NHKの日曜美術館「クラスター2020 ~NY美術家 松山智一の戦い~」で,松山智一が取り上げられていた。同じNHKのザ・ヒューマン「届けなければアートはゴミだ NY美術家 松山智一」の映像を多少編集したものがベースになっていた。ニューヨークのブルックリンで10名のスタッフを抱え,月700万円のオフィスを借りてスタジオを運営している。
中国人財閥美術コレクターの劉益謙・王薇夫妻が運営する上海の龍美術館西岸館で昨年の11月から今年の1月にかけて個展が開かれた。引き続き,龍美術館重慶館でも開催されるようだ。また,明治神宮の創建100年を記念する神宮の森芸術祝祭の屋外彫刻展に作品を出展している。
松山が2018年に東京のルミネで開いた個展「Same Same, Different」のインタビューじゃなくて,プロデューサーの橘康仁との公開対話で,自分の制作手法を美術のマッシュアップであると語っていた。1976年に岐阜の高山に生まれ,8歳から12歳をアメリカの西海岸で過ごし,大学は東京の上智大学経済学部を終えて,同時多発テロの2ヶ月後の2002年に26歳でニューヨークに渡たり,そこから商業デザインを学び始めた。それらの経験をもとに,日本の伝統文化や現代のポップカルチャーなど様々な引き出しを備えてそれをカラフルで精緻な彼の作品にマッシュアップしているのである。
頭に浮かんだのが「21世紀の若冲」だった。残念ながらこの言葉は初出ではなく,辻惟雄と山下裕二が2009年のユリイカ11月号の若冲特集で,「21世紀の若冲--書き換えられる日本美術史」という論文を書いていた。しかし,彼が描いたニューヨーク,ソーホーのバワリー壁画は伊藤若冲の樹花鳥獣図屏風を連想させた。また,コロナ禍の中で10名のスタッフと仕上げた33枚の抽象画パネルは,抽象化された動植綵絵だった。
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