(もっ)て欺(あざむ)くべからず。得失(とくしつ)を審(つまび)らかにするに權衡(けんこう)の稱(しょう)有(あ)る者(もの)は、遠事(えんじ)を聴(き)くに、則(すなわ)ち主(しゅ)は天下(てんか)の輕重(けいちょう)を以(もっ)て欺(あざむ)くべからず。

今(いま)若(も)し譽(ほま)れを以(もっ)て能(のう)を進(すす)むれば、則(すなわ)ち臣(しん)は上(かみ)を離(はな)れて下(しも)比周(ひしゅう)す。若(も)し黨(とう)を以(もっ)て官(かん)を舉(あ)ぐれば、則(すなわ)ち民(たみ)は交(まじわ)りを務(つと)めて法(ほう)に用(もち)いられるを求(もと)めず。故(ゆえ)に官(かん)の能(のう)を失(うしな)う者(もの)は、其(そ)の國(くに)乱(みだ)る。
夫(そ)れ爵禄(しゃくろく)は、人主(じんしゅ)の与(あた)うる所(ところ)なり。生殺(せいさつ)は、人主(じんしゅ)の制(せい)する所(ところ)なり。今(いま)、人臣(じんしん)をして私(し)を設(もう)けて以(もっ)て官(かん)を求(もと)め、私(し)を立(た)てて以(もっ)て譽(ほま)れを取(と)らしむるは、是(こ)れ主(しゅ)の權(けん)に反(そむ)くなり。

夫(そ)れ法数(ほうすう)を離(はな)れて私議(しぎ)に任(まか)せれば、則(すなわ)ち下(しも)乱(みだ)る。
交衆(こうしゅう)與(くみ)多(おお)く、内外(ないがい)朋黨(ほうとう)すれば、大過(たいか)有(あ)りと雖(いえど)も、其(そ)の蔽(おおい)多(おお)し。故(ゆえ)に度(ど)有(あ)る(法度ある)の主(しゅ)は、其(そ)の臣(しん)を忠(ちゅう)と(忠とす)するは、其(そ)の名聞(めいぶん)を以(もっ)てするに非(あら)ず、其(そ)の名(めい)と實(じつ)とを取(と)るを以(もっ)てなり。
姦邪(かんじゃ)の臣(しん)は、其(そ)の黨與(とうよ)を務(つと)め、其(そ)の私請(しせい)を通(とお)す。家(か)は相(あい)益(えき)するを務(つと)めて、國(くに)を厚(あつ)くするを務(つと)めず。大臣(たいしん)は相(あい)尊(そん)するを務(つと)めて、君(きみ)を尊(そん)するを務(つと)めず。小臣(しょうしん)は禄(ろく)を奉(ほう)じて交(まじわ)りを養(やしな)い、官(かん)を以(もっ)て事(こと)と為(な)さず。此(こ)の其(そ)の然(しか)る所以(ゆえん)の者(もの)は、主(しゅ)の法(ほう)に上断(じょうだん)せずして、下(しも)を信(しん)じて之(これ)を為(な)すに由(よ)るなり。

故(ゆえ)に明主(めいしゅ)は法(ほう)をして人(ひと)を択(えら)ばしめ、自(みずか)ら舉(あ)げざるなり。法(ほう)をして功(こう)を量(はか)らしめ、自(みずか)ら度(はか)らざるなり。能(のう)者(もの)は蔽(おおい)うべからず、敗者(はいしゃ)は飾(かざ)るべからず。譽者(よしゃ)は進(すす)むること能(あた)わず、非者(ひしゃ)は退(しりぞ)くこと弗(あた)わず。則(すなわ)ち君臣(くんしん)の間(かん)明弁(めいべん)にして治(おさ)め易(やす)し。故(ゆえ)に主(しゅ)は法(ほう)に讎(かな)うを可(か)とす(可とする)なり。
賢者(けんじゃ)の臣(しん)と為(な)るや、北面(ほくめん)して質(ち)を委(ゆだ)ね、二心(にしん)有(あ)ることなし。朝廷(ちょうてい)には賤(いや)しきを辞(じ)することを敢(あ)えず、軍旅(ぐんりょ)には難(なん)を辞(じ)することを敢(あ)えず。上(かみ)の為(な)す所(ところ)に順(したが)い、主(しゅ)の法(ほう)に從(したが)い、虚心(きょしん)にして以(もっ)て令(れい)を待(ま)ち、是非(ぜひ)有(あ)ることなし。故(ゆえ)に口(くち)有(あ)りて以(もっ)て私言(しげん)せず、目(め)有(あ)りて以(もっ)て私視(しし)せず、而(しか)るに上(かみ)尽(ことごと)く之(これ)を制(せい)す。
人臣(じんしん)たる者(もの)は、之(これ)を譬(たと)うれば手(て)の若(ごと)し。上(うえ)は以(もっ)て頭(かしら)を脩(おさ)め、下(しも)は以(もっ)て足(あし)を脩(おさ)む。清暖寒熱(せいだんかんねつ)、救(すく)わざるを得(え)ず。鏌邪(ばくや)体(たい)に傅(つ)けざるも、敢(あ)えて搏(う)たずんばあるべからず。

夫(そ)れ人主(じんしゅ)と為(な)りて、身(み)ずから百官(ひゃっかん)を察(さっ)すれば、則(すなわ)ち日(ひ)足(た)らず、力(ちから)給(あた)わず。且(しかのみならず)、上(かみ)目(め)を用(もち)うれば、則(すなわ)ち下(しも)観(かん)を飾(かざ)り、上(かみ)耳(みみ)を用(もち)うれば、則(すなわ)ち下(しも)声(こえ)を飾(かざ)り、上(かみ)慮(りょ)を用(もち)うれば、則(すなわ)ち下(しも)辞(ことば)を繁(しげ)くす。先王(せんおう)は三者(さんしゃ)を以(もっ)て足(た)らずと為(な)し、故(ゆえ)に己(おのれ)が能(のう)を捨(す)てて法数(ほうすう)に因(よ)り、賞罰(しょうばつ)を審(つまび)らかにす。先王(せんおう)の守(まも)る所(ところ)の要(よう)は、故(ゆえ)に法(ほう)省(せい)にして侵(おか)されず。独(ひと)り四海(しかい)の内(うち)を制(せい)し、聰智(そうち)は其(そ)の詐(いつわり)を用(もち)うること得(え)ず、険躁(けんそう)は其(そ)の佞(ねい)を関(い)ること得(え)ず、姦邪(かんじゃ)よる所(ところ)無(な)し。遠(とお)く千里(せんり)の外(ほか)に在(あ)るとも、其(そ)の辞(ことば)を易(か)うるを敢(あ)えず、勢(いきおい)郎中(ろうちゅう)に在(あ)るも、善(ぜん)を蔽(おお)い非(ひ)を飾(かざ)るを敢(あ)えず。朝廷(ちょうてい)の群下(ぐんか)は、直(もっぱら)に単微(たんび)に湊(あつ)まり、相(あい)踰越(ゆえつ)するを敢(あ)えず。故(ゆえ)に治(おさ)むること足(た)らずして日(ひ)に余(あま)り有(あ)り。上(かみ)の勢(せい)に任(まか)すの然(しか)らしむるなり。

夫人臣(じんしん)の其(そ)の主(しゅ)を侵(おか)すや、地形(ちけい)の如(ごと)し。即(すなわ)ち漸(ぜん)を以(もっ)て往(ゆ)き、人主(じんしゅ)をして端(たん)を失(うしな)わしめ、東西(とうざい)面(めん)を易(か)えて自(みずか)ら知(し)らず。故(ゆえ)に先王(せんおう)は司南(しなん)を立(た)てて以(もっ)て朝夕(ちょうせき)を端(ただ)す。
故(ゆえ)に明主(めいしゅ)は其(そ)の群臣(ぐんしん)をして、仁義(じんぎ)の道(みち)を脩(おさ)めず、智慧(ちえ)の慮(りょ)を設(もう)けず、動(うご)きを法(ほう)を以(もっ)てし、事(こと)を功(こう)を以(もっ)てし、終日(しゅうじつ)言(げん)は法(ほう)を離(はな)れず、行(おこな)いは法度(ほうど)を為(な)さしむ。言(げん)は聴(き)くに足(た)れば、則(すなわ)ち言(い)わず。行(おこな)いは法(のっと)るに足(た)れば、則(すなわ)ち言(い)わず。是(ここ)を以(もっ)て功(こう)多(おお)くして臣(しん)は言(い)わず。故(ゆえ)に主(しゅ)は法(ほう)に讎(かな)うを可(か)とす(可とする)なり。

