連日の熱暑で,干からびかけた奈良公園の鹿がラクダにみえる今日この頃。
WOWOWでデューン砂の惑星の特集をやっていた。原作はフランク・ハーバート(1920-1986)の1965年の作品だ。フランク・ハーバートといえば21世紀潜水艦だったので,ハヤカワ文庫で最初に出版された1973年ごろはまったく関心がなかった。手元にある古書は1982年発行の12刷だったので,たぶん1980年代の中ごろに購入している。読後感は最高で,マイベスト20には確実に入る一冊だ。
特集では,1984年のデヴィッド・リンチ(1946-)監督の「デューン/砂の惑星」,2013年のドキュメンタリー「ホドロフスキーのDUNE」,2021年のドゥニ・ヴィルヌーヴ(1967-)監督の「DUNE/デューン 砂の惑星」が放映された。デヴィッド・リンチ版は日曜洋画劇場でみており,ななかな良かったという印象的がある。このころにハヤカワ文庫版を買ったのかもしれない。
アカデミー賞6部門を受賞した2021年版(2部作の前半だった)は,たしかに美しいのだけれど,デヴィッド・リンチ版の怪しいおどろおどろしさがなく,完全除菌されたような印象だ。キャストも1984年版のほうがよかった。もちろん,1984年版のSFXなど今からみればとても残念な状態ではあった。
WOWOWの特集の中で一番よかったのは,チリに生まれたロシア系ユダヤ人アレハンドロ・ホドロフスキー(1929-)のDUNEだった。1975年にDUNEの制作に着手し,最高のスタッフと出演者を集めながら,
メカデザインにSF画家のクリス・フォス,クリーチャーとキャラクターのデザインと絵コンテにバンド・デシネのカリスマ作家メビウス,特撮担当にダン・オバノン,悪役ハルコンネン男爵の城のデザインにH・R・ギーガーを起用。キャストもハルコンネン役にオーソン・ウェルズ,皇帝役にはサルバドール・ダリ,他にもミック・ジャガーやデビッド・キャラダインなどがキャスティングされた。また,音楽をピンク・フロイドやマグマが製作するなど,各界から一流のメンバーが集められた(Wikipedia から引用)。
1年余りで挫折してしまう。その理由は,ホドロフスキーのシュールレアリスムの芸術性がハリウッドに恐怖心を抱かせたということらしい。プロモーション用の分厚い絵コンテ・デザイン集が若干部印刷されて関係者に配布されていた。古本で出てないか探してみたところ,クリスティーのオークションで,3億ドルの値段がついたらしい。チーン。
ホドロフスキーのDUNEは未完に終ったが,そのスタッフやイメージは,その後のSF映画に多大な影響を及ぼしている。まさに,ホドロフスキーのDUNEで改変された,主人公が死んでもその意識が普遍的に実在化するというストーリーをなぞったものになっていた。
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