2023年5月6日土曜日

折り紙で3次方程式(1)

代数学の基本定理ガロアのおかげなのかどうかは知らないけれど,5次方程式を代数的に解くための一般公式はないことは誰もがみんな知っている。知らんけど。


(1) 放物線の性質
・放物線$\mathcal{L}$の焦点Fが $\ (b,a)\ $,準線$\ \ell\ $が $\ y=-a\ $のとき,この放物線を$\mathcal{L}(b,a:y)$と書く。例えば,$\mathcal{L}(d,c:x)$ならば,焦点が$\ (d,c)\ $で,準線の式は $\ x=-d\ $になる。
・放物線$\mathcal{L}(b,a:y)$上の点Pを$\ (x,y)\ $とすると,距離FP=$\sqrt{(x-b)^2+(y-a)^2}\ $と,点Pから準線に下ろした垂線の足Hへの距離 PH=$y+a\ $が等しいという性質がある。
・$\mathcal{L}(b,a:y)$の式は,$y=(x-b)^2/4a$,$\mathcal{L}(d,c:x)$の式は,$x=(y-c)^2/4d\ $となる。

(2) 折り紙で放物線の接線を折る
・折り紙上に直交直線座標系をとって,焦点Fと準線$\ \ell\ $を記す。
・準線$\ \ell\ $が焦点Fに重なるように折り紙を折線$\ f\ $で折ると,$\ell\ $上にFの像Gができる。
・折り紙を広げるとFGの中点Qは放物線$\mathcal{L}$上の点であり,かつ折線$\ f\ $上の点になる。
・$f\ $はQを接点とする$\mathcal{L}$の接線となる。また,$f\ $の集合の包絡線が$\mathcal{L}$である。

(3) 3次方程式との関係
・折り紙上に2つの放物線,$\mathcal{L}(b,a:y)$と$\mathcal{L}(d,c:x)$を考える。
・その共通の接線となる折線$\ f\ $が少なくとも1つ(あるいは最大の3つ)存在する。
・折り紙上の直交直線座標系で,折線$\ f\ $が$\ y=t x + s\ $となるとき,傾き$\ t\ $が
2放物線の焦点の座標からなる3次方程式$\ a t^3+b t^2 + c t + d = 0\ $の解に対応する。

(4) その説明
接点の座標をQ$\ (\beta,\alpha)\ $として,$\mathcal{L}(b,a:y)$に接する折線の方程式を考えると,
$y-\alpha = (\beta -b)/2a \cdot (x -\beta)\ $であり,$\alpha = (\beta -b)^2/4a\ $が成り立つ。
$\therefore y = (\beta -b)/2a \cdot x -(\beta -b)(\beta + b)/4a = t x + s$,
$\ \beta\ $を消去して,$s = -(a t^2 + 2 b t)\cdots$①
次に,接点の座標をR$\ (\delta,\gamma)\ $として,$\mathcal{L}(d,c:x)$に接する折線の方程式を考えると,
$x-\delta = (\gamma -c)/2d \cdot (y -\gamma)\ $であり,$\delta = (\gamma -c)^2/4d\ $が成り立つ。
$\therefore x = (\gamma -c)/2d \cdot y -(\gamma -c)(\gamma + c)/4d = y / t  - s / t $,
$\ \gamma\ $を消去して,$s=c + d/t\cdots$②
①②より,$\bm{a t^3+b t^2 + c t + d = 0}$ が導かれた。



[1]折り紙の中の数学(三谷純)
[2]代数方程式の折り紙による解法について(森継修一,中村怜子)
[3]折り紙による五次方程式の解法(西村保三,山本一海)
[4]折り紙の数学(上越教育大学公開講座)

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