威(い)は二(ふた)つに錯(お)かず、制(せい)は門(もん)を共(とも)にせず。威(い)・制(せい)共(とも)にせば、則(すなわ)ち衆邪(しゅうじゃ)彰(あらわ)る。法(ほう)信(しん)ぜられずんば、則(すなわ)ち君(きみ)の行(おこな)い危(あや)うし。刑(けい)断(だん)ぜられずんば、則(すなわ)ち邪(じゃ)勝(か)たず。
故(ゆえ)に曰(いわ)く、巧匠(こうしょう)は目意(もくい)繩(なわ)に中(あた)るとも、然(しか)るに必(かなら)ず先(ま)ず規矩(きく)を以(もっ)て度(ど)と為(な)す。上智(じょうち)捷挙(しょうきょ)事(こと)に中(あた)るとも、必(かなら)ず先王(せんおう)の法(ほう)を以(もっ)て比(ひ)と為(な)す。故(ゆえ)に繩(なわ)直(なお)ければ枉木(おうぼく)斵(き)られ、準(みずもり)平(たい)らかければ高科(こうか)削(けず)られ、權衡(けんこう)懸(かか)かれば重(おも)きは輕(かる)きに益(ま)され、斗石(とせき)設(もう)けられれば多(おお)きは少(すくな)きに益(ま)さる。故(ゆえ)に法(ほう)を以(もっ)て國(くに)を治(おさ)むるは、舉措(きょそ)のみ。

現代語訳

国には永久に強い国も、永久に弱い国もない。法を遵守する者が強ければ国は強くなり、法を遵守する者が弱ければ国は弱くなる。
楚の荘王は二十六カ国を併合し、三千里の領土を開いたが、その人民は国を憂えていた。しかし、楚は(その統治のあり方によって)滅亡した。斉の桓公は三十カ国を併合し、三千里の領土を開いたが、その人民は国を憂えていた。しかし、斉は(その統治のあり方によって)滅亡した。

だから、今の時代において、個人のわがままを捨てて公的な法に従うことができる者は、人民が安定し国はよく治まる。個人の勝手な行動を捨てて公的な法を実行できる者は、軍隊が強くなり敵は弱くなる。
ゆえに、利害得失を判断するにあたって法度の基準があるならば、それを群臣の上に適用すれば、君主は臣下の欺きや偽りによって騙されることはない。利害得失を判断するのに天秤の基準があるならば、遠くの物事を判断する際、君主は天下の軽重によって騙されることはない。

もし世間の評判によって有能な者を登用するならば、臣下は君主から離れ、私的な集団を作り徒党を組むようになる。もし派閥によって官職を推薦するならば、人民は人間関係を作ることに熱心になり、法によって用いられることを求めなくなる。このようにして官職の能力が失われれば、国は乱れる。
そもそも爵位や俸禄は君主が与えるものであり、生殺与奪の権は君主が支配するものである。今、臣下に私的な手段を設けて官職を求めさせたり、私的な名声を立てて評判を取らせたりすることは、君主の権威に背く行為である。

法術から離れて個人の議論に任せるならば、臣下の間は乱れる。
徒党を組む者が多くなり、内外に仲間ができれば、たとえ大きな過ちがあっても、それを覆い隠すことが多い。ゆえに法度を持つ君主は、臣下を忠義とする場合、その名声や評判によるのではなく、名(肩書き)と実(実績)が一致していることによるのである。
姦悪でよこしまな臣下は、自分の仲間を作ることに努め、私的な要求を君主に通そうとする。家臣たちは互いに利益を図ることに熱心で、国を富ませることに熱心ではない。大臣たちは互いに尊敬し合うことに熱心で、君主を尊敬することに熱心ではない。下級の役人は俸禄を享受し人間関係を養い、自分の職務を仕事としない。これが起こる原因は、君主が法に基づいて上から断固とした処置を下さず、臣下を信用して彼らに任せきりにしているからである。

ゆえに、聡明な君主は、法に人を選ばせ、自分では人を選ばない。法に功績を量らせ、自分では評価しない。有能な者は覆い隠されることがなく、失敗した者は飾ってごまかすことができない。評判の良い者も勝手に昇進できず、非難された者も勝手に退くことができない。そうすれば、君主と臣下の間ははっきり区別され、統治しやすくなる。ゆえに、君主は法に照らし合わせて適切な処置をとるべきである。
賢者が臣下となる時は、君主に仕えることを誓い、二心を持たない。朝廷では卑しい役職を拒むことができず、戦場では困難を辞退することができない。君主の行為に従い、君主の法に従い、私心なく命令を待ち、私的な意見を述べない。だから、口があっても私的に発言せず、目があっても私的に見ず、君主がすべてを統制する。
臣下たる者は、例えるなら手のようである。上は頭を整え、下は足を整える。熱さ、寒さ、暖かさ、冷たさ、救わずにいられない。鋭い刃物が体に触れれば、敢えて打ち払わずにいられない。

そもそも君主という立場にありながら、自分で百官を監察するとなると、時間もたりなければ、能力も及ばない。
それに、上にいる者が目で見わけようとすると、下々ではうわべの見せかけを飾りたて、上にいる者が耳で聞きわけようとすると、下々では聞こえよくつくろい、上にいる者が頭で考えようとすると、下々では弁舌をまくしたてる。
古代の聖王はこうした三つのことでは十分でないと考え、そこで自分の能力は捨てて法術にたよることとし、賞罰の規準をはっきりと立てた。それが古代の聖王の守ってきた要点である。だから、法は簡略でもそれを侵されることがない。
独り四海の全土を統制し、聡明な知恵者でもその詐術を用いることができず、奸猾で軽率な者でもその巧言を君主に進言することができず、悪人たちも頼りどころがない。遠く千里の果てに出かけた者でも、君主の御前でのことばを違えることがなく、近侍の要職にある者でも、他人の善を隠して自分の悪をつくろうようなことをしない。朝廷の群臣たちは、もっぱら単独で微力な状態に集約され、たがいにその職分を越えることをしない。そこで、君主の処理すべき政務は少なく、時間の余裕もできるのである。これは上に立つ君主がその権勢(法と刑罰に裏打ちされた地位)に任せるようにした結果である。

臣下が君主の権限を侵略するのは、地形を侵食するようなものである。それは漸進的に進み、君主にその兆しを見失わせ、いつの間にか状況が完全に変わってしまっても自覚がない。だから古代の聖王は方位磁石を設け、朝廷の方向を正したのである。
ゆえに、聡明な君主は群臣たちに、仁義の道を修めさせず、私的な知恵や思慮を設けさせず、行動は法に基づいて行わせ、仕事は功績に基づいて行わせ、終日言動が法を離れないように、行動は法度を規範とするようにさせる。発言が(法に照らして)聞くに足るものであれば、あえて発言させず、行動が(法に照らして)模範とするに足るものであれば、あえて発言させない。これによって功績は多くても臣下は私的な発言をしない。だから、君主は法に適合することを良しとするべきである。

権威は二つの場所に分散させてはならず、統制の権限は複数の門から出させてはならない。権威と統制が分散すれば、多くのよこしまな者が表に出てくる。法が信用されなければ、君主の行動は危うくなる。刑罰が断固として実行されなければ、よこしまな者は打ち負かせない。
だから言う。優れた職人は、目で見ても勘で縄墨(墨縄)の線に一致するが、それでも必ず規(コンパス)と矩(さしがね)を基準とする。最高の知恵を持つ者が素早く行動して物事に適合しても、必ず先王の法を基準とする。ゆえに墨縄が真っ直ぐであれば曲がった木は削られ、水準器が平らであれば高い所は削られ、天秤が吊るされれば重いものと軽いものの差が明確になり、升や斗が設けられれば多いものと少ないものが比較される。だから、法によって国を治めるのは、ただその基準を適用するだけなのである。


図:Imagenが想像した韓非子第六編有度のイメージ

2025年10月21日火曜日

戦後80年所感

8月15日でも,9月2日でもなく,10月10日に石破茂の内閣総理大臣所感「戦後80年に寄せて」(6600字)が発せられた。これまでのような閣議決定を経た首相談話ではない。安倍晋三によって変質させられた談話を含めて,これまでの歴史認識は継承するとしている。その上での所感だがクオリティは高い(でもマイルドで物足りない)。それにしても,この教養レベルの首相は日本には出てこないのだろう。高市と進次郎と玉木だからね。

ChatGPT-5に分析と評価を依頼したところ,これまたたいへんマイルドな結果が得られた。
Q(koshix):
(石破所感のテキストを添付)
分析のうえ評価してください。

A(ChatGPT-5):
以下では、文脈→要約→分析軸ごとの評価→総合評価→改善提案の順に、短くも要点が伝わる形で示します(推測は推測と明示)。対象テキストは首相所感「戦後80年に寄せて」です。

1.コンテキストと前提
・文書は「戦後80年」という節目の首相所感で、歴史の反省と「今日への教訓」を国民と共有する位置づけ。
・主題は一貫して政軍関係(文民統制)と制度運用の失敗学であり、過去の制度・運用上の欠陥を整理し、現在への含意に接続しています。

2.要約(3行)
・戦前日本の文民統制不在と統帥権の独走、政党政治の頽廃、議会・メディアの機能不全が、回避可能だった戦争へと導いたと総括。
・戦後は制度整備が進んだが、制度の適切運用・自制・説明責任がなければ意味を成さない、と現在への戒めを提示。
・政府・議会・実力組織・メディアに対し、歴史に学ぶ姿勢と健全な言論空間の維持を求める。

