(1) 放物線の性質
・放物線$\mathcal{L}$の焦点Fが $\ (b,a)\ $,準線$\ \ell\ $が $\ y=-a\ $のとき,この放物線を$\mathcal{L}(b,a:y)$と書く。例えば,$\mathcal{L}(d,c:x)$ならば,焦点が$\ (d,c)\ $で,準線の式は $\ x=-d\ $になる。
・放物線$\mathcal{L}(b,a:y)$上の点Pを$\ (x,y)\ $とすると,距離FP=$\sqrt{(x-b)^2+(y-a)^2}\ $と,点Pから準線に下ろした垂線の足Hへの距離 PH=$y+a\ $が等しいという性質がある。
・$\mathcal{L}(b,a:y)$の式は,$y=(x-b)^2/4a$,$\mathcal{L}(d,c:x)$の式は,$x=(y-c)^2/4d\ $となる。
(2) 折り紙で放物線の接線を折る
・折り紙上に直交直線座標系をとって,焦点Fと準線$\ \ell\ $を記す。
・準線$\ \ell\ $が焦点Fに重なるように折り紙を折線$\ f\ $で折ると,$\ell\ $上にFの像Gができる。
・折り紙を広げるとFGの中点Qは放物線$\mathcal{L}$上の点であり,かつ折線$\ f\ $上の点になる。
・$f\ $はQを接点とする$\mathcal{L}$の接線となる。また,$f\ $の集合の包絡線が$\mathcal{L}$である。
(3) 3次方程式との関係
・折り紙上に2つの放物線,$\mathcal{L}(b,a:y)$と$\mathcal{L}(d,c:x)$を考える。
・その共通の接線となる折線$\ f\ $が少なくとも1つ(あるいは最大の3つ)存在する。
・折り紙上の直交直線座標系で,折線$\ f\ $が$\ y=t x + s\ $となるとき,傾き$\ t\ $が
2放物線の焦点の座標からなる3次方程式$\ a t^3+b t^2 + c t + d = 0\ $の解に対応する。
(4) その説明
接点の座標をQ$\ (\beta,\alpha)\ $として,$\mathcal{L}(b,a:y)$に接する折線の方程式を考えると,
$y-\alpha = (\beta -b)/2a \cdot (x -\beta)\ $であり,$\alpha = (\beta -b)^2/4a\ $が成り立つ。
$\therefore y = (\beta -b)/2a \cdot x -(\beta -b)(\beta + b)/4a = t x + s$,
$\ \beta\ $を消去して,$s = -(a t^2 + 2 b t)\cdots$①
次に,接点の座標をR$\ (\delta,\gamma)\ $として,$\mathcal{L}(d,c:x)$に接する折線の方程式を考えると,
$x-\delta = (\gamma -c)/2d \cdot (y -\gamma)\ $であり,$\delta = (\gamma -c)^2/4d\ $が成り立つ。
$\therefore x = (\gamma -c)/2d \cdot y -(\gamma -c)(\gamma + c)/4d = y / t - s / t $,
$\ \gamma\ $を消去して,$s=c + d/t\cdots$②
①②より,$\bm{a t^3+b t^2 + c t + d = 0}$ が導かれた。
[1]折り紙の中の数学(三谷純)
[2]代数方程式の折り紙による解法について(森継修一,中村怜子)
[3]折り紙による五次方程式の解法(西村保三,山本一海)
[4]折り紙の数学(上越教育大学公開講座)
[5]Geometric solution of a quintic equation by two-fold origami(J. C. Lucero)
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