被写界深度(Depth of Field)について,良くわかっていなかったので調べてみた。単なる幾何光学の練習問題だったので,大学入試問題に使えるかもしれない。
カメラのレンズ系を焦点距離 $f$ の1枚の薄い凸レンズで近似する。レンズの中心を原点Oとする。レンズの回転対称軸を $x$ 軸にとってカメラの撮像素子方向を正にとる。原点から $x$ 軸上の撮影対象までの距離を $b$,撮影対象が結像する撮像素子面までの距離を $a$ とする。このとき,次の関係が成り立つ。
\begin{equation} \dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b} = \dfrac{1}{f} \end{equation}
ところで,撮影対象の前後から出た光は,撮像素子面では厳密には結像しないが,実際にはセンサーの画素サイズ分の誤差 $\varepsilon$ が許容される。撮像素子面上で,フルサイズセンサー(35mm)なら $\varepsilon = 1/30$ mm,APS-Cやマイクロフォーサーズなら $\varepsilon = 1/60$ mm の範囲は結像したものとみなすことができる。このとき $x$ 軸上では,焦点深度 $\delta = {\rm F} \varepsilon$ の許容幅があることになる。ただし絞り値(F値)は F= 焦点距離/有効口径である。
そこで,$a_{\pm}=a \pm \delta$ を結像位置とする,撮影対象の $x$ 軸上の点を $b_{\mp}$ と表すと,次式が成り立つ。
\begin{equation} \begin{aligned} \dfrac{1}{a_{-}} + \dfrac{1}{b_{+}} = \dfrac{1}{f} \\ \dfrac{1}{a_{+}} + \dfrac{1}{b_{-}} = \dfrac{1}{f} \end{aligned} \end{equation}
(1)(2)式から $f$ を消去すると次式が得られる。
\begin{equation} \begin{aligned} \dfrac{1}{b_{+}} - \dfrac{1}{b} = \dfrac{1}{a} - \dfrac{1}{a_{-}} \\ \dfrac{1}{b_{-}} - \dfrac{1}{b} = - \dfrac{1}{a_{+}} + \dfrac{1}{a} \end{aligned} \end{equation}
ここで,$a \gg \delta$ と近似し,(1)式を用いて,$\dfrac{1}{a} = \dfrac{b-f}{bf}$ とすると,
\begin{equation} \dfrac{1}{b_{\pm}} = \dfrac{1}{b} \mp \dfrac{\delta}{a^2} = \dfrac{1}{b} \mp \delta \bigl( \dfrac{b-f}{bf} \bigr)^2 \end{equation}
これから,$b_{\pm}$ は次のように求まる。最後の近似は,$b \gg f$とした場合である。
\begin{equation} \dfrac{b_{\pm}}{b} = \dfrac{1}{1 \mp \dfrac{\delta}{b} \bigl( \dfrac{b-f}{f} \bigr)^2 } \sim \dfrac{1}{1 \mp \delta b / f^2 } = \dfrac{1}{1 \mp {\rm F} \varepsilon b / f^2 } \end{equation}
これによって,対象物が撮像素子面で結像することのできる領域とF値の関係がわかる。なお,$f = 50$ mm ,$b = 10$ m, $\varepsilon = 1/60$ mm,F=4とすると,$ {\rm F} \varepsilon b / f^2 = 0.27$となることから,$b_{-}= 7.9$ m,$b_{+}= 13.7$mとなり,手前側には2.1 m 奥側には3.7 m の範囲で合焦する。
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