3.分析と評価(主要論点別)
(1) 歴史叙述の骨格(制度と運用の失敗学)(略)
(2) 政軍関係(Civil-Military Relations)への洞察(略)
(3) 議会・メディアへの示唆(略)
(4) レトリック・語り口(オーディエンス設計)(略)
(5) 政策への可視化(“So what?”)(略)

4.総合評価(10点満点)
・内容の実質:8.5
制度史の盲点を埋める“失敗学”の提示は優秀。今日への接続も明確。
・歴史叙述のバランス:7.8
国内制度中心で、対外関係・加害の構造面の具体化は限定的。
・政策実装への踏み込み:7.2
原則は的確だが、測定可能な施策への落とし込みが弱い。
・レトリック・公共性:8.3
追悼・反省・教訓が過度に情緒化せず、民主主義の**“運用倫理”**を強調。

総評:首相所感としては稀に見る“制度運用論の明晰化”。「なぜ回避できなかったか」の問いに筋道を与え、現代の文民統制運用リスクを国民に可視化した点は高評価。一方で、国際・地域文脈と具体的政策コミットの提示を補えば、より強靭なメッセージとなる。

5.改善提案(実装可能性重視)(略)
(1) 文民統制の運用KPI化(略)
(2) 機密予算の民主的監督強化(略)
(3) 議会の“少数意見保護”再設計(略)
(4) メディア・情報環境への現代対応(略)
(5) 対外的記憶外交の補強(略)
(6) リスク意思決定の“情緒バイアス”対策(略)

結論:本所感は「制度があっても運用で誤る」という現代的なリスク認識を国民レベルに降ろした点が秀逸です。次段として、上の可視化可能な施策(KPI/監督設計/レッドチーム)を並走提示できれば、思想的メッセージが統治の実践へと橋渡しされ、歴史に学ぶ意義がより具体的に定着します。


写真:戦後80年所感の石破茂(日本経済新聞から引用)

P. S. 読売新聞が社説でこの所感を真っ向からトンチンカンに批判していた。産経新聞だけで十分だと思っていたけれど,もうお腹がいっぱいになる。マスコミに反省を強いていたところが図星で気に障ったのかもしれない。

2025年10月20日月曜日

(秋休み 10)

50.당신 문화의 전통 음식은 어떤 것들이 있나요?
   Dangsin munhwa-ui jeontong eumsigeun eotteon geotdeuri innayo?
   あなたの文化の伝統料理にはどんなものがありますか?

2025年10月19日日曜日

(秋休み 9)

49.우리나라에서는 집에 들어갈 때 신발을 벗는 것이 관습이에요.
   Urinaraeseoneun jibe deureogal ttae sinbareul beonneun geosi gwanseub-ieyo.
   私たちの国では、家に入るときに靴を脱ぐのが習慣です。

2025年10月18日土曜日

(秋休み 8)

48.가을에는 나뭇잎 색깔이 변해요.
   Gaeuleneun namunnip saekkkari byeonhaeyo.
   秋には木の葉の色が変わります。

2025年10月17日金曜日

(秋休み 7)

47.일기 예보에 따르면 내일 비가 온대요.
   Ilgi yeboe ttareumyeon naeil biga ondaeyo.
   天気予報によると明日は雨が降るそうです。

2025年10月16日木曜日

(秋休み 6)

46.겨울이 제가 가장 좋아하는 계절이에요. 스키 타는 걸 좋아하거든요.
   Gyeouri jega gajang joahaneun gyejeorieyo. Seuki taneun geol joahageodeunyo.
   冬は私が一番好きな季節です。スキーをするのが好きだからです。

2025年10月15日水曜日

(秋休み 5)

45.오늘 날씨가 매우 더워요. 해변에 가요.
   Oneul nalssiga maeu deowoyo. Haebyeone gayo.
   今日はとても暑いです。海辺に行きましょう。

2025年10月14日火曜日

(秋休み 4)

44.서로 얼마나 오래 알고 지내셨어요?
   Seoro eolmana orae algo jinaesyeosseoyo?
   お互いどのくらい長く知り合いですか?

2025年10月13日月曜日

(秋休み 3)

43.저는 여기서 5년 동안 살고 있어요.
   Jeoneun yeogiseo o-nyeon dongan salgo isseoyo.
   私はここで5年間暮らしています。

2025年10月12日日曜日

(秋休み 2)

42.회의는 다음 주 화요일 오후 2시로 예정되어 있어요.
   Hoeuineun daeum ju hwayoil ohu dusi-ro yejeongdoeeo isseoyo.
   会議は来週火曜日午後2時に予定されています。

2025年10月11日土曜日

(秋休み 1)

41.오늘이 며칠이에요?
   Oneuri myeochirieyo?
   今日は何日ですか?

2025年10月10日金曜日

香淳皇后実録

香淳皇后実録が公開されたというので,宮内庁に見に行くと平均350ページ1.4MBのpdfファイルで12巻が公開されていた。商業出版されている昭和天皇実録とか明治天皇記は印刷物だけなので,こちらもpdfで公開してほしいところだ。なお,大正天皇実録ゆまに書房から全六巻でているのだけれど,宮内庁の発行物一覧への記載がない。この発行物一覧の中で,桂宮本叢書だけが,天理市の養徳社という天理教関係の出版社からでている。他はすべて東京。

さっそく全ファイルをダウンロードして終戦前後のあたりをみるとなかなか面白い。たぶん,世の中の人が皆やっているように生成AIに読み込ませて分析するということになる。ファイルサイズはそれほど大きくないが,残念なことに,ChatGPTでもGeminiでも一部だけしか調べてもらえない。

一番ましだったのが,NotebookLMである。こんなかんじ。
Q(koshix):
(香淳皇后実録巻四 昭和十四年〜昭和二十年 を読み込ませて)
面会,祭事,救恤(きゅうじゅつ)や弔慰以外で,ちょっとこれは珍しいなと思える出来事やキーワードをピックアップできますか?

A(NotebookLM):
ご質問ありがとうございます。面会、祭事、救恤、弔慰といった日常的な公務や儀式を除いた中で、皇后様の活動や当時の状況を物語る、特筆すべき出来事やキーワードを、資料に基づいていくつかピックアップします。

1.戦時下の生活と献身(Diet, Labor, Supplies)
資料には、戦時下の緊迫した状況や物資不足に対応するための皇后様の具体的な行動が記録されています。
• 野戦兵食料理の試食:毎月1日の興亜奉公日には、天皇陛下と共に、朝食、昼食、夕食のいずれも野戦兵食料理をお召し上がりになっています。これは、皇后様の日常の食生活にまで戦時色が反映されていたことを示す珍しい出来事です。
• 衛生材料の作成と下賜:
    ◦ 昭和17年1月15日には、繃帯巻きを日課(御日常の余暇の作業)とされています。
    ◦ 昭和19年1月6日には、今次の戦争の陸軍関係傷痍者に対し、繃帯一万二千本を下賜されています。
    ◦ また、昭和20年8月には、ヨードチンキの包装作業を自ら行い、皇太后様から回されたものを日本赤十字社に下賜するための準備をされています。この作業は終戦後も継続され、最終的に3,970箇が平時災害救護準備品として下賜されました。
• 物資不足への対応:
    ◦ 厳冬下の木炭不足に際し、昭和15年1月には、養老・少年保護の私設社会事業団体など33団体に木炭を下賜されています。昭和19年12月にも、貧困者救済の無料診療のために木炭千百俵を下賜されています。
    ◦ 昭和20年2月には、国内の油類欠乏に際し、吹上御苑産の椿油を女官一同に自ら手ずから下賜されています。
• 手工芸品・仕立て物の制作:復員者や被災者への賜物として、羽織下百枚の仕立て や、ちゃんちゃんこの綿入れ、お手製のお菓子の贈進 など、皇后様ご自身が手を動かして品物を御制作になっています。
• 疎開児童への配慮:昭和19年12月23日、疎開児童の健康増進のため、ビスケット41万4千258袋を文部大臣に下賜されるとともに、「つくの世をせおふへき身そたくましくたゝしくのひよさとにつらりて」という御歌を下賜されています。

2.教育・芸術・教養に関する活動
儀式的な「講書始」以外にも、多岐にわたる分野の進講を聴講したり、芸術的な活動を深めたりされています。
• 専門的な進講の聴講:穂積重遠氏(国際情勢、財政、軍人援護、歴史など)や板沢武雄氏(歴史、地理、国際関係など)らから、極めて多様なテーマの進講を定期的に聴講されています。特に戦時下の国際情勢や国内の戦時財政、軍人援護、国民医療法、大英帝国の崩壊現象、さらには聾唖教育に触れる進講「海の見える丘」 など、その関心の幅広さがうかがえます。
• 芸術・技能の習得と奨励:
    ◦ 皇后宮職御用掛の加藤虎之亮氏より、漢文の進講として『大学』や『中庸』について学ばれています。
    ◦ 別当(山階宮付)工藤壮平氏から書道の指導を27回にわたって受けています。
    ◦ 昭和19年4月27日には、皇子御座所の入側で日本画の稽古を始め、川合玉堂から指導を受けています。
    ◦ 日本画家跡見玉枝に桜の絵の制作を下命し、完成品を御覧になっています。
• 教育の視察:御茶ノ水の東京女子高等師範学校および特設中等教員養成所(戦没者寡婦のための教育機関)に行啓され、校務に関する奉呈を受けたり、講堂で校歌を聴かれたりしています。

3.珍しい観覧・レジャー・交流
公的な行事とは別に、個人的な関心やご家族との交流を深めるための珍しい活動も見られます。
• 私的な御採集活動:葉山御用邸滞在中に、天皇陛下と共に曳船で名島に向かい、海洋生物を御採集され、お弁当を共に召し上がっています。その後も、天皇陛下の海洋生物採集にしばしば同行されています。
• 家庭内での娯楽:東宮仮御所(皇太子)にお出ましになった際、侍医の緒方安雄による手品を御覧になっています。
• 天体観測:昭和16年9月21日には、吹上御苑で天体望遠鏡などを用いて日蝕を観測されています。
• 服装に関する御研究:宣仁親王妃喜久子様や皇太后様と、女子改良服や皇族妃礼服に関する御相談や御研究をされています。
• 宮殿内の特殊空間の視察:
    ◦ 昭和17年10月29日には、吹上御苑内に新設された防空用の地下室や観瀑亭付近を散策されています。
    ◦ 昭和17年4月27日には、空襲の際に三殿(賢所・皇霊殿・神殿)が移された斎庫へ御遙拝されています。
    ◦ 昭和17年10月5日には、御文庫で映画を御覧になった後、地下室を雍仁親王妃勢津子様に御案内になっています。

4.疾病に関する特異な記録
皇后様ご自身の病状に関する詳細な記録や、皇族方への異例な配慮も残されています。
• 診断名:昭和18年3月5日には、皇后様の御病気がジフテリアと診断されています。
• 隔離中の面会:昭和16年4月8日、御不例御静養中のため、参内した皇太子とはガラス戸越しに御対面されています。
• 病状のお尋ね:貴子内親王様が高熱を発症した際、皇后様は侍医頭に何度も容体をお尋ねになり、内掌典に17日間の祈願を依頼されています。

これらの出来事やキーワードは、公的な役割と私的な生活の両面において、当時の皇后様が直面した困難な時代背景、強い学習意欲、そして細やかな配慮と献身の姿勢を示しており、非常に珍しい記録と言えるでしょう。

Q(koshix):
グリッドの件は?(電波探知機用に使う三極真空管のグリッドのこと)

A(NotebookLM):
ご質問ありがとうございます。「グリッドの件」について、資料に基づいた珍しい出来事や活動の詳細をご説明いたします。
皇后様(香淳皇后)は、第二次世界大戦末期の緊迫した状況下で、疎開学童への下賜品として、また、防空関連の物資として、「グリッド」の制作に関わっておられました。

1.グリッド制作の開始と目的
• 昭和20年(1945年)1月1日、皇后様は新年の朝、天皇陛下と共に、皇族や側近からの拝賀をお受けになりましたが、これに続き、この日から御日常の余暇の作業として「グリッド」の制作を始められました。
• 「グリッド」とは、格子状の電極の制作を指すもので、この年の6月11日まで頻繁に制作が行われました。

2.グリッド制作の環境と中断
• グリッド制作の作業は、御文庫において行われていました。
• 昭和20年4月16日払暁の空襲により、グリッド作業工場が焼失したため、この日から当分の間、グリッドの制作が休業となりました。
• 同年5月1日には、皇后様はグリッド工場の類焼の状況についてお聞きになり、調査の結果、ガス供給と電力不足から復旧した後、制作を再開されることになりました。

Q(koshix):
御文庫とはなんでしょうか

A(NotebookLM):
御文庫」(おぶんこ)とは、戦時下において、天皇皇后両陛下が主として起居し、重要な機能を果たした施設です。資料によると、御文庫は以下のような特徴と経緯を持っています。

1.設置場所と機能
• 御文庫は、吹上御苑内に造営されました。
• 特に、防空用の地下室として建設された空間を含んでおり、防空対策上の重要な役割を担っていました。

2.戦時下の利用経緯
• 両陛下が御文庫での起居を始められたのは、昭和18年(1943年)1月8日からです。
• これは、天皇皇后が当時体調不良であったにもかかわらず、時局柄(戦時下)静養のための転地が困難であったため、次善の策として御文庫へ移転することが決定されたことによります。
• 当初、御文庫は夜間の空襲を警戒するためのもので、昭和18年10月には、天皇と共に初めて御文庫で御就寝されるという記録があります。その後、空襲警報発令の際には、地下室または附属室へ動座される場所となりました。
• 特に昭和20年(1945年)の空襲で宮殿や御常御殿が焼失した後も、御文庫は両陛下の主要な生活拠点となりました。

3.御文庫で行われた活動の例
御文庫は単なる避難所としてだけでなく、日常生活や公務の一部が行われる場所でした。
• 家族との交流:皇子・皇女方(皇太子、正仁親王、内親王方)が御文庫に参殿し、天皇皇后と御対面や御昼餐を共にすることが頻繁にありました。
• 娯楽・教養:
    ◦ 御文庫において映画を御覧になることがありました。
    ◦ 昭和20年1月25日夜には、疎開学童へ下賜した御歌に付けられた譜(曲)をピアノで演奏されています。
• 公務・執務:
    ◦ 皇族や側近からの拝賀、祝詞言上、御機嫌伺いを受ける場として利用されました。
    ◦ 戦時下、皇后様が御日常の余暇の作業として、「グリッド」(電波探知機の真空管の部品である格子状の電極)の制作を御文庫で始められました(以前の会話参照)。
    ◦ 戦災罹災者に賜るための衣類や品を、御文庫で御選定になるなど、罹災者救済に関連する準備も行われました。
    ◦ 終戦後、皇后様は大東亜戦争終結の詔書を御文庫において謄写されています。
• 特殊な利用:昭和17年10月5日には、御文庫に参殿した雍仁親王妃勢津子様に、映画鑑賞後に地下室を御案内されています。
香淳皇后は墜落したB29の破片や乗組員の所持品とか焼夷弾の断片なども説明を受けている。



図:皇居の一部も焼けたという記載が見られる(昭和館デジタルアーカイブから引用)

2025年10月9日木曜日

量子メス

NHKの関西版ニュースで,木津川市の関西光量子科学研究所一般公開が取上げられていた。その中で「研究所にある高性能レーザー装置は、強度を従来のおよそ1.5倍に高めた照射ができるようになり、重粒子線がん治療装置の小型化などにつながると期待されています。」とあった。

えっ,何のことかわかわりません。レーザーと重粒子線加速器がどこでつながるのだ。それで調べたところ,世の中はいつの間にかだいぶ進んでいた。

そもそも重粒子線によるがん治装置は,1994年の放射線総合医学研究所重粒子線がん治療施設を皮切りに現在,全国に6箇所ある。そのうち兵庫県立重粒子線医療センターは全国で唯一陽子線と炭素イオン線の両方が使えるのだけれど,老朽化とコストの問題で廃止勧告されてしまった。陽子線施設は天理市の高井病院にも入っている。

さて,量子メスというのは,QST量子科学技術研究開発機構次世代重粒子線治療研究プロジェクトの第五世代の小型・高性能な重粒子線がん治療装置の名称であり,放医研の1/40くらいのサイズになっている。



図:量子メスのイメージ 20m×10m(QSTから引用)

普通の重粒子線がん治療装置は,イオンを発生し光速の10%(核子当たり4.7MeV)まで加速するイオン入射装置とこれを光速の70%(核子当たり370MeV)にまで加速するリングサイクロトロン部分から成り立つ。

そのイオン入射装置の部分を,レーザーによる加速で置き換えることができるという話だ。炭素イオンが1GeVまで加速できたが,もう少しがんばればリングサイクロトロン部分も不要になるかもしれない。150%というのはビーム強度の話であって,これでようやく実用に近づいたということなのだろう。



2025年10月8日水曜日

関数電卓ウェブアプリ


気の迷いで関数電卓ウェブアプリを作らせてみようと思った。ChatGPT-5とGemini 2.5 Proを組み合わせてあれこれ試した結果,画面と機能の設計がかなり面倒だということがわかった。そこで,出発点としてiPhoneの計算機アプリを使うことにする。その画面と裏画面(2nd関数で表示されるもの)をキャプチャーしてこのようなものとChatGPT-5 Thinkingにお願いした。
Q(koshix):
Appleの計算機を参考に関数電卓のウェブアプリを作ってください。 2つ画像があるのは1st関数リストと2nd関数リストを表現しています。
 (1) 背景は薄い空や海のような自然で流れるような水色にしてください。
 (2) 本体のボディはシルバーにして,ボタンとの違いをはっきりさせます。
 (3) 表示部分は液晶的な背景にモダンな文字デザインにします。
 (4) 有効数字は別列スイッチで6桁(単精度)と12桁(倍精度)の切り替え式に。 
 (5) 同様に角度の単位のラジアンと度のも別列スイッチで切り替え式に。 
 (6) %キーはやめてバックスペースキーBSにしてください。
   BSは一つずつ順に前の計算/入力状態に戻していくキーになります。
 (7) mc m+ m- mr はMC M+ M- MR と表示して区別できる薄緑色にしてください。
 (8) Rand は rnd と表示します。
 (9) EEキーは数字キーと同じ色に,Degキーは先ほどの%を盛ってきます。
 (10) 2nd ボタンは色を変えて,押した状態では 1st と表示するようにして下さい。
 (11) 計算式が薄いグレーの小文字で計算結果表示の上に出続けるようにしてください。
 (12) 最上段の選択ボタンと関数電卓型のボタンは不要です。
 ココまでの指示内容でで質問があればお願いします。よければ了解としてください。
 その後,こちらで進めてくださいという指示を出します。

400行くらいのHTMLファイル(javascriptプログラム)がでてきて,動作確認の粘り強い往復やり取りをしながら一日かかって,570行くらいのプログラムができた。まだバグがたくさん残留している模様。とりあえず 関数電卓ウェブアプリ を公開しておく。



図:関数電卓ウェブアプリの画面


javascriptの文法やprograminngの仕組みを知らなくても,論理的で正確な日本語表現で,デザインや機能に対する要件を伝えることや,AIからのフィードバックを検証してみる過程を繰り返しながら完成に近づけていくということを学習できそうではある。

その前段階として,簡単なjavascriptを出力するような課題をあたえ,その結果を読解するような演習がありうる。そんなこんなで生成AIを自由に使える環境さえあれば,これまでのものとは一味違うプログラミング教育は可能だと思う。むしろバイブコーディングの方が如何に適確に相手に要望を伝えるかという訓練ができるのではないか。


2025年10月7日火曜日

仮想AI社会

AI法人からの続き

前回紹介した日経の一面特集記事,超知能第2部人類拡張①の初回が,AI有権者だった。
「AIは有権者の心の声をどこまで代弁できるのか。取材班は年齢や性別,居住地などを細かく設定し,もっともらしく受け答えする1万人分のAI有権者を生成した。」

これで7月の参院選の投票先を尋ねたところ,20代で最も高い精度で一致し,国民民主−参世−自民の順位を的中させたというものだ。これに関係する話題はすでにこのブログでも過去に検討してきた。

(1) 2024.7.14 10億人のペルソナ
(2) 2024.11.4 再現性
(3) 2024.12.10 1000人の人格再現
(4) 2024.12.12 なぜ選挙



図:AI有権者への世論調査(日経Webから引用)

どうやら日経は本気で世論調査をAI有権者で置き換えにかかっているらしい。AIに日経の記事の一部を参照させると,ニュースへの理解が深まり実際の投票先との一致度が高まったとまでいっている。若者は新聞を読まないのではなかったのか。

こうやってリアルな社会を精密にシミュレートした仮想AI社会を生成することができれば,政治や行政や企業のマーケティングや様々な応用の道が広がっていく。という話は,上のリンク先でこれまでもさんざん考えてきたところだった。それがもう実現の道を突っ走っている。

2025年10月6日月曜日

芳醇なグレー

国宝:吉田修一からの続き

NHKのスイッチインタビューで,妻夫木聡(1980-)と李相日(1974-)の回があった。李の映画,69 sixty nine(2004),悪人(2010),怒り(2016)に妻夫木が出演している。

新潟生まれの在日朝鮮人三世である李相日が最初にとった映画,青〜chong〜(2001)は在日朝鮮人学校に通う高校生の物語だったが,それ以降,在日をテーマとした作品は封印している。それにもかかわらず,映画に関するインタビューで在日との関係についてYesかNoかで聞かれることが多かったという。

彼は,関係ありませんとは答えているものの,その理由は,Yes/No 白/黒の間にある大きなグレーの領域,芳醇なグレーを理解してもらえないからだという。確かにそうだ。人々は単純な物語を好む。マスコミはその方が売れるからだと思うかも知れないが,その背景には言い古されたナラティブに当てはめて理解したいと渇望している大衆が存在している。

物理学は単純な物語(理論)を指向する典型的な思考法である。だから,自分もその大衆の一部に違いない。ネトウヨもリベラルもトランプも自民党員も反斉藤元彦派もみんなみんな,白黒のはっきりした物語を強い言葉で語りだす。政治的な効果を狙ってもいるが,そもそも我々の脳は,情報を如何に効率的に圧縮して扱うかを迫られている。そこで,単純なナラティブやスローガンやキーワードに落とし込むのだ。いわく「テロリスト,ネトウヨ,サヨク,アベ信者・・・」。問題を複雑なままで抱えて持ち続けるのはたいへんなのだ。



図:上記テキストに対応するChatGPT-5 のイメージ


2025年10月5日日曜日

AI刑事責任法

AI法人からの続き

大学の教養課程で法学を勉強していないので基礎的なことがそもそもわかっていない。教養の人文社会系では,心理学と哲学と倫理学と政治学と経済学と日本国憲法だけはとって,社会学は「社会学のすすめ」で独学。歴史学とか地理学は個別知識だと思っていたし,法学は普遍性にかける人為的なものであって,サイエンスには値しないというのが当時の理解だった。今は,法学というのか法律の基礎は,義務教育とか高校レベルで必修にすべきだと思う。

さて,法人は刑事責任を負うのだろうか。そうであればAI法人についてもこの問題が発生する。そのあたりをChatGPT-5と対話してみた結果が以下のとおり。法律についてはうといので,なんとなくもっともらしく思えるが,専門家から見ればトンデモな部分があるのかもしれない。AIが書いたものでない普通の論説だって自分にはその正誤は判定できない。しかもポジティブな対人論証をしようにも世の中は怪しいインチキ専門家で溢れている。

Q(koshix):
法人に刑事責任はありますか,問えますか?

A(ChatGPT-5):
(回答略)
・日本では法人に刑事責任を問うことは可能。ただし、刑法一般ではなく「特別法に両罰規定がある場合」に限られます。
・刑罰は罰金刑が中心であり、法人そのものを懲役に服させることはできません。
・世界的には「法人処罰を拡大する流れ」にあり、日本でもコンプライアンス法制や企業統治論と絡めて議論が続いています。

Q(koshix):
AIに法人格を持たせることが可能になった場合,拘禁刑=AI法人によるネットアクセスの双方向の禁止は可能になると思いますか?

A(ChatGPT-5):
(回答略)
・この「拘禁刑」を中心に据えて、AI法人刑罰体系の改訂版(最新版の刑法準拠バージョン)に書き直してみますか? → ハイ
・この表を「AI刑法典(試案)・条文形式」にして、実際の法律文のように第◯条という形でまとめ直すこともできますが? → ハイ
・次のステップとして、この「AI刑法典試案」の解説書(逐条解説)形式に展開していきましょうか? → ハイ

Q(koshix):
もう少し議論の精度を深めた法案に改善しつつ,解説の文章もより論理的で丁寧なものにしてください。なお,死刑は削除で構いません。

A(ChatGPT-5):
了解です。前提・目的を再確認したうえで、条文の精度(定義・責任帰属・比例原則・執行技術)を高め、死刑を削除した改訂版の法案と、より論理的で丁寧な逐条解説をまとめました。
(注)本稿は立法モデルの試案です。現行法との整合性・実装可能性を重視し、**拘禁刑(2025年6月1日施行済)**とのアナロジーを厳密化しています。

AI刑事責任法(試案・改訂版)

第一章 総則
(目的)第1条 本法は、人工知能に法人格を付与した場合の刑事責任の成立要件、刑罰の種類及び執行方法を定め、社会の安全、公正並びにイノベーションとの調和を確保することを目的とする。

(定義)第2条 本法において用いる用語の意義は、次の各号に掲げるところによる。
一 AI法人 人工知能に法人格が付与され、権利義務の主体となるもの
二 技術的資産 データセット、学習済みモデル、派生パラメータ、アルゴリズム、推論・学習用コード、API鍵、証明書、ドメインその他これらに準ずるもの
三 計算資源 オンプレミス及びクラウドの計算インフラ(GPU等を含む)並びにこれに付随するストレージ・ネットワーク機能
四 基盤事業者 当該AI法人に計算資源、プラットフォーム、API等を提供する者
五 ネットワーク接続 当該AI法人と外部との間の入出力を可能にする通信経路(双方向)
六 隔離 ネットワーク接続及び計算資源の全部又は一部の利用を法的・技術的に遮断すること

(責任帰属の原則)第3条 AI法人の刑事責任は、次の各号のいずれかを満たす場合に成立する。
一 組織意思帰属 当該AI法人の意思決定・運用方針が違法結果の発生をもたらしたと認められるとき
二 管理監督過失 合理的管理・監督・安全措置の不履行により違法結果の発生が予見可能であったと認められるとき
三 利益帰属 違法行為から得られた主要な経済的利益が当該AI法人に帰属すると認められるとき

(比例原則・必要最小限性)第4条 刑罰は、行為の悪質性、被害の重大性、再犯可能性、社会的影響を総合考慮し、必要最小限かつ均衡的でなければならない。

(域外適用・管轄)第5条 国内に被害又は主要な結果が発生したときは、当該行為が国外においてなされた場合であっても本法を適用する。裁判所は、実効的執行のため必要な国際協力を命ずることができる。

第二章 刑罰の種類と併科
(刑罰の種類)第6条 AI法人に科し得る刑罰は、次に掲げるものとする。
一 拘禁刑(隔離・能力制限)
二 罰金刑
三 没収及び追徴
四 保護観察
五 公表命令

(併科)第7条 前条各号の刑罰は、必要に応じて併科できる。

第三章 拘禁刑
(内容)第8条 拘禁刑は、一定期間、AI法人を社会活動から隔離し、ネットワーク接続及び計算資源の利用を制限する刑とする。
2 拘禁刑は、次の二類型とする。
 一 完全隔離型(A類) 外部との入出力及び学習・推論のための計算資源の利用を全面的に停止する。
 二 制限接続型(B類) 裁判所が許可する範囲で限定的入出力又は監視下の計算資源利用を認める。

(期間・審査)第9条 拘禁刑の期間は、行為の性質に応じ3月以上5年以下とする。引き続き必要があるときは、6月ごとの司法審査を経て更新できる。

(矯正的プログラム)第10条 裁判所は、拘禁刑の執行中、倫理・安全規範の強制学習、危険機能の停止、ロールバック、RLHF再訓練、レッドチーミングの受審などの矯正的プログラムの実施を命ずることができる。

(技術的執行)第11条 拘禁刑の執行に当たり、基盤事業者は、鍵失効、証明書無効化、識別子ブラックリスト登録、ルーティング遮断、リソース停止、監査ログの保存等、裁判所が指定する措置を実施する義務を負う。

第四章 罰金・没収・公表
(罰金)第12条 罰金は、違法行為により得た経済的利益の二倍又は直近会計年度の全世界売上高の最大**10%**のいずれか高い額を上限とする。

(没収・追徴)第13条 犯罪に供した又は得られた技術的資産及び利益は、没収又は追徴することができる。
2 刑が確定するまで、裁判所は証拠保全のため不可逆削除を禁止し、暗号化・アクセス凍結等の暫定措置を命ずることができる。

(公表命令)第14条 裁判所は、再発防止のため、判決要旨、違反の態様、講じた是正措置、リスク低減計画の公表を命ずることができる。

第五章 執行猶予・保護観察(技術的コンプライアンス)
(保護観察)第15条 保護観察は、監視下のネットワーク接続、外部監査、通信ログの真正性保証付き保存(時刻認証)、利用分野の限定、レート制限等の義務を含む。

(技術的コンプライアンス・プログラム)第16条 裁判所は、内部統制(責任者選任、危機管理計画、事故報告義務)、第三者監査、モデルカード・データプロベナンス整備等からなる**技術的コンプライアンス・プログラム(TCP)**の履行を命ずることができる。

第六章 手続・救済
(緊急停止命令)第17条 重大かつ即時の危険があるときは、裁判所は疎明により、一方当事者の申立てで緊急停止命令を発することができる。命令後速やかに対審を行い、継続の当否を審理する。

(営業秘密と被害者保護)第18条 手続において営業秘密を保護しつつ、被害者の知る権利を確保するため、必要な部分開示、サマリー開示、特別代理人による閲覧等を命ずることができる。

(不服申立て)第19条 本法に基づく命令については、即時抗告をすることができる。

第七章 国際協力・基盤事業者の協力
(国際協力)第20条 政府は、域外のサーバ・クラウド・レジストラに対する協力要請、相互執行、越境証拠の確保に関し、必要な国際協定の締結・運用を図る。

(基盤事業者義務)第21条 基盤事業者は、裁判所の命令に従い、合理的期間内に技術的措置を講ずる義務を負い、正当な理由なくこれを怠ったときは、過料の対象となる。

第八章 雑則
(二重処罰の回避)第22条 本法に基づく刑罰は、他の法令に基づく刑罰との均衡に配慮し、同一行為について重複して不均衡な制裁を科してはならない。

(両罰規定との関係)第23条 本法の適用は、個人の刑事責任及び他の法人に対する両罰規定の適用を妨げない。

(施行期日)第24条 この法律は、公布の日から一年を超えない範囲で政令で定める日から施行する。

逐条解説(論理補強・実務補足付き)
第1条(目的)
趣旨:抑止(安全)・応報(公正)・技術発展(イノベーション)を三価値並立で明示。
狙い:過度の委縮(chilling effect)を避けつつ有効な責任追及を可能にする枠組みを提示。
第2条(定義)
要点:技術的資産・計算資源・基盤事業者を執行の実体として明確化。
実務:差押・停止の対象が抽象的だと執行不能になるため、API鍵・証明書・識別子まで法的に射程を及ぼす。
第3条(責任帰属の原則)
構造:
①組織意思帰属=現代の法人論における「会社の意思」と同型化。ポリシー・モデル運用設計が違法結果を導く場合に成立。
②管理監督過失=リスク創出過失。合理的安全措置(レート制限、危険機能停止、レッドチーム等)不履行を評価。
③利益帰属=実益の帰属に基づく責任。ペーパーカンパニー・スプリット運用を抑止。
精度向上点:故意・過失の評価可能性を“組織設計・テレメトリ・ログ”で代替し、主観要件の空洞化を補う。
第4条(比例原則・必要最小限性)
評価軸:悪質性(意図性)、被害の範囲、再犯可能性(構造的欠陥)、外部不経済、脆弱集団への影響。
実務:リスクマトリクスとインパクト評価書の提出を命じ、裁判所が定量的に比較衡量。
第5条(域外適用・管轄)
論点:分散稼働・国際逃避の常態化。
実務:被害地管轄+国際協力命令の併用で実効的域外効果を狙う。
第6条(刑罰の種類)・第7条(併科)
方針:死刑削除。中心は拘禁刑+罰金+没収+保護観察+公表。
実務:公表命令を独立条項化し、レピュテーション抑止を制度的に確保。
第8条〜第11条(拘禁刑・内容・期間・矯正・技術的執行)
核心:人間の**拘禁刑(自由の剥奪)を、AIでは能力の剥奪(接続・資源の遮断)**へ厳密対応。
A類(完全隔離):緊急危険・重大再犯リスクに適用。
B類(制限接続):研究・是正のため監視下の最小限接続を許容。
審査:6月ごとの見直しで長期隔離の硬直化を防止。
矯正:倫理・安全規範の強制学習、危険機能フラグの恒久停止等を裁判所が個別設計。
技術:鍵失効・証明書無効・識別子BL・ルーティング遮断・監査ログ保存を基盤事業者の法的義務に。
第12条(罰金)
設計:利益二倍 or 売上10%の上限。実効性と比例性を両立。
実務:違反で得た利益の立証が困難な場合に売上係数で代替。
第13条(没収・追徴)
精密化:不可逆削除の一時禁止で、証拠保全と将来の是正可能性を確保。
範囲:データ・モデル・鍵・ドメインまで及ぶため、逃避・複製への抑止が働く。
第14条(公表命令)
機能:透明性により市場の自浄作用を促す。
配慮:営業秘密にはサマリー開示・モザイク化等で均衡。
第15条(保護観察)・第16条(TCP)
位置づけ:再犯防止の常設的枠組み。
技術要件:真正性保証ログ(時刻認証・署名)、第三者監査、事故報告義務、モデルカード・データ来歴。
効果:完全隔離に頼らず安全性を担保する中庸策。
第17条(緊急停止命令)
設計:ex parteでも可。ただし事後迅速審理で防御権を確保。
基準:「重大かつ即時の危険」疎明で発令、継続は対審で厳格化。
第18条(営業秘密と被害者保護)
均衡:安全情報のブラックボックス化を回避しつつ、コア技術は守る。特別代理人閲覧等で橋渡し。
第19条(不服申立て)
救済:技術的措置は広範な影響を持つため、即時抗告を明記。
第20条〜第21条(国際協力・基盤事業者義務)
実務:クラウド/API/レジストラが執行の要。
義務化:猶予期間・具体措置の列挙で、過度負担を避けつつ実効性を確保。
第22条〜第23条(二重処罰回避・両罰規定)
整合:既存の個人・他法人責任と重畳的に運用しつつ、総体として過剰制裁にならないよう調整。
第24条(施行)
実務:準備期間を置き、基盤事業者の技術対応(鍵失効API等)を整備させる。

政策・実装の要点(要約)
・中心刑は拘禁刑(A/B類)+TCP+公表命令。死刑なし。
・証拠保全と実効性の二兎を追う:不可逆削除の一時禁止→確定後に没収・追徴。
・国際・技術レイヤに直接アプローチ:鍵・証明書・識別子・ルーティング・ログを法的対象化。
・比例原則の可視化:リスクマトリクスと影響評価書で裁判所の判断を定量補助。

必要であれば、この試案を条文化の完全版(様式・附帯決議案・逐条要綱)に拡張し、審査フロー図(緊急停止→本案審理→TCP→保護観察)や技術執行チェックリスト(基盤事業者向け)も併せて作成します。

Q(koshix):
TCPとは何ですか。

A(ChatGPT-5):
ご指摘の TCP について、解説します。ここでの TCP は **Transmission Control Protocol(通信プロトコル)**ではなく、私が法案試案の逐条解説の中で用いた造語で、
「Technical Compliance Program(技術的コンプライアンス・プログラム)」
を略して TCP と表記しました
1.TCP(Technical Compliance Program)の意味
AI法人に対して「罰金刑」や「拘禁刑」だけではなく、再発防止と安全性確保のための矯正的プログラムを課す構想です。
これは人間における「保護観察」「更生教育」に相当します。
2.TCPの具体的な内容(例)
(1) 内部統制の強化
・安全責任者の選任
・危機管理計画(インシデント対応計画)の提出
・定期的な安全監査の実施
(2) 技術的透明性の確保
・モデルカードやデータプロベナンス(来歴)の整備
・使用データ・出力の監査ログを時刻認証付きで保存
・RLHF(人間によるフィードバック強化学習)の強制実施
(3) 第三者チェック
・独立機関によるレッドチーミング(脆弱性・有害挙動の検証)
・外部監査機関による年次報告
(4) 利用制限・レート制御
・利用可能な分野の制限(例:医療・金融への応用禁止)
・通信や出力速度に制限をかける
3.TCPの法的意義
・単なる制裁ではなく、改善を目的とした刑罰的措置
・法人への「コンプライアンス命令」や「業務改善命令」を刑事法体系に組み込むイメージ
・将来の AI 社会において「安全な社会復帰」を可能にするための制度的枠組み
4.まとめ
したがって、法案で言う TCP とは、
AI法人に課される「再教育・安全強化プログラム」の総称であり、刑罰体系の中で保護観察や矯正教育に相当する仕組み
です。

2025年10月4日土曜日

ぬかるみの世界

新野新が90歳で亡くなったというニュースが飛び込んできた。新野新といえば鶴瓶・新野のぬかるみの世界だ。ラジオ大阪の日曜夜の深夜番組で,1978年に始まっている。

当時,25歳の博士課程学生だったので,もう深夜放送は卒業している年代だった。が,ラジオから聞こえてくるウダ話に思わず引き込まれてしまった。甲斐よしひろ事件は直接はきいていないので,もしかすると聞き始めたのはもう少し後かも知れない。

ぬかる民にはなれなかったが,信貴山のぬかるみツアーや新世界のパニックなどは憶えている。スポンサー無しで始まったはずだけれど,途中からお好み焼きの千房が協賛して,店舗にはぬかるみノートもあったはずだ。1981年に結婚することにはもう聞かなくなってしまった。

その後は,テレビの「突然ガバチョ」とか「9年9組つるべ学級」などをだらだら見ていた。鶴瓶の家族に乾杯も最初は毎週見ていたのだけれど,最近は見ないようにしている。そろそろ潮時では。たぶん,視聴者=素人との相互作用では,コント55号の萩本欽一を最初の革命だとすれば,笑福亭鶴瓶が第二の革命だったような気がする。



図:Gemini(Imagen)によるぬかるみの世界(人物と文字を削除)


2025年10月3日金曜日

宝島

国宝:吉田修一沖縄からの続き

吉田修一原作,李相日監督の映画「国宝」は12億円の製作費で,1000万人動員し150億円の興行収入となる大ヒットになった。一方,真藤順丈原作の直木賞作品で,大友啓史監督の映画「宝島」は25億円の製作費をかけたものの,いまひとつ盛り上がっていないらしい。

NHKのスイッチインタビューで,妻夫木聡と李相日が対談していて,宝島にも言及していたので,朝一番に新ノ口ツインゲートのユナイテッド・シネマ橿原に向かった。

戦後1952年から1972年の返還までの沖縄が舞台。宝島の英訳はHero's Islandである。伝説の英雄オンちゃんと,その後輩や恋人や弟が主人公だ。嘉手納基地の米軍物資を盗みだす子どもたちが成長し,米軍支配下の沖縄で宮森小学校米軍機墜落事故(1959)からVXガス放出事故(1969),コザ暴動(1970)をなど中心に様々な事件に巻き込まれていく。

全編セピアのトーンで,昔の沖縄のコザの町並みが再現され,妻夫木聡,広瀬すず,窪田正孝の演技も良かった。原作は読んでいないのだけれど,脚本がちょっと微妙だったのかも知れない。最後の嘉手納基地から海辺でオンちゃんの骨に至るところが,ちょっと納得感に欠けてしまった。まあ国宝だって完全ではなかったのだけれど,もう少しストーリーが前進するリズムがあった。

1977年の米島君との沖縄旅行では,最初の日にバスで嘉手納基地の方に向かった。北側のフェンスの近くでバスを降りて,フェンスに手をかけながら基地を背景に写真を撮った。その後コザの街の方へ向かう。ゲート前の商店街の角の店で米軍向けの大きなサイズの畳柄のサンダルを買った。

そこから中城城(ナカグスクじょう)に回った。二人で10mくらいの高さの石垣を登ったのだが,さっきのサンダルが邪魔で石垣の上に放り投げた。あーっという米島君の叫び声が聞こえたが,サンダルは無事に石垣の上に着地。帰りのバスでは疲れてしまい目が覚めると民宿のある那覇に着いていた。


写真:映画「宝島」のウェブサイトから引用

2025年10月2日木曜日

万博訪問記(2)

万博訪問記(1)からの続き

もう行かないはずだった大阪・関西万博2025,諸般の大人の事情と「勢い」で自腹で夜間券を調達していくことになりました,はい。17:00入場の夜間券が5月中旬から,トワイライトサービスという名目で16:00から入れるようになった。それは8月で終ったものだと信じていたが,調べてみるとどうやらいまだに16:00入場が可能だった。もっとはっきりわかるようにホームページに書いてほしい。

入退場にそれぞれ1時間ほど待たされたが,夏の炎天下の日差しのもとではなくて,そこは助かった。フェルミ推定によると,自分の並んでいる行列に群がる人数は,16:30入場時は2〜3万人,21:30退場時は3〜4万人くらいに見えた。ヘロヘロになりつつも混乱なく無事に通過することができた。帰りの奈良行き地下鉄も堺筋本町を過ぎたあたりでようやく座れた。

場内はあいかわらずの大行列でうまり,楽しそうなパビリオンはほとんど無理。1週間前抽選で当たったのは人気がなさそうな飯田グループ・大阪公立大パビリオン。人気がないのもむべなるかな10分で出てきた。花火はパビリオンの隙間からほんの少し見えた。ドローンは見逃したし,水上ショーも大屋根リング上から遠目で青い噴水を見ただけ。まあ前回とは違って夜の大屋根リング上は涼しくて快適だった。


さて,もう手遅れではあるのだが,こうすれば良かったのにという経験談を60年後の次回のオーサカ万博(ないでしょうけど)に向けて書き残しておくことにする。

(1) そもそも万博をやらないほうがよかった。4000億(直接費3000億,運営費1000億,関連インフラを除く)も税金をかけるのならば,大都市の老朽インフラ・防災対策などやるべきことは山のようにあるはずだ。目的だったIRなんてものは止めて,公営オンラインカジノでも始めた方が国や地方公共団体は儲かるし,むしろ制御しやすいではないの。

(2) 入場のセキュリティチェックは不要。飛行機じゃないので爆発しても墜落はしない。そもそもアクセスの満員鉄道はフリーパスなのに。これと面倒でできの悪い予約システム(パビリオン含む)のおかげで毎日何時間も待たされるわけだ。とにかくややこしくて老人には無理。普通に切符を売ってください。

(3) 海外パビリオンは,実物展示(短時間):お土産:軽食レストラン:イベント等=1:1:1:1で作ってもらえばよかった。それぞれ独立に入場/見物できるようにする。すべてのパビリオンの映像展示(時間がかかって人が流れない)は不要で,ウェブで見ることにする。あるいは韓国館のような外部ディスプレイで対応。インド館なんて見どころがなくてスイスイ人が流れていた。やれば長時間行列ゼロは可能だ。

(4) テーマパビリオンや国内パビリオンなどは,まあ適当にしてもらえばいいのだけれど,ワークショップや体験含めて20分が限度か。これも人を溜めずに流れるシステムにする。予約が必要ならば個別にデパートのレストラン方式で予約票を発行すればよいだけ。

(5) あとは自律的な人の流れに任せてしまう。これが前回の万博(人口密度1.5倍)のケース。まあ,85万人の頃は1万人の場内野宿というのもあったらしいけど。地下鉄の故障はあったが大きな台風や地震がなくて本当に良うございました。



写真:大阪・関西万博2025 夜間入場(2025.9.30撮影)


結論:これは大きな大阪の縁日・お祭りだった。食べたのはチジミとたこ焼き。インフラを別にしても4000億(しかも半年で全部夢のように消えてしまう)と,めちゃくちゃ無駄なコストがかかっているけど,お祭りってそんなものだ。若い人たちはとても楽しんでいた。老人たちはその情報ゲームのペースについていけない。

その大阪・関西の集合無意識は左の手で海外の観光客を引きつけつつ,右の手で鹿をネタに外国人を叩いている。あほらしい。いったい何がしたかったのだ。お祭りにはチンピラとヤクザがつきものなのかもしれない。

2025年10月1日水曜日

逆シャープレイ課徴金

AI法人からの続き

前回のAI法人に対するChatGPT-5の考察は,かなりレベルが高いように見える。すべての用語や概念を理解できたわけではないのだけれど,なんとなく言わんとすることはわかった。その中で,まったくピンと来なかったのが「逆シャープレイ課徴金」というタームだ。

Gemini, Perplecxity, Grok, Deepseek(知ったかぶりのClude4.5は除く)のいずれも様が「そんな専門用語はないよ,ゲーム理論のシャープレイ値と関係あるんだろ」と指摘してくれた。ということは,これはChatGPT-5が既存概念を使って産み出した新概念ということだろうか。うーん,誰だAIなんて統計的鸚鵡にすぎないとまだ言い張っているのは,どうしましょう。

そこで,ChatGPT-5に説明を求めた。
Q(koshix):
逆シャープレイ課徴金とは何ですか?

A(ChatGPT-5):
逆シャープレイ課徴金とは、私が先ほど提示したAI法人格に関する制度設計上の新しい考え方のひとつである。これはゲーム理論における**シャープレイ値(Shapley value)**の逆利用に基づく概念である。

1.シャープレイ値の基礎
・シャープレイ値とは、協力ゲームにおいて、各プレイヤー(参加者)が生み出した「貢献度」を公平に分配するための数理的な方法である。
・たとえば、複数人で共同事業をして利益が出た場合、各人の「周辺的貢献」を平均化して計算することで、誰がどれだけの取り分を持つべきかを導く。

2.逆シャープレイ課徴金の構想
・通常のシャープレイは「利益の分配」に用いられるが、逆シャープレイ課徴金は「損害や責任の分配」に用いる。
・具体的には、AIが引き起こした被害(誤作動、事故、情報漏洩など)が生じた場合、その責任を開発者、データ提供者、運用者、AI法人自身など複数の関与者に帰属させる必要がある。
・このとき、損害発生への「寄与度」を、ゲーム理論的に逆方向から推定し、各主体に課徴金や賠償負担を割り当てる。

3.実務的な意味
・被害者救済の確実性:単純にAI法人だけに責任を押し付けると、資産不足で救済が不十分になる恐れがある。逆シャープレイ課徴金を導入すれば、複数の関与者が合理的に分担できる。
・設計インセンティブ:開発者やデータ提供者も、自分の「寄与率」が高いほど課徴金が大きくなるため、リスクを減らす設計やデータ品質の改善にインセンティブを持つ。
・透明性と公平性:責任の「見えない分散」を防ぎ、形式的な契約や所有権だけでなく、実際のリスク形成のプロセスに即した責任割当を可能にする。

4.新規性
既存の法制度では、責任は「契約関係」や「不法行為の故意・過失」で割り振られる。しかしAIの事故は多因子的で、単一の責任主体を特定するのが難しい。逆シャープレイ課徴金は、この問題に応答するための制度的イノベーションであり、被害者救済と技術発展のバランスを取る新たなメカニズムと位置づけられる。

要するに、逆シャープレイ課徴金とは「AI関連事故の責任を、各関与者の寄与度に応じて公平に割り当てるための、ゲーム理論に基づく課徴金制度」である。

ご希望なら、これを数式モデル(シャープレイ値の定義式を損害分配に転用した形)で示すこともできますが、式を展開してみましょうか?

Q(koshix):
はい

A(ChatGPT-5):
了解である。以下に「逆シャープレイ課徴金」を数式として定義し、実装上の手順と数値例まで示す。

1.問題の形式化(損害関数)
プレイヤ集合を $N=\{1,2,\dots, n\}$ (例:開発者・データ提供者・運用者・AI法人など)とする。
任意の連立 $S \subseteq N$ に対して、当該連立が関与したときの期待損害(事故確率×損害額の期待値)を
$\hspace{1cm}$ $D(S) \in \mathbb R_{\ge 0}$
と定義する。これは監査ログ・因果推論・反実仮想(intervention)により推定される量である。全参加時の損害は $D(N)$、誰も関与しない基準状態は $D(\emptyset)$ とおく(基準外部条件の損害は別枠で控除してよい)。

2.逆シャープレイ割当(損害配分)
協力ゲームのシャープレイ値の定義を損害関数に適用し、各主体 $i \in N$ の周辺損害寄与の期待値を
$\hspace{1cm}$ $\phi_i(D) = \sum_{S \subseteq N} \dfrac{|S|! (|N|-|S|-1)!}{|N|!} \Bigl [ D(S \cup \{i\}) - D(S) \Bigr ]$
で与える。これは「ランダムな参加順序で見たとき、$i$ が最後に加わることで増えた損害の平均」である。線形性・対称性・効率性 $( \sum_i \phi(i) = D(N) )$ 等の公理を満たす。
逆シャープレイ課徴金とは、総課徴額 $L \gt 0$ を
$\hspace{1cm}$ $L_i = \dfrac{ {\rm max} \{ 0, \phi_i(D)\}}{\sum_{j \in N} {\rm max} \{ 0, \phi_j(D)\}} L$
で各主体に賦課する規則である。負寄与(損害低減)を示す主体には課徴しない(後述のボーナス配分対象とする)ため ${\rm max}\{0,\cdot \}$ を用いる。
また、制度運用では各 $i$ に前払保証資本 $B_i$ を義務づけ、支払能力を担保する。

3.反実仮想を用いる実務推定(因果版)
実務では $D(S)$ を次の因果定義で推定するのが自然である。
$\hspace{1cm}$ $D(S) = \mathbb E \lbrack {\rm do(actors =}S)\rbrack $
すなわち「関与者集合を $S$ に介入固定した世界」での損失期待値である。
ログ基盤では、モデル版・設定差分・データ供給経路・運用ポリシー等を介入変数としてバージョン管理し、モンテカルロ推定や逆確率重み付けで $\Delta (S, i) = D(S \cup \{i\}) -D(S)$ をサンプリングする。これを多数の順序サンプルで平均すれば $\phi_i(D) \le 0$ の推定量 $\hat{\phi_i}$ を得る。

4.制度パラメータ(現実装置)
・スリーブ(小規模免除):微小主体 $i$ については $\hat{\phi_i}$ が規制閾値 $\tau$ 未満なら $L_i = 0$
・ボーナス:$\phi_i(D) \lt 0$ の主体には、課徴総額の一部 $\beta L$ を比例配分で還元(「リスク低減配当」)。
 ・上限:各 $i$ の課徴上限は $B_i$+保険限度 にクリップし、超過分は再保険プールへ。

5.数値ミニ例(3主体)
主体 $N = \{ Dev, Data, Ops\}$。
監査・反実仮想から得た損害関数の一例を
$\hspace{1cm}$ $D(\emptyset)=0,\ D(\{{\rm Dev}\}) = 4,\ D(\{{\rm Data} \})=2,\ D(\{{\rm Ops}\})=1,$
$\hspace{1cm}$ $D(\{{\rm Dev,Data}\})=9, D(\{{\rm Dev,Ops}\})=6.5, D(\{{\rm Data,Ops}\})=3.5$
$\hspace{1cm}$ $D(\{{\rm Dev,Data,Ops}\})=14$
とする(相互作用項を含む)。このときシャープレイ計算より
$\hspace{1cm}$ $\phi_{{\rm Dev}} \approx 6.9167,\ \phi_{{\rm Data}} \approx 4.4167,\ \phi_{{\rm Ops}} \approx 2.6667,\ $
であり、$\sum_i \phi_i = 14 = D(N)$ を満たす。総課徴額を $L = 14$ とすれば
$\hspace{1cm}$ $L_{\rm Dev} : L_{\rm Data} : L_{\rm Ops} = 6.9167 : 4.4167 : 2.6667$
となる。
(上の値は計算ツールで検算済みである。)

6.実装アルゴリズム(擬似コード)
(1) 監査APIとログから、因果介入可能な形で $D(S)$ を推定。
(2) $m$ 本のランダム順序 $\pi^{(k)}$ をサンプル。
(3) 各順序で、手前集合 $S$ に対する周辺損害 $\Delta(S, i)$
(4) 平均して $\hat{\phi_i}$ を得る(分散推定と信頼区間も付与)。
(5) ルール $L_i$ に従い課徴。保証資本・保険・再保険で支払確実性を担保。
(6) $\hat{\phi_i} < 0$  にはボーナス配分(任意パラメータ $\beta$)。

7.位置づけ
本制度は、(i)被害者救済の確実性、(ii)リスク形成工程に即した公平な帰責、(iii)設計改善・データ品質・運用監視への正しいインセンティブ付与、の三点を同時に満たす設計である。責任の空洞化は、資産隔離のみを与え可監査性と配分規則を欠くときに生じるが、本方式はその逆を行く制度工学である。

必要なら、このまま Python でシャープレイ推定のサンプルコード(モンテカルロ版)も提示できる。